承認情報PMDA承認承認事項一部変更

【PMDA承認情報】2026/06/15 医薬品承認一覧

製品名 承認区分 効能効果 PMDA
エムネクスパイク筋注シリンジ12歳以上用 承認 SARS-CoV-2による感染症の予防 詳細
アレセンサカプセル150 mg 承認事項一部変更 ALK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌 詳細
マブキャンパス点滴静注30 mg 承認事項一部変更 T細胞性前リンパ球性白血病 詳細

今回の承認では、新規承認1件と承認事項一部変更2件が告示された。新規承認のエムネクスパイク筋注シリンジ12歳以上用は、12歳以上を対象としたSARS-CoV-2感染症予防ワクチンとして加わり、既存製剤との使い分けが求められる。一部変更ではアレセンサカプセル150 mgの適応がALK融合遺伝子陽性の進行・再発固形癌へ拡大され、非小細胞肺癌以外の固形腫瘍でも使用可能となった点が注目される。またマブキャンパス点滴静注30 mgはT細胞性前リンパ球性白血病への適応追加により、希少リンパ系腫瘍に対する選択肢が広がった。いずれも適応・対象患者の変更を伴う改定であり、処方監査・服薬指導における最新情報の把握が求められる。


エムネクスパイク筋注シリンジ12歳以上用

一般名: コロナウイルス(SARS-CoV-2)RNAワクチン 申請者: モデルナ・ジャパン株式会社 承認区分: 新有効成分含有医薬品(再審査期間8年、劇薬) 効能・効果: SARS-CoV-2による感染症の予防 用法・用量: 1回0.2 mLを筋肉内に接種


既存ワクチンとの根本的な違い:抗原設計の刷新

本剤の最大の特徴は、これまでのSARS-CoV-2 mRNAワクチンとは異なる抗原設計にある。

既承認のスパイクバックス(モデルナ)はSタンパク質全長(S1ドメイン+S2ドメイン)をコードするmRNAを封入している。一方、本剤が発現させる抗原は、S1ドメインのうちSARS-CoV-2に対する免疫応答に直接関与するとされる受容体結合部位(RBD)と N-末端ドメイン(NTD)のみであり、S2ドメインを含まない。

この設計変更の臨床的意義は以下の点にある。

  • Sタンパク質全長はS1-S2ドメイン間で切断されることが報告されており、細胞膜上に残存したS2ドメインがCOVID-19防御に関連しない非中和抗体の標的となりうることが指摘されてきた
  • S2ドメインを除外することで、有効な中和抗体応答に特化した免疫誘導が期待される
  • 開発の動機として、心筋炎発生リスクの低減が明記されており、次世代型の抗原絞り込み戦略として位置づけられる

また、1バイアルあたりのmRNA量は0.010 mg(10 µg相当)と、スパイクバックス(50 µg/0.5 mL)の5分の1である。LNP構成脂質(SM-102・コレステロール・DSPC・PEG2000-DMG)と各脂質の比率はスパイクバックスと同一に設計されている。


臨床データの要点

有効性(P301試験・海外コホート、12歳以上・接種歴あり、n=11,454例)

スパイクバックスに対する相対的ワクチン有効性(rVE)について、COVID-19発症に関するrVEは9.31%(両側99.4%CI: −6.58, 22.83)であり、事前規定の非劣性マージン(−10%)を満たした。

免疫原性(P301試験・海外コホート)

接種後29日目における中和抗体価(GMR: 本剤群/スパイクバックス群)は、オミクロン株BA.4/BA.5に対して1.335(95%CI: 1.194, 1.492)、起源株に対して1.240(95%CI: 1.128, 1.362)と、いずれも本剤のほうが上回った。事前規定した4つの免疫原性の主要評価項目はすべて非劣性基準を満たしている。

国内第III相試験(日本コホート、n=692例)においても、オミクロン株XBB.1.5に対する中和抗体価のGMRは1.195(95%CI: 1.028, 1.389)と非劣性基準を満たした。

