承認情報PMDA承認承認事項一部変更

【PMDA承認情報】2026/07/06 医薬品承認一覧

製品名 承認区分 効能効果 PMDA
エヌフロンシア筋注シリンジ105 mg 承認 1. 生後初回のRSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)感染流行期の重篤なRSウイルス感染症のリスクを有する新生児及び乳児における、RSウイルス感染による下気道疾患の発症抑制2. 生後初回のRSウイルス感染流行期の1.以外のすべての新生児及び乳児におけるRSウイルス感染による下気道疾患の予防 詳細
マルシロン配合錠 承認 月経困難症 詳細
レットヴィモ錠40 mg/錠80 mg/カプセル40 mg/カプセル80 mg 承認事項一部変更 同   錠80 mg【承認事項一部変更】    同   カプセル40 mg【承認事項一部変更】    同   カプセル80 mg【承認事項一部変更】(2026年6月承認分)1.RET 融合遺伝子陽性の進行・再発の固形腫瘍 詳細
1.ジャクスタピッドカプセル小児用2 mg 承認 2. 同 カプセル5 mg 【承認事項一部変更】 3. 同 カプセル10 mg【承認事項一部変更】 4. 同 カプセル20 mg【承認事項一部変更】(2026年6月承認分)ホモ接合体家族性高コレステロール血症 詳細

今回の承認では、新生児・乳児のRSウイルス感染予防を担うエヌフロンシア筋注シリンジ105 mgが新規承認され、重篤化リスクの有無を問わず下気道疾患の発症抑制・予防に用いられるようになりました。月経困難症治療薬としてマルシロン配合錠が新たに承認されたほか、RET融合遺伝子陽性の進行・再発固形腫瘍を対象とするレットヴィモ錠/カプセルは剤形・用量の追加により適応の選択肢が拡大しています。さらに、ホモ接合体家族性高コレステロール血症治療薬のジャクスタピッドカプセルは小児用2 mgが新規承認され、既存規格のカプセル5 mg/10 mg/20 mgについても承認事項が一部変更となりました。小児領域と希少疾患領域の双方で治療選択肢の拡充が図られた点が、今回の承認の大きな特徴です。


エヌフロンシア筋注シリンジ105 mg

製品名:エヌフロンシア筋注シリンジ105 mg(一般名:クレスロビマブ(遺伝子組換え)、申請者:MSD株式会社) 承認区分:新有効成分含有医薬品(新規承認)

効能・効果

  1. 生後初回のRSウイルス感染流行期の重篤なRSウイルス感染症のリスクを有する新生児及び乳児における、RSウイルス感染による下気道疾患の発症抑制
  2. 生後初回のRSウイルス感染流行期の1.以外のすべての新生児及び乳児におけるRSウイルス感染による下気道疾患の予防

用法・用量は、生後初回のRSウイルス感染流行期に105 mgを単回筋肉内注射(体重によらず固定用量)。

今回の承認で何が変わるのか

RSウイルス(RSV)感染症に対する乳児向け予防抗体としては、既にパリビズマブ(シナジス、重症化リスク児に月1回・シーズン中3〜5回投与)とニルセビマブ(ベイフォータス、体重換算の単回投与)が承認されている。今回のクレスロビマブは、この2剤に続く3剤目のRSV予防用モノクローナル抗体であり、以下の点で臨床選択肢を広げる。

  • 適応対象を一本化:本剤は「重篤化リスクを有する児」と「それ以外のすべての新生児・乳児」の両方を効能・効果に含み、対象児の背景を問わず単一製剤で生後初回のRSVシーズンをカバーできる設計になっている。
  • 体重によらない固定用量:ニルセビマブが体重区分により投与量を切り替えるのに対し、本剤は105 mgの単回投与で統一されており、投与量選択のミスを減らせる可能性がある。
  • 既存薬と異なるエピトープを標的:クレスロビマブはRSV Fタンパク質のSite IV領域に結合し、パリビズマブ・ニルセビマブとは異なる部位を認識する。将来的に既存薬耐性株が出現した場合の代替選択肢となりうる点は臨床的に意味がある(現時点での交差耐性データは限定的)。
  • Fc改変(YTE変異)による半減期延長:単回筋注でシーズンを通した曝露維持を狙った設計は既存薬と共通のコンセプトだが、本剤独自のFab配列により中和活性を担保している。

