【PMDA承認情報】2026/09/07 医薬品承認一覧
目次
| 製品名 | 承認区分 | 効能効果 | PMDA |
|---|---|---|---|
| エムパベリ皮下注1080 mg | 承認事項一部変更 | C3腎症、一次性免疫複合体型膜性増殖性糸球体腎炎 | 詳細 |
| オヌレグ錠150 mg | 承認 | 同 錠200 mg【承認】(2026年8月承認分)急性骨髄性白血病における維持療法 | 詳細 |
| ヒブサーゴ皮下注150 mgシリンジ | 承認 | B型肝炎ウイルス持続感染における機能的治癒 | 詳細 |
| ヒムペブジ皮下注150 mgペン | 承認事項一部変更 | 1.血液凝固第VIII因子又は第IX因子に対するインヒビターを保有する先天性血友病患者における出血傾向の抑制 | 詳細 |
| ラプシド錠25 mg | 承認 | 特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な患者に限る) | 詳細 |
今回の承認情報から導入文を作成します。
今回の承認では、既存薬の適応拡大と新薬承認が並びます。エムパベリ皮下注は補体関連腎疾患への適応が追加され、C3腎症や一次性免疫複合体型膜性増殖性糸球体腎炎の治療選択肢となります。ヒムペブジ皮下注は血友病患者における出血傾向抑制の適応が承認事項一部変更として拡充されました。新規承認としては、オヌレグ錠が急性骨髄性白血病の維持療法に、ヒブサーゴ皮下注がB型肝炎ウイルス持続感染の機能的治癒に、ラプシド錠が既存治療抵抗性の慢性蕁麻疹にそれぞれ承認され、各領域で新たな治療選択肢が加わりました。
エムパベリ皮下注1080 mg
製品名:エムパベリ皮下注1080 mg(一般名:ペグセタコプラン) 承認区分:承認事項一部変更(新効能・新用量) 効能・効果:C3腎症、一次性免疫複合体型膜性増殖性糸球体腎炎(既承認の発作性夜間ヘモグロビン尿症に追加) 用法・用量:18歳以上は1回1080 mgを週2回皮下投与。12歳以上18歳未満は体重区分(30〜35 kg未満/35〜50 kg未満/50 kg以上)に応じた用量を週2回皮下投与。
何が変わったのか
本剤はC3補体活性化産物であるC3及びC3bに高親和性で結合し、糸球体へのC3分解産物の沈着を防ぐ補体阻害薬(第II承認区分では発作性夜間ヘモグロビン尿症〈PNH〉治療薬として承認済み)である。今回の一変により、C3腎症(C3G)および一次性免疫複合体型膜性増殖性糸球体腎炎(一次性IC-MPGN)という、これまで本邦で承認された治療選択肢がほぼ存在しなかった希少疾病用医薬品指定疾患に、新たな治療の道が開かれた。
- 一次性IC-MPGNについては本邦初の承認薬となる。従来はステロイド・免疫抑制剤・降圧剤による支持療法にとどまっていた領域に、補体標的療法という選択肢が加わる。
- C3Gについては既にイプタコバン塩酸塩水和物(近位補体経路のB因子阻害薬)が承認されているが、本剤はC3/C3bへの直接結合という異なる作用点を持つ薬剤であり、作用機序の異なる治療選択肢が増えたことになる。
- C3G・一次性IC-MPGNはいずれも診断が同一の免疫染色パターン(補体優位沈着 vs 免疫複合体/免疫グロブリン介在型)で区別される疾患スペクトラムとして扱われ、同一の開発計画のもとで有効性・安全性が検証された。
臨床的ポイント
- 有効性:国際共同第III相試験(310試験、C3G又は一次性IC-MPGN患者124例対象、プラセボ対照二重盲検)において、主要評価項目である26週時の早朝第一尿UPCRの対数変化値で、本薬群はプラセボ群に対する優越性を検証した(群間比 0.319[95%CI: 0.238, 0.427]、p<0.0001)。
- 安全性:二重盲検期の有害事象発現率はプラセボ群93.4%、本薬群85.7%と本薬群でむしろ低く、重篤な有害事象の発現率は両群でほぼ同程度(プラセボ群9.8%、本薬群9.5%)であった。ただし本薬群で1例、COVID-19肺炎に伴う死亡が認められている(副作用とは判断されず)。
