【PMDA承認情報】2026/01/05 医薬品承認一覧
| 製品名 | 承認区分 | 効能効果 | PMDA |
|---|---|---|---|
| ザズベイカプセル30mg | 承認 | うつ病・うつ状態 | 詳細 |
| リブロファズ配合皮下注 | 承認 | EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌およびEGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌 | 詳細 |
| デュピクセント皮下注300mgシリンジ/皮下注300mgペン/皮下注200mgシリンジ/皮下注200mgペン | 承認事項一部変更 | 詳細 | |
| ケレンディア錠10mg/錠20mg | 承認事項一部変更 | 慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。 | 詳細 |
| ルンスミオ皮下注5mg/皮下注45mg | 承認 | 再発又は難治性の濾胞性リンパ腫 | 詳細 |
| ユプリズナ点滴静注100mg | 承認事項一部変更 | IgG4関連疾患の再燃抑制 | 詳細 |
| 1.オプスミット小児用分散錠1mg | 承認 | 2. 同 小児用分散錠2.5mg【承認】 3. 同 錠10mg【承認事項一部変更】(2025年12月承認分)肺動脈性肺高血圧症 | 詳細 |
| エルゾンリス点滴静注1000?g | 承認 | 芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍 | 詳細 |
| テセントリク点滴静注1200mg | 承認事項一部変更 | 切除不能な胸腺癌 | 詳細 |
| アジンマ静注用1500 | 承認事項一部変更 | 先天性血栓性血小板減少性紫斑病 | 詳細 |
今回の承認では、がん領域の新薬・適応拡大が目立つほか、循環器・希少疾患領域でも重要な動きがありました。新有効成分として、うつ病・うつ状態を対象とする「ザズベイカプセル」、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌に対する「リブロファズ配合皮下注」、再発・難治性の濾胞性リンパ腫を適応とする「ルンスミオ皮下注」、さらに希少血液腫瘍BPDCNに対する「エルゾンリス点滴静注」が承認されています。適応拡大では、ケレンディア(フィネレノン)が慢性心不全の適応を新たに取得し、テセントリク(アテゾリズマブ)が切除不能な胸腺癌へ拡大されました。希少疾患領域でも、ユプリズナ(イネビリズマブ)のIgG4関連疾患への適応追加や、アジンマ(ADAMTS13製剤)の先天性血栓性血小板減少性紫斑病への拡大、オプスミット(マシテンタン)の小児用製剤の新規承認など、アンメットニーズに応える承認が相次いでいます。
ザズベイカプセル30mg(ズラノロン)
承認区分: 新有効成分含有医薬品(新規承認) 効能・効果: うつ病・うつ状態 製造販売元: 塩野義製薬 用法・用量: 通常、成人にはズラノロンとして30 mgを1日1回14日間夕食後に経口投与。再治療を行う場合は投与終了から6週間以上の間隔をあけること。
何が変わるのか
ザズベイカプセルは、既存の抗うつ薬とは全く異なる作用機序を持つ初の経口GABAA受容体機能亢進薬である。従来のSSRI・SNRI等がモノアミン仮説に基づくのに対し、本剤は神経活性ステロイドであるアロプレグナノロンの誘導体として、GABAA受容体のアロステリック部位に結合しGABA誘発電流を増強することで抗うつ作用を発揮する。
臨床現場における最大のインパクトは「効果発現の速さ」と「短期間投与」の2点に集約される。
- 早期効果発現: 国内第III相試験(A3734試験)では、投与開始3日目からプラセボ群と比較してHAM-D17合計スコアの減少傾向が認められた。主要評価項目である投与15日目のHAM-D17変化量において、本剤群はプラセボ群に対する優越性が検証された(群間差 −1.2 [95%CI: −2.3, −0.1]、p=0.0365)。SSRI等では効果判定に6〜8週間を要するのと対照的である。
- 14日間の限定投与: 依存形成のリスクを踏まえ、投与期間は14日間に限定される。長期連用は想定されておらず、急性期治療に特化した薬剤として位置づけられる。
臨床的ポイント
1. 急性期治療の新たな選択肢
本剤はうつ病患者の急性期治療における選択肢の一つとなる。既存の抗うつ薬より早期に効果発現が期待され、治療開始から寛解までの期間短縮により、患者の治療脱落リスクの低減が見込まれる。PMDA機構も「うつ病に対する急性期治療において既承認の抗うつ薬よりも早期に抗うつ作用を示すことが期待される新たな治療選択肢になる」と評価している。
2. 再燃・再発予防目的での投与は不可
本剤の位置づけは急性期治療のみであり、継続期・維持期における再燃・再発予防を目的とした投与は行わない。添付文書でもその旨が注意喚起される。