臨床的ポイント

  • 主要な有効性根拠は、健康な正期産児・早期産児を対象としたプラセボ対照第II/III相国際共同試験(004試験)。Day 150までのRSV関連下気道感染症(MALRI)発現率は本剤群2.5%、プラセボ群6.2%で、有効率60.4%[95%CI: 44.1, 71.9](p<0.001)と優越性が検証された。RSV関連入院率もプラセボ群と比較して84.2%[66.6, 92.6]の低下が認められている。
  • 重篤化リスクを有する早産児・慢性肺疾患(CLD)・先天性心疾患(CHD)児を対象とした実薬対照第III相試験(007試験)では、パリビズマブとの安全性・有効性の比較検討がなされ、有害事象プロファイルはおおむね同様であった。
  • 安全性面では、注射部位反応・易刺激性・傾眠などがプラセボ群と近い頻度で認められ、サイトカイン放出症候群に該当する事象は臨床試験・海外市販後報告のいずれでも確認されていない。
  • 抗薬物抗体(ADA)陽性例でDay 150までのMALRI発現率がやや高い傾向が示唆されており、添付文書での情報提供と製造販売後のADA関連報告の注視が承認条件として求められている。

既存2剤に加えて対象児の枠を問わない選択肢が増えることで、生後初回RSVシーズンにおける予防投与の運用(対象児選定・在庫管理・体重換算の要否)を医療機関ごとに見直す契機になると考えられる。


マルシロン配合錠

製品名:マルシロン配合錠(一般名:デソゲストレル/エチニルエストラジオール、DSG 0.15 mg/EE 0.02 mg) 承認区分:新医療用配合剤としての新規承認 効能・効果:月経困難症

何が変わったのか

月経困難症を効能・効果とするLEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン)配合剤には、すでにジェミーナ配合錠やヤーズフレックス配合錠など「28日以上を1周期とする連続投与」が可能な製剤が存在する。しかし、これらは連続投与期間が固定されており、患者の都合に応じて柔軟に変更することはできなかった。

マルシロン配合錠の最大の特徴は、連続投与期間を24〜80日間の範囲で患者が任意に選択できる点にある。24日連続投与後であれば、消退出血を予定したいタイミングで4日間の休薬を挟むことができ、検査や旅行などのライフイベントに合わせて服薬スケジュールを調整しやすい。これにより、既存のLEP配合剤では対応しきれなかった多様な生活様式への適応が可能となり、治療選択肢の幅が広がったことになる。

なお有効成分(デソゲストレル/エチニルエストラジオール)自体は、同一配合比でエストロゲン量がやや多いマーベロン21・28として経口避妊薬の分野で1999年から国内使用実績があり、有効成分としての安全性プロファイルは既知のものである。

臨床試験のポイント

国内第Ⅲ相試験(OG8276A-301試験、プラセボ対照二重盲検並行群間比較、211例)において、投与開始84日目までの月経困難症スコアのベースラインからの変化量は本剤群−2.50、プラセボ群−0.84(群間差−1.67、p<0.001)と、プラセボに対する優越性が検証された。原発性・続発性月経困難症、休薬回数(1〜3回)のいずれのサブグループでも一貫した改善が認められている。

臨床的ポイント

  • 血栓症リスク:継続投与期に肺塞栓症・深部静脈血栓症が各1例(計1.0%)報告された。EE含量が0.02 mgと既承認LEP配合剤(0.03〜0.04 mg)より少ないことから血栓症リスクは既承認薬を上回らないと判断されたが、重要な特定されたリスクとしてRMP(医薬品リスク管理計画)に組み込まれ、患者携帯カード・患者用指導箋による情報提供が追加のリスク最小化活動として実施される。
  • 月経中間期出血:二重盲検投与期における発現割合は本剤群39.6%と高頻度で、既存LEP配合剤と同様の傾向。服薬継続における脱落理由となり得るため、事前説明が重要となる。
  • 服用開始日の柔軟性:月経周期のいずれの日からも服用開始可能だが、月経開始日以外から開始する場合は最初の1週間、ホルモン剤以外の避妊法の併用が必要である点に留意が必要。
  • 市販後調査:新たな安全性懸念が示唆されなかったことから、市販直後調査・製造販売後調査は実施せず、通常の安全性監視活動での対応となる。

