承認情報PMDA承認承認事項一部変更

【PMDA承認情報】2026/06/29 医薬品承認一覧

目次
製品名 承認区分 効能効果 PMDA
1.ゾコーバ錠25 mg 承認 2.  同 錠125 mg【承認事項一部変更】(2026年6月承認分)SARS-CoV-2 による感染症の治療 詳細
アバスチン点滴静注用100 mg/4 mL/点滴静注用400 mg/16 mL 承認事項一部変更 神経線維腫症2型 詳細
イソトレックスカプセル8 mg 承認 同   カプセル16 mg【承認】(2026年6月承認分)大量化学療法後の神経芽腫 詳細
ソグルーヤ皮下注5 mg/皮下注10 mg/皮下注15 mg 承認事項一部変更 ・骨端線閉鎖を伴わないSGA(small-for-gestational age)性低身長症・骨端線閉鎖を伴わないヌーナン症候群における低身長 詳細
ティブソボ錠250 mg 承認事項一部変更 詳細
ブメリティカプセル231 mg 承認 詳細
グロベニン-I10 %静注5 g/50 mL/10 %静注10 g/100 mL/10 %静注20 g/200 mL 承認事項一部変更 自己免疫性脳炎 詳細
献血グロベニン-I10 %静注2.5 g/25 mL/10 %静注5 g/50 mL/10 %静注10 g/100 mL 承認事項一部変更 自己免疫性脳炎 詳細

2026年6月の承認では、新規承認3品目・承認事項一部変更6品目が対象となっています。COVID-19治療薬ゾコーバに低用量25 mg錠が新たに加わり、用量選択の幅が広がりました。また、グロベニン系免疫グロブリン製剤2製品が自己免疫性脳炎を新適応として取得し、難治性神経疾患への対応が強化されています。希少疾患領域では、神経芽腫向けイソトレックス・神経線維腫症2型へのアバスチン適応拡大・ヌーナン症候群やSGA性低身長症へのソグルーヤ適応追加など、小児・希少疾患への承認が目立ちます。各薬剤の詳細は以下の個別情報をご参照ください。


ゾコーバ錠25mg / 同錠125mg(エンシトレルビル フマル酸)

承認区分: ゾコーバ錠25mg 新規承認 / 同錠125mg 承認事項一部変更(2026年6月)

効能・効果: SARS-CoV-2による感染症の治療(および予防)

今回の変更点:小児(6歳以上12歳未満)への適応拡大

既存のゾコーバ錠125mgは成人・12歳以上の小児を対象として承認されていたが、今回の承認により6歳以上12歳未満かつ体重20kg以上の小児への使用が可能となった。あわせて、この小児用途に対応する新規剤形として25mg錠が新規承認された。

25mg錠の追加が不可欠な理由は用量設計にある。体重区分ごとの用法は以下のとおりで、最小区分(20kg以上30kg未満)では2〜5日目の維持量が75mgとなり、既存の125mg錠では対応できない。25mg錠3錠で75mgを実現する設計となっている。

体重1日目2〜5日目
40kg以上375mg125mg
30kg以上40kg未満250mg125mg
20kg以上30kg未満150mg75mg

いずれも1日1回5日間経口投与。

審査の根拠:PK外挿戦略

本申請の主要評価項目はPK(薬物動態)および安全性であり、有効性は副次評価項目として位置づけられた。国内第III相試験(T1231試験、6〜11歳・体重20kg以上・78例)において、小児各体重区分での血中エンシトレルビル濃度(C24h・AUC0-24h)は、成人で有効性が確認されている国際共同第II/III相試験(T1221試験)の375/125mg投与時と概ね同程度であることがPPK解析で確認された。

これはICH-E11ガイドラインに基づく外挿アプローチであり、「作用機序・疾患経過・発現する症状が小児と参照集団(12歳以上)で類似しており、同程度の曝露量が得られれば同等の有効性が期待できる」との考え方による。

臨床的ポイント

有効性について: T1231試験では症状回復までの時間における本剤群とプラセボ群の差は小さく(5症状回復:中央値140.5時間 vs 141.3時間)、統計的な優越性は示されなかった。PMDAはその要因として①検出力不足(症例数設定の問題)、②SARS-CoV-2以外の呼吸器病原体との重複感染の影響、③T1231試験ではベースライン時の症状重症度がT1221試験より低かったこと、を挙げており、PK外挿による有効性の推定を支持する立場をとっている。