- 小児・青年期への対応:12歳以上18歳未満の患者にも母集団薬物動態解析に基づく体重区分別用法・用量が設定されており、青年期例も含めた運用が可能である。
- 承認条件に注目:補体阻害薬に共通するリスクとして、髄膜炎菌感染症の診断・治療に精通した医師との連携が承認条件として明記されている。C3腎症・一次性IC-MPGNの診断治療に精通し本剤のリスクを管理できる医師・医療機関のもとでのみ投与すべきとされ、製造販売後は全症例を対象とした使用成績調査が求められている点は処方時に押さえておきたい。
- 投与中止後の情報は今後蓄積段階:本剤中止後は血清中C3濃度の低下に伴い補体経路の過剰活性化が再燃する可能性が否定できないが、現時点で得られた限られたデータでは疾患増悪は認められておらず、添付文書上の注意喚起は見送られている。今後の市販後情報の集積が待たれる。
オヌレグ錠150 mg、同錠200 mg
製品名: オヌレグ錠150 mg、同錠200 mg(一般名: アザシチジン、申請区分: 新投与経路医薬品) 効能・効果: 急性骨髄性白血病における維持療法(用法・用量: 1日1回200 mgを14日間連日経口投与後、14日間休薬する28日サイクル)
何が変わったのか
アザシチジンは注射剤(ビダーザ注射用100 mg)として2011年に骨髄異形成症候群、2021年に急性骨髄性白血病の効能で既に承認されているが、今回はその経口製剤が国内で初めて承認された。対象は「allo-HSCTの適応とならず、強力な寛解導入療法後に寛解(CR/CRi)が認められた初発AML患者」における維持療法であり、これまで国内の診療ガイドラインにも教科書にもこの患者層に対する確立した維持療法は存在せず、寛解後は再発リスクを抱えたまま経過観察に委ねられていた領域に、初めて臨床試験で有効性が裏付けられた選択肢が加わったことになる。
さらに実務的なインパクトとして、注射剤は通院・点滴の負担から長期の維持投与には不向きだったのに対し、経口錠であることで外来での自己管理・長期継続投与が可能になった点も、この製剤の意義として大きい。
臨床的ポイント
- 有効性の裏付け: 主要な試験成績は海外第III相試験(AML-001試験、本薬300 mg群)と国内第II相試験(CA055005試験、本薬200 mg群)。AML-001試験では主要評価項目のOS中央値が本薬群24.7カ月 vs プラセボ群14.8カ月(ハザード比0.69、p=0.0009)と統計学的に有意な延命効果が示された。国内CA055005試験は目標症例数に届かず19例(本薬群12例、プラセボ群7例)の小規模試験にとどまったが、副次評価項目のRFSでハザード比0.07と本薬群で良好な傾向が確認され、AML-001試験の結果を国内患者に外挿する根拠の一つとされた。
- 国内外の曝露量の橋渡し: 日本人に本薬200 mgを投与した際の曝露量は、外国人に300 mgを投与した際の曝露量を下回らないことが確認されており、この点も日本人200 mg用量の妥当性を支持する根拠となっている。
- 腎機能障害患者への注意喚起: 軽度・中等度の腎機能障害患者では用量調節は不要とされた一方、重度の腎機能障害患者では曝露量増加により忍容性の懸念があるため、減量を考慮した上で有害事象の発現に十分注意する旨が添付文書で注意喚起される。
- 安全性プロファイル: 劇薬に指定され、医薬品リスク管理計画(RMP)の策定・実施が承認条件となっている。国内外の臨床試験を通じ、腎機能低下に伴う有害事象発現割合の一貫した上昇は認められていない。
ヒブサーゴ皮下注150 mgシリンジ
製品名:ヒブサーゴ皮下注150 mgシリンジ(一般名:ベピロビルセンナトリウム、申請者:グラクソ・スミスクライン) 効能・効果:B型肝炎ウイルス持続感染における機能的治癒(用法上は核酸アナログ〈NA〉との併用が必須) 承認区分:医療用医薬品(1)新有効成分含有医薬品(先駆的医薬品指定)
何が変わったのか