レットヴィモ錠40 mg/錠80 mg/カプセル40 mg/カプセル80 mg(セルペルカチニブ)

効能・効果:RET融合遺伝子陽性の進行・再発の固形腫瘍、RET遺伝子変異陽性の根治切除不能な甲状腺髄様癌(効能・効果自体の変更はなし) 承認区分:承認事項一部変更(小児患者への投与を可能とする用法・用量の追加)

セルペルカチニブは高選択的RET阻害剤であり、本邦では2021年の非小細胞肺癌適応取得を皮切りに、甲状腺髄様癌・甲状腺乳頭癌を含む甲状腺癌、さらに2024年6月にはがん種を問わないRET融合遺伝子陽性固形腫瘍へと適応を拡大してきた。既承認の小児用法・用量は12歳以上に限られており、体表面積区分ごとに1回92 mg/m²相当(1日184 mg/m²)をBID投与する設計であった。

今回の変更点:対象年齢が2歳以上へ拡大

今回の一部変更承認により、既承認の「12歳以上」という年齢下限が撤廃され、2歳以上12歳未満の小児患者にも投与が可能になった。用法・用量は体表面積区分別に以下のとおり設定される。

体表面積用法・用量
0.33 m²以上0.66 m²未満40 mg 1日3回(TID)
0.66 m²以上1.2 m²未満80 mg 1日2回(BID)
1.2 m²以上1.6 m²未満120 mg 1日2回(BID)
1.6 m²以上160 mg 1日2回(BID)

特筆すべきは、最小体表面積区分(0.33~0.66 m²)でのみ1日3回投与(TID)が新設された点である。PPK解析に基づくシミュレーションでは、この区分に40 mg BIDを投与した場合、成人での承認用量(160 mg BID)投与時の曝露量をやや下回る傾向が認められた一方、40 mg TIDでは成人の曝露量プロファイルとより近似したことから、この区分のみ1日3回投与という異なる用法が採用されている。単純な体表面積比例のBID投与ではなく、区分によって1日投与回数自体が変わる設計は処方・服薬指導上見落としやすく、注意を要する。

なお、本邦を除き2026年2月時点でこの年齢層(2~12歳未満)への投与を承認している国・地域はなく、世界に先駆けた承認となる。

承認の根拠となった臨床データ

主な根拠は国際共同第I/II相18036試験(RET遺伝子異常を有する進行・再発固形腫瘍等の小児患者36例、データカットオフ2024年11月8日)である。主要評価項目のIRC判定奏効率(CR+PR)は全体集団で52.8%[95%CI 35.5, 69.6](19/36例)。がん種別では、RET遺伝子変異陽性甲状腺髄様癌60.0%(9/15例)、RET融合遺伝子陽性甲状腺乳頭癌53.3%(8/15例)、RET融合遺伝子陽性固形腫瘍(甲状腺癌除く)33.3%(2/6例)であり、がん種によらず奏効が確認された。安全性については、第I相パート・第II相パートのコホート1・2で投与関連死亡は認められず、コホート4(他コホート非該当例)で1/18例(5.6%)の死亡が原疾患進行により報告された。

用法・用量の妥当性は、市販製剤(錠剤・カプセル剤)と治験使用製剤(懸濁剤、20 mgカプセル等、市販予定なし)が異なることから、PPK解析による曝露量シミュレーションで橋渡しされた点が審査上のポイントとなっている。また小児患者におけるPKの国内外差は認められていないが、解析対象36例中日本人はわずか3例であり、国内での使用実態把握を目的とした製造販売後調査(骨端離開・骨成長異常、及びコホート4に該当するがん種に対する有効性)が承認条件外の検討課題として付されている。