安全性について: 有害事象の発現割合は本剤群41.0%(32/78例)、プラセボ群30.8%(12/39例)。最頻の副作用は高比重リポ蛋白減少(14.1%)で、成人での既知プロファイルと一致している。嘔吐(3.8%)は小児特有の注意事項として把握が必要。死亡・重篤な有害事象・投与中止に至る事象は認められなかった。幼若ラットを用いた毒性試験では、無毒性量(90 mg/kg/日)での曝露量は臨床最大曝露量の2.2倍であることが確認されている。

他の小児COVID-19治療薬との位置づけ: 本邦では体重40kg以上の小児にレムデシビル(ベクルリー)が、6歳以上・体重20kg以上の小児にニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッドパック)がすでに承認されており、ゾコーバ錠は同じ体重20kg以上・6歳以上の区分で新たな経口抗ウイルス薬の選択肢を加える。パキロビッドパックは多数の薬物相互作用(CYP3A基質との禁忌・注意が広範)が実臨床での使用制限となっているケースがあり、相互作用プロファイルの異なるエンシトレルビルの選択肢追加は意義がある。なお、ゾコーバ錠25mgは劇薬に該当するとされており、管理・処方において注意が必要。


アバスチン点滴静注用100 mg/4 mL/点滴静注用400 mg/16 mL(ベバシズマブ)

承認区分: 承認事項一部変更(適応追加)
追加効能・効果: 神経線維腫症2型
用法・用量: ベバシズマブとして1回5 mg/kg(体重)を2週間間隔で点滴静脈内注射

今回の承認で何が変わったか

アバスチンはこれまで結腸・直腸癌、非小細胞肺癌、乳癌、悪性神経膠腫、卵巣癌、子宮頸癌、肝細胞癌の7疾患に承認されていた。今回、神経線維腫症2型(NF2)が新たに追加され、国内で初めてNF2に対する薬物療法が承認された。

NF2はこれまで国内に承認薬が存在せず、治療の選択肢は手術による摘出または定位放射線治療に限られていた。しかし、前庭神経鞘腫の手術では術側の聴力喪失がほぼ不可避であり、脳幹・各種脳神経への侵襲リスクも高い。放射線治療では悪性化リスクの上昇が報告されている。今回の承認は、こうした状況に初めて薬物という第三の選択肢をもたらすものである。

対象疾患と作用機序

NF2はNF2遺伝子変異によりシュワン細胞のMerlinタンパク機能が失われることで生じる常染色体顕性遺伝疾患で、国内の指定難病(第34号)。患者の90〜95%に両側前庭神経鞘腫が発生し、難聴・ふらつきが主症状となる。患者数は国内推定約800名と極めて希少である。

前庭神経鞘腫の腫瘍組織ではVEGFおよびVEGFRの発現が確認されており、ベバシズマブのVEGF阻害によって血管新生を抑制し、腫瘍増殖を制御することが期待される。NF2関連神経鞘腫モデルマウスでの非臨床試験においても、血管数・血管密度の減少、腫瘍増殖抑制および生存期間延長が示されている。

承認の根拠となった臨床試験

国内第II相試験(FMU2019-01-NF2試験)は、片側以上の前庭神経鞘腫を有するNF2患者62例を対象としたプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験である(本剤群31例、プラセボ群31例)。

主要評価項目である投与開始24週時点の最高語音明瞭度(%)に基づくレスポンダー割合は、本剤群16.1%対プラセボ群3.2%(群間差12.9%、p=0.0858)と統計学的有意差は認められなかった。ただし、最高語音明瞭度のベースラインからの変化量の群間差は+11.6%(95%CI: 3.5〜19.7%)であり、補聴器適合検査の基準(+10%超で適合良好)を上回る改善が本剤群で確認された。

腫瘍縮小効果に関しては、投与開始24週時点で本剤群の腫瘍体積は平均14.1%減少した一方、プラセボ群では平均7.0%増大しており、群間差は21.1%(95%CI: 14.6〜27.5%)と明確な差が認められた。24週時点の奏効率(腫瘍体積20%以上縮小)は本剤群33.3%、プラセボ群3.2%であった。

PMDAはこれらの結果を総合的に評価し、主要評価項目での統計学的有意差は得られなかったものの、有効性は示されたと判断した。国内治療指針でのMRI成長確認時の使用推奨、NCCN(v.3.2025)・EANOガイドラインでの推奨も根拠として考慮されている。

