【PMDA承認情報】2026/01/19 医薬品承認一覧
| 製品名 | 承認区分 | 効能効果 | PMDA |
|---|---|---|---|
| カルボプラチン注射液50mg 「NK」/注射液150mg「NK」/注射液450mg「NK」 | 承認事項一部変更 | 卵巣癌 | 詳細 |
| アップニークミニ点眼液 0.1% | 承認 | 後天性眼瞼下垂 | 詳細 |
| ジニイズ点滴静注500mg | 承認 | 切除不能な進行・再発の肛門管扁平上皮癌 | 詳細 |
| ウステキヌマブBS皮下注45mgシリンジ「ニプロ」 | 承認 | 既存治療で効果不十分な下記疾患尋常性乾癬、乾癬性関節炎 | 詳細 |
今回の承認では、希少がん領域と眼科領域で注目すべき新薬が登場しました。ジニイズ(retifanlimab)は、切除不能な進行・再発の肛門管扁平上皮癌に対する新たな治療選択肢として承認され、限られていた同疾患の薬物療法に新たな道を開きます。眼科領域では、アップニークミニ点眼液が後天性眼瞼下垂に対する薬物治療として承認され、外科的介入に頼らない選択肢が加わりました。また、ウステキヌマブBS「ニプロ」のバイオシミラー承認により、乾癬治療における患者の経済的負担軽減が期待されます。このほか、カルボプラチン注射液「NK」が卵巣癌に関する承認事項一部変更を取得しています。
カルボプラチン注射液50mg「NK」/150mg「NK」/450mg「NK」
承認区分: 承認事項一部変更(新投与経路医薬品)
効能・効果: 卵巣癌
今回の変更点
従来、カルボプラチン「NK」の卵巣癌に対する投与経路は点滴静注(IV)のみが承認されていた。今回の一変承認により、パクリタキセル(PTX)との併用下における「腹腔内投与(IP投与)」が新たに追加された。
具体的には、卵巣癌の用法・用量に以下が加わった:
- (2)パクリタキセルとの併用において、通常、成人にはカルボプラチンとして、1日1回AUC 6 mg・min/mL相当量を腹腔内に注入し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。
従来の(1)点滴静注による投与(1日1回300〜400 mg/m²)はそのまま維持されている。
臨床的背景
本承認の根拠となったのは、日本を中心に実施された国際共同第II/III相試験(iPocc試験、NEJM Evidence 2023; 2: EVIDoa2200225)である。化学療法歴のないFIGO進行期II〜IV期の上皮性卵巣癌・卵管癌・原発性腹膜癌患者を対象とし、PTXのIV投与との併用で第1日目にカルボプラチンAUC 6 mg・min/mL相当量をIP投与又はIV投与し、6〜8サイクル継続するデザインで実施された。
主要結果として、PFS中央値はIP投与群23.5カ月 vs IV投与群20.7カ月であり、IP投与に対するIV投与のPFSのハザード比は0.83(95%CI: 0.69, 0.99)と、IP投与群で有意な延長が示された。
臨床現場へのインパクト
- 新たな投与経路の選択肢: 卵巣癌の初回手術後の化学療法において、従来のIV投与に加えてIP投与が公式に選択可能となった。NCCNガイドラインでも”Useful in Certain Circumstances”の位置付けで推奨されており、国内診療ガイドライン(2025年版)でも実施可能な体制がある施設でのIP化学療法が提案されている
- 対象患者: 初回手術後の卵巣癌患者に対するNACとしても推奨可能。ただし、白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌患者に対するIP投与の推奨根拠はない
- BV併用時の注意: PTXに加えてベバシズマブ(BV)を併用する場合、GOG252試験の結果からIP投与がIV投与と比較してPFS又はOSを改善しないことが示唆されており、当該併用投与を推奨できる根拠はないとされた
安全性のポイント
IP投与に際しては、IV投与における既知の事象に加えて以下に注意が必要:
- 腹腔ポート関連の有害事象(iPocc試験ではIP投与群11.8%に認められた)
- カテーテル関連感染症(IP投与群10.1% vs IV投与群0.7%)
- 腟吻合部漏出(IP投与群5.7% vs IV投与群0.3%)
用法・用量に関連する注意(腹腔内投与)
- 投与対象・投与期間等について、国内外の最新のガイドライン等を参考にすること
- 生理食塩液を1,000〜1,500 mLを目安に腹腔内に注入した後、本薬を腹腔内に注入すること
- 本薬の投与にあたっては、まず10 mL程度を注入し、過敏症状が発現しないことを確認してから残りの全量を注入することが望ましい
アップニークミニ点眼液 0.1%
一般名: オキシメタゾリン塩酸塩|申請者: 参天製薬|承認区分: 新効能・新用量医薬品
