承認情報PMDA承認

【PMDA承認情報】2026/07/21 医薬品承認一覧

製品名 承認区分 効能効果 PMDA
エトカマ錠75 mg 承認 内分泌療法中にESR1 遺伝子変異が確認され疾患進行が認められないホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌 詳細
サークリサ皮下注1,400 mg 承認 多発性骨髄腫 詳細
1.サデルガカプセル25 mg 承認 2.  同 カプセル100 mg【承認事項一部変更】(2026年6月承認分)ゴーシェ病の諸症状(貧血、血小板減少症、肝脾腫及び骨症状)の改善 詳細

今回の承認では、乳癌領域での新規作用機序薬の登場、多発性骨髄腫治療における皮下注射製剤の追加、そして希少疾患であるゴーシェ病治療薬の適応拡大という、幅広い領域での動きが見られました。エトカマ錠75 mgは、内分泌療法中にESR1遺伝子変異が確認され疾患進行が認められないホルモン受容体陽性・HER2陰性の手術不能又は再発乳癌に対し、新たな治療選択肢として承認されています。サークリサ皮下注1,400 mgは多発性骨髄腫を適応として承認され、既存の点滴静注製剤に加えて皮下投与という選択肢が加わることで、投与時間の短縮や患者負担の軽減が見込まれます。サデルガカプセルについては25 mgが新規承認される一方、100 mgでは承認事項一部変更が行われ、ゴーシェ病に伴う貧血、血小板減少症、肝脾腫及び骨症状の改善に対する用量設定の幅が広がりました。いずれも既存治療で対応が難しかった患者層への選択肢拡大という点で、臨床的な意義の大きい承認といえます。


エトカマ錠75 mg

製品名: エトカマ錠75 mg(一般名: カミゼストラント) 申請者: アストラゼネカ株式会社 承認区分: 医療用医薬品(1)新有効成分含有医薬品 効能・効果: 内分泌療法中にESR1遺伝子変異が確認され疾患進行が認められないホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌 用法・用量: CDK4/6阻害剤との併用において、通常、成人にはカミゼストラントとして75 mgを1日1回経口投与する

何が変わったのか

本剤は経口投与可能な選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であり、既存のフルベストラント(筋注薬)とは異なり内服のみで治療が完結する点が既に一つの利便性向上だが、それ以上に臨床上のインパクトが大きいのは治療変更のタイミングそのものが変わることである。

従来、AI+CDK4/6阻害剤による一次治療は、画像上の疾患進行が確認されるまで継続するのが標準であった。本剤の承認により、疾患進行が画像上まだ確認されていない段階でも、ctDNAによるESR1遺伝子変異のモニタリングでAI耐性の兆候を捉えた時点で、CDK4/6阻害剤は継続したままAIから本剤へ切り替えるという、バイオマーカー駆動型の早期治療変更が可能になる。これは「進行してから次治療を考える」から「分子学的な耐性シグナルが出た時点で先回りする」への発想転換であり、乳癌診療における治療戦略の変化点といえる。

臨床的ポイント

  • 承認の根拠: 国際共同第III相SERENA-6試験(315例、うち日本人20例)。AI+CDK4/6阻害剤の一次治療を6カ月以上受け、疾患進行なくctDNAでESR1遺伝子変異が確認された患者を、本剤+CDK4/6阻害剤群とAI継続+CDK4/6阻害剤群に無作為化。
  • 有効性: 主要評価項目の治験担当医師判定PFS中央値は本薬群15.97カ月 vs 対照群9.23カ月、ハザード比0.44[95%CI: 0.31, 0.60]、p<0.00001と、AI継続と比較して疾患進行リスクを半分以下に抑える結果。OS(中間解析)は未成熟ながら悪化傾向は認められていない。
  • 併用CDK4/6阻害剤を問わない: パルボシクリブ、アベマシクリブ、ribociclib(本邦未承認)いずれの併用でも一貫した有効性が示されており、既存のCDK4/6阻害剤治療を中断せずに内分泌療法パートナーのみ切り替えるという運用が可能。
  • 安全性上の注意点: 機構は肝機能障害、静脈血栓塞栓症、QT間隔延長を「特に注意を要する有害事象」と判断。有害事象としては好中球減少症(29.0%、Grade 3以上23.2%)が最多だが、光視症(20.0%)がSERDクラス特有の所見として比較的高頻度に認められる点は服薬指導・患者説明で押さえておきたい。
  • 国内データの位置づけ: 日本人症例数は20例(本薬群11例)と限定的だが、PFSの傾向は全体集団と乖離しておらず、機構も日本人患者への外挿性を妥当と判断している。