臨床現場へのインパクトと注意点

用量設定がほかの効能と異なる点に注意が必要である。NF2に対する用法・用量は5 mg/kgを2週間間隔の単剤投与であり、がん種ごとに併用抗悪性腫瘍剤や投与量が異なる既存の用法とは独立している。

有害事象については、国内試験における本剤群での主な発現は高血圧(29.0%)、口内炎(16.1%)、頭痛(9.7%)であり、蛋白尿による投与中止が2例認められた。これらは既知の安全性プロファイルと一致する。

再治療規定も重要なポイントである。初期投与期間(48週)終了後に腫瘍が再増悪した場合には、5 mg/kgを2週間間隔で6回の再治療が可能とされており、長期管理の観点から有用な仕組みとなっている。

妊娠可能な女性への投与には慎重な判断が求められる。本剤はIgG1抗体であり胎盤移行が想定されること、VEGF阻害による妊娠維持への影響が懸念されること、ウサギ胚・胎児毒性試験での外形・骨格異常が示されていることから、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する。なお、NF2は良性腫瘍であるため、今回の審査ではICH M3/S6ガイドラインに基づき雌雄受胎能を含む生殖発生毒性が新たに評価されている点が悪性腫瘍適応との審査上の違いである。

再審査期間は4年。


イソトレックスカプセル8 mg・同カプセル16 mg(イソトレチノイン)

一般名: イソトレチノイン
申請者: サンファーマ株式会社
承認区分: 新有効成分含有医薬品
効能・効果: 大量化学療法後の神経芽腫
再審査期間: 10年 / 劇薬・希少疾病用医薬品

今回の承認で何が変わるか

大量化学療法後の高リスク群神経芽腫に対する維持療法薬が、本邦で初めて正式承認された。審査報告書によれば、2026年2月時点において本効能・効果でイソトレチノインが承認されている国または地域は存在しない。海外では CCG-3891 試験(無作為化非盲検第 III 相)で経過観察群と比較して3年 EFS 率の有意な改善が示されて以来、NCCN ガイドラインに Category 1 推奨として掲載され、実臨床では長く使用されてきたが、正式な適応取得はなされていなかった。今回の国内承認により、日本が世界に先駆けてこの適応を公式に認めた形となる。

これまで本邦の高リスク群神経芽腫患者に対する維持療法は、抗 GD2 抗体(ジヌツキシマブ)と GM-CSF との併用が推奨されながらも、イソトレチノインについては未承認の状況下で使用せざるを得なかった。今回の承認によって、維持療法レジメンを正式なエビデンスと添付文書に基づいて実施できる環境が整う。

薬理学的背景

イソトレチノインは合成レチノイド化合物であり、核内受容体 RAR に結合して転写を活性化することで、MYCN 遺伝子の発現抑制、CDK4・MDM2 遺伝子の発現抑制、G₀/G₁ 期での細胞周期停止、および神経芽腫細胞の分化誘導を介して腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。神経芽腫において RAR は恒常的に発現しており、未分化な神経芽腫細胞は分化が誘導されると増殖能が失われアポトーシスへ向かうという生物学的特性が治療に利用されている。

用法・用量のポイント

投与スケジュールは「14日間投与・14日間休薬」を1サイクルとして繰り返す、1日2回経口投与。用量は体重 12 kg を境に体表面積基準と体重基準に分かれており、体重・体表面積に応じた細かな用量テーブルが設定されている。

  • 体重 12 kg 以上: 体表面積に基づく用量(1回 32〜128 mg、体表面積区分に応じて14段階)
  • 体重 12 kg 未満: 体重に基づく用量(1回 8〜32 mg、体重区分に応じて4段階)

なお、海外後発品(Absorica LD)を用いた試験では食事の影響が本薬の PK に明確な差をもたらさないことが示されており、市販予定製剤も食事の摂取状況にかかわらず投与可能とされている。

臨床成績(SPJ-101CA-NB 試験)

国内第 II 相試験(7施設、1〜18歳未満、高リスク群、n=16)の結果:

  • 主要評価項目(安全性): 本薬との因果関係が否定できない重症有害事象の発現割合 18.8%(3/16例)、90%CI の上限 41.7% はあらかじめ設定された上限値 50% を下回り、安全性は許容可能と判断された。
  • 1年 EFS 率: 93.8%(95%CI: 62.3〜99.1)
  • 1年 OS 率: 100%(95%CI: 100〜100)
  • 投与期間中および最終患者登録から1年後までの死亡ゼロ