B型慢性肝炎の標準治療であるNA製剤(エンテカビル水和物、テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩等)は、HBV DNA複製を効率的に抑えるものの、HBs抗原の産生自体は止められず、48週投与でもHBs抗原陰性化率は1%未満にとどまる。ペグインターフェロンでも2〜8%程度であり、いずれも「治療中止=再燃リスク」という制約から、事実上生涯にわたる投薬継続が前提となってきた。
本薬は、HBVの全mRNA(プレゲノムRNAを含む)を標的とする2’-MOE修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、RNase H を介したmRNA分解によりHBs抗原を含むウイルスタンパク質・HBV DNAの産生自体を減少させるという、国内初の作用機序を持つ薬剤である。NA継続投与下に本薬を24週間上乗せする国際共同第III相試験(B-Well 1、B-Well 2)では、投与終了後24週間にわたる機能的治癒(FC:HBs抗原陰性化+HBV DNA抑制の24週間以上持続)達成割合が本剤群19.5%・18.6%に対しプラセボ群はいずれも0%と、統計学的に有意な差が示された(p<0.001)。
すなわち本薬の登場は、「一生NAを飲み続ける」治療体系に対して、一定期間(24週間)の上乗せ投与により治療終了後も機能的治癒を維持しうる、という新たな治療選択肢が加わったことを意味する。FC達成率自体はまだ2割弱にとどまり万人向けの治癒薬ではないが、対象を選んだ上で「治療の終わりが見える」選択肢を提示できる点が既存治療との決定的な違いである。
臨床的ポイント
- 対象患者の絞り込みが鍵:適応対象はNA治療中でHBs抗原量が3,000 IU/mL以下の患者に限定される(ベースラインHBs抗原が低いほどFC達成率が高い傾向)。肝硬変患者は除外されており、適応判断には事前のHBs抗原定量と肝硬変の除外が必須となる。
- 併用が前提の設計:本薬単独ではなく、必ずNAと併用する用法である点に注意。用法は1・2週目は週2回、3週目以降24週目まで週1回皮下注射という煩雑なスケジュールで、外来での投与管理・アドヒアランス確保が課題となる。
- 注射部位反応・ALT上昇・血小板減少が高頻度:B-Well試験では注射部位紅斑が本剤群の約9割、ALT増加が2割超、血小板数減少が15〜16%に認められた。ASOクラスに特徴的な補体系を介した有害事象(血小板減少、糸球体濾過率減少等)もあり、投与中のモニタリングが重要になる。
- 腎機能低下者への投与経験は限定的:中等度以上の腎機能低下患者でのデータは乏しく、添付文書上はリスク・ベネフィットを慎重に検討した上での投与可否判断が求められる。
- 長期有効性は市販後の課題:機構は承認に際し、製造販売後臨床試験でFCの長期持続性についてさらに検討し情報提供する必要があるとしており、リスク管理計画(RMP)の策定・実施が承認条件となっている。
ヒムペブジ皮下注150mgペン
製品名: ヒムペブジ皮下注150mgペン(一般名: マルスタシマブ(遺伝子組換え)、ファイザー) 承認区分: 承認事項一部変更(適応拡大・用法変更) 効能・効果: 血液凝固第VIII因子又は第IX因子に対するインヒビターを保有する先天性血友病患者における出血傾向の抑制
何が変わったのか
ヒムペブジは、外因系凝固反応を抑制するTFPI(組織因子経路インヒビター)に結合する遺伝子組換えヒトモノクローナル抗体製剤で、2024年12月に「インヒビターを保有しない先天性血友病患者」を対象に承認されていた。今回の一部変更承認により、この適応がインヒビター保有患者にも拡大され、血友病A・Bのインヒビター保有・非保有を問わず出血傾向の抑制に用いることが可能になった。あわせて用法・用量の対象体重も「12歳以上かつ体重35 kg以上」から「12歳以上かつ体重25 kg以上」へ引き下げられ、より小柄な患者にも投与できるようになった(用法自体は初回300 mg皮下投与、以降週1回150 mg、体重50 kg以上で効果不十分なら週1回300 mgに増量、と変更なし)。
臨床現場へのインパクト
