【PMDA承認情報】2026/09/24 医薬品承認一覧
目次
| 製品名 | 承認区分 | 効能効果 | PMDA |
|---|---|---|---|
| イネレクスゾ膀胱内システム225 mg | 承認 | 詳細 | |
| 1.リンヴォック錠7.5 mg | 承認事項一部変更 | 2. 同 錠15 mg 【承認事項一部変更】 3. 同 内用液0.1 %(1 mg/mL)【承認】(2026年8月承認分)既存治療で効果不十分な多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎 | 詳細 |
| リブタヨ点滴静注350 mg | 承認事項一部変更 | 詳細 | |
| シービーパック持続的血液浄化液 | 承認事項一部変更 | 持続的血液浄化療法施行時の補充液及び透析液として用いる | 詳細 |
| サブパック血液ろ過用補充液-Bi | 承認事項一部変更 | 持続的血液浄化療法施行時の補充液及び透析液として用いる | 詳細 |
今回の承認は、新規承認のイネレクスゾ膀胱内システム225 mgと、承認事項一部変更の4品目です。注目はリンヴォックです。既存治療で効果不十分な多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎を対象に、錠7.5 mgと錠15 mgが承認事項一部変更となり、内用液0.1 %(1 mg/mL)が新規承認され、内用液という剤形が加わりました(2026年8月承認分)。持続的血液浄化療法では、シービーパック持続的血液浄化液とサブパック血液ろ過用補充液-Biが、補充液及び透析液として用いる製剤として承認事項一部変更となっています。リブタヨ点滴静注350 mgも承認事項一部変更ですが、変更内容の詳細は各品目の記事で確認してください。
イネレクスゾ膀胱内システム225 mg(ゲムシタビン塩酸塩)
- 製造販売元:ヤンセンファーマ株式会社(開発元:米国 TARIS Biomedical 社)
- 承認区分:新投与経路医薬品(医療用医薬品(3))/希少疾病用医薬品(指定番号:(R8薬)第798号)/劇薬/再審査期間10年
- 効能・効果:BCG膀胱内注入療法後に残存・再発した上皮内癌を有する高リスク筋層非浸潤性膀胱癌
- 用法・用量:通常、成人には本剤1ユニット(ゲムシタビンとして225 mg)の3週間の膀胱内留置を、最初の6カ月間は3週間間隔で最大8回まで、その後の18カ月間は12週間間隔で最大6回まで行う。
- 承認条件:医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
今回の承認で何が変わったのか
ゲムシタビンは静脈内投与製剤(ジェムザール注射用等)として、尿路上皮癌を含む各種悪性腫瘍にすでに承認されています。本剤はこれを「膀胱内に3週間留置し、尿中へ持続放出するシステム」にしたコンビネーション製品です。静脈内投与より低用量で治療濃度のゲムシタビンを膀胱内に局所送達でき、全身曝露の軽減が期待されます。
- 膀胱全摘以外の選択肢が加わる
- BCG不応性の上皮内癌(CIS)は、国内診療ガイドライン(2019年版増補版)で膀胱全摘術が推奨されてきました。FDAガイダンスでも、全摘が唯一の治療選択肢とされていました。
- 全身状態や併存症で全摘が難しい患者、ストーマ管理や合併症を考えて全摘を選ばない患者には、標準的な治療選択肢がありませんでした。
- 本剤は、こうした患者に対する膀胱温存を目指す「新たな治療選択肢の一つ」と位置付けられました。
- 効能・効果が「BCG不応性」に限定されなかった
- 有効性を示した試験の対象はBCG不応性CISですが、承認された効能・効果は「BCG膀胱内注入療法後に残存・再発した」高リスクNMIBCです。
- 次の2群は試験対象外で、有効性は不明です。ただし標準的治療が確立していないため、対象から除外されませんでした。
- 有害事象で十分なBCG療法を受けられなかった患者
- 十分なBCG療法後12カ月以降にCISが再発し、BCG再導入が適さないと判断された患者
- 一方、BCG再導入の適応となる患者への投与は推奨されません。「有効性及び安全性は確立していない」旨が注意喚起されています。
- 申請時にあった「(乳頭状病変の併発は問わない)」の括弧書きは、承認された効能・効果には含まれていません。
- 有効性の根拠はCISを有する集団(コホート2)のみ
- 乳頭状病変のみの患者(コホート4)は安全性のみの提出で、有効性の根拠にはなっていません。
有効性(国際共同第IIb相試験 BLC2001 コホート2)
対象は、膀胱全摘の適応がない、または全摘が選択されなかったBCG不応性CISを有する高リスクNMIBC患者85例(日本人2例)です。非盲検・単群試験で、全摘が選択されなかった患者が82例(96.5%)を占めます。
| 評価項目 | 結果 |
|---|---|
| CR率(主要解析・最良総合効果、2024年9月4日データカットオフ) | 83.5%(71/85例、95%CI 73.9–90.7) |
| CR率(追加解析、2025年3月31日データカットオフ) | 82.4%(70/85例、95%CI 72.6–89.8) |
| 12カ月時点のCR率 | 45.9%(95%CI 35.0–57.0) |
| CR持続期間の中央値 | 25.79カ月(95%CI 8.34–推定不能) |
| 膀胱全摘術の実施 | 18/85例(21.2%)、24カ月時点の実施割合は24.5% |