効能・効果
後天性眼瞼下垂
用法・用量
通常、成人には、1回1滴、1日1回点眼する。
今回の承認で何が変わるか
本邦において、後天性眼瞼下垂に対して承認された初めての薬物治療である。従来、後天性眼瞼下垂の治療は眼瞼下垂の重症度や挙筋機能に応じた外科手術が唯一の選択肢であり、承認された医薬品は存在しなかった。本剤の登場により、手術を希望しない患者や手術待機中の患者に対して、点眼という非侵襲的な治療選択肢が加わることになる。
オキシメタゾリンは従来、0.05%含有の点鼻薬として一般用医薬品で販売されている成分であり、α₁およびα₂アドレナリン受容体アゴニストとして作用する。眼瞼挙上に関与するミュラー筋上のα受容体に作用し、ミュラー筋を収縮させることで上眼瞼を挙上させる機序である。米国では2020年に0.1%点眼液が成人の後天性眼瞼下垂に対して既に承認されている。
臨床的ポイント
- 国内第III相試験(101380001LT試験):後天性眼瞼下垂患者336例を対象としたプラセボ対照二重遮蔽比較試験で、主要評価項目である投与14日後のMRD-1(瞳孔中心から上眼瞼縁までの距離)のベースラインからの変化量において、本剤QD群・BID群ともにプラセボ群に対する優越性が示された(p < 0.0001)
- 上方視野の改善:MRD-1が0.5 mm変化するごとに上方視野として約5度の改善が期待され、QD群で約6度、BID群で約4度の改善が得られたと推定される
- 手術回避の可能性:外科手術適応基準であるMRD-1が2 mmを超えた被験者の割合は、各評価時点でプラセボ群を上回り、本剤点眼により手術が不要となる程度まで改善する患者が一定程度存在することが示された
- QDとBIDの差:1日1回(QD)と1日2回(BID)で有効性に明確な差は認められず、用法は1日1回と設定された
- 長期投与でも効果減弱なし:6カ月間の継続投与でMRD-1の改善効果が減弱する傾向は認められなかった
安全性・服薬指導上の注意
- 主な有害事象はドライアイ、点状角膜炎、季節性アレルギー、浮動性めまい、腹部不快感など。いずれも軽度で回復性あり
- α₁受容体の脱感作による反応性低下やリバウンド現象の可能性が報告されているが、長期投与で効果の減弱は認められていない
- 散瞳作用を有するため、霧視・視力障害が生じる可能性がある。点眼後数分程度で症状は消失するが、症状が回復するまでは自動車の運転や機械類の操作を避けるよう指導すること
- 必要に応じてサングラスを着用し、太陽光や強い光を直接見ないよう注意喚起を行う
ジニイズ点滴静注500mg(レチファンリマブ(遺伝子組換え))
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 一般名 | レチファンリマブ(遺伝子組換え) |
| 承認区分 | 新有効成分含有医薬品(希少疾病用医薬品) |
| 効能・効果 | 切除不能な進行・再発の肛門管扁平上皮癌 |
| 用法・用量 | パクリタキセル及びカルボプラチンとの併用において、1回500mgを4週間間隔で30分間かけて点滴静注 |
| 製造販売元 | インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン合同会社 |
何が変わるのか
肛門管扁平上皮癌(SCAC)は希少がんであり、切除不能な進行・再発例に対する全身療法の選択肢は極めて限られていた。これまで国内では、NCCNガイドラインに基づくフルオロウラシル+シスプラチン併用療法やパクリタキセル+カルボプラチン(PTX/CBDCA)併用療法などの化学療法が行われてきたが、免疫チェックポイント阻害薬は承認されていなかった。
ジニイズは、SCAC に対して国内で初めて承認された抗PD-1抗体である。PTX/CBDCAとの併用による1st lineレジメンとして使用され、化学療法歴のないSCAC患者の治療体系に免疫療法が加わることになる。米国では2025年5月に承認済みであり、日本での承認により国際標準に近い治療が可能となる。
臨床的ポイント
有効性:国際共同第III相試験(303試験)
化学療法歴のない切除不能な進行・再発SCAC患者308例を対象とした無作為化二重盲検比較試験で、PTX/CBDCA投与下でのレチファンリマブ群とプラセボ群が比較された。
- 主要評価項目のPFS(BICR判定):レチファンリマブ群 9.3ヶ月 vs プラセボ群 7.4ヶ月(HR 0.63 [95%CI: 0.47, 0.84]、p=0.0006)で、統計学的に有意な優越性が検証された
- OS中間解析:レチファンリマブ群 29.2ヶ月 vs プラセボ群 23.0ヶ月(HR 0.70 [95%CI: 0.49, 1.01])で、短縮する傾向は認められなかった
- 日本人集団(各群8例)でもPFSのHR 0.07 [95%CI: 0.01, 0.59]と、全体集団と矛盾しない結果が示された