症例数が限られた単アームの試験であることから有効性の評価には限界があるが、CCG-3891 試験の知見および国内外の教科書・ガイドラインへの記載も踏まえ、機構はこの患者層に対する本薬の有効性は期待できると判断した。

安全性上の注意点

SPJ-101CA-NB 試験では全例(100%)に何らかの有害事象が発現し、Grade 3 以上が 68.8%、減量に至った事象が 50% と高頻度であった。投与中止・休薬に至った例はなかった。

主な注意を要する有害事象は以下のとおり:

カテゴリー主な事象と頻度
脂質異常症高 TG 血症 56.3%(Grade 3 以上 12.5%)/ 投与前後の定期的な血液検査が必要
電解質異常高カルシウム血症 62.5%(Grade 3 以上 37.5%)/ 減量要因として最多
皮膚障害皮膚乾燥 62.5%、湿疹 50%、口唇炎 37.5%(いずれも Grade 3 以上なし)
感染症上気道炎症 75%、重篤例も報告(敗血症・RS ウイルス・肺炎球菌感染症)
精神障害海外製造販売後に抑うつ・自殺念慮・精神病性障害等が多数報告。投与前後の精神神経症状の慎重な観察が必要
骨端早期閉鎖海外報告あり。成長期の小児では定期的なモニタリングが推奨される
頭蓋内圧亢進症国内試験では報告なし。海外製造販売後に28例報告

薬剤師・医療従事者向け実務のポイント

  • 催奇形性: 他の合成レチノイドと同様に高い催奇形性を有する。妊娠中または妊娠している可能性のある患者への投与禁忌。投与中および投与終了後1ヵ月間は適切な避妊を指導すること
  • 薬物相互作用: 主に CYP3A、CYP2C8、UGT1A9 で代謝される。現時点では CYP3A 阻害剤・誘導剤、CYP2C8 阻害剤・誘導剤、UGT1A9 阻害剤の影響は明確でなく、添付文書での注意喚起が求められる
  • 血漿タンパク結合率: 99.9%(主にアルブミン結合)
  • 定期モニタリング: 血中脂質、電解質(特にカルシウム)、肝機能を投与前後および投与中に定期的に確認する
  • 劇薬指定: 管理・保管・調剤に際して劇薬としての取り扱いが必要
  • 本薬は希少疾病用医薬品であり、医薬品リスク管理計画(RMP)の策定・実施が承認条件として付された

ソグルーヤ皮下注5mg/10mg/15mg(ソマブシタン〔遺伝子組換え〕)

承認区分: 承認事項一部変更(新効能・新用量)
申請者: ノボ ノルディスク ファーマ株式会社

今回追加された効能・効果

  • 骨端線閉鎖を伴わないSGA(small-for-gestational age)性低身長症
  • 骨端線閉鎖を伴わないヌーナン症候群における低身長

用法・用量(新適応): ソマブシタン(遺伝子組換え)として0.24 mg/kgを週1回、皮下注射する


何が変わったか

ソグルーヤ(ソマブシタン)は2021年に成人成長ホルモン分泌不全症(重症)、2023年に骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症(小児GHD)へ適応取得済みの週1回投与型hGH製剤である。今回の一部変更承認により、SGA性低身長症およびヌーナン症候群(NS)における低身長の2疾患が新たに適応として加わった。

これら2疾患はいずれも従来型hGH製剤(ノルディトロビン等)による週6〜7回の皮下注射が標準治療であり、高頻度注射が患者・保護者の大きな負担となっていた。週1回投与という投与頻度の優位性はそのままに、より広い成長障害疾患群に選択肢を提供できる点が今回の承認の臨床的意義である。

なお、新適応における用量は0.24 mg/kg/週であり、小児GHDで用いる0.16 mg/kg/週より高用量に設定されている点に注意が必要である。


対象疾患の概要と疾患負荷

SGA性低身長症: 出生時の体重・身長が在胎週数相当の10パーセンタイル未満かつ−2SD未満の児のうち、2歳までにcatch-upしない約10〜15%が対象となる。本邦でのSGAの有病率は3.5%とされ、小児低身長症例全体の約20%を占める(Endocrinol Metab Clin North Am 2016; 45: 283-94)。

ヌーナン症候群(NS): RAS/MAPKシグナル伝達経路関連遺伝子変異に起因する遺伝性疾患。PTPN11遺伝子のミスセンス変異が最多で、常染色体優性遺伝をとる。出生1000〜2500人に1人の頻度とされ、低身長・先天性心疾患・発達遅滞を主徴とする(Orphanet J Rare Dis 2007; 14: 2-4)。小児期を通じて身長が同性平均の−2SD以下を下回る成長速度の低下が高頻度にみられる。