- 他の報告との比較:12カ月時点のCR率について、IBCGが臨床的に意味のある値として示すのは30%です。BCG不応性CISでのシステマティックレビューでは25%(95%CI 17–33)でした。24カ月時点の全摘実施割合は、海外レトロスペクティブ研究の30%に対し、本試験は24.5%でした。
- 再発・進行例:追加解析時点で41/85例(48.2%)に膀胱癌の残存・再発・進行がありました。内訳は次のとおりです。
- 高リスクNMIBCの残存・再発が30例
- 病期進行が7例(T2–T4aN0M0へ5例、T4aN1M0へ1例、TisN2M1aへ1例)
- PMDAが指摘した限界:試験途中に中間解析の結果を受けて仮説検定が設定された経緯があるため、有効性の評価には限界があるとされました。加えて、全摘術と本剤を比較した臨床試験成績はありません。
- 日本人患者:2例とも追加解析時点でCRを維持していました(14.1カ月、19.1カ月)。例数は限られますが、薬物動態に明確な国内外差がないことなどから、日本人でも有効性は期待できると判断されました。
安全性
| 項目(コホート2、85例) | 発現例数(%) |
|---|---|
| 全有害事象/Grade 3以上 | 83(97.6)/37(43.5) |
| 重篤な有害事象 | 22(25.9) |
| 投与中止に至った有害事象/投与中断に至った有害事象 | 7(8.2)/35(41.2) |
| 死亡に至った有害事象 | 2(2.4)(敗血症、認知障害。因果関係は否定) |
- 高頻度の有害事象:頻尿48.2%、排尿困難42.4%、尿路感染37.6%、尿意切迫29.4%、血尿23.5%
- 特に注意を要する有害事象は尿路感染:尿路感染関連の事象は44.7%に発現しました。Grade 3以上は7.1%、重篤は7.1%、投与中断に至ったものは16.5%です。
- 本剤との因果関係を否定できない敗血症2例と菌血症1例は、いずれも尿路感染が原因と考えられました。
- 治験では、尿路感染の併発例やHIV感染・活動性HBV/HCV感染の患者を除外していました。留置・抜去時には予防的な抗菌薬投与を少なくとも1回行う規定でした。実際の投与は留置時の約8割、抜去時の約8割です。
- 排尿障害・出血:排尿障害は74.1%(Grade 3以上2.4%、重篤なものはなし)でした。出血は28.2%で、因果関係を否定できない重篤な出血はありませんでした。
- 静脈内ゲムシタビンの重大な副作用(骨髄抑制、間質性肺炎等):因果関係を否定できない重篤例は、尿路感染に伴う急性腎障害の1例のみでした。血漿中ゲムシタビン濃度は全測定時点で定量下限(0.100 µg/mL)未満で、全身曝露は極めて低いことから、特段の注意喚起は不要と判断されました。
添付文書上の主なポイント
- 警告:緊急時に十分対応できる医療施設で、膀胱癌の治療に十分な知識・経験を持つ医師のもと、適切と判断される症例にのみ投与します。患者・家族への十分な説明と同意も必要です。
- 禁忌:膀胱穿孔のある患者(全身曝露の増大と、膀胱壁内・壁外への誤留置のおそれ)、本剤の成分に対する過敏症の既往歴のある患者
- 効能・効果に関連する注意
- 臨床試験の対象患者の背景・前治療歴・腫瘍の状態を踏まえて、適応患者を選択すること。
- BCG再導入の適応となる患者での有効性・安全性は確立していないこと。
- 膀胱全摘が可能な場合は、本剤投与の必要性を慎重に判断すること。
- 用法・用量に関連する注意
- 他の抗悪性腫瘍剤との併用の有効性・安全性は確立していません。
- 挿入には同梱の膀胱内挿入用カテーテルを使用します。
- 薬剤放出に十分な尿産生を確保するため、治療中は十分な水分を摂取するよう指導します。
- 投与中断・中止の目安
- 血尿、尿閉、尿路感染、無菌性膀胱炎がGrade 2以上の場合は、Grade 1以下に回復するまで投与を中断します。留置中であれば抜去します。
- 上記以外の副作用でGrade 4の場合は、投与を中止します。
臨床的ポイント(薬剤師の視点)
- 患者選択の確認:エビデンスは単群試験のCR率に基づきます。全摘が可能な患者では、全摘との比較データがないことを踏まえた慎重な判断が求められます。
- 尿路感染の早期発見:発熱・悪寒、排尿時痛、頻尿や血尿の増悪があれば早めに受診するよう、事前に説明しておく必要があります。Grade 2以上は投与中断の基準に該当します。
- 水分摂取の指導:薬剤放出に十分な尿量の確保が必要で、忍容性の改善にも資するとされています。申請時に案としてあった「約1,500 mL/日」の具体的数値は、審査を経て「十分な水分」という表現に整理されました。
- 尿量・尿浸透圧の影響は継続検討中
- 専門協議では、尿糖が増加する等で尿浸透圧が高い患者において、尿中ゲムシタビン濃度が低下し有効性に影響する可能性が指摘されました。高血糖状態の糖尿病患者などが想定されます。
- 尿量1,000 mL/日未満、または3,000 mL/日以上の患者でも、明確な差は認められていません。in vitroでも浸透圧の影響はみられませんでした。ただしデータが限られるため、追加の情報収集が指示されています。
- 複雑な投与スケジュール:3週間の留置を3週間間隔で最大8回行い、その後は12週間間隔で最大6回に移ります。スケジュールを確認できる患者向け資材の作成が、専門協議の意見を受けて指示されました。
- その他の実務上の留意点
- 本剤の交換時は、挿入前に膀胱内の本剤を抜去します。
- 尿路上皮に臨床的に重大な外傷をもたらす処置を受けた場合は、治癒するまで挿入の延期を検討します。
- 条件付きの環境ではMRI検査が可能です(MR適合性試験成績あり)。
