【PMDA承認情報】2025/09/29 医薬品承認一覧
目次
| 製品名 | 承認区分 | 効能効果 | PMDA |
|---|---|---|---|
| ヨビパス皮下注168μgペン/皮下注294μgペン/皮下注420μgペン | 承認 | 同 皮下注294μgペン【承認】 同 皮下注420μgペン【承認】(2025年8月承認分)副甲状腺機能低下症 | 詳細 |
| テセントリク点滴静注840mg/点滴静注1200mg | 承認事項一部変更 | 再発又は難治性の節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型 | 詳細 |
| ネクセトール錠180mg | 承認 | 高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症 | 詳細 |
| プルヴィクト静注 | 承認 | PSMA陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌 | 詳細 |
| ロカメッツキット | 承認 | PSMA標的療法の前立腺癌患者への適応判定の補助 | 詳細 |
| ガリアファーム 68Ge/68Gaジェネレータ | 承認 | 詳細 | |
| セタネオ点眼液0.002% | 承認 | 緑内障、高眼圧症 | 詳細 |
今回の承認では、前立腺癌領域においてPSMA標的放射性リガンド療法薬プルヴィクト静注と、その適応判定に用いるコンパニオン診断薬ロカメッツキットが同時に承認され、治療から診断まで一体的な新戦略が国内で使用可能となった。脂質管理領域では、siRNA作用機序をもつ新規脂質異常症治療薬ネクセトール錠180mgが承認され、既存スタチン等の補完的選択肢が拡充した。希少疾患では副甲状腺機能低下症を対象としたヨビパス皮下注が加わり、ホルモン補充に依存しない新たな治療アプローチが臨床導入される。テセントリクは再発・難治性節外性NK/T細胞リンパ腫(鼻型)への適応追加により、免疫チェックポイント阻害薬の血液腫瘍適応がさらに広がった。眼科領域ではセタネオ点眼液の緑内障・高眼圧症への承認も注目され、今回の承認群は多領域にわたる臨床実践への影響が見込まれる。
ヨビパス皮下注168μgペン/294μgペン/420μgペン(パロペグテリパラチド)
承認区分: 新有効成分含有医薬品(新規承認)
効能・効果: 副甲状腺機能低下症
希少疾病用医薬品(指定番号:第518号)
今回の承認で何が変わるか
副甲状腺機能低下症は、PTH欠乏により慢性的な低カルシウム血症・高リン血症・骨代謝回転低下をきたす内分泌疾患である。本邦における推計患者数は術後例を含め約34,000人とされる。
従来の標準治療は活性型ビタミンD₃製剤+カルシウム製剤による 対症療法 であり、低カルシウム血症の症状改善は得られるものの、PTH欠乏そのものを是正することはできない。このため長期治療では腎臓でのカルシウム濾過量増加・腎結石・腎不全リスク、異所性石灰化、骨代謝回転低下といった合併症リスクが蓄積していく問題があった。
ヨビパスは PTH(1-34)のプロドラッグ型補充製剤 として、これらの根本的課題に対応する初めての本邦承認選択肢である。欧州では2023年11月、米国・英国を含む31カ国(2025年5月現在)でも承認されており、今回の国内承認により、本邦でも1日1回の皮下投与によるPTH補充療法が臨床現場で選択できるようになる。
作用機序と薬物動態の特徴
パロペグテリパラチドは、ヒトPTHの1〜34番目のアミノ酸に相当するPTH(1-34)に、切断可能なリンカーを介してメトキシポリエチレングリコール(分子量:約43,000)を結合させたPEG化合成ペプチド(分子量:約48,000)である。
皮下投与後、生理的なpH・温度条件下でリンカーが加水分解され、PTH(1-34)が24時間にわたって持続的に遊離するよう設計されている。これにより、血漿中遊離PTH濃度が生理的な範囲(4〜26 pg/mL)に維持されることが第I/II相試験および臨床PK試験で確認されている。
既存のPTHアナログ(テリパラチド等)は半減期が短く間歇的な高濃度曝露をもたらすため、骨粗鬆症治療として使用されているが、副甲状腺機能低下症に対してPTH濃度を生理的範囲内に長期維持することは困難であった。本剤はこの課題をPEGプロドラッグ化によって解決した点が構造上の核心である。