3. 繰り返し投与は可能だが慎重に
A3734試験の非盲検長期投与期では最大6回まで繰り返し投与が行われ、治療回数に関わらず同程度の症状改善傾向が認められた。ただし、6週間の休薬期間後に直ちに再投与を繰り返す被験者が多く、本剤のみの急性期治療で完全寛解に至っていない可能性も示唆されている。再燃・再発を繰り返す患者では他の治療法への切り替えを検討すべきとされた。
4. 他の抗うつ薬との上乗せ投与
SSRI・SNRI等を投与中のMDD患者に本剤を上乗せした国内第III相試験(A3736試験)では、主要評価項目の閾値を下回り有効性は明確に示されなかった。ただし、作用機序が異なることや安全性に大きな懸念がないことから、臨床現場では他の抗うつ薬に上乗せして投与する選択肢は残されている。その際はA3736試験の結果を十分に理解した上で慎重に適否を検討する必要がある。
5. 主な有害事象
傾眠(21.5%)、浮動性めまい(12.2%)が高頻度に認められた。中枢神経系の有害事象としては傾眠、めまい等の発現に留意が必要である。重篤な有害事象は少なく、治療回数の増加に伴い有害事象の発現割合が高くなる傾向は認められなかった。
6. 依存性のリスク
本剤はGABAA受容体機能を亢進させる薬剤であり、非臨床試験で精神依存性及び身体依存形成能を有すると判断されている(毒薬・劇薬指定)。投与期間を14日間に限定し、休薬期間を6週間以上とする用法が設定された背景には、依存形成リスクへの配慮がある。漫然と繰り返し行わないよう注意喚起が求められている。
7. 食事の影響・薬物相互作用
本剤は脂溶性が高く、高脂肪食摂取後にCmax及びAUCが増加するため、夕食後投与が規定されている。CYP3A4阻害剤併用時は曝露量が上昇する旨の注意喚起が必要であり、CYP3A4誘導剤(リファンピシン等)はAUCを約0.15倍に低下させるため併用注意とされた。
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リブロファズ配合皮下注(アミバンタマブ/ボルヒアルロニダーゼ アルファ)
承認区分: 新医療用配合剤としての承認
一般名: アミバンタマブ(遺伝子組換え)/ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)
製造販売元: ヤンセンファーマ株式会社
効能・効果:
- EGFR 遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
- EGFR 遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
何が変わるのか
本剤は、既承認の点滴静注製剤「ライブリバント点滴静注」(アミバンタマブ静注製剤: Ami-IV)の皮下注射版にあたる配合剤である。アミバンタマブはEGFRおよびMETの二重特異性抗体であり、ボルヒアルロニダーゼ アルファ(rHuPH20)はヒアルロン酸を分解する酵素で、皮下組織での薬剤の浸透性を高めることで大容量の皮下投与を可能にする。
これまでアミバンタマブの投与には数時間に及ぶ点滴静注が必要であり、infusion reactionの発現率も高かった(Ami-IV群で66.2%)。今回承認された皮下注製剤では、infusion reactionの発現割合が**13.1%**と大幅に低減し、投与時間の短縮も実現された。これにより、患者負担の軽減と医療機関の人的資源の効率化が期待される。
臨床的ポイント
有効性: 主要な第III相国際共同試験(PALOMA-3試験)では、Osi及び白金系抗悪性腫瘍剤による治療後に増悪した EGFR 遺伝子変異陽性NSCLCを対象に、Ami-SC/Laz群とAmi-IV/Laz群が比較された。主要評価項目であるアミバンタマブの曝露量(投与前濃度およびAUC)について、皮下注群の点滴静注群に対する非劣性が示された。副次評価項目の奏効率はAmi-SC/Laz群30.1%、Ami-IV/Laz群32.5%で群間差は認められなかった。PFS中央値はAmi-SC/Laz群6.11カ月、Ami-IV/Laz群4.30カ月(HR 0.84 [95%CI: 0.64, 1.10])であり、皮下注群で劣る傾向はなかった。OSのHRは0.62(95%CI: 0.42, 0.92)と、むしろ皮下注群で良好な傾向を示した。
また、PALOMA-2試験では化学療法未治療の EGFR 遺伝子変異陽性NSCLCを対象にラゼルチニブとの併用で奏効率64〜68%が得られており、EGFRex20挿入変異陽性NSCLCに対するカルボプラチン+ペメトレキセドとの併用でも奏効率63%が示されている。
用法: A法(カルボプラチン+ペメトレキセドとの併用、3週間サイクル)とB法(ラゼルチニブメシル酸塩との併用、4週間サイクル)の2レジメンがあり、体重80 kg未満/以上で用量が異なる。EGFRex20挿入変異陽性にはA法、EGFR 遺伝子変異(エクソン20挿入変異を除く)陽性にはA法又はB法を使用する。