- リスク管理:RMPの重要な特定されたリスクは尿路感染、重要な潜在的リスクは生殖発生毒性です。追加の医薬品安全性監視活動として市販直後調査が、追加のリスク最小化活動として医療従事者向け・患者向け資材の提供が実施されます。
リンヴォック錠7.5 mg/同錠15 mg/同内用液0.1%(1 mg/mL)(ウパダシチニブ水和物)
- 承認区分:錠7.5 mg・錠15 mgは承認事項一部変更(新効能・新用量医薬品)。内用液0.1%(1 mg/mL)は新規承認(新効能・新剤形医薬品、劇薬)。
- 追加された効能・効果:既存治療で効果不十分な多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎(pJIA)
- 再審査期間:4年
- 承認条件:医薬品リスク管理計画を策定し、適切に実施すること。
今回の承認で何が変わったか
- 適応の追加:JAK阻害薬のリンヴォックは関節リウマチ(RA)から始まり、乾癬性関節炎、アトピー性皮膚炎、脊椎関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病などに適応が広がってきた。今回、小児のpJIAが加わった。
- 低年齢・低体重への拡大:対象は2歳以上・体重10 kg以上の小児である。これまで小児の適応は、12歳以上かつ体重30 kg以上のアトピー性皮膚炎に限られていた。
- 小児向け剤形の新規承認:1 mL中1 mgの経口液剤が加わった。錠剤を服用できない20 kg未満の患児にも投与できる。
- 治療選択肢の変化:pJIAの薬物治療はメトトレキサート(MTX)が第一選択で、効果不十分な場合に生物学的製剤(アダリムマブ、エタネルセプト、アバタセプト、トシリズマブ)やバリシチニブが使われてきた。本剤は、これらに続く経口のJAK阻害薬の選択肢になる。
用法・用量(体重別)
| 体重 | 錠剤 | 内用液 |
|---|---|---|
| 10 kg以上20 kg未満 | — | 3 mL(3 mg)を1日2回 |
| 20 kg以上30 kg未満 | — | 4 mL(4 mg)を1日2回 |
| 30 kg以上 | 15 mgを1日1回 | 6 mL(6 mg)を1日2回 |
- 錠剤は30 kg以上の患児のみで、表に載る規格は15 mgだけである。錠7.5 mgはpJIAの用法・用量には登場しない。
- 内用液は1日2回投与である。治験では服用後の速やかな飲水と固形食品の摂取が規定されていた。しかし市販用製剤のpHは3.4で、一般的な酸性飲料と同程度である。申請者はこの注意喚起は不要と説明し、用法・用量は申請どおり整備された。食事の影響も臨床的に意味のある範囲ではないとされ、食事規定はない。
- 錠剤と内用液の生物学的同等性は示されていないため、mg換算による互換使用は行わない旨を添付文書で注意喚起する。PPK推定では、30 kg以上で内用液6 mg 1日2回のAUC₀₋₂₄ₕが389 ng·h/mL、錠剤15 mg 1日1回が314 ng·h/mLで、1日総量が少ない内用液のほうが曝露は高い。
有効性の根拠
- 試験デザイン:国際共同第I相試験(M15-340試験、非盲検・非対照)である。対象は2歳以上18歳未満のpJIA(RF陽性・陰性多関節炎、進展型少関節炎、全身症状を伴わないsJIA)122例で、日本人は13例(全例パート3)だった。対照群を置いた比較試験ではない。
- 外挿の考え方:pJIAとRAは病態や治療反応性が類似し、JAK阻害薬の曝露―反応関係も同様と考えられる。そのため、RA患者に15 mg 1日1回を投与したときと同程度の曝露が得られる用量を、体重別に設定している。
- 曝露の比較(PPK解析):AUC₀₋₂₄ₕ(中央値)はRA 15 mg 1日1回が376 ng·h/mLだった。pJIAは、10〜20 kg(3 mg 1日2回)が334、20〜30 kg(4 mg 1日2回)が298、30 kg以上が389(内用液)と314(錠剤)である。20〜30 kgは低めだが、日本人RAで有効性が認められている7.5 mg 1日1回の曝露(272 ng·h/mL)は上回っている。
年齢集団別の成績(有効性解析対象集団、12週→48週、%)は次のとおり。
| 指標 | 12〜18歳未満 | 6〜12歳未満 | 2〜6歳未満 |
|---|---|---|---|
| ACR Pedi 30 | 89.7→94.6 | 92.2→95.7 | 87.5→100 |
| ACR Pedi 70 | 59.0→81.1 | 78.4→89.4 | 75.0→100 |
| 低疾患活動性(JADAS27-CRP 3.8以下) | 27.5→62.2 | 72.0→82.2 | 62.5→100 |
| 寛解(JADAS27-CRP 1以下) | 7.5→32.4 | 36.0→51.1 | 29.2→72.0 |
- 12週時点では年長群のほうが低疾患活動性・寛解の達成率が低いが、48週にかけて上昇している。
- 48週の評価例数は年齢集団ごとに37例、47例、25例である。
- MTX治療歴の有無によらず有効で、12週のACR Pedi 30はMTX未治療で94.5%、治療歴ありで86.4%だった。
- 日本人部分集団(13例)でも全年齢集団でACR Pedi 30は100%だった。ただし例数が限られるため、解釈には注意が必要とされている。
安全性
- 全体:有害事象は98.4%(120/122例)、重篤な有害事象は13.9%(17/122例)、投与中止に至った有害事象は4.9%(6/122例)だった。死亡はなく、副作用は41.8%だった。
