承認情報PMDA

【PMDA承認情報】2025/08/12 医薬品承認一覧

製品名 承認区分 効能効果 PMDA
エレビジス点滴静注(2025年度) 不明 詳細

今回の承認では、抗てんかん薬エレビジス(セノバメート)の点滴静注製剤が新たに承認されました。これまで経口製剤のみが使用可能であったセノバメートに静注剤型が加わることで、経口投与が困難な急性期患者や術後・集中治療管理下の患者への投与選択肢が広がります。てんかん重積状態や入院管理が必要な難治性部分発作患者における治療継続性の向上が期待されます。薬剤師には投与経路変更時の用量換算や注射剤としての配合変化・投与速度管理など、新たな管理上の注意点を把握することが求められます。


エレビジス点滴静注

一般名: デランジストロゲン モキセパルボベク
申請者: 中外製薬株式会社
承認区分: 新再生医療等製品(条件及び期限付承認・承認期限3年)
希少疾病用再生医療等製品(指定番号:(R2再)第16号)

効能・効果

デュシェンヌ型筋ジストロフィー。ただし、以下のいずれも満たす場合に限る。

  • 抗AAVrh74抗体が陰性の患者
  • 歩行可能な患者
  • 3歳以上8歳未満の患者

用法・用量

体重10 kg以上70 kg未満の患者には1.33×10¹⁴ ベクターゲノム(vg)/kgを、体重70 kg以上の患者には9.31×10¹⁵ vgを、60〜120分かけて静脈内に単回投与する。再投与は行わない。


何が変わったか:本承認の臨床的意義

デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、ジストロフィン遺伝子変異による進行性の筋萎縮を特徴とするX連鎖性疾患であり、男児約5,000人に1人の割合で発症する。従来の標準治療は副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン等)による症状緩和にとどまり、根本的な治療法は存在しなかった。エクソン53スキッピング療法(ビルトラルセン)は条件付き早期承認されているが、適用可能な患者は全DMD患者の約8%に限られる。

エレビジスは、DMDに対する本邦初のAAVベクター遺伝子治療製品である。アデノ随伴ウイルス(AAVrh74)を用いて、α-ミオシン重鎖クレアチンキナーゼプロモーター/エンハンサーの制御下でマイクロジストロフィンタンパク質をコードする遺伝子を骨格筋・心筋・呼吸筋細胞に導入し、欠失しているジストロフィンの機能を代替する。マイクロジストロフィンが筋細胞膜を安定化することで筋破壊を防ぎ、筋機能の維持・改善を目指す設計となっている。

単回投与による持続的な遺伝子発現という点でも、従来の反復投与型薬剤とは根本的に異なるアプローチであり、治療選択の幅が大きく広がる。


臨床試験の概要

主な根拠は国際共同第III相試験(301試験、4歳以上8歳未満の歩行可能なDMD患者131例)であり、日本人患者も組み入れられている。

第II相二重盲検比較試験(102試験)では、バイオマーカーであるマイクロジストロフィンタンパク質発現量のベースラインからの変化量においてプラセボ群と統計的に有意な差が認められた(本品群 +23.82±39.76%、プラセボ群 +0.14±1.24%、p<0.0001)。一方、運動機能評価(NSAA総スコアの投与後48週時点の変化量)では統計的な有意差は示されておらず、現時点では機能的ベネフィットの検証は継続中である。

米国では2023年6月に4〜5歳の歩行可能なDMD患者へ迅速承認され、2024年6月には4歳以上に適応が拡大されている。


安全性・使用上のポイント

注意すべき主な安全性事象は以下のとおりである。

  • 横紋筋融解症・肝障害:重篤な有害事象として複数試験で報告。投与後の肝酵素モニタリングが必要
  • 免疫性筋炎:マイクロジストロフィンタンパク質に対するT細胞性免疫応答が持続することが確認されており、免疫性筋炎発現のリスクがある
  • 消化器症状:嘔吐(60〜70%)、食欲減退、悪心が高頻度に報告されている
  • AAVrh74カプシドに対する抗体:投与後2週時点でほぼ全例で陽性化し、再投与は不可

承認条件として、全症例を対象とした製造販売後調査の実施が課されており、長期的な有効性・安全性データの収集が義務付けられている。使用にあたっては、DMDの診療体制が整った医療機関において、関連学会作成の適正使用指針に従うこととされている。

また、カルタヘナ法(平成15年法律第97号)に基づく第一種使用規程の遵守が求められる点も実務上の留意事項である。