【PMDA承認情報】2026/05/18 医薬品承認一覧
目次
| 製品名 | 承認区分 | 効能効果 | PMDA |
|---|---|---|---|
| ミムリット皮下注用 | 承認 | 麻しん、おたふくかぜ及び風しんの予防 | 詳細 |
今回の承認では、麻しん・おたふくかぜ・風しんの3疾患を対象とした皮下注射用ワクチンミムリット皮下注用が新たに承認されました。既存のMMRワクチンの選択肢が広がることで、定期接種および任意接種における対応の幅が拡大します。調剤・在庫管理の観点から、製剤特性や接種スケジュールの確認が求められます。
ミムリット皮下注用(乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチン)
製品名: ミムリット皮下注用
一般名: 乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチン
申請者: 第一三共株式会社
承認区分: 新有効成分含有医薬品・新医療用配合剤(迅速審査)
効能・効果: 麻しん、おたふくかぜ及び風しんの予防
用法・用量: 添付溶剤(日本薬局方注射用水)0.7 mLで溶解し、0.5 mLを1回皮下注射
承認の意義――約30年ぶりの国内MMRワクチン
本承認が持つ最大のインパクトは、日本に事実上存在しなかったMMR(麻しん・おたふくかぜ・風しん3種混合)ワクチンが国内で約30年ぶりに承認されたという点にある。
国内では1989年から統一株MMRワクチンが定期接種に使用されたが、接種後の無菌性髄膜炎が高頻度(10万人あたり約160件相当)に発生したため1993年に使用中止となった。以降、麻しん・風しんはMRワクチン、おたふくかぜは単味ワクチンと、別々に接種する体制が続いてきた。
この体制のもとで国内のおたふくかぜワクチン接種率は30〜40%にとどまり、数年ごとに流行が繰り返されている。ミムリット皮下注用の承認は、1回の接種で3疾患を同時に予防できる選択肢を臨床現場に提供し、おたふくかぜを含む免疫化率の向上に寄与することが期待される。
含有ウイルス株と安全性上の特徴
本剤は以下の3種の弱毒生ウイルスを含む。
- 弱毒生麻しんウイルス(AIK-C株):国内既承認のはしか風しん混合ワクチン「第一三共」と同一株
- 弱毒生風しんウイルス(高橋株):同上
- 弱毒生ムンプスウイルス(RIT4385株):GSKが海外で製造販売するPriorixに含まれるJeryl-Lynn株由来株。WHOが事前認定したムンプスウイルスワクチン株3株(Jeryl-Lynn株、RIT4385株、Leningrad-Zagreb株)の一つ
RIT4385株を含むPriorixの製造販売後調査における無菌性髄膜炎の報告頻度は10万人あたり0〜1件程度(被接種者500万人)であり、旧国産MMRで問題となった高頻度の無菌性髄膜炎リスクとは異なる安全性プロファイルを有する。
臨床的ポイント
有効性の評価
国内第III相試験(J301試験、12〜24カ月未満の健康小児861例)では、治験薬接種後43日目の抗体保有率を主要評価項目とした。
- 抗麻しんウイルス抗体:99.8% vs 対照群100%(群間差の95%CI下限値-0.2%、非劣性確認)
- 抗風しんウイルス抗体:99.5% vs 99.5%(非劣性確認)
- 抗ムンプスウイルス(Genotype D)抗体保有率:80.6% vs 88.1%(群間差95%CI下限値-12.5%、事前設定の非劣性限界値-10%を下回り、主要評価項目としての非劣性は未達成)
ムンプスに関する非劣性未達成は審査上の課題となったが、PMDAは以下の点から有効性を期待できると判断した。
- J301試験における本剤群の抗ムンプスウイルス抗体陽転率(80.1%)は、同じRIT4385株を含む海外のPriorixを用いたMMR-157試験の成績(73.6〜85.4%)と同程度
- RIT4385株含むPriorixの発症予防効果は1回接種で66.7%、2回接種で86.5%と報告されており、国内既承認おたふくかぜワクチンの発症予防効果(83.0%)と大きな差がないこと
- RIT4385株はWHO事前認定株であり、100以上の国・地域で承認・使用されていること
- 製造販売後臨床試験で免疫原性・持続性を継続確認する計画あり
2期接種(5〜7歳未満、J303試験)では麻しん・風しん・ムンプスウイルスいずれに対しても抗体保有率100%を達成した。
安全性
国内4試験(約700例の本剤接種者)を通じ、死亡・重篤な副反応は認められなかった。有害事象の発現プロファイルはMRワクチンおよびおたふくかぜワクチンと比較して大きな差を認めなかった。主な局所反応は紅斑・疼痛・腫脹、全身性反応としては発熱が多く、いずれも接種後7日以内に消失した。
なお、本剤は生物由来製品に該当し、原体弱毒生ムンプスウイルスRIT4385株および製剤は劇薬に該当する。添付文書の「重大な副反応」には、本剤と同一ウイルス株を使用するはしか風しん混合生ワクチン「第一三共」と同様に、ショック・アナフィラキシー、免疫性血小板減少症、急性散在性脳脊髄炎、脳炎・脳症、痙攣(熱性痙攣含む)が注意喚起される。また、既承認おたふくかぜワクチンの添付文書で注意喚起されている無菌性髄膜炎・精巣炎・難聴・急性膵炎についても同様に記載される。
使用上の主な注意点
- 妊娠が明らかな者は接種不適当。妊娠可能な女性には接種前後各約1〜2カ月の避妊指導が必要(風しんウイルスによる先天性風しん症候群のリスク)
- 副腎皮質ステロイド・免疫抑制剤の長期大量投与者や、輸血・ガンマグロブリン製剤の投与を受けた者は免疫原性への影響・ウイルス増殖リスクの観点から慎重対応
- 他の生ワクチンとの同時接種後27日以内の接種は避ける
- 再審査期間:8年
まとめ
ミムリット皮下注用の承認は、長らく日本に存在しなかったMMRワクチンの空白を埋める歴史的意義を持つ。1回接種で3疾患を予防できる利便性とともに、旧国産MMRの課題であった無菌性髄膜炎リスクを大幅に低減したRIT4385株の採用が評価された。おたふくかぜに対する主要評価項目での非劣性未達という課題は残るが、海外での有効性データと総合的な免疫原性評価に基づき承認に至った。製造販売後の長期的な免疫原性・有効性・安全性データの蓄積が引き続き求められる。