【PMDA承認情報】2025/11/25 医薬品承認一覧
| 製品名 | 承認区分 | 効能効果 | PMDA |
|---|---|---|---|
| ベオビュ硝子体内注射用キット120mg/mL | 承認事項一部変更 | 〇中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性、増殖糖尿病網膜症 | 詳細 |
| ビラフトビカプセル50mg/カプセル75mg | 承認事項一部変更 | BRAF遺伝子変異を有する治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌 | 詳細 |
| オータイロカプセル40mg/カプセル160mg | 承認事項一部変更 | NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌 | 詳細 |
| ダラキューロ配合皮下注 | 承認事項一部変更 | 高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫における進展遅延 | 詳細 |
| アネメトロ点滴静注液500mg | 承認事項一部変更 | 嫌気性菌感染症<適応菌種> 本剤に感性のペプトストレプトコッカス属、バクテロイデス属、プレボテラ属、ポルフィロモナス属、フソバクテリウム属、クロストリジウム属、 ユーバクテリウム属<適応症>・敗血症 ・深在性皮膚感染症 ・外傷・熱傷及び手術創等の二次感染 ・骨髄炎 ・肺炎、肺膿瘍、膿胸 ・骨盤内炎症性疾患 ・腹膜炎、腹腔内膿瘍 ・胆嚢炎、肝膿瘍 ・化膿性髄膜炎 ・脳膿瘍、感染性腸炎 <適応菌種> 本剤に感性のクロストリジウム・ディフィシル <適応症> 感染性腸炎(偽膜性大腸炎を含む)、アメーバ赤痢 | 詳細 |
2025年11月 PMDA新規承認・適応追加まとめ
2025年11月に承認された医薬品の中から、臨床的に注目すべき5品目を解説する。今回の承認では、抗VEGF抗体ベオビュの増殖糖尿病網膜症への適応拡大、BRAF変異大腸癌に対するビラフトビの一次治療への道を開く適応変更、次世代TRK阻害薬オータイロのNTRK融合遺伝子陽性固形癌への展開、ダラキューロのくすぶり型多発性骨髄腫という新たな治療概念への適応追加、そしてアネメトロの小児用量追加と、いずれも臨床現場に大きなインパクトをもたらす変更が含まれる。
ベオビュ硝子体内注射用キット120mg/mL(ブロルシズマブ)
製品概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 一般名 | ブロルシズマブ(遺伝子組換え) |
| 申請者 | ノバルティスファーマ株式会社 |
| 承認区分 | 新効能医薬品・新用量医薬品 |
今回の承認で何が変わったか
今回の承認により、2つの重要な変更がなされた。
(1)増殖糖尿病網膜症(PDR)への適応追加
従来、ベオビュの眼科領域における適応は加齢黄斑変性(nAMD)と糖尿病黄斑浮腫(DME)に限られていた。今回、新たに増殖糖尿病網膜症が効能・効果に追加された。
PDRは糖尿病網膜症の最重症段階であり、脆弱な新生血管から硝子体出血や網膜剥離を引き起こし、重大な視力障害の原因となる。PDRにおける新生血管形成はVEGFの産生亢進によるものであり、抗VEGF療法の有効性が期待されてきた。本承認により、ベオビュはPDRに対する新たな硝子体内注射の治療選択肢となる。
PDRの用法・用量は、導入期として6週ごとに連続3回投与(症状により増減可)、維持期は12週ごとに1回投与(8週以上の間隔で調節可)とされている。
(2)nAMDの導入期用法の柔軟化
従来のnAMDの導入期は「4週ごとに連続3回」の一択であったが、今回「6週ごとに連続2回(症状により1回追加可)」が新たに選択できるようになった。これにより、導入期の投与回数・来院頻度を削減できる可能性があり、患者の通院負担軽減につながる。欧州では2023年6月にすでに承認済みの用法である。
臨床的ポイント
- PDR治療において抗VEGF硝子体内注射の選択肢が追加されたことで、汎網膜光凝固術との使い分け・併用の選択肢が広がる
- nAMDの導入期における6週間隔投与は、PPK/PD解析に基づく承認であり、4週間隔と同等の薬物動態学的効果が示されている
- 維持期は既承認のnAMD・DMEと同様に12週間隔投与が基本であり、投与間隔の長さはベオビュの特徴として継続される
ビラフトビカプセル50mg/カプセル75mg(エンコラフェニブ)
製品概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 一般名 | エンコラフェニブ |
| 申請者 | 小野薬品工業株式会社 |
| 承認区分 | 新効能医薬品・新用量医薬品 |
| 指定 | 希少疾病用医薬品 |
今回の承認で何が変わったか
今回の承認で、BRAF遺伝子変異陽性の大腸癌に対する使用制限が大幅に緩和された。
(1)「がん化学療法後に増悪した」の要件撤廃
従来の効能・効果は「がん化学療法後に増悪したBRAF遺伝子変異を有する治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」であり、二次治療以降に限定されていた。今回の承認では「がん化学療法後に増悪した」の文言が削除され、化学療法歴を問わず使用可能となった。これにより、BRAF V600E変異陽性大腸癌に対して一次治療からエンコラフェニブを含むレジメンを選択できるようになった。
(2)FOLFOX+セツキシマブとの3剤併用が追加
従来の併用レジメンは「セツキシマブとの2剤併用」または「ビニメチニブ+セツキシマブとの3剤併用」に限られていた。今回、新たに「セツキシマブ及び他の抗悪性腫瘍剤(FOLFOX等)との併用」が追加された。これは国際共同第III相試験(03試験)に基づくものであり、一次治療としてのエビデンスを提供するレジメンである。
臨床的ポイント
- BRAF V600E変異は大腸癌の約5〜8%に認められ、予後不良因子として知られる。従来の化学療法では十分な効果が得られにくい集団であり、一次治療から標的治療を導入できることの臨床的意義は大きい
