【PMDA承認情報】2026/04/27 医薬品承認一覧
目次
今回の承認では、脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する遺伝子治療薬ゾルゲンスマの新剤形として、髄腔内投与製剤(髄注)が加わった点が最大のハイライトです。既承認の静注製剤は体重21 kg未満の乳幼児に限られていましたが、髄注製剤により適応患者層の拡大が期待されます。またアロステムシートは、新たな細胞・組織関連製品として登場し、臨床現場での選択肢に加わります。いずれも希少疾患領域や再生医療等製品に関連するカテゴリであり、取り扱い・保管・投与管理において薬剤師の役割が特に重要となります。
アロステムシート(ニバドストロセル)
製品分類: ヒト体性幹細胞加工製品(ヒト同種脂肪由来間葉系幹細胞シート)
申請者: イシンファーマ株式会社
承認区分: 新規承認(新再生医療等製品 / 希少疾病用再生医療等製品)
申請区分: 1の1 新再生医療等製品
効能・効果
栄養障害型、接合部型及び単純型(重症汎発型に限る)表皮水疱症における難治性又は再発性のびらん・潰瘍
適応患者は上記3病型のいずれかを有し、難治性または再発性のびらん・潰瘍が持続する例。本品を病変部に貼付し、再上皮化を促すことを目的とする。
この承認が変えること
表皮水疱症(EB)の治療は長らく、ワセリンガーゼや副腎皮質ステロイドを中心とした対症療法にとどまり、根治療法は存在しない。再生医療等製品としては、2018年にヒト(自己)表皮由来細胞シートのジェイス(栄養障害型・接合部型 EB 対応)、2025年7月にはバイジュベックゲル(栄養障害型 EB 対応)が承認されている。
アロステムシートは、これらとは異なる作用基盤・由来・対応病型を持つ製品として新たに加わる。
同種由来であることの臨床的意義: ジェイスが自己細胞を必要とするのに対し、本品は健康成人ドナーの皮下脂肪組織から得られた脂肪由来間葉系幹細胞(ASC)を用いる。患者自身の皮膚採取が不要であるため、皮膚脆弱性が高い EB 患者に対してもドナー部位の追加損傷を生じず使用できる点は実臨床上の利点となりうる。
3病型への対応: バイジュベックゲルが栄養障害型のみに限定されるのに対し、本品は栄養障害型・接合部型・単純型(重症汎発型)の3病型に適応を持つ。単純型 EB に対して承認された再生医療等製品は国内初となる。
製品概要
本品は、成人皮下脂肪組織由来の間葉系幹細胞(ASC)を、フィブリンゲルを支持体としてシート状に成形したヒト同種体性幹細胞加工製品である。1枚あたり ASC 0.5〜1.5×10⁶個を含有し、一辺5 cm×5 cm、厚さ0.3 mm の正方形シート。裏面に無色 PET フィルムが付着し取り扱いを補助する。
作用機序: ASC から分泌される成長因子(HGF・IGF・VEGF 等)および細胞外マトリックスタンパク質(VII 型コラーゲン・ラミニン 332 等)を介した、抗炎症・細胞保護・血管新生促進・細胞増殖/遊走促進作用が期待される。栄養障害型 EB では VII 型コラーゲン、ラミニン 332 変異接合部型 EB ではラミニン 332 の補充による疾患修飾作用も期待される。
用法: 通常、週1回、潰瘍面積に応じた枚数を辺縁を含めてシート同士が重ならないように貼付する。
臨床試験の概要
主要な評価試験は、国内第III相試験(EB-02試験)である。EB患者6例(栄養障害型・接合部型・単純型(重症汎発型)、実際の組入れは栄養障害型のみ)を対象とした多施設共同非盲検非対照試験として実施された。
主要評価項目(EB-02試験、評価期間1):
治療前観察期間の平均潰瘍面積に対する最終貼付1〜5週後の潰瘍面積平均変化率は −54.2±13.4%(p=0.0098、1標本 t 検定)で統計的有意差を達成した。
副次評価項目(EB-02試験):
- 6例全例で50%以上の潰瘍面積縮小が確認され、3例は15日以内に達成
- 50%縮小までの期間の中央値は17.5日
- 長期的有効性(観察期間中央値442日):25%以上縮小が認められた期間の累計中央値413.5日、50%以上縮小が認められた期間の累計中央値298.5日
なお完全表皮化(完全閉鎖)に至った患者は認められておらず、長期的な有効性および完全閉鎖に関するエビデンスの蓄積は今後の製造販売後調査での重要な課題とされている。