インヒビター保有患者に対する定期的な出血抑制療法は、これまでバイパス止血製剤(aPCC製剤、rFVIIa/FX製剤)と、血友病Aに限定される抗FIXa/FXヒト化二重特異性抗体(エミシズマブ)が中心であった。特に血友病Bのインヒビター保有患者にはエミシズマブの適応がなく、定期投与の選択肢が乏しかった。ヒムペブジはTFPI阻害という血友病型・インヒビターの有無に依存しない作用機序を持つため、この適応拡大により血友病Bインヒビター保有患者にも新たな皮下注射による定期投与の選択肢が加わる点が最大の意義といえる。
国際共同第III相試験(B7841005試験)のインヒビター保有コホート・出血時補充療法群では、治療を要した出血のABR(年間出血回数)の観察期に対する本薬投与期の比の95%CI上限が事前設定基準(0.5)を下回り、有効性が確認された。出血タイプ別でも自然出血・関節出血・標的関節出血のいずれもABRの明確な低下が認められている。安全性面では、既承認の抗TFPI抗体薬と同様、血栓塞栓性事象および過敏症(アナフィラキシーを含む)が重要な注意事象として位置づけられており、医薬品リスク管理計画(RMP)の策定・実施が承認条件とされている。日本人データはインヒビター保有患者2例と限定的だが、全体集団と矛盾しない傾向であった。
ラプシド錠25 mg(レミブルチニブ)
製品名:ラプシド錠25 mg(一般名:レミブルチニブ、ノバルティスファーマ) 承認区分:新有効成分含有医薬品としての新規承認 効能・効果:特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な患者に限る) 用法・用量:通常、成人にはレミブルチニブとして1回25 mgを1日2回経口投与
何が変わったのか
慢性蕁麻疹(CSU)の治療は、第一選択薬である第二世代抗ヒスタミン薬の増量でも症状が制御できない場合、これまではオマリズマブ(抗IgE抗体)やデュピルマブ(IL-4受容体αサブユニットに対する抗体、2024年2月承認)といった注射剤の生物学的製剤が補助療法の中心であった。ラプシドは、B細胞やマスト細胞・好塩基球のFcεRI/FcγR/BCRシグナルを介した脱顆粒・サイトカイン産生に関与するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)を阻害する経口薬であり、抗ヒスタミン薬で効果不十分なCSU患者に対して、注射という投与経路を伴わない新しい作用機序の全身療法選択肢が加わることになる。米国では2025年9月に先行承認されており、国内でも国際共同第Ⅲ相試験(A2301)を中心としたデータパッケージに基づき有効性・安全性が評価された。
臨床的ポイント
- 有効性:第二世代抗ヒスタミン薬で効果不十分な成人CSU患者を対象としたプラセボ対照二重盲検試験(A2301、A2302)において、主要評価項目である投与12週時のUAS7(蕁麻疹活動性スコア)のベースラインからの変化量で、本剤群はプラセボ群に対し統計学的に有意な改善を示し、優越性が検証された(A2301:本剤群−20.02 vs プラセボ群−13.79、p<0.001)。そう痒スコア(ISS7)・膨疹スコア(HSS7)、UAS7=0達成割合、QOL指標(DLQI)でも一貫してプラセボを上回る成績が投与52週まで持続した。
- 安全性上の留意点:BTK阻害作用に起因し、出血(点状出血・斑状出血)と感染症の発現割合がプラセボ群と比較して高い傾向が認められ、添付文書での注意喚起・製造販売後調査での重点的な情報収集が求められている。血球減少(軽度〜中等度)や消化管腫瘍(4例、因果関係は否定的だが関連は現時点で不明)についても、リスク管理計画上の安全性検討事項として設定されている。
- 投与対象の考え方:本剤は抗ヒスタミン薬への追加投与ではなく、抗ヒスタミン薬に置き換わる単剤経口療法として設計されている点が、既存の生物学的製剤(抗ヒスタミン薬併用が前提)と運用上異なる。腎機能障害・肝機能障害を有する患者への用量調節は不要とされているが、重度肝機能障害では曝露量上昇が確認されており、長期投与時の安全性は製造販売後調査でさらに検討する必要があるとされている。