- 主な有害事象:上咽頭炎、上気道感染、COVID-19、胃腸炎、腹痛、悪心、頭痛など。
- 感染症:感染症全体は88.5%、重篤な感染症は3.3%(4例)、帯状疱疹は0.8%(1例)だった。既承認の患者集団より感染症の発現率が高い傾向がみられた。ただしJIAの小児は、JIAのない小児より感染症にかかりやすいとも報告されている。
- 精神障害:うつ病(自殺・自傷行為を除く)が9.0%、自殺または自傷行為が1例(0.8%)で、こちらも既承認集団より高い傾向だった。
- 成長への影響:骨折は9例(7.4%)、骨成長への影響は3例(2.5%)で、いずれも治験薬との因果関係は否定された。骨折の半数以上は外傷性の上腕骨折で、主に男児だった。成長異常や成長不全に関連する有害事象はなかった。
- 日本人部分集団:重篤な有害事象と投与中止例はなく、副作用は38.5%(5/13例)だった。
- 機構の評価:既承認の効能・効果を上回る安全性上の懸念は示されておらず、安全性は許容可能と判断された。
臨床的位置付けと添付文書での注意喚起
- 機構は、本剤を他のJAK阻害薬や生物製剤と同様の位置付けと判断した。MTXなどのcsDMARDsで効果不十分なpJIAに対する治療選択肢の一つである。専門協議でも支持された。
- 警告の項:本剤による治療の前に、少なくとも1剤の抗リウマチ薬の使用を十分勘案する旨を追記する。
- 効能・効果に関連する注意:
- 過去に少なくとも1剤の抗リウマチ薬で適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与する。
- sJIAの全身症状に対する有効性・安全性は確立していない。全身症状が安定し、多関節炎が主症状である場合のみ投与する。
- 持続型少関節炎、乾癬性関節炎、付着部炎関連関節炎、分類不能関節炎には、治験成績を外挿できない。これらは投与対象ではない。
- 他のJAK阻害薬や生物製剤とは併用しない。
- 使用できるのは、本剤とpJIA治療に十分な知識・経験を持つ医師である。重篤な感染症などに緊急対応できる医療機関での使用が前提となる。
薬剤師の実務ポイント
- 用量確認:用量は体重区分で決まるため、体重測定値の確認が調剤時の要点になる。
- 剤形選択:30 kg以上では錠剤か内用液を選べる。治験では嚥下能力に応じて剤形が選択された。
- 剤形変更時:錠剤と内用液を切り替える場合は、mg換算で読み替えず、体重区分ごとの規定用量に従う。
- 服薬指導・モニタリング:感染症や精神症状(気分の変化)に注意して、家族・患児に指導する。また、骨折や成長への影響を含めた長期的な観察が必要である。市販後の長期安全性データは、継続中のM15-340試験や他適応の小児試験で成長パラメータとして評価される予定である。
リスク管理
- 追加の医薬品安全性監視活動として、pJIAを対象とした市販直後調査を実施する。
- 追加のリスク最小化活動として、市販直後調査による情報提供、医療関係者向け資材(適正使用ガイド)、患者向けカード、納入前の適正使用に関する情報提供が行われる。
- 専門協議では、成長への影響を含む長期安全性の情報を市販後も継続して集めることが重要との意見が出た。
- 製造販売後調査は当面実施せず、新たな懸念を示唆する情報が得られた段階で検討する。
PMDA審査情報:https://www.pmda.go.jp/drugs/2026/P20260908001/navi.html
リブタヨ点滴静注350 mg
- 一般名:セミプリマブ(遺伝子組換え)(抗PD-1ヒト型IgG4モノクローナル抗体)/リジェネロン・ジャパン
- 承認区分:承認事項一部変更承認(新効能医薬品・新用量医薬品)。希少疾病用医薬品(R7薬第754号)で、追加効能・効果の再審査期間は10年。医薬品第二部会(令和8年7月27日)で承認して差し支えないとされた
- 追加された効能・効果:根治切除不能な進行・再発の有棘細胞癌/再発高リスクの有棘細胞癌における術後補助療法
- 承認条件:医薬品リスク管理計画(RMP)を策定の上、適切に実施すること
今回の承認で何が変わったか
これまでリブタヨの適応は子宮頸癌(がん化学療法後)と切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌でした。今回、皮膚有棘細胞癌(CSCC)が「進行・再発」と「術後補助療法」の2場面で加わりました。
| 変更前 | 変更後(追加分) | |
|---|---|---|
| 効能・効果 | 子宮頸癌、非小細胞肺癌 | 根治切除不能な進行・再発の有棘細胞癌、再発高リスクの有棘細胞癌における術後補助療法 |
| 用法・用量(進行・再発) | 350 mg を3週間隔で30分かけて点滴静注 | 有棘細胞癌にも同一用法を適用 |
| 用法・用量(術後補助) | なし | ①350 mg を3週間隔で16回まで、または②350 mg を3週間隔で4回投与後、700 mg を6週間隔で6回まで(いずれも30分かけて点滴静注) |
- 申請時は「12週は350 mg Q3W、その後は350 mg Q3Wまたは700 mg Q6W、投与期間48週まで」という週単位の記載でした。審査で回数表記に整理され、最大投与期間は48週です。
- 700 mg Q6Wは術後補助療法のみの用法です。進行・再発は350 mg Q3Wのみです。
進行・再発CSCC:単群試験で奏効率を確認
- 根拠は海外第II相試験(1540試験 Group 1〜3)です。主要評価項目は独立中央判定による奏効率(RECIST ver.1.1)でした。
