【PMDA承認情報】2025/09/16 医薬品承認一覧
目次
| 製品名 | 承認区分 | 効能効果 | PMDA |
|---|---|---|---|
| ドプテレット錠20mg | 承認事項一部変更 | 持続性及び慢性免疫性血小板減少症 | 詳細 |
| ヤーボイ点滴静注液20mg | 承認事項一部変更 | ??同?点滴静注液50mg【承認事項一部変更】(2025年8月承認分)治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌 | 詳細 |
今回の承認事項一部変更では、血小板減少症領域と消化器腫瘍領域にまたがる2品目が対象となっています。ドプテレット錠20mgは、既存の適応であった化学療法誘発性血小板減少症に加え、持続性および慢性免疫性血小板減少症(ITP)への適応が拡大されました。一方、ヤーボイ点滴静注液(20mg・50mg)については、2025年8月承認分として、MSI-High(高頻度マイクロサテライト不安定性)を有する治癒切除不能な進行・再発結腸・直腸癌への適応追加が認められています。免疫チェックポイント阻害薬によるMSI-High大腸癌への対応選択肢が広がる点は、臨床現場において特に注目すべき変更点です。
ドプテレット錠20mg(アバトロンボパグマレイン酸塩)
承認区分: 承認事項一部変更
新規追加効能・効果: 持続性及び慢性免疫性血小板減少症
申請者: Swedish Orphan Biovitrum Japan株式会社
今回の変更点
ドプテレット錠20mgはTPO受容体作動薬であり、2023年3月に「待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患患者における血小板減少症の改善」で国内承認済みの経口製剤である。今回の一部変更承認により、「持続性及び慢性免疫性血小板減少症(ITP)」が効能・効果に追加された。これにより本剤は、既存の経口TPO受容体作動薬であるエルトロンボパグと同じポジションで使用可能な治療選択肢となる。
なお、疾患名については、指定難病の名称変更(令和6年厚生労働省告示第382号)を踏まえ、申請時の「慢性特発性血小板減少性紫斑病」から最終的に「免疫性血小板減少症」を包含する形で整理されている。
用法・用量(ITP適応)
通常、成人には初回投与量20mgを1日1回食後経口投与し、以後は血小板数と症状に応じて以下の6段階レベルで調整する。最高投与量は40mgを1日1回。
| レベル | 用法・用量 |
|---|---|
| 6 | 40mg 1日1回 |
| 5 | 40mg 週3回+20mg 残り4日 |
| 4 | 20mg 1日1回 |
| 3 | 20mg 週3回 |
| 2 | 20mg 週2回または40mg 週1回 |
| 1 | 20mg 週1回 |
血小板数が安定するまでは毎週測定し、安定後も4週に1回を目安にモニタリングを継続する。
主要臨床試験の概要
承認の主たる根拠は日本人慢性ITP患者を対象とした国内第III相非盲検非対照試験(307試験)である。
- 対象: 診断から12カ月以上経過し、過去の治療効果が不十分と判断された慢性ITP患者 19例
- 主要評価項目: 血小板反応の累積週数(コア期26週のうち救済療法なしで血小板数50,000/µL以上を維持した週数)
- 結果: 平均13.47±9.002週(95%CI下限値9.13週)、事前設定閾値8.02週を上回った
- 投与1週後の血小板反応達成率: 63.2%
- 持続的血小板反応の達成率: 42.1%
- 並行ITP治療薬の減量・中止率: 55.6%
参考とした海外第III相プラセボ対照試験(302試験)では、血小板反応の累積週数が本薬群12.0週 vs プラセボ群0.1週(p<0.0001)と明確な優越性が示されており、307試験の結果解釈を補強している。
臨床的ポジションと他剤との比較
本剤は既承認のTPO受容体作動薬(エルトロンボパグ、ロミプロスチム)と同等の臨床的位置付けで使用される。副腎皮質ステロイド等による一次治療に効果不十分または忍容性に問題があり、出血リスクが高いと判断されるITP患者が対象となる。
臨床現場において重要な差別化ポイントは以下のとおりである。
- 肝障害リスクの観点: エルトロンボパグはUGT1A1およびOATP1B1阻害作用を有し、肝機能障害が重大な副作用として注意喚起されているが、アバトロンボパグにはこの阻害作用がなく、臨床試験でも肝障害に係るリスクは示されていない。肝機能障害を懸念するケースでの選択肢となりうる。
- 服用方法: エルトロンボパグは空腹時投与が必要であるのに対し、本剤は食後投与であり、服用指導が容易である。
- 薬物相互作用: CYP2C9およびCYP3A4の強い・中程度の阻害剤を両方同時に併用する場合は初回投与量を週3回20mg(レベル3)に、誘導剤を同時併用する場合は1日1回40mg(レベル6)に変更することが必要である。
安全性の注意点
- 血栓塞栓症: 継続的な血小板数モニタリングのもと、目標範囲を超えた場合は減量・休薬を検討すること。400,000/µLを超えた場合は休薬し、血小板数が150,000/µL未満に減少した後、1段階下げたレベルで再開する。