臨床試験の概要と有効性

第II相試験(4245試験): 日本人を含む国際共同試験で、SGA性低身長症患者60例を対象に実施。投与26週時の年間成長速度は本剤0.24 mg/kg群で11.2±3.4 cm/年(日本人部分集団10.9±1.2 cm/年)。ノルディトロビン0.067 mg/kg/日群(11.9±2.4 cm/年)と同程度の成長促進効果が確認された。

母集団薬物動態/薬力学解析では、本剤0.24 mg/kg/週投与はノルディトロビン最高承認用量(0.067 mg/kg/日)と同程度のIGF-Iavg SDスコアが得られると推定された。週1回投与の特性上、IGF-Imax SDスコアは高値・IGF-Imin SDスコアは低値を示すプロファイルとなり、1週間あたりのIGF-I SDスコア変動は連日投与製剤より大きいが、臨床的に問題となる範囲ではないと判断された。

第III相試験(4467試験): SGA性低身長症(141例)およびNS(77例)を含む国際共同バスケット試験。投与52週時の年間成長速度はSGA性低身長症患者で本剤群(0.24 mg/kg)11.0 cm/年相当、NS患者でも本剤群がノルディトロビン0.050 mg/kg/日群と比較してIGF-Iavg SDスコアおよびIGF-Imax SDスコアが高値傾向であった。

日本人データ: 薬物動態・薬力学の人種間差は臨床的に意義ある差異ではないと判断されており、日本人部分集団でも成長促進効果が確認されている。


安全性

主要期間(26週)および長期(4年間)を通じ、死亡例は認められなかった。主な有害事象は上咽頭炎・気管支炎・上気道感染などの感染症が中心であった。重篤な有害事象として発育性股関節形成不全が1例(本剤0.24 mg/kg継続群)に認められ、因果関係は否定されなかった。

抗本薬抗体はSGA性低身長症患者で14.5%、NS患者で4.1%に検出されたが、中和抗体はいずれの試験でも検出されておらず、抗体陽性例と陰性例の間で薬力学(IGF-I応答)に臨床的に意義ある差異は認められなかった。

承認条件として医薬品リスク管理計画の策定・適切な実施が求められており、再審査期間は4年とされた。


臨床現場へのインパクト

SGA性低身長症およびNSにおける低身長は、これまで週6〜7回の頻回注射が必要な製剤しか選択肢がなかった。本承認により、患者・保護者の注射負担を週1回に集約できる製剤が選択できるようになる。特に自己注射のアドヒアランスが問題となる小児・思春期患者や、多忙な保護者を抱えるケースでの治療継続性向上が期待される。一方で、1週間単位のIGF-I変動が大きい特性を考慮し、骨年齢・IGF-I値のモニタリングを適切に行うことが重要である。


ティブソボ錠250 mg(イボシデニブ)

承認区分: 承認事項一部変更(新効能・新用量)

追加された効能・効果: がん化学療法後に増悪した IDH1 遺伝子変異陽性の治癒切除不能な胆道癌


今回の変更で何が変わったか

ティブソボ錠250 mg(一般名:イボシデニブ)は、2025年3月に「IDH1 遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病(AML)」を効能・効果として本邦で承認された変異型IDH1阻害薬である。今回の一部変更承認により、「がん化学療法後に増悪した IDH1 遺伝子変異陽性の治癒切除不能な胆道癌」が新たに効能・効果に追加された。

治癒切除不能な胆道癌は予後不良であり、標準化学療法後に増悪した患者に対する確立された二次治療は限られていた。本適応追加により、IDH1 変異を持つ一部の胆道癌患者に対して、プラセボ比較で有効性が検証された分子標的薬という選択肢が加わることになる。なお、本剤は本適応にて希少疾病医薬品に指定されている(R7薬第705号)。


用法・用量

通常、成人にはイボシデニブとして 1日1回500 mg を経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。


臨床的ポイント

有効性の根拠(005試験・008試験)

本適応の主要な根拠は、化学療法歴のある IDH1 遺伝子変異陽性の治癒切除不能な胆管癌患者を対象とした海外第III相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験(005試験)である。

指標イボシデニブ群(n=124)プラセボ群(n=61)
PFS中央値(IRC判定)2.7カ月1.4カ月
ハザード比0.37(95%CI: 0.25, 0.54)—
p値(片側)<0.0001—
OS中央値10.3カ月7.5カ月