- 承認用法の350 mg Q3Wを用いたGroup 3(遠隔転移、56例)の奏効率は41.1%(95%CI 28.1〜55.0)でした。
- 3 mg/kg Q2WのGroup 1(遠隔転移、59例)は47.5%、Group 2(局所進行、78例)は43.6%でした。全群で、95%CI下限が事前設定の閾値(15%/25%/15%)を上回りました。奏効持続期間は推定不能でした。
- 標準治療が確立していないため、単群試験での承認です。機構は、既承認のニボルマブ(D014試験の有棘細胞癌で奏効率20.0%、4/20例)を踏まえ、試験間比較の限界はあるものの効果の大きさに臨床的意義があると判断しました。
- 国内の臨床試験成績はありません。診断・治療体系や薬物動態に明確な国内外差がないことから、外挿で有効性が期待できるとされました。
- PD-L1発現状況にかかわらず有効性が期待されます。1540試験Group 2の奏効率は、PD-L1 1%未満で35.3%、1%以上50%未満で58.3%、50%以上で57.1%でした。
術後補助療法:DFSを有意に延長、OSは未成熟
- 根拠は国際共同第III相試験(1788試験 パート1)です。対象は外科的切除および放射線治療後の再発高リスクCSCCで、本薬とプラセボを比較した二重盲検試験です。415例が登録され、日本人は本薬群3例・プラセボ群8例でした。
- 主要評価項目は治験担当医師判定のDFSです。第1回中間解析(2024年10月4日データカットオフ)の結果は次のとおりです。
- イベント数は本薬群24/209例(11.5%)、プラセボ群65/206例(31.6%)でした。
- ハザード比は0.319(有意水準に対応した99.545%CI 0.161〜0.630、95%CI 0.199〜0.511)、片側p値は0.0001未満でした。
- 本薬群の中央値は推定不能で、プラセボ群は49.4ヵ月でした。
- OS中間解析(2025年4月7日データカットオフ)のハザード比は0.782(95%CI 0.392〜1.557)で、イベントは本薬群15件、プラセボ群18件でした。短縮傾向はありませんが、イベント数が少なく評価は限定的です。
- プラセボ群で再発した61例中51例が、パート2で本薬投与を受けました。OSの解釈にはこの影響を考慮する必要があります。
- 再発高リスクの定義は次のいずれかです。
- 被膜外浸潤を有するリンパ節転移かつ20 mm以上のリンパ節転移が1個以上、または3個以上のリンパ節転移
- In-transit転移
- T4病変
- 神経周囲浸潤
- 過去の切除領域に生じた再発CSCCで、所定の基準を満たすもの
- 基準別のDFSハザード比は、高度リンパ節転移で0.390、In-transit転移で0.070、切除領域の再発病変で0.187でした。T4病変(0.580)と神経周囲浸潤(0.268)は例数が少なく、95%CIが1をまたぎます。
- OSも含め、全部分集団で本薬群に不利な傾向はありませんでした。
- PD-L1 1%未満と1%以上のDFSハザード比は0.315と0.357で、交互作用に有意差はありませんでした(p=0.5788)。
- 日本人の本薬群3例では、再発・死亡はありませんでした。
安全性
-
1788試験(本薬群205例、プラセボ群204例)の主な結果は次のとおりです。
本薬群 プラセボ群 Grade 3以上の有害事象 25.4% 16.2% 重篤な有害事象 18.5% 10.3% 投与中止に至った有害事象 9.8% 2.0% 休薬に至った有害事象 23.4% 13.2% -
本薬群で発現割合が高かった有害事象は次のとおりです。いずれも本薬の既知の有害事象でした。
- 発疹:18.0% vs 9.3%
- 甲状腺機能低下症:13.7% vs 4.4%
- 甲状腺機能亢進症:5.9% vs 1.0%
- ALT増加:5.9% vs 2.0%(Grade 3以上は2.0%)
-
重篤な副腎機能不全が2例(1.0%)ありました。投与中止の理由として、ALT・AST・ALP増加や副腎機能不全がみられました。
-
死亡に至った有害事象のうち、本薬群の筋炎1例は因果関係が否定されませんでした。
-
進行・再発(1540試験 Group 3、56例)は、Grade 3以上が42.9%、重篤が41.1%でした。既承認の適応より多かった疲労・下痢・光線角化症・斑状丘疹状皮疹は、既知の事象か原疾患に関連する事象でした。
-
日本人の経験は3例のみで、限界はあります。ただし明確な国内外差は認められておらず、機構は忍容可能と判断しました。
臨床現場でのポイント
- 術後補助は「放射線治療後」が前提です。1788試験は術後放射線治療を受けた患者が対象だったため、「術後放射線治療歴のある患者を対象とすること」が効能・効果に関連する注意に入りました。放射線未実施例のデータはありません。
- 再発高リスクの定義は添付文書の「臨床成績」で確認が必要です。専門協議では、実臨床で放射線治療の線量・回数が一律でない(国内ガイドラインは50〜66 Gyを25〜33回)ことから、本薬の開始時期の判断が難しくなる懸念が出ました。1788試験の放射線治療期間の設定などを医療現場へ情報提供する方針です。
- 処方監査では、疾患と用法の対応を確認します。術後補助は最大48週(16回、または4回+6回)です。700 mgは350 mgバイアル2本分にあたります。
- PD-L1検査は不要です(有効性・安全性はPD-L1発現状況によらないと評価されました)。
- 他の抗悪性腫瘍剤との併用の有効性・安全性は確立していません。この注意は有棘細胞癌にも適用されます。