主要臨床試験の結果
海外第III相試験(304試験)
副甲状腺機能低下症患者82例(プラセボ21例、本剤群61例)を対象としたプラセボ対照無作化二重盲検並行群間比較試験。
盲検期終了時(投与26週時)のレスポンダー割合(①アルブミン補正血清カルシウム濃度が基準範囲内、②活性型ビタミンD₃製剤からの離脱、③カルシウム製剤からの離脱、④盲検期終了前4週間の治験薬増量なし、の全基準を充足):
| 群 | レスポンダー割合 |
|---|---|
| プラセボ群(21例) | 4.8%(1/21例) |
| 本剤群(61例) | 78.7%(48/61例) |
群間差 73.9%(95%CI:52.8, 85.4)、p<0.0001でプラセボに対する優越性が確認された。
国内第III相試験(305試験)
日本人患者13例を対象とした非盲検非対照試験。有効性評価期終了時(26週)のレスポンダー割合は92.3%(12/13例)であり、継続投与期(52週時)でも91.7%(11/12例)と効果の持続が示された。なお、日本人と外国人で本剤投与時の薬物動態に大きな差は認められていない。
長期有効性については、304試験の52週・104週時および201試験の162週時においても有効性が減弱する傾向は認められていない。
用法・用量
通常、成人にはパロペグテリパラチドをPTH(1-34)として1回18μgを開始用量とし、1日1回皮下注射する。以後、血清カルシウム濃度の管理のもとに、1日1回6〜60μgの範囲で適宜用量を増減する(増量・減量は3μgずつ)。専用ペン型注入器で自己注射可能な製剤設計となっている。
安全性・注意点
主な副作用として注射部位反応、高カルシウム血症、頭痛、起立性低血圧が報告されている。
高カルシウム血症は本剤の薬理作用に起因して生じうる最重要の有害事象であり、304試験で本剤群9.8%(6/61例)に認められ、重篤例1例(副作用と判定)は投与中断・補液等で回復している。高カルシウム血症の発生は投与開始後3カ月以内、特に最初の1カ月間に集中している。
臨床現場では以下の管理が求められる:
- 投与開始後および用量変更後は定期的な血清カルシウム濃度のモニタリングを実施し、高カルシウム血症に対応する
- 重度腎機能障害者(eGFR 30 mL/min/1.73m²未満)に対しては、データが限られるため血清カルシウム濃度を特に注意深く確認し、患者状態を十分に観察する
- 活性型ビタミンD₃製剤・カルシウム製剤の用量調整アルゴリズムに従い、本剤の用量と補助薬を適切に管理する
臨床的ポイントまとめ
- 副甲状腺機能低下症に対する 本邦初のPTH補充療法(1日1回皮下投与)として、対症療法の限界を超える治療選択肢が加わる
- 活性型ビタミンD₃製剤・カルシウム製剤からの 離脱達成が期待でき、長期的な腎合併症(腎結石・腎不全)・異所性石灰化リスク低減につながる可能性がある
- 国内外の第III相試験で高いレスポンダー割合が示されており、長期投与時の有効性減弱も認められていない
- 高カルシウム血症が主要な注意すべき副作用であり、特に投与早期の血清カルシウムモニタリングが必須
- 再審査期間は10年、原体は毒薬に該当、製剤は毒薬・劇薬のいずれにも非該当
テセントリク点滴静注840mg/点滴静注1200mg
一般名: アテゾリズマブ(遺伝子組換え)
申請者: 中外製薬株式会社
承認区分: 承認事項一部変更(新用量)
今回の変更内容:何が変わったのか
本承認の核心は適応疾患の追加ではなく、用量・投与間隔の追加である。これまでテセントリクは既承認の各効能に対して主に1,200 mg Q3W(3週間間隔)または840 mg Q2W(2週間間隔)で使用されてきたが、今回の一変承認により1,680 mg Q4W(4週間間隔)投与が新たな選択肢として追加された。
対象となる効能・効果は以下のとおり:
- 切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)
- PD-L1陽性のNSCLCにおける術後補助療法
- 進展型小細胞肺癌(SCLC)
- PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌
- 切除不能な肝細胞癌
- 切除不能な胸巣状軟部肉腫
承認の科学的根拠:PPK解析主導の申請
本申請は新たな無作為化比較試験の結果を根拠としたものではなく、母集団薬物動態(PPK)解析を主たる根拠としている。複数の国際共同第III相試験(OAK、IMpower110、IMpower132、IMpower133、IMpassion130)と国内第I/II相試験(JO44110)のデータを統合したPPKモデルを用いて、1,680 mg Q4W投与時の血中曝露量(C_max・C_trough)が推定された。
解析の結果、1,680 mg Q4W投与における曝露量は、既承認用量の1,200 mg Q3W投与と比較して同等以上の血中濃度を維持することが確認された。乳癌に係る効能については、840 mg Q2W投与の全体集団でのC_troughと比較して1,680 mg Q4W投与の日本人集団でのC_troughが幾何平均値で約9%低下する傾向が認められたが、IMpassion130試験においてC_troughを四分位で分割した際の有効性(OSおよびPFS)に明確な差は認められなかったことから、有効性への実質的な影響はないと判断された。
安全性については、国内第I/II相試験(JO44110試験)において進行固形癌患者21例に1,680 mg Q4Wを投与した結果、DLTは認められず、既承認用量での安全性プロファイルと比較して新たな懸念は確認されなかった。また、投与速度の短縮(2回目以降に30分投与)についても、JO44110試験においてinfusion reactionは認められなかった。
臨床現場へのインパクト
4週間間隔投与が選択可能になることで、以下のメリットが期待される:
- 通院負担の軽減: Q3W(3週ごと)からQ4W(4週ごと)へ変更することで、外来受診・点滴の頻度を年間約17回から約13回に削減できる
- 投与スケジュールの柔軟性向上: 他の抗悪性腫瘍薬や支持療法との組み合わせにおいて、投与間隔の調整がしやすくなる
- 840 mg製剤でも乳癌対象に1,680 mg Q4Wが追加: 840 mg製剤においては乳癌での1,680 mg Q4W投与が新規追加となっており、nab-パクリタキセルとの併用レジメンで4週サイクルへの移行が可能になる
注意点
RMPにおける重要な特定されたリスクの変更はなし。ILD、肝機能障害、大腸炎・重度の下痢、膵炎、内分泌障害、神経障害(ギラン・バレー症候群を含む)、重症筋無力症、重度の皮膚障害、腎機能障害、心筋炎、血球食症候群、免疫性血小板減少症、infusion reactionなど免疫関連有害事象の監視・管理は従来と同様に継続が必要である。1,680 mg Q4W投与においても投与初回は60分かけて点滴静注し、忍容性が良好であれば2回目以降は30分まで短縮可能。
ネクセトール錠180mg(ベムペド酸)
一般名: ベムペド酸 / 申請者: 大塚製薬株式会社 / 再審査期間: 8年
効能・効果
高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症
用法・用量: 通常、成人にはベムペド酸として180mgを1日1回経口投与
この承認で何が変わるか
ネクセトール錠は、ACL(ATP クエン酸リアーゼ)阻害という新規作用機序を持つ国内初の低分子経口薬として承認された。スタチン、エゼチミブ、PCSK9阻害剤とは異なる標的を持ち、スタチンで効果不十分またはスタチン不耐と判断された高コレステロール血症(HC)患者および家族性高コレステロール血症(HeFH)患者に対して、追加・代替の経口選択肢が加わる。
PCSK9阻害剤が同様の位置付けで使用されてきたが、注射剤という制約があった。本薬は1日1回の経口投与であり、継続投与の利便性において実臨床での差別化が見込まれる。欧米では2025年6月時点で39の国と地域ですでに承認・使用されており、国内承認はやや遅れての導入となる。
作用機序と臨床的特徴
ベムペド酸は肝臓内でACSVL1(長鎖脂肪酸代謝酵素)によりCoA活性体(ETC-1002-CoA)に変換されるプロドラッグである。活性体がACLを阻害することにより、コレステロール生合成の出発物質であるアセチルCoAの産生が抑制され、肝臓のコレステロール合成が低下するとともにLDLRの発現増加を介してLDL-C値が低下する。