安全性: PALOMA-3試験の主な有害事象は、爪囲炎(56.3%)、低アルブミン血症(47.6%)、発疹(46.6%)、ざ瘡様皮膚炎(32.5%)など。重要な特定されたリスクとしてinfusion reaction、ILD、静脈血栓塞栓症(Laz併用時)、重度の皮膚障害が挙げられている。Laz併用投与時には静脈血栓塞栓症の発症抑制のため、投与開始後4カ月間はアピキサバン1回2.5 mgのBID経口投与が必要となる。
臨床現場へのインパクト: 本剤の承認により、アミバンタマブの投与が点滴静注から皮下注射へ切り替え可能となった。infusion reactionのリスク低減、投与時間の大幅短縮、長時間の点滴静注・観察の回避など、患者・医療者双方のベネフィットは大きい。静注製剤からの切替えも安全性上の重大な問題なく可能と評価されている。NCCN、NCI-PDQ、ESMOガイドラインでもAmi-IV投与が推奨されている対象患者に対し、同じ臨床的位置付けで使用できる。
デュピクセント皮下注(デュピルマブ) — 小児気管支喘息への適応拡大
承認区分: 承認事項一部変更(新用法・用量医薬品)
効能・効果: 既存の効能・効果(アトピー性皮膚炎、結節性痒疹、特発性の慢性蕁麻疹、気管支喘息、COPD、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎)に加え、今回の変更により気管支喘息において6歳以上12歳未満の小児への用法・用量が追加された。
今回の承認で何が変わったか
デュピクセント(デュピルマブ)の気管支喘息に対する適応は、従来「成人及び12歳以上の小児」が対象であった。今回の承認事項一部変更により、6歳以上12歳未満の小児喘息患者にも使用可能となった。対象は「既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者」に限定される。
これにより、中用量又は高用量のICSとその他の長期管理薬を併用してもコントロール不良な6〜11歳の小児重症喘息患者に対して、新たな生物学的製剤の選択肢が加わったことになる。
追加された用法・用量
6歳以上12歳未満の小児における気管支喘息に対する用法・用量は、体重に応じて以下のとおり設定された。
| 体重 | 用法・用量 |
|---|---|
| 15 kg以上30 kg未満 | 1回300 mgを4週間隔で皮下投与 |
| 30 kg以上 | 1回200 mgを2週間隔で皮下投与 |
なお、成人・12歳以上の小児における用法・用量(初回600 mg、その後1回300 mgを2週間隔)とは異なり、負荷投与は設定されていない。これは、喘息が慢性炎症性疾患であり基本治療への追加療法として使用される薬剤であること、成人喘息患者での解析から負荷投与が治療効果の維持に影響を及ぼさないことが確認されたためである。
臨床的ポイント
- 臨床的位置づけ: 中用量又は高用量のICSとその他の長期管理薬を併用しても喘息増悪をきたす6歳以上12歳未満の小児に対する追加治療の選択肢となる。既存の生物学的製剤(オマリズマブ、メポリズマブ等)はいずれも高用量ICSとの併用下での使用に限定されているが、デュピクセントは中用量又は高用量のICSとの併用下で喘息増悪の抑制効果が示された点が特徴的である。
- 有効性: 海外第III相EFC14153試験(6〜11歳、402例)において、2型炎症性喘息集団での重度喘息増悪の年間発現率はプラセボ群に対する本剤群の優越性が検証された(発現率比 0.407、p<0.0001)。呼吸機能(ppFEV₁)やACQ-7-IAスコアについてもプラセボ群を上回る改善傾向が認められた。国内第III相LTS14424日本サブ試験(13例)でも海外試験と同程度の成績が得られている。
- 2型炎症バイオマーカーの重要性: 12歳以上の喘息患者と同様に、小児患者においても2型炎症に関連するバイオマーカー(血中好酸球数、FeNO等)の値が高い患者で本剤の有効性がより大きい傾向が認められている。投与対象の適切な選択のため、バイオマーカーの値を考慮した適応患者選定が求められる。
- 安全性: 6歳以上12歳未満の小児喘息患者における安全性プロファイルは、12歳以上の喘息患者と比較して明らかに異なる傾向は示されていない。主な有害事象は上咽頭炎、上気道感染、注射部位紅斑等であった。好酸球増加症を伴う臨床症状については、引き続き重要な潜在的リスクとして注意が必要である。
ケレンディア錠10mg/錠20mg(フィネレノン)
承認区分: 承認事項一部変更(新効能医薬品・新用量医薬品)
効能・効果(追加): 慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
今回の承認で何が変わるか