臨床的ポイント
安全性プロファイル: EB-01・EB-02試験の合計12例における本品との因果関係が否定できない有害事象は1例(C反応性蛋白増加、軽度・非重篤)のみ。死亡および貼付中止に至った有害事象は認められなかった。頻度の高い有害事象として上咽頭炎・皮膚感染・爪囲炎が挙げられるが、いずれも軽度かつ短期間で回復している。
DMSO への注意: 保存液に含まれる DMSO について、動物実験での眼毒性報告を否定できないとして、添付文書における情報提供が求められている。12週を超えた長期使用時の安全性情報は限られており注意を要する。
SCC リスクとの関係: 対象患者では扁平上皮癌(SCC)発症リスクが高いことが知られているが、臨床試験(12週観察)において本品貼付関連の SCC 増悪は認められなかった。
承認条件の確認が必須:
- 製造販売後は全症例を対象として使用成績調査を実施すること
- EB の診療体制が整った施設で、本品の臨床試験成績・有害事象等を習得した医師のみが使用すること(施設要件・講習の履修)
希少疾患であることから試験症例数が極めて少なく(合計12例)、評価の限界を十分に認識した上での処方判断が求められる。指定再生医療等製品に指定されており、10年間の再審査対象となっている。
ゾルゲンスマ髄注(オナセムノゲン アベパルボベク)
申請区分: 新用法・使用方法再生医療等製品
効能・効果: 脊髄性筋萎縮症(ただし、抗AAV9抗体が陰性の患者に限る)
用法・用量: 1.2×10¹⁴ vg を約1〜2分かけて髄腔内に単回投与
何が変わったか
SMAに対するゾルゲンスマ(オナセムノゲン アベパルボベク)は、2020年3月に静脈内投与製剤(ゾルゲンスマ点滴静注)として承認されていたが、その適用は2歳未満に限定されていた。今回承認されたゾルゲンスマ髄注は同一の有効成分を用いた髄腔内投与製剤であり、2歳以上のSMA患者への遺伝子治療の選択肢が大幅に拡大した点が最大の変更である。
また、ヌシネルセンまたはリスジプラムによる治療歴を有する患者(2歳以上18歳未満)を対象としたB12302試験も実施されており、既治療患者への上乗せ・切り替えというユースケースが支持される成績が得られている。
臨床的ポイント
投与経路変更の意義
髄腔内投与により、CNSおよび後根神経節への効率的な遺伝子導入が可能となる。非臨床データでは、髄腔内投与は静脈内投与と比較して心臓・末梢組織への分布が低い傾向が示されており、心毒性リスクの軽減が期待される一方で、後根神経節への炎症性変化は依然として潜在的リスクとして設定されている。
主要試験成績(B12301試験)
2歳以上18歳未満の未治療SMA患者を対象とした無作為化二重盲検シャム対照試験(本品群75例)で、評価期1終了時(投与後約52週)のHFMSEスコアのベースラインからの変化量は、本品群2.38点 vs シャム群0.56点、群間差1.88点
[95%CI: 0.51, 3.25]、p=0.0074と統計学的に有意な差が認められた。投与4週後からシャム群と分離し、その差が評価期間を通じて維持された。
治療既往患者(B12302試験)
ヌシネルセン・リスジプラム既治療患者27例を対象とした非対照試験では、投与後52週時点のHFMSEスコア変化量の最小二乗平均は1.05点[95%CI: −0.21, 2.32]であり、ベースライン時に認められた運動マイルストーンを24例中17例(70.8%)が維持。既治療患者でも機能を維持できる可能性が示された。
実臨床での注意事項
- 禁忌: オナセムノゲン アベパルボベクの投与歴(経路問わず)のある患者、抗AAV9抗体陽性患者
- 免疫抑制: 投与24時間前〜30日後までプレドニゾロン1 mg/kg/日、その後4週間かけて漸減が必要。肝機能異常が生じた場合は用量調整の判断が求められる
- 投与後体位: 投与後5〜10分のトレンデレンブルグ体位(頭低位)保持により中枢神経系への遺伝子導入効率が改善するとの非臨床所見がある
- 重要な特定されたリスク: 肝障害(AST・ALT上昇を含む)の早期モニタリングが必要
- 潜在的リスク: 後根神経節障害、心臓関連有害事象の発現に留意
承認条件として全例使用成績調査が課されており、SMA診療体制が整った医療機関での使用に限定される。6年1日の再審査対象品目。