作用部位がHMG-CoA還元酵素(スタチンの標的)よりも上流に位置する点が重要で、スタチンとの相補的な使用が期待される。また、ACSVL1が骨格筋にはほぼ発現しないため、スタチンで問題となるミオパチー・横紋筋融解症のリスクが理論的に低く、スタチン不耐患者に対して一定の根拠を持って使用できる。
有効性エビデンス
国内第II相試験(346-102-00001試験): スタチン効果不十分またはスタチン不耐の日本人HC患者を対象とした12週間の二重盲検プラセボ対照試験。本薬180mg群のLDL-Cベースラインからの変化率は −21.3%(プラセボ群比 −19.4ポイント、p<0.001)。
国内第III相試験(346-102-00002試験): 同様の対象患者96例を用いた12週間試験。本薬180mg群で −25.3%(プラセボ群比 −21.8ポイント、p<0.001)のLDL-C低下を達成。12週時にLDL-C管理目標値を達成した患者の割合は本薬群62.5%に対しプラセボ群8.3%であった。
国内長期投与試験(346-102-00003試験): 52週間の非盲検試験。LDL-C低下効果は投与4週目から認められ、52週時点でも −21.6%の低下が維持された。管理目標値達成割合は52週時点で65.6%であった。
心血管イベントエンドポイント: 海外第III相試験(1002-043試験)において、スタチン不耐のHC患者を対象に MACE-4(心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中・冠動脈血行再建術)の複合エンドポイントのハザード比が0.87(95%CI: 0.79–0.96)と、プラセボに対する有意な心血管イベント抑制効果が示されている(N Engl J Med. 2023; 388: 1353-64)。
安全性と注意すべきポイント
血中尿酸増加: 本薬が腎尿細管のOAT2を阻害し尿酸排泄を低下させる可能性があり、投与中は血清尿酸値のモニタリングが必要。痛風の既往または高尿酸血症患者では症状悪化に注意する。
スタチン併用時の筋障害リスク: 本薬がアトルバスタチン・ロスバスタチン・シンバスタチン・プラバスタチンのAUCを増加させることが示されている。スタチンの曝露量増加に伴う筋障害関連有害事象に注意し、定期的なCK測定を行うことが推奨される。スタチンを必要最小限の用量に調節することも考慮する。
肝機能検査値異常: プラセボ群と比較して本薬群でALT/AST上昇の発現割合がやや高い傾向にある。重篤例やHy’s lawに該当する症例は臨床試験では認められていないが、肝機能のフォローが必要である。
HDL-Cの低下傾向: TC・non-HDL-Cはプラセボ比で改善する一方、HDL-Cは低下傾向を示した。臨床試験においてHDL-C低下に関連した有害事象は認められておらず、現時点で臨床的問題となる可能性は低いと機構は判断しているが、継続的な観察が望まれる。
妊婦・授乳婦への禁忌: 動物試験で胎児毒性(骨格異常)が認められており、妊娠可能な女性への投与は禁忌。授乳中の投与も避けること。
臨床的位置付けのまとめ
| 患者背景 | 本薬の位置付け |
|---|---|
| スタチン効果不十分 | 追加投与(スタチンとの併用) |
| スタチン不耐 | スタチン代替の経口LDL-C低下薬 |
| HeFH(ホモ型は除く) | スタチン効果不十分・不耐例への追加選択肢 |
| エゼチミブ/PCSK9阻害剤でも目標未達 | さらなる追加投与の選択肢 |
JASガイドライン2022年版のもとで、スタチンと異なる作用機序のLDL-C低下薬が推奨されるシーンが拡大している。本薬は経口薬としての利便性を持ちながら心血管イベント抑制エビデンスも有しており、既存の治療アルゴリズムに新たな経口段階を追加するものとして実臨床への貢献が期待される。
プルヴィクト静注
一般名: ルテチウムビピボチドテトラキセタン(¹⁷⁷Lu)
申請者: ノバルティスファーマ株式会社
承認区分: 新規承認(新有効成分含有医薬品・劇薬)
再審査期間: 8年
効能・効果
PSMA陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)
用法・用量