- 国際共同第III相試験の安全性導入パートにおいて、FOLFOXとの薬物動態学的相互作用が低いことが確認されている
- 併用レジメンの選択肢が3種類に増えたことで、患者の状態や前治療歴に応じた柔軟な治療設計が可能になった
オータイロカプセル40mg/カプセル160mg(レポトレクチニブ)
製品概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 一般名 | レポトレクチニブ |
| 申請者 | ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社 |
| 承認区分 | 新効能医薬品・新用量医薬品 |
| 指定 | 希少疾病用医薬品 |
今回の承認で何が変わったか
(1)NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発固形癌への適応追加
レポトレクチニブは2024年9月に「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」で承認されていたが、今回、がん種横断的に「NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌」が新たな効能・効果として追加された。
これにより、既存のTRK阻害薬であるエヌトレクチニブ(ロズリートレク)、ラロトレクチニブ(ヴァイトラックビ)に続く、国内3番目のNTRK融合遺伝子陽性固形癌に対する治療選択肢が加わった。
(2)4歳以上の小児への適用
申請時は12歳以上が対象であったが、審査の過程で4歳以上の小児まで対象が拡大された。体重に基づく用量設定(30kg以上:160mg、30kg未満:120mg)が定められ、小児のNTRK融合遺伝子陽性固形癌に対する新たな治療選択肢が加わった。小児患者については全症例を対象とする使用成績調査が承認条件とされている。
臨床的ポイント
- レポトレクチニブはROS1およびTRKに対する次世代の選択的阻害薬であり、溶媒フロント変異を含む耐性変異にも活性を示す点が既存のTRK阻害薬との差別化ポイントである
- TRIDENT-1試験(国際共同第I/II相試験)およびCARE試験(海外第I/II相試験)の成績に基づく承認
- 用法は、1日1回14日間の導入期投与後、1日2回投与へ移行するステップアップ方式で、忍容性への配慮がなされている
- 米国(2024年6月)、EU(2025年1月)ですでにNTRK適応が承認済み
ダラキューロ配合皮下注(ダラツムマブ/ボルヒアルロニダーゼ アルファ)
製品概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 一般名 | ダラツムマブ(遺伝子組換え)/ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え) |
| 申請者 | ヤンセンファーマ株式会社 |
| 承認区分 | 新効能医薬品・新用量医薬品 |
今回の承認で何が変わったか
「高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)における進展遅延」が新たな効能・効果として追加された。
これは従来の「多発性骨髄腫」「全身性ALアミロイドーシス」に続く3つ目の適応であるが、臨床的な意義は極めて大きい。従来、くすぶり型多発性骨髄腫は経過観察が基本方針であり、症候性多発性骨髄腫(MM)への進展を待ってから治療を開始するのが標準的アプローチであった。今回の承認により、高リスクSMM患者に対してMMへの進展を遅延させる目的で、症状が出る前から積極的に治療介入することが可能になった。
臨床的ポイント
- 国際共同第III相試験(SMM3001試験)の成績に基づく承認であり、EUでも2025年7月に同適応が承認済み
- 既承認のMM適応では他の抗悪性腫瘍剤との併用が必須であるが、SMM適応ではダラキューロ単独療法として承認されている
- 投与スケジュールは段階的に間隔を延長する方式(第1-2サイクル:週1回→第3-6サイクル:2週間隔→第7サイクル以降:4週間隔)で、投与期間は最長3年間と上限が設定されている
- 高リスクSMMの定義・適切な患者選択が臨床現場での重要な課題となる。リスク層別化に基づく治療開始判断が求められる
- 「治療」ではなく「進展遅延」という効能の位置づけに注意。患者への説明においても治療目標の共有が重要となる
アネメトロ点滴静注液500mg(メトロニダゾール)
製品概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 一般名 | メトロニダゾール |
| 申請者 | ファイザー株式会社 |
| 承認区分 | 新用量医薬品 |
| 特記 | 公知申請・迅速審査 |
今回の承認で何が変わったか
従来、アネメトロの用法・用量は成人のみであり、小児に対する注射用メトロニダゾールの承認用量は国内に存在しなかった。今回、小児用量が新たに追加された。
<嫌気性菌感染症・感染性腸炎>
- 通常用量:1回7.5 mg/kgを1日3回
- 重症・難治性:1回10 mg/kgまで増量可、1日4回まで投与可
- 上限:1回500 mg
<アメーバ赤痢>
- 通常用量:1回10 mg/kgを1日3回
- 重症例:1回15 mg/kgまで増量可
- 上限:1回500 mg
臨床的ポイント
- 日本小児感染症学会からの要望に基づき、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議で検討された結果、公知申請により承認された。新たな臨床試験は実施されていない
- 米国、英国、独国、仏国、豪州で小児における嫌気性菌感染症の適応がすでに承認されており、海外エビデンスに基づく承認である
- 従来、小児に対しては適応外使用として投与されていたケースがあったが、今回の承認により添付文書に基づいた適正な小児投与が可能となった
- 小児の嫌気性菌感染症(腹腔内感染症、骨盤内感染症、脳膿瘍など)やC. difficile感染症において、正式な用量設定が整備されたことの臨床的意義は大きい