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承認情報PMDA承認

【PMDA承認情報】2026/01/27 医薬品承認一覧

製品名 承認区分 効能効果 PMDA
イムルリオ錠200mg 承認 内分泌療法後に増悪したESR1遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌 詳細
エキシデンサー皮下注100mgペン/皮下注100mgシリンジ 承認 気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る) 詳細
アバレプト懸濁性点眼液0.3% 承認 ドライアイ 詳細
イセルティ錠100mg 承認 子宮筋腫に基づく下記諸症状の改善過多月経、下腹痛、腰痛、貧血 詳細
エクテリー錠300mg 承認 遺伝性血管性浮腫の急性発作 詳細

2026年1月 新規承認医薬品の解説

2026年1月、PMDAより5つの新有効成分含有医薬品が承認された。今回の承認では、臨床現場に大きなインパクトを与える薬剤が複数含まれている。特に注目すべきは、ESR1遺伝子変異陽性乳癌に対する初の経口SERDであるイムルリオ、26週間隔投与を実現した抗IL-5抗体エキシデンサー、そして遺伝性血管性浮腫(HAE)の急性発作に対する初の経口治療薬エクテリーである。また、ドライアイ領域では新規作用機序のTRPV1拮抗薬アバレプト、子宮筋腫領域では新たなGnRH受容体拮抗薬イセルティが加わり、いずれも既存治療のアンメットニーズに応える薬剤となっている。


イムルリオ錠200mg(イムルネストラント)

項目内容
一般名イムルネストラントトシル酸塩
申請者日本イーライリリー
承認区分新有効成分含有医薬品
効能・効果内分泌療法後に増悪したESR1遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌
用法・用量1日1回400mg、空腹時経口投与

今回の承認で何が変わるか

従来、HR陽性HER2陰性の進行・再発乳癌において、AI耐性獲得後の治療選択肢としてフルベストラント(筋注SERD)が中心的な役割を果たしてきた。しかし、ESR1遺伝子変異はAI治療後の患者の約30〜40%に認められる耐性機序であり、エストロゲン非依存的にERシグナルを活性化させるため、従来の内分泌療法では十分な効果が得られないことが課題であった。

イムルネストラントは、野生型および変異型のERαに結合する経口SERDであり、ERαタンパク質を分解することでER依存性の転写を阻害する。今回の承認により、以下が実現する:

  • ESR1遺伝子変異を有する患者に特化した治療選択肢が初めて確立された
  • フルベストラントが筋注製剤であるのに対し、経口投与が可能となり、患者の利便性が大幅に向上
  • 国際共同第III相試験(EMBER-3試験)の成績に基づく承認

臨床的ポイント

  • 対象患者の選定にはESR1遺伝子変異の確認が必須であり、コンパニオン診断の運用が前提となる
  • 空腹時投与が必要(食前2時間および食後1時間を避ける)であり、服薬指導時に注意が必要
  • 再審査期間8年、劇薬指定

エキシデンサー皮下注100mgペン/シリンジ(デペモキマブ)

項目内容
一般名デペモキマブ(遺伝子組換え)
申請者グラクソ・スミスクライン
承認区分新有効成分含有医薬品
効能・効果気管支喘息(重症又は難治)、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者)
用法・用量1回100mg、26週間ごとに皮下注射

今回の承認で何が変わるか

デペモキマブは、既承認の抗IL-5抗体であるメポリズマブの改良型である。メポリズマブと同じ相補性決定部を持つが、重鎖の7つのアミノ酸残基に置換を導入することで、IL-5への親和性向上とFcRn結合親和性の強化による血中半減期の大幅な延長を実現した。

この改良により、投与間隔が従来の生物学的製剤と比較して劇的に変化する:

既存の生物学的製剤投与間隔
メポリズマブ4週間ごと
ベンラリズマブ初回3回は4週、以降8週間ごと
デュピルマブ2週間ごと
デペモキマブ26週間ごと(約6カ月)

今回の承認により、年2回の投与で重症喘息および鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の管理が可能になった。これは患者の通院負担と治療継続性において画期的な改善である。

臨床的ポイント

  • 喘息では成人および12歳以上の小児にも適応がある
  • 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎は成人のみが対象
  • 鼻噴霧用ステロイド薬非併用時の有効性・安全性は製造販売後に追加検討予定
  • 生物由来製品、劇薬指定
  • ペン型とシリンジ型の2剤形が用意されており、患者の利便性と医療機関の運用に応じて選択可能

アバレプト懸濁性点眼液0.3%(モツギバトレプ)

項目内容
一般名モツギバトレプ
申請者千寿製薬(持田製薬が創製)
承認区分新有効成分含有医薬品
効能・効果ドライアイ
用法・用量1回1滴、1日4回点眼

今回の承認で何が変わるか

従来のドライアイ治療薬(ヒアルロン酸ナトリウム、ジクアホソルナトリウム、レバミピド)は、いずれも涙液層の安定化や角結膜上皮障害の改善を主な作用機序としていた。しかし、臨床現場では既存治療で他覚所見(角結膜上皮障害)が改善しても、眼不快感などの自覚症状が残存する症例がしばしば経験されており、自覚症状と他覚所見の乖離は長年のアンメットニーズであった。