安全性
303試験における主な有害事象(本薬/PTX/CBDCA群でプラセボ群より発現割合が高かったもの)は以下のとおり。
- 消化器:下痢(48.7%)、直腸出血(12.3%)、粘膜の炎症(11.0%)
- 全身・皮膚:無力症(47.4%)、そう痒症(24.0%)、発疹(15.6%)
- 内分泌:甲状腺機能低下症(14.3%)、甲状腺機能亢進症(8.4%)、副腎機能不全(5.2%)
- 骨髄抑制:好中球減少症(Grade 3以上 35.1%)、好中球数減少(Grade 3以上 16.9%)
特に注意を要する有害事象として、infusion reaction、ILD、肝機能障害・肝炎、心筋炎、重度の皮膚障害、1型糖尿病、膵炎、腎機能障害、神経障害、重篤な血液障害などが挙げられている。抗PD-1抗体に共通する免疫関連有害事象(irAE)への十分な注意と早期対応が求められる。
臨床現場での留意点
- 用法:PTX/CBDCAとの3剤併用が必須であり、単剤での使用は承認されていない
- 投与間隔:4週間に1回、30分かけて点滴静注(最大13サイクル)
- 劇薬指定、生物由来製品に該当し、再審査期間は10年
- 希少疾病用医薬品に指定されており、対象患者数が限られることから、市販後の安全性情報の蓄積が重要
- Infusion reactionへの対応として、Grade 2発現時は次回以降の解熱剤・抗ヒスタミン剤の前投薬を検討し、Grade 3以上では投与中止とする
ウステキヌマブBS皮下注45mgシリンジ「ニプロ」
承認区分: 新規承認(バイオ後続品)
効能又は効果: 既存治療で効果不十分な下記疾患——尋常性乾癬、乾癬性関節炎
先行バイオ医薬品: ステラーラ皮下注45mgシリンジ(ヤンセンファーマ)
何が変わるのか
ウステキヌマブ(ステラーラ)は IL-12/23 p40 に対するヒト IgG1 モノクローナル抗体であり、中等症〜重症の尋常性乾癬・乾癬性関節炎の治療において確立された位置づけを持つ。今回承認された本剤は、Samsung Bioepis社と共同開発された4番目のウステキヌマブバイオ後続品であり、ニプロが申請者となる。
バイオ後続品の選択肢がさらに拡充されることで、ウステキヌマブによる治療の経済的アクセスが一層改善される。高額な生物学的製剤の自己負担が治療継続の障壁となっている患者にとって、後続品の増加は治療選択肢の幅を広げる意義がある。
臨床的ポイント
PK同等性(SB17-1001試験): 健康被験者201例を対象とした第I相試験で、本剤と先行バイオ医薬品(EU承認品・米国承認品)の AUCinf、Cmax、AUClast の幾何最小二乗平均比の90%信頼区間はすべて事前設定された同等性許容域(0.8〜1.25)の範囲内であり、PKの同等性が示された。
有効性の同等性(SB17-3001試験): 中等症〜重症の尋常性乾癬患者464例を対象とした第III相試験で、主要評価項目であるベースラインから12週までのPASIスコアの変化率は、本剤群85.7%、先行バイオ医薬品群86.3%であった。群間差の95%信頼区間は−0.6[−3.780, 2.579]であり、事前設定された同等性許容域(−15〜15%)の範囲内であった。さらに52週時点でもPASI75達成率は本剤継続群95.2%と高い有効性が維持されている。
安全性: 第I投与期間の有害事象発現率は本剤群48.2%、先行バイオ医薬品群48.8%とほぼ同等であった。主な有害事象は上咽頭炎、COVID-19、上気道感染であり、先行バイオ医薬品と安全性プロファイルに特段の差異は認められなかった。重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象についても群間で差はなかった。
免疫原性: 抗薬物抗体の発現率・中和抗体の発現率ともに本剤群と先行バイオ医薬品群で臨床的に意味のある差はなく、免疫原性を含めた安全性は許容可能と判断された。
用法・用量: 通常、成人には1回45mgを皮下投与する。初回投与及びその4週後に投与し、以降12週間隔で投与する。効果不十分な場合には1回90mgを投与することができる。先行バイオ医薬品と同一の用法・用量である。
保存条件: 2〜8℃遮光保存。有効期間42カ月。光に不安定であるため紙箱での遮光保存が必要。
臨床現場での留意点
- 先行バイオ医薬品のステラーラからの切り替えについては、第III相試験の第II投与期間で先行バイオ医薬品から本剤への切り替え群が検討され、有効性・安全性に大きな差異は認められていない
- 乾癬性関節炎の合併の有無によるPASIスコアの推移や安全性プロファイルに大きな違いはなく、合併の有無にかかわらず使用可能
- 日本人を対象とした追加臨床試験は実施されていないが、PMDAは民族差の影響が低いとする申請者の説明を了承している