1回7.4 GBqを6週間間隔で最大6回静脈内投与(患者の状態により適宜減量)
何が変わったか:治療選択肢の構造的転換
プルヴィクト静注は、国内初となる¹⁷⁷Lu標識PSMA標的放射性医薬品として承認された。前立腺癌細胞に高発現する膜貫通タンパク質PSMAをターゲットにしたPSMA-617リガンドに¹⁷⁷Luを標識した製剤であり、PSMAとの結合を介して細胞内に取り込まれ、放出されるβ線でDNAを傷害し腫瘍増殖を抑制する、いわゆる「標的アイソトープ治療(RLT)」に位置付けられる。
これまでARSI既治療かつタキサン系化学療法後のmCRPCに対する標準的な治療選択肢は限られていたが、本剤の承認により、化学療法に代わる腫瘍特異的な全身放射線治療という新たな選択肢が加わった。さらに、PSMAfore試験の結果に基づき、タキサン系化学療法未施行の患者への有効性も示されており、mCRPCの治療アルゴリズムにおける本剤の適用範囲は幅広い。
投与にあたっては、⁶⁸Ga-PSMA-11 PET/CTによるPSMA発現確認を事前に行う必要がある点が実務上の重要な前提条件となる。
主要臨床試験の概要
VISION試験(海外第III相、無作為化比較試験)
ARSI 1剤以上およびタキサン系抗悪性腫瘍剤1または2剤の治療歴を有するPSMA陽性mCRPC患者831例を対象に、本薬+BSC/BSoC群(551例)とBSC/BSoC群(280例)を比較。
主要評価項目であるrPFS(画像診断に基づく無増悪生存期間)および全生存期間(OS)のいずれにおいても本薬群の優越性が検証された。
| 評価項目 | 本薬+BSC/BSoC群 | BSC/BSoC群 | ハザード比 |
|---|---|---|---|
| rPFS中央値 | 8.7カ月 | 3.4カ月 | 0.40(99.2%CI: 0.29–0.57) |
| OS中央値 | 15.3カ月 | 11.3カ月 | 0.62(95%CI: 0.52–0.74) |
PSMAfore試験(海外第III相、無作為化比較試験)
ARSI 1剤の治療歴があり、タキサン系治療歴のないPSMA陽性mCRPC患者469例を対象に、本薬群とARSI群を比較。
主要評価項目のrPFSにおいて本薬群の優越性が検証された(中央値 9.30 vs 5.55カ月、ハザード比 0.41 [95%CI: 0.29, 0.56]、p<0.00000001)。前治療ARSIの薬剤(アビラテロン・エンザルタミド)によらず有効性が示されている。
A11201試験(国内第II相)
日本人PSMA陽性mCRPC患者30例を対象とした非盲検非対照試験。パート2(ARSI+タキサン治療歴あり、12例)での軟部組織病変の奏効率は25.0%(90%CI: 7.2, 52.7)、パート3(ARSI治療歴あり・タキサン未施行、18例)では33.3%(90%CI: 15.6, 55.4)であり、いずれも事前設定の閾値を上回った。
安全性プロファイルと管理上の注意点
VISION試験における主な有害事象は、疲労(43.3%)、口内乾燥(38.8%)、悪心(35.7%)、貧血(31.9%)であった。特にPMDAが注意を要するとした有害事象は以下のとおりである。
- 骨髄抑制:貧血(Grade 3以上 12.9%)、血小板減少症(7.9%)、リンパ球減少症(7.8%)が認められ、投与中止・減量の主要因となる。定期的な血液検査が必須。
- 腎機能障害:本薬は主に腎排泄される(投与後24時間以内の尿中排泄率 約97.6%ID)。軽度〜中等度の腎機能障害では大幅な曝露量増加は見られないが、重度腎機能障害・末期腎不全患者への安全性データは限られており、投与の可否は慎重に判断する。
- 頭蓋内出血・二次性悪性腫瘍:放射性医薬品に特有のリスクとして添付文書で注意喚起される予定。
- 生殖毒性:放射線による精巣への影響から永続的な男性不妊の可能性があり、投与中および投与終了後14週間は避妊が必要。
PSMAfore試験ではARSI群(Grade 3以上の有害事象 48.3%)と比較して本薬群(35.7%)でのGrade 3以上の有害事象発現割合が低く、全体的な忍容性プロファイルはARSIと比較して良好であった。
薬剤師・医療現場へのインパクト