モツギバトレプは、TRPV1拮抗薬という全く新しい作用機序を持つ。TRPV1は角膜の一次知覚神経に発現する陽イオンチャネルであり、ドライアイにおける涙液浸透圧の上昇や炎症性物質がTRPV1を活性化し、角膜知覚閾値の低下や更なる炎症を引き起こすと考えられている。本薬はこのTRPV1を阻害することで角膜知覚を正常化し、自覚症状を改善する。

今回の承認により、ドライアイ治療に「知覚の正常化」という新たなアプローチが加わった。従来の涙液補充・分泌促進・粘膜保護とは異なる作用機序であり、既存治療で自覚症状が残存する患者への新たな選択肢となる。

臨床的ポイント

  • 懸濁性製剤であるため、使用前に十分に振り混ぜるよう患者指導が必要
  • 1日4回点眼であり、既存のドライアイ治療薬と同程度の投与頻度
  • 小児患者への長期投与時の安全性は製造販売後に追加検討予定
  • 原体は劇薬だが、製剤は劇薬・毒薬非該当
  • 国内で臨床開発が行われた純国産の新薬である

イセルティ錠100mg(リンザゴリクス)

項目内容
一般名リンザゴリクスコリン
申請者キッセイ薬品工業
承認区分新有効成分含有医薬品
効能・効果子宮筋腫に基づく過多月経、下腹痛、腰痛、貧血の改善
用法・用量リンザゴリクスとして200mg、1日1回経口投与(月経周期1〜5日目に開始)

今回の承認で何が変わるか

子宮筋腫の薬物療法においては、従来よりGnRHアゴニスト(リュープロレリン等)が使用されてきたが、投与初期のフレアアップ現象や注射剤であることが課題であった。2021年にはGnRH受容体拮抗薬であるレルゴリクス(レルミナ錠)が承認され、経口投与可能なGnRH拮抗薬として治療選択肢が広がった。

今回承認されたリンザゴリクスは、新たな経口GnRH受容体拮抗薬である。GnRH受容体に対する競合的阻害により、LH・FSH分泌を抑制し、エストロゲン産生を低下させることで子宮筋腫に伴う症状を改善する。

注目すべき点として、申請時の効能・効果には「筋腫核の縮小」が含まれていたが、承認時には症状の改善(過多月経、下腹痛、腰痛、貧血)に限定された。これは審査過程での評価を反映したものであり、処方時には本剤の適応範囲を正確に理解しておく必要がある。

臨床的ポイント

  • GnRH拮抗薬であるため、フレアアップが生じない(アゴニストとの重要な差別化ポイント)
  • 初回投与は月経周期1〜5日目に開始する必要があり、投与開始タイミングの指導が重要
  • 劇薬指定、再審査期間8年
  • 既存のレルゴリクスとの使い分けについては、今後の臨床データの蓄積が待たれる

エクテリー錠300mg(セベトラルスタット)

項目内容
一般名セベトラルスタット
申請者KalVista Pharmaceuticals Ltd.
承認区分新有効成分含有医薬品(希少疾病用医薬品)
効能・効果遺伝性血管性浮腫の急性発作
用法・用量1回300mg経口投与。効果不十分または再発時は2時間以上あけて追加投与可(24時間あたり最大2回)

今回の承認で何が変わるか

これまで、HAE急性発作の治療薬はすべて注射剤であった:

既存治療薬投与経路
イカチバント(フィラジル)皮下注射
人C1-インアクチベーター(ベリナートP)静脈注射

HAE発作は突発的に生じ、特に喉頭浮腫は窒息により致死的となりうるため、迅速な治療介入が求められる。しかし、既存治療がすべて注射剤であることは、自己注射の手技習得や注射への心理的障壁、外出先での使用の困難さなど、患者にとって大きな負担であった。

セベトラルスタットは、HAE急性発作に対する世界初の経口治療薬である。血漿カリクレインを阻害することでブラジキニン産生を抑制し、血管透過性の亢進を阻止する。今回の承認により:

  • 発作時に錠剤を服用するだけで治療が開始できるようになった
  • 注射手技の習得が不要となり、患者の自己管理が大幅に容易になる
  • 外出先や旅行先でも携帯・使用が容易
  • 12歳以上の小児にも適応がある

海外では米国(2025年7月)および欧州(2025年9月)で先行承認されており、国際的にもHAE治療のパラダイムシフトとして評価されている。

臨床的ポイント

  • 発作発生時に速やかに経口投与し、効果不十分または症状再発時は2時間以上あけて追加投与可能
  • 24時間あたりの投与回数は最大2回まで
  • 発作の発症抑制(予防)目的での使用は適応外であり、あくまで急性発作時の治療薬である点に注意
  • 希少疾病用医薬品指定、再審査期間10年
  • 原体は劇薬だが、製剤は劇薬・毒薬非該当

まとめ

今回の5品目はいずれも新有効成分含有医薬品であり、各疾患領域において従来の治療パラダイムに変化をもたらす薬剤である。特に、ESR1変異陽性乳癌への初の標的治療、半年に1回投与の生物学的製剤、ドライアイにおける知覚正常化という新概念、そしてHAE急性発作の経口治療という選択肢は、いずれも長年のアンメットニーズに応えるものであり、臨床現場への速やかな情報提供と適正使用の推進が重要となる。