【PMDA承認情報】2025/08/04 医薬品承認一覧
今回の承認では、包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)に対する膝下動脈の血管内治療に大きな進展がありました。従来、膝下動脈の高度石灰化病変に対してはバルーン形成術以外に有効な治療手段がなく、バルーンの通過・拡張が困難な症例では大切断や予後不良に至るケースがありました。今回、石灰化病変を機械的に切削するアテレクトミーデバイスと、薬剤溶出型の生体吸収性スキャフォールドがそれぞれ本邦初導入となり、CLTIの膝下動脈病変に対する治療オプションが大幅に拡充されます。
ペリフェラル ロータブレーターPRO
製品概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 販売名 | ペリフェラル ロータブレーターPRO |
| 申請者 | ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社 |
| 一般的名称 | アテローム切除アブレーション式血管形成術用カテーテル |
| 承認区分 | 新規承認(使用成績評価対象・調査期間4年) |
使用目的
CLTI患者に対する血管内治療を補助するため、経皮的に挿入し、バルーンカテーテルが不通過又は拡張困難な膝下動脈の石灰化病変に対してアテローム塊や固い狭窄病変を切削する。
今回の承認で何が変わるか
「膝下動脈の石灰化病変に対するアテレクトミーデバイス」として、本邦初の承認です。
従来、膝下動脈の血行再建にはバルーン形成術(PTA)が用いられてきましたが、高度石灰化によりバルーンの通過困難・拡張困難となった場合、日本国内には有効な治療手段がありませんでした。その結果、血行再建を断念せざるを得ず、大切断や予後不良に至るケースが存在していました。
本品の導入により、バルーン形成術が不成功となる高度石灰化病変に対して、石灰化を機械的に切削(ロータブレーション)した上でバルーン拡張を行うという新たな治療戦略が可能になります。
臨床的ポイント
- 冠動脈用ロータブレーターPROの末梢血管版: 冠動脈用として既承認の「ロータブレーターPRO」をベースに、バーサイズや回転速度を膝下動脈向けに最適化した機器
- 臨床試験成績: バルーン形成術が不成功であったCLTI患者17例を対象とした国内医師主導治験で、バルーン形成術成功率94.1%(16/17例)を達成(達成目標50%)
- 24週後の成績: 患肢大切断なし、創傷治癒率50%(6/12例)、VAS・SPP・Rutherford分類の改善が維持
- 注意すべきリスク: 切削片による末梢塞栓(5.9%)、造影遅延(11.8%)、血管解離(17.6%)が認められており、合併症発生時には外科手技も含む迅速な対応が必要
- 施設・術者要件: CLTIの血管内治療に精通した医師・チームが、適正使用指針に基づく講習を受けた上で、体制の整った医療機関でのみ使用可能。全症例で使用成績調査が実施される
Esprit BTK エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールド
製品概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 販売名 | Esprit BTK エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールド |
| 申請者 | アボットメディカルジャパン合同会社 |
| 一般的名称 | 薬剤溶出型吸収性下肢動脈用ステント |
| 承認区分 | 新規承認(使用成績評価対象) |
使用目的
CLTI患者(慢性透析患者を除く)における、対照血管径2.5mm以上4.0mm以下の膝下動脈病変に対する血管内腔径の改善。複数本使用時のスキャフォールド全長は170mm以下。
今回の承認で何が変わるか
「膝下動脈に対する薬剤溶出型生体吸収性スキャフォールド」として、本邦初の承認です。
従来、膝下動脈の閉塞・狭窄によるCLTIに対してはバルーンカテーテルを用いたPTAが唯一の有効な血管内治療手段でしたが、PTA後の再狭窄を繰り返し、最終的に下肢切断に至るという深刻な課題がありました。
本品は、血管リモデリングに必要な期間は物理的に血管内腔を保持し、その後は生体に分解・吸収されるポリ-L-乳酸製のスキャフォールドです。さらにエベロリムス(細胞増殖抑制薬)がコーティングされており、留置後の新生内膜増殖を抑制し、再狭窄リスクの低減が期待されます。金属ステントと異なり、最終的に生体に吸収されるため、将来の再治療の選択肢を制限しない点も大きな利点です。
臨床的ポイント
- LIFE-BTK試験で明確な優越性を証明: 海外臨床試験(LIFE-BTK)において、標準治療のPTAに対する無作為化比較試験で統計学的に有意な優越性を示した
- 1年時の主要有効性評価項目(救肢+一次開存の複合エンドポイント): 本品群74.5% vs PTA群43.7%(差30.8%、P<0.0001)
- 再狭窄回避率: 本品群76.5% vs PTA群50.7%
- 2年時点でも優越性を維持
- 安全性: 主要安全性評価項目(周術期死亡+主要下肢有害事象の回避)で本品群96.9% vs PTA群100.0%と非劣性を達成。1年・2年時点で事象回避率がやや低い傾向が見られたが、手技・デバイスとの関連がないことが確認された
- 石灰化病変への適用: 日本では欧米と比較して石灰化病変の割合が高いと想定されるが、事後的なサブグループ解析でPTA群に対する本品の優位性は損なわれないことが確認されている
- 慢性透析患者は除外: 適応対象から慢性透析患者は除外されている点に注意
- 施設・術者要件: CLTIの治療に精通し、膝下動脈の血管内治療・術後管理に十分な知識と経験を有する医師・チームが、適正使用指針に基づく講習を受けた上で、体制の整った医療機関で使用。全症例で使用成績調査を実施し、長期予後の経年解析結果の報告も求められている
まとめ:CLTI膝下動脈治療の転換点
今回の2製品の承認は、CLTI患者の膝下動脈病変に対する治療体系に大きな変革をもたらします。
| 従来 | 今後 | |
|---|---|---|
| 高度石灰化でバルーン不通過・拡張困難 | 有効な治療手段なし → 大切断リスク | ロータブレーターPROで石灰化を切削 → バルーン拡張が可能に |
| バルーン形成術後の再狭窄 | PTA繰り返し → 最終的に切断 | Esprit BTKスキャフォールド留置 → 再狭窄リスク大幅低減 |
いずれも使用成績評価の対象であり、全症例調査が義務付けられています。適正使用指針に基づく施設・術者要件を確認の上、適切な患者選択を行うことが求められます。