臨床的インパクト

これまで2~12歳未満のRET異常陽性小児がん患者は、本剤の適切な小児用量設定が存在しないため事実上の適応外という制約があった。今回の用法・用量追加により、乳幼児期からの分子標的治療へのアクセスが国内で初めて公式に確立されたことになる。RET融合・変異は腫瘍の発がんドライバーであり年齢を問わず作用機序上の合理性があるため、希少な小児RET関連腫瘍(甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、非小細胞肺癌・甲状腺癌以外の固形腫瘍等)において、化学療法や外科的介入に先行・代替する治療選択肢としての位置づけが強化される。一方で、最小体表面積区分でのTID投与という複雑化した用法は、小児腫瘍領域での確実な処方・調剤体制整備が求められる点として臨床現場で留意すべきである。


ジャクスタピッドカプセル小児用2 mg(新規承認)/同カプセル5 mg、10 mg、20 mg(承認事項一部変更)

一般名: ロミタピドメシル酸塩(MTP阻害薬) 効能・効果: ホモ接合体家族性高コレステロール血症(HoFH) 承認区分: 小児用2 mgカプセルは新用量医薬品として新規承認、5 mg・10 mg・20 mgカプセルは小児への用法・用量追加に伴う承認事項一部変更

本薬は2016年9月に成人HoFH向けに承認済みのMTP阻害薬であり、今回の承認は新規成分の承認ではなく、**海外第Ⅲ相試験(APH-19試験)**の成績に基づき、対象年齢を2歳以上の小児にまで拡大する用法・用量追加である。あわせて低用量からの慎重な漸増投与に対応するため、小児用2 mgカプセルが新剤形として設定された。

何が変わったのか

これまでHoFHの小児患者に対しては、スタチン、エゼチミブ、PCSK9阻害薬、LDLアフェレーシスなど既存の脂質低下療法が用いられてきたが、LDL受容体機能がほぼ欠損しているHoFHでは、これらだけでは目標値まで低下しきれない症例が少なくなかった。今回の適応拡大により、2歳という早期からMTP阻害薬という異なる作用機序の薬剤を併用選択肢に加えられるようになった点が最大の変更点である。米国では2026年2月に小児適応が先行承認されており、国内でも希少疾病用医薬品としての開発が実を結んだ形となる。

用法・用量は年齢区分(2歳以上11歳未満/11歳以上16歳未満/16歳以上18歳未満)ごとに開始用量・増量スケジュール・最大用量が細かく規定されており、いずれも夕食後2時間以上あけての1日1回投与から開始し、忍容性を確認しながら4週間(初回増量のみ8週間)以上の間隔で段階的に増量する設計となっている。なお16歳以上18歳未満の最大用量は成人の60 mgではなく40 mgに設定されており、これはPPK解析・生理学的薬物速度論モデルによるシミュレーションで、60 mg投与時に肝機能障害リスク(ALT・AST上昇)の増加が示唆されたことを踏まえた安全側の判断である。

臨床的ポイント

APH-19試験(5〜17歳のHoFH患者46例、非盲検非対照、評価期24週)では、主要評価項目である投与24週時のLDL-Cのベースラインからの変化率は全体で−53.9%であり、5〜10歳(−56.5%)、11〜17歳(−51.6%)いずれの年齢層でも同程度の低下が得られた。欧州ガイドラインの管理目標値(135 mg/dL未満)を一度でも達成した患者割合は41.9%であった。104週までの長期投与データでも効果減弱は認められず、持続的な脂質低下効果が確認されている。

安全性面では、下痢・腹痛・トランスアミナーゼ上昇・発熱・嘔吐といった既知の消化器系・肝機能関連事象が高頻度に発現するが、いずれも軽度〜中等度にとどまった。小児では成人と比較して腹痛、発熱、心室肥大の心電図所見の発現割合がやや高い傾向にあったものの、臨床上大きな問題はないと判断されている。投与中止に至った例は下痢2例のみで、死亡例はない。本剤は非臨床試験成績から出血性事象・悪性腫瘍の発現リスクも示唆されているが、本試験および市販後情報では特段の懸念は報告されていない。低用量からの慎重な漸増と、休薬・減量基準に基づく肝機能モニタリングが、小児での安全な使用の鍵となる。