【PMDA承認情報】2026/05/25 医薬品承認一覧
目次
| 製品名 | 承認区分 | 効能効果 | PMDA |
|---|---|---|---|
| ゼップバウンド皮下注2.5 mgアテオス | 承認事項一部変更 | 同 皮下注5 mgアテオス【承認事項一部変更】 同 皮下注7.5 mgアテオス【承認事項一部変更】 同 皮下注10 mgアテオス【承認事項一部変更】 同 皮下注12.5 mgアテオス【承認事項一部変更】 同 皮下注15 mgアテオス【承認事項一部変更】(2026年5月承認分)肥満症ただし、高血圧、脂質異常症又は耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常等)のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。・BMIが27 kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する・BMIが35 kg/m2以上 | 詳細 |
| ゼップバウンド皮下注2.5 mgアテオス | 承認事項一部変更 | 同 皮下注5 mgアテオス【承認事項一部変更】 同 皮下注7.5 mgアテオス【承認事項一部変更】 同 皮下注10 mgアテオス【承認事項一部変更】 同 皮下注12.5 mgアテオス【承認事項一部変更】 同 皮下注15 mgアテオス【承認事項一部変更】(2026年5月承認分)中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群ただし、BMIが27 kg/m2以上に該当する場合に限る。 | 詳細 |
2026年5月、チルゼパチド製剤ゼップバウンド皮下注アテオス(2.5〜15 mg)に2件の承認事項一部変更が加わった。いずれも既存の2型糖尿病適応からの拡大で、今回新たに肥満症および中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)が適応に追加されている。肥満症はBMI 27 kg/m²以上かつ肥満関連健康障害2つ以上、またはBMI 35 kg/m²以上という条件付きで、食事・運動療法で効果不十分な症例が対象となる。OSAはBMI 27 kg/m²以上という体格要件が設けられており、体重管理と睡眠障害の両面からアプローチできる初めての治療選択肢として注目される。処方にあたっては各適応の除外基準と併用療法の要件を改めて確認されたい。
ゼップバウンド皮下注アテオス(チルゼパチド)— 耐糖能障害の対象に「耐糖能異常等」を追加
承認区分: 承認事項一部変更(2026年5月承認)
対象規格: 2.5 mg / 5 mg / 7.5 mg / 10 mg / 12.5 mg / 15 mg(全6規格)
一般名: チルゼパチド(GIP/GLP-1デュアル受容体アゴニスト)
今回の変更点
2024年12月に肥満症で初回承認された際、適応における「耐糖能障害」の例示は 「2型糖尿病」 のみであった。今回の一変承認により、これが 「2型糖尿病、耐糖能異常等」 へと拡張された。
すなわち、まだ2型糖尿病を発症していない 前糖尿病状態 の肥満患者が、適応の耐糖能障害要件を満たすことが明確化された点が最大の変更点である。
エビデンス: GPHK試験(国際共同第III相、176週)
本申請の根拠は、前糖尿病状態を有する過体重・肥満患者 1,021例 を対象とした176週(約3.4年)間のプラセボ対照無作為化二重盲検試験(GPHK試験)の長期投与成績である。
体重変化率(ベースラインから176週時点)
| 群 | 体重変化率 | プラセボとの群間差 |
|---|---|---|
| プラセボ群 | −4.2% | — |
| 本剤 5 mg群 | −16.4% | −13.2% |
| 本剤 10 mg群 | −21.1% | −17.7% |
| 本剤 15 mg群 | −24.4% | −20.8% |
体重減少効果は投与72週時点の全体集団での結果と概ね同程度であり、176週まで持続することが示された。日本人サブグループでも本剤15 mg群で−24.2%と、全体集団と同様の傾向が認められた。
2型糖尿病発症抑制効果
今回の審査で特に注目されるのが、2型糖尿病発症リスクの抑制である。176週間の観察において:
- プラセボ群: 発症割合 12.4%
- 本剤群合計: 発症割合 1.2%
- ハザード比 0.06(95%CI: 0.03–0.13、p<0.0001)
本剤投与終了後の後観察期17週を含む193週時点においても、本剤群での発症割合は大きく上昇せず、効果の持続性も確認されている。前糖尿病状態の日本人サブグループでは、プラセボ群7.7%(1/13例)に対し、本剤群では発症例が認められなかった(176週時点)。
臨床的ポイント