ケレンディア(フィネレノン)はBayer社が創製した非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬であり、国内では2022年3月に「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(DKD)」で承認済みである。今回の一部変更承認により、「慢性心不全」が新たな効能・効果として追加された。
これにより、フィネレノンはDKD領域に加えて心不全領域でも使用可能となり、HFpEF(LVEF preserved)およびHFmrEF(LVEF mildly reduced)を含むLVEF 40%以上の慢性心不全患者に対する新たな治療選択肢が加わった。
臨床的背景と意義
HFmrEFおよびHFpEFに対しては、HFrEFと異なり心血管イベントの発現抑制効果が示された治療薬が長らく存在せず、治療選択肢は限られてきた。近年SGLT2阻害薬の有効性が示されてきたものの、HFmrEFおよびHFpEF患者において既存治療により十分な予後改善が認められているとは言えない状況であった。
フィネレノンはMRの活性化を阻害することにより、心血管系の組織の炎症および線維化を抑制し心保護作用を示す。既存のステロイド型MRA(スピロノラクトン、エプレレノン)とは異なる作用機序を有しており、慢性心不全の標準的な治療を受けているHFpEF・HFmrEF患者に対する治療選択肢の一つとして臨床現場に提供する意義がある。
根拠となった臨床試験(20103試験 / FINEARTS-HF)
HFpEFまたはHFmrEF患者を対象とした国際共同第III相試験(約6,000例、うち日本人286例)において、以下の結果が示された。
- 主要評価項目(心血管死および心不全イベントの複合エンドポイント):本薬群のプラセボ群に対する優越性が示された(発現率比 0.84 [95%CI: 0.74, 0.95]、p=0.0072)
- 心不全イベント(初発及び再発):発現率比 0.82 [95%CI: 0.71, 0.94]
- 心血管死:ハザード比 0.93 [95%CI: 0.78, 1.11](有意差なし)
- 日本人集団でも全体集団と一貫した結果が得られた(心血管複合エンドポイント発現率比 0.76 [95%CI: 0.45, 1.28])
用法・用量のポイント
慢性心不全に対する用法・用量は、DKDとは異なり最大用量40 mgまで増量する点が特徴的である。
| eGFR | 開始用量 | 維持用量(目標) |
|---|---|---|
| 60 mL/min/1.73 m²以上 | 20 mg 1日1回 | 40 mg 1日1回 |
| 25以上60 mL/min/1.73 m²未満 | 10 mg 1日1回 | 20 mg 1日1回 |
- 投与開始から4週間後を目安に血清カリウム値・eGFRに応じて増量する
- eGFR 25 mL/min/1.73 m²未満の患者への投与は禁忌(DKDの既承認効能・効果と同様)
- 20 mgまたは40 mgを投与する際に市販製剤10 mg錠を使用しないこと(10 mg錠と20 mg錠の生物学的同等性は示されていない)
安全性の注意点
- 高カリウム血症:本薬群で9.7%(プラセボ群4.2%)と発現率が高い。血清カリウム値およびeGFRに基づく用量調節基準が設定されており、投与開始・増量から4週間後、その後も定期的に血清カリウム値とeGFRを測定し用量を調節する必要がある
- 腎機能悪化:投与初期にeGFRが低下する可能性がある(血行動態の変化を反映したもので、腎臓の構造的異常とは関連しない)。投与開始後も定期的にeGFRを測定し投与継続可否を判断する
- LVEFの低下した(HFrEF)慢性心不全患者における有効性及び安全性は確立していない点に留意が必要
まとめ
フィネレノンの慢性心不全への適応追加により、利尿薬・SGLT2阻害薬・ACE阻害薬/ARB/ARNI・β遮断薬といった標準治療に加え、HFpEF・HFmrEF患者に対する非ステロイド型MRAという新たな薬物療法の選択肢が加わった。特にHFpEFに対する有効な治療薬が限られる中で、心不全イベントの抑制を示した薬剤として臨床的意義は大きい。処方時には血清カリウム値とeGFRのモニタリングを徹底し、DKDとは用量設定が異なる点(最大40 mg)に注意が必要である。
ルンスミオ皮下注5mg/皮下注45mg
一般名: モスネツズマブ(遺伝子組換え)/申請者: 中外製薬/承認区分: 新投与経路医薬品
効能又は効果: 再発又は難治性の濾胞性リンパ腫
今回の承認で何が変わるか
ルンスミオ(モスネツズマブ)は、ヒトCD3及びCD20に対する抗原結合部位を有するT細胞誘導型二重特異性抗体である。本邦では2024年12月に点滴静注製剤(ルンスミオ点滴静注1mg/30mg)が「再発又は難治性の濾胞性リンパ腫」の効能で既に承認されている。今回の承認は、同一有効成分の皮下注製剤の追加であり、投与経路の選択肢が広がる。