サークリサ皮下注1,400mg

製品名: サークリサ皮下注1,400mg(一般名: イサツキシマブ(遺伝子組換え)、申請者: サノフィ株式会社) 効能・効果: 多発性骨髄腫 承認区分: 承認(新投与経路医薬品、劇薬、生物由来製品、再審査期間6年)

何が変わったのか——「点滴」から「皮下注射」へ

本剤は新有効成分ではなく、既承認の点滴静注製剤(サークリサ点滴静注100 mg/500 mg、以下Isa-IV)と同一の抗CD38抗体イサツキシマブについて、新たな投与経路(皮下投与)を追加するものである。Isa-IVはすでに再発・難治性MM(Isa/Pd、Isa/Cd、Isa単独、Isa/DEX)および未治療MM(Isa/BLd)を効能・効果として承認済みであり、事実上MM治療のほぼ全ラインをカバーしている。今回の皮下注製剤(Isa-SC)は、その投与手段を大きく変える承認である。

臨床現場へのインパクトは主に2点。

  1. 投与時間の劇的な短縮: Isa-IVは体重換算(10 mg/kgまたは20 mg/kg)で数時間かけて点滴するのに対し、Isa-SCは体重によらない固定用量1,400 mgを、OBDS(オンボディデリバリーシステム、腹部に貼付し注入ボタンを押すだけの医療機器)を用いて中央値13分(97.9%が20分以内)、または手動注射でも約6分で投与完了する。点滴確保・輸液管理の手間がなくなり、患者・医療従事者双方の負担軽減につながる。
  2. infusion reactionの大幅な減少: 国際共同第Ⅲ相試験(EFC15951試験、Isa/Pd併用)において、「注入に伴う反応」の発現率はIsa-IV/Pd群25.0%(66/264例)に対し、Isa-SC/Pd群では1.9%(5/263例)と大幅に低かった。緩徐な吸収により血中濃度上昇が穏やかになることが背景にあり、開発時に想定されていたベネフィットが臨床試験で実際に確認された形である。

有効性については、EFC15951試験でIsa-SC/Pd群のIsa曝露量(第6サイクル第1日目のCtrough)がIsa-IV/Pd群に対し非劣性(幾何平均値比の90%信頼区間下限が非劣性マージンを上回る)であることが示され、ACT17453試験(Isa/Cd併用)やIIT17756・IIT17041試験(Isa/BLd併用)でもIsa-SCの曝露量はIsa-IVを下回らないと推定された。これらの薬物動態学的同等性を根拠に、Isa-IVと同様の有効性が期待できると判断されている。全体の有害事象プロファイル(好中球減少、感染症、注射部位反応など)はIsa-IVと同様であり、安全性上新たな懸念は認められていない。

臨床的ポイント

  • 使い分け: Isa-SC 1,400 mgはPd・Cd・BLd併用のいずれにおいてもIsa-IVと同等の有効性・安全性が期待できるため、輸液負荷や長時間点滴の負担が少ないIsa-SCが今後より多く選択されると想定される。ただしIsa単独投与・DEX併用(Isa-IV 20 mg/kg)についてはIsa-SCとの比較試験がなく、Isa-SCの用法・用量が設定されていないため、当該レジメンでは引き続きIsa-IVが用いられる。
  • 前投与薬とinfusion reaction対策: infusion reaction軽減のため、投与15〜60分前にデキサメタゾン、抗ヒスタミン薬、解熱鎮痛剤、ロイコトリエン受容体拮抗薬の前投与を行うことが用法・用量に関連する注意として設定されている。
  • Isa-IVからの切替え: Isa-IV投与中の患者は第1サイクル終了後にIsa-SCへ切り替え可能とされた。臨床試験でも切替え後に新たな安全性シグナルは認められていない。
  • 製剤取り違えの防止: 皮下投与製剤と静脈内投与製剤は外箱・バイアルラベル・キャップの色を規格ごとに変更し、皮下注用である旨を明記、製品名を斜体とするなど識別性を高める対策が予定されている。調剤・払い出し時の混同リスクに注意が必要。
  • 免疫原性: 抗Isa抗体陽性率は6.9%、中和抗体は0.9%と低く、大半(28/31例)は一過性であり、有効性・安全性への影響は限定的と考えられている。
  • RMP: 重要な特定されたリスクとしてinfusion reaction、骨髄抑制、感染症、間接クームス試験への干渉がIsa-IVと同一の内容で設定されており、新規の製造販売後調査は不要と判断されている。