本剤は放射性医薬品であり、製造後120時間(5日間)という短い有効期間の中でのスケジュール管理、放射性物質取扱設備・防護体制の整備、患者および医療スタッフの被曝管理など、通常の注射剤とは異なる運用体制が求められる。
また、投与前に⁶⁸Ga-PSMA-11 PET/CT(現状ではPSMA PET対応施設が必要)でPSMA発現を確認するバイオマーカー駆動型の治療選択が前提となる点が、従来の前立腺癌治療とは大きく異なる。核医学部門・泌尿器科・腫瘍内科が連携した多職種チーム体制の構築が不可欠である。
ロカメッツキット
製品概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 販売名 | ロカメッツキット |
| 申請者 | ノバルティスファーマ株式会社 |
| 承認区分 | 新有効成分含有医薬品 |
| 再審査期間 | 8年 |
| 有効成分 | ガリウム(⁶⁸Ga)ゴゼトチド(PSMA-11) |
| 剤形 | 凍結乾燥製剤(1バイアル中ゴゼトチド 25 μg) |
効能・効果
- PSMA標的療法の前立腺癌患者への適応判定の補助
- PETイメージングのために承認された被標識用製剤のガリウム(⁶⁸Ga)標識
用法・用量
ガリウム(⁶⁸Ga)ゴゼトチドとして 111〜259 MBq を静脈内投与し、投与 50〜100 分後に PET 撮像を開始する。なお、本薬はロカメッツキット(凍結乾燥製剤)と ガリアファーム⁶⁸Ge/⁶⁸Gaジェネレータ(塩化ガリウム(⁶⁸Ga)の供給源) を組み合わせて院内調製して使用する点が実務上の特徴である。
今回の承認で何が変わるか
本承認の最大の意義は、PSMA標的放射線療法薬である¹⁷⁷Lu-PSMA-617(ルテシウム(¹⁷⁷Lu)オキソドトレオチド)との治療戦略が日本で完成する点にある。
¹⁷⁷Lu-PSMA-617はPSMA陽性のmCRC患者への投与が前提となるが、これまで日本では PSMA を標的とした PET 用放射性医薬品が承認されていなかった。ロカメッツキットの承認により、治療前に PSMA 陽性病変を PET/CT で画像確認し、¹⁷⁷Lu-PSMA-617 の適応患者を適切に選択するというワークフローが国内臨床で初めて確立されることになる。
作用機序
本薬はドイツがん研究センター及びハイデルベルク大学病院が創製した PSMA リガンド(PSMA-11)を⁶⁸Ga で標識した放射性診断薬である。前立腺癌で高発現する膜貫通タンパク質 PSMA(前立腺特異的膜抗原)との結合を介して前立腺癌細胞内に取り込まれ、放出されるγ線を PET で検出することで PSMA陽性病変を可視化する。in vitro 試験では PSMA 発現細胞への取込み率が約 70% であり、PSMA 非発現細胞では 0.5% 未満と高い選択性が示されている。主要排泄経路は腎排泄であり、PSMA 発現臓器である腎臓を除き、他臓器への集積は低く消失も速やかである。
主要臨床試験の概要
承認の根拠となった主な試験は以下のとおりである。
VISION 試験(海外第 III 相)
1剤以上の ARSI および1〜2剤のタキサン系抗悪性腫瘍剤による治療歴を有する PSMA陽性のmCRPC 患者 1,003 例を対象とし、¹⁷⁷Lu-PSMA-617+BSC/BSoC 群と BSC/BSoC 群を比較した無作為化非盲検比較試験。主要評価項目の rPFS および OS いずれにおいても 統計学的に有意な延長が認められ、本薬を用いた PET/CT 検査が PSMA 陽性確認の手段として機能した。
A11201 試験(国内第 II 相)
PSMA 陽性の日本人 mCRPC 患者 35 例を対象とした試験(データカットオフ:2023年12月8日)。¹⁷⁷Lu-PSMA-617 との併用における本薬の安全性を評価するとともに、治療奏効を確認した。軟部組織病変の奏効率は、パート2(ARSI+タキサン治療歴あり)で 25.0%(90%CI: 7.2〜52.7)、パート3(ARSI 治療歴あり・タキサン未使用)で 33.3%(90%CI: 15.6〜55.4)であり、いずれも事前設定閾値を上回った。安全性評価期間中の死亡は認められなかった。
臨床的ポイント
-
コンパニオンイメージング診断薬としての位置づけ:本薬単独ではなく、¹⁷⁷Lu-PSMA-617 投与前の PSMA 陽性確認ツールとして使用する。治療薬の適応判定に放射性診断薬が組み込まれるという、核医学的アプローチの実臨床への本格的な導入を意味する。