- 副作用時の休薬・中止基準は既承認と共通です。術後補助は再発抑制が目的で、無再発のまま免疫関連有害事象が出る場面もあります。甲状腺・副腎・肝機能などの継続的なモニタリングと、患者への事前説明が重要です。
- RMPが見直されました。発熱性好中球減少症、膵炎、ぶどう膜炎、血球貪食性リンパ組織球症が「重要な潜在的リスク」から「重要な特定されたリスク」へ変更されました。製造販売後に因果関係が否定できない血球貪食性リンパ組織球症が8例報告されています。硬化性胆管炎は、製造販売後の1例で詳細が不明なため、潜在的リスクのままです。
- 追加のリスク最小化活動として、医療従事者向け資材と患者向け資材が作成・提供されます。有棘細胞癌を対象とした製造販売後調査は、承認直後には不要とされ、通常の安全性監視活動で対応します。
まとめ:術後に追加できる薬物療法の標準が確立されていなかった再発高リスクCSCCに、DFSを有意に延長した抗PD-1抗体が加わりました。進行・再発でも、NCCNガイドラインが「Preferred」とする選択肢が国内で使えるようになりました。
シービーパック持続的血液浄化液
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者 | ニプロ株式会社 |
| 承認区分 | 承認事項一部変更(審査報告書上の申請区分は医療用医薬品(2)新医療用配合剤、再審査期間6年) |
| 効能・効果 | 持続的血液浄化療法施行時の補充液及び透析液として用いる |
| 用法・用量 | 用時、隔壁部を開通し、A液及びB液をよく混合して使用する。通常、成人には補充液と透析液の総流量として10~25 mL/kg/hr で、症状、電解質・酸塩基平衡異常、血液生化学値異常、体液バランス異常等が是正されるまで持続的に使用する。用量は症状、血液生化学値、体液バランス、年齢、体重などにより適宜増減する |
| 剤形・規格 | 2室構造の単回使用輸液容器(下室A液・上室B液)。有効期間36カ月、室温保存(脱酸素剤とともに酸素バリア層を含むラミネート袋に包装) |
| 区分 | 生物由来製品・特定生物由来製品、毒薬・劇薬のいずれにも非該当 |
今回の承認で何が変わったのか
1. 持続的血液浄化療法(CBP)の適応を持つ補充液/透析液が加わった
- これまで国内には、CBPに係る適応を有する補充液/透析液がありませんでした。
- 現場では、血液ろ過(HF)・血液濾過透析(HDF)用に承認された製剤(サブパック血液ろ過用補充液-Bi、サブラッドBSGなど)が、CBP施行時に適応外で使われてきました(学会マニュアル等に基づく運用)。
- 本剤は、CHF・CHD・CHDFのいずれにも補充液及び透析液として使える製剤で、適応内で使える選択肢になります。
- 審査報告書によると、2026年6月時点で海外では開発・承認されていません。
2. K⁺とリン(P)を配合した処方になった
- サブパックは、慢性腎不全患者への間欠的なHF/HDFを想定して開発されています。K⁺は2.0 mEq/Lと低く、Pは配合されていません。
- 急性腎障害、敗血症、多臓器不全などで長時間CBPを行うと、血清K⁺・P濃度が下がり過ぎることがあります。そのため従来は、カリウム製剤やリン製剤を追加して管理する必要がありました。
- 本剤は、K⁺とPを含めた各電解質を、健康成人の血清濃度の基準範囲かその近傍になるよう設計されています。
| 調製後の組成 | 本剤 | サブパック |
|---|---|---|
| Na⁺(mEq/L) | 140 | 140 |
| K⁺(mEq/L) | 3.7 | 2.0 |
| Ca²⁺(mEq/L) | 2.6 | 3.5 |
| Mg²⁺(mEq/L) | 1.1 | 1.0 |
| Cl⁻(mEq/L) | 117 | 113 |
| CH₃COO⁻(mEq/L) | 配合なし | 0.5 |
| HCO₃⁻(mEq/L) | 30 | 35 |
| P(mg/dL) | 3.7 | 配合なし |
| ブドウ糖(mg/dL) | 150 | 100 |
- HCO₃⁻は30 mEq/Lです。サブパックの総アルカリ化剤(HCO₃⁻とCH₃COO⁻の合計)は35.5 mEq/Lです。
- 高流量CHDFで35 mEq/Lの製剤を使うとアルカローシスに至った報告があることを踏まえ、本剤は30 mEq/Lに設定されました。
3. 効能・効果と用法・用量の表現が整理された
- 効能・効果は、申請時の「以下の目的で用いる」として列挙された3項目(電解質・酸塩基平衡異常、体液バランス異常、血液生化学値異常の是正)が削除されました。「持続的血液浄化療法施行時の補充液及び透析液として用いる」に簡素化されています。
- 用法・用量は、申請時の「投与速度」が「補充液と透析液の総流量」に改められました。
- 用量の10~25 mL/kg/hrは、国内のCRRTの実態(血液浄化量の平均は約16~18 mL/kg/h)と、低用量CRRTと推奨量CRRTで死亡率に差がなかったとする文献を根拠に設定されました。
国内第Ⅲ相試験(P-P3-WBCRRD試験)
- デザイン:無作為化・非盲検・実薬対照の並行群間比較試験です。国内35施設で、48時間以上のCBPが必要な血清K⁺≦6.5 mEq/Lの20歳以上の患者334例(本剤群167例、サブパック群167例)を対象としました。
- 主要評価項目:CBP開始48~72時間後に、血清K⁺とNa⁺の両方が基準範囲に入った患者の割合です。基準範囲はK⁺が3.6~5.0 mEq/L、Na⁺が133~145 mEq/Lでした。