IV製剤では点滴静注に長時間を要していたのに対し、SC製剤は短時間での投与が可能となり、患者・医療従事者双方の負担軽減が期待される。さらに、本薬の特徴的な有害事象であるサイトカイン放出症候群(CRS)の発現頻度がIV投与と比較してSC投与で低い傾向が示されたことも、臨床的に重要なポイントである。
用法・用量
21日間を1サイクルとし、1サイクル目は1日目に5mg、8日目及び15日目に45mgを皮下投与する。2サイクル目以降は1日目に45mgを最大8サイクルまで皮下投与する。8サイクル終了時にCRが得られた患者は投与を終了し、病勢安定又は部分奏効が得られた患者は計17サイクルまで投与を継続する。
臨床成績のポイント
有効性の主要な評価根拠は、海外第I/II相試験(GO29781試験)のF2 FL RP2Dコホート(SC投与、94例)と、B11 FL RP2Dコホート(IV投与、90例)の比較である。
- SC投与のCR率: 58.5%(95%CI: 47.9, 68.6) vs IV投与のCR率: 57.8%(95%CI: 46.9, 68.1)で、両投与経路間に明確な差は認められなかった
- PKの主要評価項目であるAUC0-84d及びCtrough, C3の非劣性が示され、SC投与時のPKはIV投与時と概ね同程度であることが確認された
- 国内第I相試験(JO40295試験)の3L+FL SCコホート(5例)では、CR率100%が得られた
安全性の注意点
SC投与時に特に注意を要する有害事象として、CRS、神経学的事象(ICANSを含む)、感染症、血球減少、TLS及び腫瘍フレアがある。
| 有害事象 | SC投与(94例) | IV投与(90例) |
|---|---|---|
| CRS | 30.9% | 45.6% |
| 注射部位反応 | 60.6% | 0% |
| Grade 3以上の有害事象 | 51.1% | 70.0% |
SC投与ではIV投与と比較してCRSの発現割合が低下する一方、注射部位反応の発現率が高い点に留意が必要である。注射部位反応はいずれもGrade 1又は2であり、管理可能と判断されている。
CRSの予防として、1サイクル目(1、8及び15日目)の投与前に副腎皮質ホルモン剤を前投与すること、また必要に応じて解熱鎮痛剤や抗ヒスタミン剤を投与することが添付文書に記載されている。少なくとも第1サイクル第1日目の5mg投与後48時間は入院管理が必要とされている。
臨床的位置付け
本薬SC投与は、2レジメン以上の前治療歴を有する再発又は難治性のFLに対し、IV投与製剤に代わる新たな治療選択肢として位置付けられる。CAR-T細胞療法であるチサゲンレクルユーセルは実施可能な施設が限定的であることを踏まえると、本薬SC投与はCAR-T細胞療法へのアクセスが困難な患者等の治療選択肢となることが想定される。IV製剤との使い分けは、CRS発現リスク、注射部位反応、患者の通院負担等を総合的に考慮して個々の症例で判断されることになる。
ユプリズナ点滴静注100mg(イネビリズマブ)
承認区分: 承認事項一部変更(新効能医薬品)
効能・効果: IgG4関連疾患の再燃抑制(追加)
今回の承認で何が変わるか
ユプリズナ(イネビリズマブ)は、CD19を標的とするヒト化IgG1モノクローナル抗体である。2021年3月に「視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防」で承認されており、今回、IgG4関連疾患の再燃抑制が新たな効能・効果として追加された。用法・用量に変更はない。
IgG4関連疾患(IgG4-RD)は指定難病であり、血中IgG4高値に加え、リンパ球とIgG4陽性形質細胞の著しい浸潤・線維化により全身の臓器に腫大や結節を認める原因不明の疾患である。再燃と寛解を繰り返し、約60%の患者で診断時に不可逆性の臓器障害が認められる。現在、本邦においてIgG4-RDに対する承認薬はなく、ステロイドが第一選択薬とされているが、再燃時の確立した治療法はなかった。
今回の承認により、IgG4関連疾患に対する初の承認薬が誕生し、ステロイド依存からの脱却を含めた新たな治療選択肢が加わる。 これはIgG4-RD治療において画期的な変化である。
臨床試験の結果
根拠となったのは国際共同第III相試験(MITIGATE試験)である。IgG4-RD患者135例(日本人27例を含む)を対象に、無作為化二重盲検プラセボ対照群間比較試験として実施された。
主要評価項目である「フレア発現までの期間」の結果は以下のとおり:
- フレア発現率: プラセボ群 59.7%(40/67例)に対し、本薬群 10.3%(7/68例)
- ハザード比: 0.13 [95%CI: 0.06, 0.28](p < 0.0001)
- 日本人集団: プラセボ群 57.1%(4/7例)に対し、本薬群 0%(0/20例)、ハザード比 0.0