安全性プロファイル

日本コホートでの接種後7日目までの特定有害事象の発現率は、局所性全体で本剤86.3%(Grade 3以上 2.9%)に対しスパイクバックス95.1%(Grade 3以上 6.6%)、全身性全体で本剤59.8%(Grade 3以上 5.2%)に対しスパイクバックス76.9%(Grade 3以上 8.7%)であり、局所・全身反応ともに本剤のほうが低い傾向を示した。


臨床現場へのインパクト

2026年2月時点で米国・EUを含む4カ国・地域ですでに承認されており、本邦での承認により国内でも同剤が選択肢に加わる。

臨床上のポイントとして注意すべきは以下の点である。

  • 対象はSARS-CoV-2ワクチンの接種歴のある12歳以上(未接種者での有効性データは限定的)
  • 保存条件は−40~−15℃、有効期間9カ月(冷凍保管が必要な点はスパイクバックスと同様)
  • 新有効成分含有医薬品として承認されており、既存のスパイクバックスとは別製品として取り扱う
  • 心筋炎リスク低減の根拠はまだ臨床的に確立されておらず、承認条件として医薬品リスク管理計画の策定が求められている

アレセンサカプセル150mg
(アレクチニブ塩酸塩)

承認区分: 承認事項一部変更(新効能・新用量)

追加された効能・効果: ALK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌(非小細胞肺癌および炎症性筋線維芽細胞性腫瘍を除く)

今回の変更で何が変わったか

アレクチニブ(アレセンサ)はこれまで、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌(NSCLC)・術後補助療法、および再発・難治性の未分化大細胞リンパ腫を対象として国内で承認されていた。今回の一部変更により、NSCLCとIMT(炎症性筋線維芽細胞性腫瘍)を除くALK融合遺伝子陽性の進行・再発固形癌全般が新たに適応に加わった。

審査報告書によると、2026年1月時点でこの効能・効果でアレクチニブが承認されている国・地域は存在しない。日本発の国内試験(TACKLE試験)を根拠とした実質的に世界初の承認である。

承認の根拠:TACKLE試験

主要な根拠試験はTACKLE試験(国内第II相、多施設非盲検非対照試験)。

  • 対象: 生後7カ月以上のALK遺伝子異常を有する進行・再発固形癌患者26例
  • 有効性解析対象: 本体コホートのALK融合遺伝子陽性患者16例
  • 奏効率(RECIST ver.1.1、画像中央判定): 43.8%(95%CI: 19.8–70.1)
  • 事前設定の閾値奏効率(10%)を超える事後確率は>99.9%で試験成功と判定

がん種別の内訳は以下のとおり(表13より):

がん種例数奏効率
IMT(炎症性筋線維芽細胞性腫瘍)6100%
間葉系腫瘍2100%
EIMS(上皮型炎症性筋線維芽細胞性肉腫)250%
皮膚付属器癌(アポクリン腺癌)1100%
肝・肝内胆管上皮性腫瘍1100%
小腸上皮性腫瘍(腺癌NOS)1100%

また、特別コホート・追加コホートにおけるALK融合遺伝子陽性患者の奏効率はそれぞれ75.0%(3/4例)、100%(3/3例)と高率であった。重要な点として、ALK活性化変異やALK遺伝子コピー数増加を有する患者では奏効が認められず、奏効はALK融合遺伝子陽性患者においてのみ確認された。

用法・用量(新規追加分)

成人:アレクチニブとして1回300mg、1日2回経口投与。

小児(体重別設定):

体重1日量投与方法(朝/夕)
6kg以上15kg未満150mg150mg/0mg(1日1回)
15kg以上25kg未満300mg150mg/150mg
25kg以上35kg未満450mg300mg/150mg
35kg以上600mg300mg/300mg

PANDA試験(国内第I相)のPKデータに基づいて小児用量が設定されており、生後7カ月以上の小児患者まで適用範囲が広がった。カプセルの内容物を懸濁しての投与も可能とされている。

臨床的ポイント

1. Tumor-agnosticアプローチの実現
ALK融合遺伝子はNSCLC以外にも、IMT・甲状腺癌・膵癌・大腸癌・軟部肉腫など多様ながん種で検出されるが、各がん種の頻度は極めて低い(C-CATデータベースでNSCLC以外は0.1〜30%程度)。がん種ごとの臨床試験が事実上不可能な希少な患者集団に対して、ALK融合遺伝子を共通の治療標的として横断的に承認が得られた意義は大きい。