PFSの改善は感度分析・治験責任医師判定でも一貫していた。国内第II相試験(008試験)では12例中、6カ月時点のPFS率が25.0%(90%CI: 8.1, 46.5)と事前設定閾値(2.6%)を統計学的に有意に上回った。

作用機序

イボシデニブは変異型IDH1の酵素活性を阻害し、腫瘍内での2-HG産生を抑制する。胆道癌細胞において分化誘導(肝細胞マーカーの発現上昇)が示唆されており、AMLでの分化誘導作用と類似した機序が想定されているが、詳細な機序は現時点で完全には解明されていない。

安全性・投与に際しての注意点

胆道癌への投与において特に注意を要する有害事象は「QT間隔延長」であり、適切なモニタリングが求められる。AML適応から引き続き、分化症候群やGillain-Barré症候群にも注意が必要である。

警告の改訂として、従来「造血器悪性腫瘍の治療」に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとでの投与が求められていたが、今回の適応追加に伴い「がん化学療法造血器悪性腫瘍の治療」に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとでの投与へと警告が改訂された。

コンパニオン診断と患者選択

投与対象は IDH1 遺伝子に R132C、R132G、R132H、R132L、R132S 変異を有する患者であり、新鮮腫瘍組織または保存腫瘍組織を用いた中央測定機関での検査により確認することが前提となる。胆嚢癌および乳頭部癌に対する臨床試験成績は得られていないため、投与対象を選択する際にはこの点を熟知した上での判断が必要である。


ブメリティカプセル231 mg(ジロキシメルフマラート)

承認区分: 新有効成分含有医薬品(新規承認) 効能・効果: 再発寛解型多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制 用法・用量: 1回231 mg 1日2回から開始し、1週間後に1回462 mg 1日2回に増量 申請者: バイオジェン・ジャパン株式会社


この承認で何が変わるか

ジロキシメルフマラート(DRF)は、国内で既承認のフマル酸ジメチル(DMF、テクフィデラ)の主活性代謝物であるフマル酸モノメチル(MMF)のアミノエチルエステルである。投与後は速やかにMMFへ加水分解され、Nrf2経路の活性化を介した抗酸化・抗炎症作用によりRRMSに効果を示す。有効成分は異なるものの、DRFとDMFはいずれも体内で同一の主活性代謝物MMFに変換されるため、有効性プロファイルは本質的にDMFと同等とみなされている。

本薬が加わることで変わる最大のポイントは、DMFの臨床使用における最大の障壁であった消化管忍容性の改善だ。DMFは再発寛解型MSの経口疾患修飾薬として広く使用されてきたが、悪心・嘔吐・下痢・上腹部痛などの消化管症状が投与継続を妨げる要因となってきた。


主要な臨床エビデンス

A302試験(DMFとの直接比較、二重盲検RCT) において、RRMS患者を対象に本剤924 mg/日とDMF480 mg/日を5週間投与した結果:

  • 胃腸障害関連有害事象の発現割合:本剤群34.8% vs DMF群49.0%
  • 投与中止に至った胃腸障害関連有害事象:本剤群0.8% vs DMF群4.8%
  • 消化管症状スコアの5項目(IGISIS)を評価した複合指標において、本剤群の症状発生日数の比はDMF群の0.54倍(95%CI: 0.39–0.75)と有意に低かった

潮紅についても本剤群45.8% vs DMF群55.0%と、本剤でやや低い傾向が示された。

有効性については、A301長期非対照試験(96週)における調整済年間再発率(ARR)は0.13 [95%CI: 0.11, 0.17]。MS303国際共同第III相試験(日本人約50例含む)での日本人集団の有効性データは全体集団と概ね同様であった。


臨床的ポイント

DMFとの位置づけ: 本剤は「DMFからのスイッチ先」ではなく、DMFと同等の有効性を持ちながら消化管忍容性を改善した選択肢として位置づけられる。投与中断率の高さが課題だったDMFに比べ、継続投与のしやすさが期待される。

投薬管理上の注意: DMFと共通する安全性上のポイントがそのまま適用される。

  • PML(進行性多発性白質脳症):本剤の臨床試験でのPML確定例はないが、MMF曝露量がDMFと同程度であることからDMF同様のリスクが存在する。投与前・投与中の定期的なリンパ球を含む全血球数モニタリングが必須であり、片麻痺・認知機能障害等の症状出現時は速やかにMRI・髄液検査を行い投与を中止する
  • リンパ球減少症:DMF同様に注意が必要。500 cells/μL未満が6カ月以上継続する場合は投与中止を検討する
  • 潮紅:A301試験で37.3%に認められたが、多くは軽度または中等度。投与開始4週以内に最も多く発現し、経時的に減少する