患者背景別のサブグループ解析においても、年齢・性別・血清IgG4濃度・活動性の状態・罹患臓器数によらず、一貫して本薬群で良好な結果が認められた。
用法・用量
通常、成人には、イネビリズマブとして1回300 mgを初回、2週後に点滴静注し、その後、初回投与から6カ月後に、以降6カ月に1回の間隔で点滴静注する(既承認と同一)。
安全性のポイント
- 主な副作用: リンパ球減少症(本薬群 8.8%)が最も多い。大半はGrade 2以下
- 注目すべき有害事象: 注入に伴う反応、過敏症、血球減少症、重篤な感染症及び日和見感染、悪性腫瘍
- 重篤な副作用として、アナフィラキシー反応およびCOVID-19が各1例で認められたが、いずれも回復
- 死亡は認められなかった
- 既承認のNMOSD適応と同様、定期的な血液検査による血球減少症のモニタリングが重要
- B細胞枯渇に伴う感染リスクに注意し、帯状疱疹等の日和見感染にも留意が必要
臨床現場へのインパクト
IgG4関連疾患はステロイド減量・中止後の再燃率が高く(40〜76%と報告)、長期ステロイド投与に伴う副作用が臨床上の大きな課題であった。本薬はB細胞を標的とした分子標的療法として、ステロイド依存からの離脱やステロイドフリーの寛解維持を可能にする治療選択肢となる。希少疾病用医薬品に指定されており、再審査期間は10年。
オプスミット小児用分散錠1mg / 2.5mg / 錠10mg(マシテンタン)
承認区分: 小児用分散錠1mg・2.5mg=新規承認、錠10mg=承認事項一部変更(2025年12月)
効能・効果: 肺動脈性肺高血圧症(PAH)
申請者: ヤンセンファーマ株式会社
今回の承認で何が変わるか
オプスミット錠10mg(マシテンタン)は2015年に成人のPAHを対象として承認されたエンドセリン受容体拮抗薬(ERA)であるが、今回の承認により生後3カ月以上の小児への適応が新たに加わった。小児PAH領域において、ERAとしてマシテンタンが体重・年齢区分に応じた用量で使用可能になったことは、治療選択肢の拡充として大きな意義がある。
具体的には以下の3点が臨床現場に影響する。
- 小児用分散錠(1mg・2.5mg)の新規承認:水に分散させて経口投与できる小児用製剤が利用可能になり、錠剤を服用できない低年齢の患児にも対応可能となった
- 錠10mgへの小児用法・用量の追加(一変承認):体重50kg以上の小児には、成人と同じ10mg錠を1日1回投与する用法が追加された
- 生後3カ月からの投与が可能:国内の他のERA(ボセンタン:1歳以上、アンブリセンタン:8歳以上)と比較して、より低年齢から投与可能な選択肢となった
用法・用量のポイント
年齢および体重区分に応じた用量設定が特徴で、1日1回投与である。
| 年齢・体重区分 | 1回量 |
|---|---|
| 3カ月以上、6カ月未満 | 1.0 mg |
| 6カ月以上、2歳未満 | 2.5 mg |
| 2歳以上、体重15kg未満 | 3.5 mg |
| 2歳以上、15kg以上25kg未満 | 5.0 mg |
| 2歳以上、25kg以上50kg未満 | 7.5 mg |
| 2歳以上、体重50kg以上 | 10 mg |
小児用分散錠は少量の水に分散させて経口投与する。体重50kg以上の小児には既存の錠10mgを使用する。
臨床試験成績
承認の根拠となった主な臨床試験は以下の2試験である。
- 国内第III相試験(PAH3001試験):日本人小児PAH患者7例を対象とした非盲検非対照試験。主要評価項目である投与24週時のPVRI(肺血管抵抗指数)のベースラインからの変化率は、幾何平均値59.43%(両側95%CI:32.019〜110.303)であり、事前に設定した成功基準(81.6%以下)を達成した。7例中4例で十分なPVRIおよびmPAPの低下が認められた。
- 海外第III相試験(AC-055-312試験):生後1カ月以上18歳未満のPAH患者148例(本薬群73例)を対象とした非盲検無作為化比較試験。疾患進行イベントまでの期間に対するハザード比は0.828(両側95%CI:0.460〜1.492)であった。
臨床的位置付け
PMDAは、本薬の小児PAH治療における位置付けは成人と同様に初期併用療法で使用されるERAの一つとなると判断している。国内の診療ガイドラインにおいて、ERA の小児PAH治療薬としての推奨クラスはIIa、エビデンスレベルはCとされており、作用機序の異なる肺血管拡張薬の早期併用が推奨される中で、マシテンタンが新たな選択肢となる。
成人を対象としたSERAPHIN試験(AC-055-302試験)では、ボセンタンと比較して肝機能への影響が少ないことが示されており、小児においても長期服用の観点から利点となりうる。
安全性の注意点
- 小児での安全性プロファイルは成人と大きく異ならないが、成人と比較して感染症の発現割合がやや高い傾向が認められた(上気道感染、上咽頭炎など)。いずれも本薬との因果関係は否定されている