1. 前糖尿病患者への適用が明確化 今回の適応変更により、空腹時血糖値の軽度上昇やOGTT異常など、耐糖能異常段階にある肥満患者でも適応要件を明確に満たすことになった。高血圧・脂質異常症・耐糖能異常のいずれかを合併し、BMI 27 kg/m² 以上かつ2つ以上の肥満関連健康障害を有する患者、またはBMI 35 kg/m² 以上の患者が対象である点は変わらない。
2. 体重減少と糖代謝改善の両立 GIP/GLP-1デュアル作用により、体重減少(最大−24%超)と2型糖尿病発症リスクの大幅低減(約94%減)が176週にわたり示された。HbA1cおよび空腹時血糖値のベースラインからの変化量も、本剤群でプラセボ群を上回る改善が認められている。
3. 安全性プロファイルに新たな懸念なし 主な有害事象は悪心・下痢・便秘・嘔吐を中心とした胃腸障害で、大部分は軽度〜中等度かつ投与開始6か月以内に発現し、長期投与に伴う発現割合の増加傾向は認められなかった。既存の安全性プロファイルと大きな乖離はなく、前糖尿病状態の患者においても同様の傾向であった。
4. 処方実務上の留意点 用法・用量に変更はなく、週1回2.5 mgから開始し4週毎に2.5 mgずつ増量、維持量10 mgを基本とする。患者状態に応じ5 mgへの減量、または4週以上の間隔で15 mgまでの増量が可能。医薬品リスク管理計画の策定・実施が承認条件とされている。
ゼップバウンド皮下注アテオスシリーズ(チルゼパチド)
一般名: チルゼパチド|申請者: 日本イーライリリー株式会社|承認区分: 承認事項一部変更(新効能)
今回の変更:何が変わったか
ゼップバウンドは2024年12月に肥満症で承認済みだが、今回の変更では肥満症の適応における健康障害の条件に「耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常等)」が追加された(添付文書上は下線部追加)。
従来は「高血圧または脂質異常症を有する場合」が主な健康障害の条件であったのに対し、今回の改訂により前糖尿病状態(IGT・IFG相当)を含む耐糖能障害を有する肥満患者も投与対象に含まれる。適応要件は以下のとおり:
- 食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない
- BMIが27 kg/m²以上かつ高血圧・脂質異常症・耐糖能障害のいずれかを含む2つ以上の肥満関連健康障害を有する、またはBMIが35 kg/m²以上
用法・用量に変更はなく、週1回皮下注射・2.5 mgから開始し4週ごとに2.5 mgずつ増量(維持量10 mg、最大15 mg)。
根拠となる臨床試験(GPHK試験)
国際共同第III相試験(GPHK試験)の前糖尿病状態集団1,021例を対象に、176週間の体重減少効果および2型糖尿病発症抑制効果が評価された。
ベースラインから176週時点の体重変化率(mITT集団)
| 群 | 変化率 |
|---|---|
| プラセボ群 | −4.2% |
| 本剤 5 mg群 | −13.2% |
| 本剤 10 mg群 | −17.7% |
| 本剤 15 mg群 | −20.8% |
72週時点(主要評価期間)と同程度の体重減少が176週まで維持されており、長期的な体重管理効果が確認されている。日本人集団でも同様の傾向が認められた。
2型糖尿病発症抑制効果
176週間における2型糖尿病発症割合は、プラセボ群12.4%(33/266例)に対し、本剤群合計では1.2%(9/755例)。発症までの時間に基づくハザード比は0.06(95%CI: 0.03–0.13、p<0.0001)であり、いずれの用量群でも発症を強く抑制した。投与終了後の後観察期(193週時点)においても発症割合が大きく上昇する傾向は認められなかった。前糖尿病状態の日本人集団では、176週時点で本剤群の2型糖尿病発症は0例だった。
臨床的ポイント
耐糖能障害合併肥満への処方根拠が明確化
今回の追加により、高血圧・脂質異常症を合併していなくても耐糖能障害のみを健康障害として有する肥満患者への処方が正式に可能となった。前糖尿病状態は2型糖尿病への進行リスクが高く、体重管理と糖尿病一次予防を同時に図れる薬剤として、糖尿病内科・肥満症外来における位置づけが実質的に拡大した。
なお、本審査では同試験データを用いて耐糖能異常を有する患者における2型糖尿病発症リスクの背景因子別解析も行われており、空腹時血糖・HbA1c・OGTT120分値が高い集団でも、本剤群ではプラセボ群と比べて一貫して発症割合が低い傾向が確認されている。
安全性プロファイル
主な有害事象は胃腸障害(悪心・下痢・便秘・嘔吐・食欲減退)であり、大部分は軽度〜中等度。投与6カ月以内に大部分の有害事象が発現し、投与期間の長期化による増加傾向は認められていない。既存の効能・効果での安全性プロファイルから大きな乖離はなく、前糖尿病状態の日本人集団でも全体集団と異なる傾向は認められなかった。