-
投与タイミング:¹⁷⁷Lu-PSMA-617 の投与は、本薬による PET/CT 検査実施後 7 日以降に開始することが試験プロトコルで設定されており、診断から治療開始までのスケジュール調整が必要となる。
-
施設要件:⁶⁸Ga を用いた PET/CT 検査が実施可能な施設での運用が前提となり、放射性医薬品の院内調製体制(ガリアファームとの組み合わせ使用)も必要である。
-
患者選択における注意点:PSMA 陽性の判定は視覚的評価により行われ、腫瘍組織における⁶⁸Ga の取込みが正常組織の肝臓よりも高い場合を陽性と判定する。PSMA 陰性と判定された患者への¹⁷⁷Lu-PSMA-617 投与は適応外となるため、画像判定の精度が治療成績に直結する。
-
承認条件:医薬品リスク管理計画(RMP)の策定・実施が求められている。
ガリアファーム 68Ge/68Ga ジェネレータ
一般名: ガリウム(68Ga)ジェネレータ
申請者: Eckert & Ziegler Radiopharma GmbH(選任外国製造販売業者:ノバルティスファーマ株式会社)
承認区分: 新有効成分含有医薬品(劇薬)
再審査期間: 8年
効能・効果
陽電子放出断層撮影(PET)イメージングのために承認された被標識用製剤のガリウム(68Ga)標識
用法・用量
溶出用 0.1 mol/L 塩酸溶液により塩化ガリウム(68Ga)溶液の必要量を溶出し、担体分子の in vitro 標識に用いる。
今回の承認で何が変わるか
ガリアファームは、68Ga(半減期約68分)を院内供給するためのジェネレータ製剤である。親核種である68Ge(半減期約271日)を二酸化チタンカラムに保持した鉛製遮へい容器に組み込まれており、使用時に0.1 mol/L塩酸溶液で溶出することで68Gaを繰り返し取り出すことができる。
本邦では、ロカメッツキット(ゴゼトチド25 µg含有凍結乾燥製剤)と組み合わせて使用することで、PSMAを標的とするPETトレーサーであるガリウム(68Ga)ゴゼトチドを院内調製できるようになる。ロカメッツキットとガリアファームは今回の審査で同時に承認されており、両製品はセットで運用されることが前提となっている。
臨床上の最大の変化は、PSMA-PET検査の施設展開が加速する点にある。 従来、短半減期の68GaによるPET検査を実施するにはサイクロトロン設備または外部からのFDG代替供給に依存する必要があったが、ガリアファームのようなジェネレータを用いることで、サイクロトロンを持たない医療施設でも安定的に68Gaを供給できる。ガリアファームは欧州で2014年、英国で2017年、EUで2024年にすでに承認されており、国内承認によりグローバルに普及しつつあるPSMA-PET検査の体制整備が進む。
臨床的ポイント
PSMA標的療法の適応選択に直結するPET検査
ガリアファームにより調製されたガリウム(68Ga)ゴゼトチドを用いたPET/CT検査は、PSMA標的療法の前立腺癌患者への適応判定を補助する目的で用いられる。現時点で前立腺癌の再発・転移診断における有用性は確立していない。
臨床的有用性を支持する根拠として、以下の3試験が承認の根拠とされた。
VISION試験(海外第III相、1,003例)
ARSIおよびタキサン系治療歴を持つPSMA陽性のmCRPC患者を対象に、177Lu-PSMA-617+BSC/BSoC群対BSC/BSoC群を比較。主要評価項目である放射線学的無増悪生存期間(rPFS)の中央値は8.7カ月対3.4カ月(ハザード比0.40、99.2%CI: 0.29–0.57、p<0.001)、全生存期間(OS)中央値は15.3カ月対11.3カ月(ハザード比0.62、95%CI: 0.52–0.74、p<0.001)と、いずれも有意な延長が示された。
PSMAfore試験(海外第III相、547例)
ARSIによる治療歴があり、タキサン系治療歴のないPSMA陽性mCRPC患者を対象に177Lu-PSMA-617対ARSI(アビラテロンまたはエンザルタミド)を比較。rPFS中央値は9.30カ月対5.55カ月(ハザード比0.41、95%CI: 0.29–0.56、p<0.00000001)と優越性が検証された。