- 本薬に特徴的な有害事象である貧血/ヘモグロビン値減少、血圧低下、肝機能障害についても、小児と成人で大きく異なる傾向は認められなかった
- WHO機能分類クラスIの患者における有効性及び安全性は確立していない
- PAH治療に十分な知識及び経験を有する医師のもとでの投与が求められる
- 劇薬に指定されている
エルゾンリス点滴静注1000μg
承認区分: 新有効成分含有医薬品(新規承認)/希少疾病用医薬品
一般名: タグラキソフスプ(遺伝子組換え)
効能・効果: 芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)
用法・用量: 通常、成人及び2歳以上の小児には、タグラキソフスプとして12 μg/kgを1日1回5日間15分かけて点滴静注し、16日間休薬する。この21日間を1サイクルとし、投与を繰り返す。
今回の承認で何が変わるか
BPDCN(芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍)は、形質細胞様樹状細胞由来の極めて稀な造血器悪性腫瘍であり、皮膚病変を初発症状とすることが多いが、骨髄・末梢血・リンパ節など多臓器に浸潤し予後不良である。これまで国内にはBPDCNを適応とする承認薬が存在せず、AMLに準じた化学療法等が行われてきたが、標準的な治療法は確立されていなかった。
本剤は、BPDCN細胞表面に高発現するIL-3Rαを標的とし、ジフテリア毒素(DT)の触媒ドメインとヒトIL-3の全アミノ酸配列を融合した遺伝子組換えタンパク質である。IL-3Rαに結合して細胞内に取り込まれた後、遊離したDT触媒ドメインがタンパク合成を阻害し、腫瘍増殖抑制作用を示す。国内初かつBPDCNに対する初の承認薬であり、海外では2018年に米国、2021年にEUで承認されており、2025年7月時点で41の国・地域で承認されている。
臨床的ポイント
- 有効性: 国内第Ⅰ/Ⅱ相試験(P1-02試験)において、未治療BPDCN患者のCR+CRc率はIRC判定で57.1%(90%CI: 22.5〜87.1、4/7例)であり、事前に設定された閾値10%を上回った。海外第Ⅰ/Ⅱ相試験(0114試験)のステージ3でもCR+CRc率は53.8%(95%CI: 25.1〜80.8、7/13例)と一定の有効性が示された
- 安全性上の注意: 特に注意を要する有害事象として、毛細血管漏出症候群(CLS)、infusion reaction・過敏症、骨髄抑制、肝機能障害、腫瘍崩壊症候群(TLS)、腎機能障害が挙げられている。全有害事象発現率は100%、Grade 3以上の有害事象は84〜100%と高頻度であり、造血器悪性腫瘍の治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとでの使用が求められる
- CLSへの対応: CLSは重篤化すると致死的となりうるため、各サイクルの投与前にアルブミン値を確認し、適切な管理が不可欠である
- 免疫原性: 投与後にほぼ全例で抗タグラキソフスプ抗体が発現し、サイクル経過に伴い曝露量の低下が認められるが、現時点で抗体産生による有効性・安全性への明確な影響は示されていない
- 承認条件: 小児患者は全例調査の対象とされ、小児の造血器悪性腫瘍に十分な知識・経験を持つ医師のもとでの投与体制が求められている
テセントリク点滴静注1200mg(アテゾリズマブ)
承認区分: 承認事項一部変更(新効能・新用量)
効能・効果: 切除不能な胸腺癌
希少疾病用医薬品(指定番号:(R7薬)第684号)
今回の承認で何が変わるか
テセントリク(アテゾリズマブ)に「切除不能な胸腺癌」の効能・効果が追加された。これにより、免疫チェックポイント阻害薬として初めて胸腺癌に対する適応を持つ薬剤が国内で使用可能となる。
従来、切除不能な胸腺癌に対する一次治療としては、国内診療ガイドライン(2024年版)でCBDCA/PTX投与またはCBDCA及びアムルビシンの併用投与が「弱い推奨」とされていたが、免疫チェックポイント阻害薬の記載はなかった。今回の承認により、カルボプラチン及びパクリタキセルとの併用によるアテゾリズマブ投与が、化学療法歴のない切除不能な胸腺癌患者に対する一次治療の新たな選択肢として位置づけられる。
用法・用量
カルボプラチン及びパクリタキセルとの併用において、成人にはアテゾリズマブとして1回1,200 mgを3週間間隔で点滴静注する。初回投与時は60分かけて投与し、忍容性が良好であれば2回目以降は30分まで短縮できる。
併用薬の用法・用量は以下のとおり:
- CBDCA: 1回AUC 6 mg・min/mL相当量を30分以上かけて点滴静注(3週間間隔)
- PTX: 1回200 mg/m²を3時間かけて点滴静注(3週間間隔)
臨床的ポイント
有効性(Marble試験:国内第II相試験)