- 骨髄線維症: 重大な副作用として設定。投与前後の血液検査(血球形態異常の確認)を4週に1回目安で実施すること。
- 投与中止後のリバウンド: 中止後4週程度は血小板数を頻回に測定すること。
- 投与対象の注意: 免疫性血小板減少症の診断から6〜12カ月の患者における有効性・安全性は確立していない。
ヤーボイ点滴静注液20mg(イピリムマブ)
承認区分: 承認事項一部変更
承認年月: 2025年8月
製造販売業者: ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社
今回の変更点
今回の承認により、イピリムマブ(IPI)とニボルマブ(NIVO)の併用療法が、「MSI-High を有する治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」において化学療法歴を問わず使用できるようになった。
従来の適応は「がん化学療法後に増悪した」MSI-High 結腸・直腸癌、すなわち2次治療以降に限定されていた。今回の変更により、化学療法未治療の1次治療からNIVO/IPI 併用療法を選択できる道が開かれた。臨床現場において、化学療法歴のない MSI-High CRC 患者に対し、フッ化ピリミジン系+オキサリプラチン/イリノテカン系化学療法を経ずに免疫チェックポイント阻害薬二重療法を1次治療として使用できることは大きな転換点となる。
承認の根拠となった試験
国際共同第III相試験(8HW 試験)において、化学療法歴のない治癒切除不能な進行・再発の MSI-High CRC 患者を対象に、NIVO/IPI 群(NIVO 240 mg Q3W × 4 回後 NIVO 480 mg Q4W)と化学療法群(FOLFOX、FOLFOX/BEV、FOLFOX/CET、FOLFIRI、FOLFIRI/BEV、FOLFIRI/CET から選択)が比較された。
主要評価項目である PFS(NIVO/IPI 群 vs 化学療法群)の中間解析結果は以下のとおり。
| NIVO/IPI 群(171例) | 化学療法群(84例) | |
|---|---|---|
| PFS 中央値 | 推定不能(38.44カ月以上) | 5.85カ月 |
| ハザード比 | 0.21(95%CI:0.14–0.32) | — |
| p 値 | <0.0001 | — |
PFS のハザード比 0.21 という結果は、化学療法に対して疾患進行・死亡リスクを約 80% 低減することを意味し、极めて強力なエビデンスといえる。参考資料である海外第II相試験コホート 3 でも、化学療法歴のない患者における奏効率(CR+PR)は 71.1%(CR 17.8%)と良好であった。
なお、申請者は化学療法歴のない MSI-High CRC における既承認薬ペムブロリズマブとの比較として、KEYNOTE-177 試験での PFS 中央値が 16.5 カ月であったことを踏まえ、NIVO/IPI 投与がペムブロリズマブよりも高い有効性を期待できると説明しており、PMDA もこれを了承した。ただし、両薬剤を直接比較した試験成績は得られていないため、個々の患者の状態に応じた選択が必要である。
用法・用量
NIVO/IPI 投与時の IPI の用法:
ニボルマブとの併用において、成人にはイピリムマブとして1回 1 mg/kg(体重)を3週間間隔で4回点滴静注する(30分以上かけて投与)。
安全性の留意点
8HW 試験での化学療法歴のない患者集団における安全性プロファイルは、既承認の効能・効果における NIVO/IPI 投与時と同様の傾向であった。化学療法群と比較して NIVO/IPI 群で頻度が高い事象としては、そう痒症(27%)、関節痛(18%)、甲状腺機能低下症(16%)、副腎機能不全(10%)などの免疫関連有害事象が挙げられる。Grade 3 以上の有害事象は NIVO/IPI 群で 52.0%(化学療法群 68.2%)と、化学療法群を下回った一方、免疫性腸炎による投与中止(2.0%) など irAE 特有の管理が求められる。
IPI の注意を要する有害事象としては、下痢・大腸炎・消化管穿孔、肝障害、皮膚障害、内分泌障害、末梢性ニューロパチー、心筋炎、infusion reaction、移植歴のある患者における移植片対宿主病(GVHD)等がある。
実臨床における注意点
- MSI-High の確認は、十分な経験を有する病理医または検査施設において、承認された体外診断用医薬品または医療機器を用いて行うこと。コンパニオン診断薬として「MMR IHC pharmDx」「Idylla MSI Test ニチレイバイオ」等が使用可能。
- PD-L1 発現状況によらずNIVO/IPI 投与の有効性が期待できるため、PD-L1 発現に基づく投与対象の絞り込みは不要。
- フッ化ピリミジン系・L-OHP・CPT-11 による治療歴のない患者に対する NIVO 単独投与の有効性及び安全性は確立していないため、化学療法歴のない本集団では原則として NIVO/IPI の併用で用いること。
- 本剤は希少疾病用医薬品(指定番号:第 630 号)に指定されている。