A11201試験(国内第II相)
国内8施設で実施されたPSMA陽性mCRPC患者を対象とした非盲検非対照試験。主要評価項目である軟部組織病変の奏効率は、パート2(12例)で25.0%(90%CI: 7.2–52.7)、パート3(18例)で33.3%(90%CI: 15.6–55.4)とそれぞれ事前設定の閾値を上回った。
読影管理の重要性
VISION試験の後視的解析において、本薬を用いたPET/CT画像に対する3名の独立読影者間の判定一致率は77%(PSMA陽性集団では88%)であった。骨病変では一致率が低い傾向があることも報告されており、PMDAは「読影エラー」を重要な潜在的リスクに設定した上で、医療従事者向け読影資材の作成・提供をリスク最小化活動として求めている。
放射線安全管理
本ジェネレータを数日間使用しなかった場合、カラム中に遊離68Geが蓄積し、ブレークスルーが増加するリスクがある。添付文書では、標識用溶出に先立って溶出を実施することが注意喚起されており、定期的な使用と適切な管理が求められる。なお、ガリアファームの原体および製剤は劇薬に該当する。
セタネオ点眼液0.002%
一般名: セペタプロスト
申請者: 参天製薬株式会社
承認区分: 新有効成分含有医薬品
効能・効果: 緑内障、高眼圧症
用法・用量: 1回1滴、1日1回点眼
何が変わったのか
セタネオ点眼液0.002%は、FP受容体とEP3受容体の両方に対するアゴニスト活性を持つ新規プロスタノイド系点眼薬であり、国内外で初めて承認される新有効成分(セペタプロスト)を含有する。
従来の緑内障点眼薬(ラタノプロスト・タフルプロストなど)はFP受容体のみに作用してぶどう膜強膜流出路からの房水流出を促進するのに対し、本剤はFP受容体に加えてEP3受容体も活性化することで、MMP遺伝子の発現亢進がより強く促進されるとともに、線維柱帯流出路からの房水流出促進効果も期待される点が作用機序上の新規性である。
これにより、既存のFP受容体作動薬と比較してより持続的な眼圧下降が期待され、緑内障・高眼圧症に対する第一選択薬の新たな選択肢が加わることになる。なお、2025年4月時点で海外では未承認の薬剤である。
臨床的ポイント
1. ラタノプロストに対する非劣性
国内第III相試験(101260005LT試験、原発開放隅角緑内障または高眼圧症患者325例、3ヵ月)において、主要評価項目である投与4週後のベースラインからの平均日中眼圧変化量について、ラタノプロスト0.005%点眼液(LAT)に対する非劣性が検証された(本剤群 -5.77 mmHg vs. LAT群 -6.10 mmHg、群間差の95%CI上限 0.77 mmHg < 非劣性マージン1.5 mmHg)。すべての評価時点・測定時点において両群間に明らかな差は認められず、1日を通じた持続的な眼圧下降効果が示された。
2. 長期有効性の維持
国内長期投与試験(101260006LT試験、52週)において、本剤単独投与およびチモロール0.5%点眼液との併用投与でも、52週にわたって眼圧下降効果が維持されることが確認された。
3. 安全性プロファイル
有害事象のプロファイルは、既承認のFP受容体作動薬と概ね同様であり、本剤特有の新たな安全性懸念は示されていない。注意すべき主な有害事象として以下が挙げられる。
- 結膜充血:LATより発現割合が高い傾向があるが、いずれも軽度〜中等度、非重篤
- 睫毛・眼瞼部多毛:睫毛の成長、眼瞼のうぶ毛変化、睫毛変化、睫毛剛毛化、睫毛色素過剰
- 虹彩色素沈着:発現割合は既承認のFP受容体作動薬より高くない傾向だが、不可逆的な転帰の可能性があるため添付文書で注意喚起
- 眼瞼色素沈着
リスク管理計画上、虹彩色素沈着が重要な特定されたリスク、黄斑浮腫(無水晶体眼・眼内レンズ挿入眼での発現は否定できない)が重要な潜在的リスクとして設定されている。
4. 臨床的位置づけ
本剤はFP受容体作動薬(ラタノプロストなど)と同じく緑内障治療の第一選択薬として位置づけられ、プロスタノイド受容体関連薬以外からの切替えのみならず、既存のプロスタノイド受容体関連薬から本剤への切替えを検討する際の選択肢にもなりうるとPMDAは判断している。他のβ受容体遮断薬以外の緑内障治療薬との安全な併用については現時点での知見が限られており、製販後の情報収集が期待される。