化学療法歴のない切除不能な胸腺癌患者48例を対象に、本薬/CBDCA/PTXを4〜6回投与後、本薬単独投与を継続するレジメンで実施された。
- 奏効率(主要評価項目): 56.3%(95%CI: 41.2〜70.5%) — 事前設定の閾値奏効率30%の95%CI下限値を上回った
- 奏効期間中央値: 6.4カ月(95%CI: 4.1, 未達)
- 病理組織型別の部分集団間で奏功率に明確な差異はなく、幅広い組織型で効果が期待できる
- PD-L1発現状況によらず奏効が認められており、PD-L1検査の結果にかかわらず投与が推奨される
安全性
- 全有害事象: 100%、Grade 3以上: 77.1%、重篤な有害事象: 41.7%
- 主な有害事象: 末梢性感覚ニューロパチー(87.5%)、脱毛症(85.4%)、便秘(68.8%)、貧血(54.2%)
- 主なGrade 3以上の有害事象: 白血球数減少・好中球数減少(各29.2%)、好中球減少症(27.1%)、発熱性好中球減少症(22.9%)
- 重篤な有害事象として斑状丘疹状皮疹(8.3%)、発熱性好中球減少症(16.7%)に注意
- Grade 3以上の免疫関連有害事象は32例(66.7%)に認められたが、既承認の効能・効果に係る臨床試験と比較して明らかに高い傾向は認められなかった
臨床現場での注意点
- 術前補助療法としての有効性及び安全性は確立していない — 効能・効果に関連する注意として明記されている
- 胸腺癌では重症筋無力症を含む自己免疫疾患の顕在化リスクがあり、PD-1抗体医薬品(ペムブロリズマブ)の臨床試験でも報告されている。免疫関連有害事象の発現には十分な注意が必要
- 併用するCBDCA又はPTXの休薬・減量等の適切な対応が求められるため、がん化学療法に十分な知識と経験を持つ医師のもとで使用すること
- 再審査期間は10年
アジンマ静注用1500(アパダムターゼ アルファ/シナキサダムターゼ アルファ)
承認区分: 承認事項一部変更(新用量医薬品)
効能・効果: 先天性血栓性血小板減少性紫斑病(cTTP)
申請者: 武田薬品工業株式会社
今回の変更点
アジンマ静注用1500は、遺伝子組換えADAMTS13製剤であり、2024年3月に成人および12歳以上の小児に対する先天性TTPの効能・効果で承認されている。今回の一部変更承認により、12歳未満の小児にも用法・用量が拡大された。従来の「成人及び12歳以上の小児」という年齢制限が撤廃され、年齢を問わず投与可能となった点が最大の変更である。
用法・用量のポイント
- 定期補充療法: 1回40国際単位/kgを隔週投与(患者の状態に応じて週1回投与も可)
- 急性増悪時: 1日目に40国際単位/kg、2日目に20国際単位/kg、3日目以降は1日1回15国際単位/kgを投与
用法・用量は12歳以上の患者と同一であり、体重あたりの投与量で年齢によるPKの臨床的に意義のある差は認められていない。
臨床的ポイント
小児cTTPにおけるアンメットニーズへの対応: 先天性TTPはADAMTS13の重度の欠乏に起因する希少疾患であり、現在の標準治療は血漿製剤による補充療法である。しかし血漿製剤ではADAMTS13の補充量が安定せず不十分であること、過敏症反応により治療が制限されること等が課題であった。特に小児では体格が小さいために血漿量の制限によりADAMTS13の補充が不十分となるリスクが高く、より安全で有効な治療選択肢が求められていた。
臨床試験成績: 国際共同第III相試験(281102試験)および第IIIb相継続投与試験(TAK-755-3002試験)の結果に基づく。12歳未満の患者において、定期補充療法下での急性TTPイベントの発現は極めて少なく、急性増悪時の一時補充療法でも本薬投与後速やかに血小板数の増加およびLDHの減少が認められ、ADAMTS13活性は正常レベルに回復した。
安全性: 12歳未満と12歳以上の患者で有害事象の発現状況に明らかな違いは認められなかった。過敏症反応および中和抗体の検出は認められていない。重要な特定されたリスクとして「ショック、アナフィラキシー」、重要な潜在的リスクとして「インヒビターの発生」が設定されている。
在宅自己投与: TAK-755-3002試験において、患者または介護者による在宅自己投与の安全性が確認されており、適切なトレーニングを受けた上での在宅投与が可能である。
承認条件: 国内での治験症例が極めて限られていることから、全症例を対象とした使用成績調査の実施が求められている。
臨床現場へのインパクト
本承認により、これまで血漿製剤に頼らざるを得なかった12歳未満の小児cTTP患者に対して、遺伝子組換えADAMTS13製剤という新たな治療選択肢が提供される。血漿製剤と比較して安定したADAMTS13活性の補充が期待でき、血漿由来の感染リスクや過敏症反応のリスクを回避できる意義は大きい。新生児を含む2歳未満の患者についても投与対象とされており、先天性TTPの全年齢層をカバーする初の遺伝子組換えADAMTS13製剤となる。