サデルガカプセル25mg/同カプセル100mg(エリグルスタット酒石酸塩)

製品名:サデルガカプセル25 mg(新用量医薬品として新規承認)、サデルガカプセル100 mg(承認事項一部変更) 効能・効果:ゴーシェ病の諸症状(貧血、血小板減少症、肝脾腫及び骨症状)の改善 承認区分:サデルガカプセル25 mgは剤形追加を伴う新用量医薬品としての新規承認、100 mgは小児への用法・用量追加に係る一部変更承認。希少疾病用医薬品指定(指定番号:23薬第241号)。

今回の承認で何が変わったのか

サデルガ(エリグルスタット酒石酸塩)は、Genzyme社が創製したグルコシルセラミド合成酵素阻害薬で、経口投与可能なゴーシェ病治療薬として本邦では2015年3月に成人の「ゴーシェ病の諸症状(貧血、血小板減少症、肝脾腫及び骨症状)の改善」を効能・効果として承認されていた。今回の承認により、この適応が6歳以上の小児にまで拡大された点が最大の変更点である。

これまで小児のゴーシェ病患者に対する薬物治療は、酵素補充療法(ERT)であるイミグルセラーゼ及びベラグルセラーゼ アルファの点滴静注に限られていた。ERTにはInfusion reactionのリスクに加え、小児患者では末梢静脈路の確保自体が困難な場合があるという臨床上の課題があった。サデルガの小児適応追加により、経口投与が可能な新たな治療選択肢が小児のゴーシェ病診療に加わったことになる。

小児用法・用量の設定根拠

国際共同第III相試験(EFC13738試験、2歳以上のゴーシェ病I型・III型患者対象)の成績及びPBPK(生理学的薬物速度論)モデル解析に基づき、CYP2D6表現型と体重に応じた用法・用量が設定された。

CYP2D6表現型体重推奨用法・用量
EM又はIM50 kg以上100 mg 1日2回
EM又はIM25 kg以上50 kg未満100 mg 1日2回
EM又はIM15 kg以上25 kg未満50 mg 1日2回
PM50 kg以上100 mg 1日1回
PM25 kg以上50 kg未満50 mg 1日1回
PM15 kg以上25 kg未満25 mg 1日1回

本薬は主にCYP2D6で代謝されるため、成人と同様にCYP2D6表現型に基づく用量設定が小児でも必須である点は臨床現場で改めて意識する必要がある。試験開始時点では体重区分に基づく用法・用量が設定されていたが、実際の薬物動態モニタリング結果を踏まえて一部の体重区分で用量が変更された経緯があり、成人患者に本剤を承認用法・用量で投与した際の曝露量と同程度になるよう調整されている。

臨床的ポイント

  • CYP2D6表現型判定の重要性:Extensive Metabolizer(EM)・Intermediate Metabolizer(IM)とPoor Metabolizer(PM)とで投与回数(1日2回 vs 1日1回)及び用量が異なり、小児においても事前のCYP2D6表現型検査に基づく個別化投与が前提となる。
  • PM患者への注意:PMでは本薬の血中濃度が上昇しやすく、成人同様「投与を避けることが望ましい」旨の注意喚起がなされており、小児でも同様の慎重な検討が必要である。
  • 日本人小児データの限界:EFC13738試験に組み入れられた日本人小児患者は少数(CYP2D6 EM 3例)であり、機構は外国人小児患者の曝露量範囲内であることを確認したうえで評価しているが、日本人での症例集積は限定的である点は留意すべきである。
  • 既存治療との位置づけ:ERTとの併用や切替えに関する情報は本剤の適応拡大に伴い今後の実臨床データの蓄積が待たれるが、静脈路確保が困難な小児患者にとって経口製剤という投与経路の選択肢が加わったことは、アドヒアランス及びQOLの観点からも意義がある。