- 結果:本剤群84.7%(122/144)、サブパック群70.4%(100/142)で、差は14.3%[95%CI 4.4~24.2]でした。非劣性マージン(−14.1%)を上回り、非劣性が示されました。
副次評価項目(CBP開始48~72時間後の是正割合)は次のとおりです。
| 項目 | 本剤 | サブパック |
|---|---|---|
| 血清K⁺ | 90.3% | 75.4% |
| 血清Na⁺ | 94.4% | 93.7% |
| 補正Ca | 81.3% | 79.6% |
| Mg | 78.5% | 77.5% |
| 血清Cl⁻ | 81.3% | 94.4% |
| 血清IP | 76.4% | 52.8% |
| 血中HCO₃⁻ | 26.4% | 65.0% |
| 血糖 | 71.5% | 71.8% |
- 本剤群ではK⁺とIPの是正割合が高く、K⁺・P配合の設計が反映された結果です。
- 高窒素血症物質(UN、Cre、UA)の除去率はサブパック群と同程度でした。
安全性
| 項目 | 本剤群 | サブパック群 |
|---|---|---|
| 有害事象の発現割合 | 27.5%(46/167例) | 32.9%(55/167例) |
| 高カリウム血症 | 2.4%(4例) | 0.6%(1例) |
| 低リン血症 | 0例 | 2.4%(4例) |
- 死亡は本剤群11例、サブパック群10例で、いずれも治験薬との因果関係は否定されました。
- 本剤との因果関係が否定されなかったのは2例です。高カリウム血症1例と、高リン血症・肺水腫の1例でした。
- 高カリウム血症の1例は重度で、プロトコール規定を超える血液浄化量が必要と判断され、治験は中止されました。転帰は軽快でした。
臨床的ポイント
- 高K血症・高P血症のモニタリングが要点になる。
- サブパックで問題になりがちだった低K・低P血症は、本剤では抑えられる方向です。一方、本剤群では高カリウム血症が数の上で多く、高リン血症の因果関係否定不能例もありました。
- 機構は「患者の状態に応じて適宜電解質の補充や製剤の切替えを行うこと」を前提に、安全性を臨床的に許容可能と判断しています。
- 治験では、必要に応じてK製剤・P製剤の補充が認められていました。腎機能低下が強い患者や、K・Pが高値で導入される患者では、血清K⁺・IPを継続的に確認し、製剤の切替えも検討します。
- HCO₃⁻はサブパックより低めに推移する。
- 本剤群の血中HCO₃⁻の平均は19.6~20.9 mEq/L、血液pHの平均は7.36~7.39で、介入不要な状態で推移しました。
- 基準範囲(22~26 mEq/L)から外れた106例も、多くは原疾患(急性腎障害、敗血症)の悪化に伴うアシデミアでした。敗血症性ショックで死亡した1例を除き、臨床的に問題となる低値は示されていません。
- 重症患者の酸塩基平衡は、血液ガスで継続的に確認する必要があります。
- 血液浄化量別の傾向は一貫していた。
- 主要評価項目の達成割合は、10~15 mL/kg/hで80.9%、15~20 mL/kg/hで90.0%、20~25 mL/kg/hで84.6%でした。
- 承認された用量範囲(10~25 mL/kg/hr)では、血液浄化量によらず電解質の是正効果は同様でした。
- 試験の限界も踏まえて解釈する。
- 非盲検試験です。開始前に血清K⁺・Na⁺が両方とも基準範囲内だった患者の割合も、本剤群68.8%、サブパック群58.5%と差がありました。
- 後ろ向き観察研究の48.6%より高く、同意取得前のK⁺是正処置などが影響したと考えられています。機構は申請者の説明を了承しました。
- 対象は20歳以上の成人で、小児のデータはありません。
- リスク管理と再審査
- 追加の医薬品安全性監視活動、追加のリスク最小化活動は不要と判断されています。
- 再審査期間は6年です。
参考:PMDA 承認情報
サブパック血液ろ過用補充液-Bi
- 承認区分:承認事項一部変更(新効能・新用量医薬品)、再審査期間4年
- 申請者:ニプロ株式会社
- 追加された効能・効果:持続的血液浄化療法(CBP)施行時の補充液及び透析液として用いる
- 追加された用法・用量:成人には補充液と透析液の総流量として 10〜25 mL/kg/hr で、症状、電解質・酸塩基平衡異常、血液生化学値異常、体液バランス異常等が是正されるまで持続的に使用する。用量は症状、血液生化学値、体液バランス、年齢、体重などにより適宜増減する。
今回の承認で何が変わったのか
本剤は2005年3月に承認された、慢性腎不全に対するHF/HDF用の補充液です。一方でCBPに係る効能・効果を持つ補充液/透析液は国内になく、本剤を含む既承認のHF/HDF用補充液がCBPに適応外使用されてきました。今回の一部変更はこの適応外使用の解消を目的としています。
| 従来 | 今回追加 | |
|---|---|---|
| 対象治療 | 慢性腎不全に対するろ過型/ろ過透析型人工腎臓使用時(+透析時間短縮目的のろ過透析型使用時) | 持続的血液浄化療法(CBP) |
| 用途 | 補充液 | 補充液及び透析液 |
| 用量の考え方 | 成人1分間あたり30〜80 mLで点滴注入。1回15〜20 Lを4〜7時間(透析型併用時は5〜10 Lを3〜5時間) | 補充液と透析液の総流量として 10〜25 mL/kg/hr を持続的に使用 |
- 補充液としてだけでなく、CHD/CHDFの透析液としての使用も添付文書上の効能・効果に入りました。
- 用量は「1回あたりの投与量・速度」ではなく、体重あたりの総流量で規定されました。体重60 kgなら約0.6〜1.5 L/hrです。全量を本剤で賄う場合、2020 mL製剤1袋は約1.3〜3.4時間分にあたります(これは換算値です)。