妊婦・妊娠可能な女性: ウサギの胚・胎児発生毒性試験で骨格奇形が認められたことから、妊娠中の投与は推奨しない。投与中及び投与終了後一定期間の適切な避妊を指導する必要がある。

腎機能障害患者: 代謝物HESの曝露量が増加する傾向があるが、第III相試験では中等度以上の腎機能障害は除外されていることに留意する。

食事の影響: 高脂肪高カロリー食ではMMFのCmax低下が示されたが、AUCへの影響は認められなかった。食事の有無にかかわらず投与可能とされているが、DMFで懸念された空腹時の消化管症状リスクを回避する観点から食後投与が現実的な選択肢となる。

海外では2019年に米国、2021年に欧州で承認済みであり、2026年3月時点で40以上の国・地域で使用されている。再審査期間は8年。


グロベニン-I10%静注5g/50mL/10g/100mL/20g/200mL

承認区分: 承認事項一部変更(効能・効果追加)

追加された効能・効果: 自己免疫性脳炎(既承認13適応に第14番目として追加)

用法・用量(自己免疫性脳炎): 通常、1日に人免疫グロブリンGとして400mg(4mL)/kg体重を5日間連日点滴静注


何が変わったか

本承認の最大のポイントは、国内で初めて自己免疫性脳炎の効能・効果を取得したIVIG製剤が誕生したことである。

これまで国内では、IVIG療法が自己免疫性脳炎の治療に実臨床で使用されていたにもかかわらず、この効能・効果で承認されたグロブリン製剤は存在しなかった。国内疫学調査(2013〜2016年)では、自己免疫性脳炎の初回治療としてステロイドパルス療法が92.3%を占める一方、IVIG療法は6.2%にとどまっており、多くがオフラベル使用であったことがうかがえる。

本承認により、グロベニン-I10%静注が自己免疫性脳炎に対する法的根拠のある治療選択肢となった。申請者・PMDAともに、本剤を「自己免疫性脳炎の第一選択治療」として位置付けることが妥当と評価している点は、臨床現場にとって重要な意味を持つ。なお、本剤は希少疾病用医薬品(R7薬第710号・第711号)に指定されており、再審査期間は10年。


承認の根拠となった臨床試験

国内第III相試験(NPB-01-19/C-01試験)として、15歳以上の自己免疫性脳炎患者40例を対象に、実薬対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施された。

試験デザインは3期構成:

  1. 前治療期(8日間): 全例にステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン30mg/kg/日、最大1g/日を5日間)を実施
  2. 投与期(5日間): 本剤群(400mg/kg/日)または対照群(ステロイドパルス療法を再度実施)に1:1で割付
  3. 後観察期(12週間)

主要評価項目(後観察期4週時のCASEスコアがベースライン比40%以上改善した患者割合)の結果:

集団本剤群対照群群間差
抗体陽性集団(主要有効性解析対象集団)57.1%(4/7例)0%(0/3例)57.1%(95%CI: -22.9, 90.6)
FAS(抗体陽性・陰性含む)50.0%(10/20例)25.0%(5/20例)25.0%(95%CI: -5.9, 52.9)

症例数が限られており信頼区間は広いが、いずれの集団でも本剤群が対照群を点推定値で上回った。CASEスコアは自己免疫性脳炎に特徴的な9症状(てんかん発作・記憶機能障害・精神症状・意識・言語障害等)を0〜3段階で評価する複合スコアである。


安全性・注意点

安全性プロファイルは既承認効能・効果と大きく異なる傾向は認められなかった。

特に注意すべき点として、本剤の「重要な特定されたリスク」である無菌性髄膜炎がある。自己免疫性脳炎患者では投与後に項部硬直・発熱・頭痛・嘔吐・意識混濁等の症状が生じた場合に、本剤による無菌性髄膜炎なのか、自己免疫性脳炎の増悪なのかの鑑別が特に重要となる。添付文書での注意喚起が追記されている。