2. 遺伝子異常の種別確認が重要
TACKLE試験において、ALK活性化変異やALK遺伝子コピー数増加では奏効が得られなかった。治療前の遺伝子検査では「ALK融合遺伝子」であることの確認が必要であり、IHC法・FISH法・NGS法(FoundationOne CDxなど)による適切な検査選択が求められる。

3. 全例使用成績調査が課せられた承認条件
NSCLCおよびIMTを除くALK融合遺伝子陽性の進行・再発固形癌の全症例、および小児のALK融合遺伝子陽性進行・再発固形癌の全症例を対象に使用成績調査が義務付けられた。TACKLE試験はサンプルサイズの制約から各がん種の個別評価に限界があるため、製造販売後のリアルワールドデータが今後の位置付け確立に不可欠となる。

4. 安全性プロファイルはNSCLCでの承認時と同様
間質性肺疾患(ILD)・肝機能障害・好中球減少・白血球減少・腎機能障害・徐脈・QT間隔延長・視覚障害・消化管穿孔・血栓塞栓症・溶血性貧血が既知の注意事項として引き続き適用される。がん化学療法に十分な経験を持つ医師のもとでの使用が前提とされている。


マブキャンパス点滴静注 30 mg(アレムツズマブ)

一般名: アレムツズマブ(遺伝子組換え)
申請者: サノフィ株式会社
承認区分: 承認事項一部変更(新効能追加)

今回の変更点

「T細胞性前リンパ球性白血病(T-PLL)」が効能・効果に追加された。これにより、マブキャンパスの承認効能は以下の3つとなる。

  1. 再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(2014年9月承認)
  2. 同種造血幹細胞移植の前治療(2020年12月承認)
  3. T細胞性前リンパ球性白血病(今回追加)

T-PLLへの用法・用量は既承認のCLLと同一であり、3 mg/日の連日点滴静注から開始し、10 mg/日への増量を経て、最終的に30 mg/回・週3回隔日投与へと段階的に増量する(投与開始から最大12週間)。

申請の経緯

本申請は公知申請によるものであり、新たな臨床試験は実施されていない。日本リンパ腫学会からの要望を受け、検討会議においてアレムツズマブのT-PLLに対する有用性が「医学薬学上公知」と判断されたことが根拠となっている。

海外主要6カ国(米国・英国・独国・仏国・加国・豪州)においてT-PLL適応の正式承認は取得されていないが、**NCCNガイドライン(v.1.2025)およびBSHガイドライン(2021年版)**でT-PLLの治療選択肢として記載されており、国際的な診療実態との整合性が確認されている。

臨床的ポイント

T-PLLは希少かつ予後不良の成熟T細胞腫瘍であり、標準治療が確立されていない難治性疾患である。本邦ではこれまでアレムツズマブのT-PLL適応がなく、適応外使用に頼らざるを得ない状況だった。今回の適応追加により、国内でも保険診療上の根拠をもってアレムツズマブを使用できるようになった点が最大の臨床的インパクトである。

作用機序はCD52を標的とした抗体依存性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)であり、T細胞表面にもCD52が高発現することから、T-PLLに対する理論的背景も明確である。

安全性については、T-PLL患者への投与で認められた主な有害事象が既存添付文書の注意喚起事項の範囲内であることが確認されており、新たな安全性上の懸念は認められていない。ただし警告事項は変更されておらず、以下の点は引き続き厳守が必要である。

  • Infusion reaction(投与前の抗ヒスタミン剤・解熱鎮痛剤の前投薬が必須)
  • 重篤な感染症リスク(CD52発現細胞の広範な枯渇による強力な免疫抑制)
  • 骨髄抑制(好中球・血小板の推移に応じた段階的な用量調節基準に従うこと)

なお本剤の使用にあたっては、緊急時対応が可能な医療施設において、造血器悪性腫瘍の治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとでの投与が条件とされている。