- 申請時は「電解質・酸塩基平衡異常の是正」「体液バランス異常の是正」「血液生化学値異常の是正」という目的列挙の形でした。機構はこれを「補充液及び透析液として用いる」に整理しました。
- 販売名が実態に合わなくなるため、承認後に「サブパック血液浄化液」として代替新規申請が行われる予定です。1010 mL製剤は販売終了で、経過措置も2026年3月31日に満了しています。
- 本剤は2026年6月時点で海外では開発・承認されていません。
根拠となった臨床試験
国内第Ⅲ相試験(P-P3-WBCRRD試験)は非盲検非対照試験です。48時間以上のCBPが必要な20歳以上の患者を対象に、35施設で実施されました(組入れ171例、安全性解析対象170例)。総流量は 10〜25 mL/kg/h、血液流量は80〜150 mL/minでした。
- 主要評価項目:CBP開始48〜72時間後に血清K⁺(3.6〜5.0 mEq/L)と血清Na⁺(133〜145 mEq/L)の両方が基準範囲に入った患者の割合は 69.9%(100/143例、95%CI 61.7〜77.3)でした。事前に設定した閾値(下限62.2%)をわずかに下回り、主要評価項目は未達でした。
- 副次評価項目:基準範囲内への是正割合は、K⁺ 75.5%、Na⁺ 93.0%、補正Ca 79.0%、Mg 77.6%、Cl⁻ 94.4%、無機リン 52.4%、HCO₃⁻ 64.5%、血糖 71.3%でした。
- 高窒素血症物質の除去率:UN 32.4%、Cre 41.7%、UA 67.6%でした(開始前値が基準上限超の患者が対象)。
- 流量別の成績:主要評価項目の達成割合は、10〜15 mL/kg/hで71.7%、15超〜20で65.5%、20超〜25で76.5%でした。10〜25 mL/kg/hの範囲では流量による差は見られませんでした。
- 安全性:有害事象は33.5%(57/170例)でした。2%以上の事象は譫妄と低リン血症で、各2.9%(5例)でした。因果関係が否定されなかった事象は低リン血症3例のみで、軽度〜中等度、転帰は回復又は軽快でした。死亡11例を含む重症例が中心の集団でしたが、使用中止に至った12例を含め、他の事象は因果関係が否定されています。
臨床的ポイント
-
主要評価項目は未達でも承認された理由 未達の主因はK⁺でした。基準範囲を外れた35例のうち31例が下限を下回っており、そのカリウム製剤の補充割合(54.8%)は全体(66.9%)より低い状況でした。この31例の血清K⁺は3.1〜4.5 mEq/Lで推移していました。緊急報告値(2.5 mEq/L以下)やCTCAE Grade 1の低カリウム血症には該当せず、関連する有害事象は軽度の手のしびれ1例のみでした。機構は、患者の状態に応じて電解質の補充や製剤の切替えが適切に行われることを前提に、有効性・安全性を認めています。
-
K⁺・Mg²⁺・リンの補正が運用の要 ガイドライン等の記載では、本剤の補充液としての組成はK⁺ 2.0 mEq/L、Mg²⁺ 1.0 mEq/Lで、リンは含まれません。CHDFなどで透析液として持続的に用いると、低カリウム血症、低マグネシウム血症、低リン血症を起こしやすく、それぞれの補正が必要になることが多いとされています。治験でも低リン血症が唯一の因果関係を否定できない事象でした。カリウム製剤、リン製剤、マグネシウム製剤を含む電解質補正の体制と血液検査のモニタリングが重要です。
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高カリウム血症患者でのデータは限定的 治験では、登録前の血清K⁺が6.5 mEq/L超の患者は3例しか組み入れられませんでした。急性期の高カリウム血症では迅速な治療介入が優先されるためです。本剤よりK⁺濃度の高い製剤(シービーパック)では、K⁺の是正速度が遅くなる可能性が治験デザインの前提として考慮されていました。機構は、他の補充液/透析液とのK⁺・リン濃度の違いを踏まえ、患者の状態に応じて使い分けられると整理しています。
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用量幅の考え方 日本の保険診療で認められてきた血液浄化量は10〜15 mL/kg/hで、KDIGOなど海外の推奨は20〜25 mL/kg/hです。日本急性血液浄化学会のレジストリでの実際の浄化量は17.9±8.6 mL/kg/hで、治験前の後ろ向き観察研究では16.0±9.0 mL/kg/hでした。今回の 10〜25 mL/kg/hは、国内の実態と海外推奨の両方をカバーする設定です。低流量(平均14.3 mL/kg/h)が推奨量と死亡率に差がなかったとする報告も根拠に挙げられています。
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対象と調製 用法・用量は成人のみで、治験も20歳以上が対象です。用時に隔壁部を開通し、A液とB液をよく混合して用います。この操作は従来の使い方と変わりません。
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市販後の安全性情報 2005年の発売以降、CBP使用を含めて年間約150万袋が出荷されています。CBP施行時の副作用として報告されたのは、文献報告の非重篤な高カルシウム血症1件のみで、本剤の使用かどうかは不明です。追加の医薬品安全性監視計画・リスク最小化計画は不要と判断されています。