臨床的ポイントまとめ

  • 国内初の自己免疫性脳炎適応IVIG製剤として、これまでのオフラベル使用が公式な治療根拠を獲得
  • 「第一選択治療」への位置付けは、ステロイドパルス療法後の二次治療という枠組みを超え、より早期・積極的なIVIG使用の根拠となりうる
  • 抗体陰性例(細胞表面抗原抗体・細胞内抗原抗体のいずれも陰性)を含むFASでも本剤群が上回っており、自己抗体の種類を問わず投与対象となる
  • 小児(15歳未満)も投与対象に含まれ、用法・用量は成人と同様(400mg/kg/日×5日間)
  • 再投与(追加投与)については、有効性・安全性が確立していないため十分な検討が必要であり、漫然投与を避けることが添付文書上注意喚起されている

献血グロベニン-I 10%静注(ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン)

承認区分: 承認事項一部変更(効能追加)

追加効能・効果: 自己免疫性脳炎

今回の変更で何が変わったか

本承認により、「自己免疫性脳炎」が既承認13効能に加わり、第14番目の効能として正式追加された。

これは日本において自己免疫性脳炎への適応を有する初めてのIVIG製剤となる。海外ではIVIG療法がステロイドパルス療法・血漿交換療法と並んで第一選択治療の一つとして広く使われてきたが、国内では自己免疫性脳炎へのIVIG承認がなく、2013年の全国疫学調査では初回治療でのIVIG使用率はわずか6.2%にとどまっていた。今回の承認により、保険診療の枠内でIVIGを自己免疫性脳炎に使用できる正式な根拠が初めて整った。

なお、本製品は希少疾病用医薬品(R7薬)に指定されており(指定番号第710号・第711号)、再審査期間は10年。

用法・用量

通常、1日に人免疫グロブリンGとして 400 mg(4 mL)/kg体重を5日間連日点滴静注する。成人・小児で同一の用法・用量が設定されており、小児も投与対象に含まれる。

承認の根拠:国内第III相試験

15歳以上の自己免疫性脳炎患者40例(各群20例)を対象とした実薬対照無作為化二重盲検並行群間比較試験(NPB-01-19/C-01試験、2022年3月〜2024年8月)により審査された。

試験デザインの特徴として、前治療期(8日間)にステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン換算30 mg/kg、5日間)を実施し、効果不十分と判断された患者を投与期に移行させた。自己免疫性脳炎に確立された動物モデルが存在せず、実臨床でヒト免疫グロブリン製剤が使用されている実態を踏まえ、非臨床試験成績は提出されていない。

主要評価項目(後観察期4週時におけるCASEスコアのベースライン比40%以上改善率)の結果:

集団本剤群対照群群間差
抗体陽性集団(主要有効性解析対象)57.1%(4/7例)0%(0/3例)57.1%
FAS(抗体陽性・陰性含む)50.0%(10/20例)25.0%(5/20例)25.0%

CASEスコアは自己免疫性脳炎に多くみられる9つの症状(てんかん発作、記憶機能障害、精神症状、意識障害、言語障害、ジスキネジア/ジストニア、歩行障害、脳幹機能障害、四肢筋力)を複合的に評価する指標であり、抗体の種類にかかわらず短期的な治療効果を評価できる点が特徴。

安全性については、投与期における全有害事象発現率は本剤群35.0% vs 対照群60.0%であり、重篤な有害事象の発現割合が高い傾向はなかった。

臨床的ポイント

対象患者の範囲:抗NMDAR抗体、抗LGI1抗体、抗MOG抗体などの自己抗体陽性例のみならず、自己抗体陰性であるが診断基準を満たす例も投与対象に含まれる。

ステロイドパルス療法が禁忌・不適切な患者への対応:試験ではステロイドパルス療法後の患者を対象とせざるを得なかったが、ステロイドが禁忌(高血糖コントロール不良等)の患者にはIVIG単独での早期介入が選択肢となり得る。PMDAもこの点を踏まえ、未治療患者への投与も適切と判断している。

無菌性髄膜炎に注意:本剤の重要な特定リスクとして無菌性髄膜炎がある。自己免疫性脳炎患者では投与後に項部硬直・発熱・頭痛・嘔吐・意識混濁が出現した場合、本剤による無菌性髄膜炎か自己免疫性脳炎の増悪かの鑑別が必要であり、添付文書に注意喚起されている。

再投与について:追加投与の有効性は国内第III相試験では明確に示されていない。添付文書では「再投与した場合の有効性及び安全性は確立していない」旨が注意喚起されており、効果不十分な患者への漫然投与は避け、治療上の有益性を十分に考慮して判断することが求められる。