【PMDA承認情報】2026/09/28 医薬品承認一覧
目次
| 製品名 | 承認区分 | 効能効果 | PMDA |
|---|---|---|---|
| ヒアニュオ錠10 mg | 承認 | HER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌 | 詳細 |
| ビレーズトリ14.4エアロスフィア56吸入 | 承認 | 同 14.4エアロスフィア120吸入【承認】(2026年8月承認分)気管支喘息(吸入ステロイド剤、長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合) | 詳細 |
| オラデオ顆粒分包72 mg/顆粒分包96 mg/顆粒分包108 mg/顆粒分包132 mg | 承認 | 遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制 | 詳細 |
| モビコール配合内用剤LD | 承認事項一部変更 | 同 配合内用剤HD【承認事項一部変更】(2026年9月承認分)慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く) | 詳細 |
今回の承認では、HER2遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌に対するヒアニュオ錠が新たに加わり、切除不能な進行・再発例での治療選択肢が広がりました。呼吸器領域では、ビレーズトリエアロスフィアに14.4エアロスフィア120吸入が追加され、吸入ステロイド剤、長時間作用性吸入抗コリン剤、長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な気管支喘息の患者さんに対し、吸入剤の選択肢が増えています。
希少疾患では、遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制を目的とするオラデオ顆粒分包が承認され、規格も72 mgから132 mgまで複数そろっています。また、モビコール配合内用剤はLD・HDの両規格で承認事項が一部変更されており、慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)の診療で使用する際は、変更内容の確認が必要です。
新規の承認と既存薬の変更が併存する内容ですので、適応や規格の違いを整理しておくと、調剤や服薬指導での対応がしやすくなります。
ヒアニュオ錠10 mg(一般名:セバベルチニブ水和物)
- 承認区分:承認(医療用医薬品(1) 新有効成分含有医薬品、希少疾病用医薬品(指定番号:(R6薬)第642号))
- 申請者:バイエル薬品株式会社
- 効能・効果:HER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
- 用法・用量:通常、成人にはセバベルチニブとして1回20 mgを1日2回食後に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
- 承認条件:医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
- その他:再審査期間は10年。原体・製剤ともに劇薬。
今回の承認で何が変わるか
HER2遺伝子変異陽性NSCLCは全体の約2〜4%とされる希少な集団です。本剤は、この集団に対するHER2を標的とした経口TKIとして加わります。作用機序は、HER2チロシンキナーゼの可逆的阻害です。
審査報告書には、一次治療と二次治療以降の位置づけが次のように記載されています。
- 化学療法歴なし(グループF):報告書は、白金系抗悪性腫瘍剤やPD-1/PD-L1阻害剤を含む化学療法の奏効率(文献で35〜36%)を上回る有効性が期待できるとしています。
- 化学療法歴あり(グループD・E):グループDは、HER2標的の抗悪性腫瘍剤による治療歴がない患者です。この集団では、既存のHER2標的ADC(T-DXd 5.4 mg/kg、文献上の奏効率49.0%)を上回る奏効率の下限が得られました。グループEは、HER2標的ADCによる治療歴がある患者です。
一次治療から後方ラインまで使える経口の選択肢が増える点が、臨床現場での大きな変化です。なお、上記の使い分けは審査報告書(1)時点の記載に基づきます。具体的な位置づけや投与対象は、最終的な添付文書・ガイドラインで確認してください。
有効性(21607試験 I/II相、非盲検・非対照、2025年3月28日データカットオフ)
BICR判定による奏効率(主要評価項目)は次のとおりです。
| 集団 | 例数 | 奏効率[95%CI] |
|---|---|---|
| グループD(化学療法歴あり、HER2標的薬治療歴なし) | 81 | 64.2%[52.8, 74.6] |
| グループE(HER2標的ADC治療歴あり) | 55 | 38.2%[25.4, 52.3] |
| グループF(化学療法歴なし) | 73 | 67.1%[55.1, 77.7] |
- 承認申請後に提出された2025年11月17日データカットオフのグループFでは、奏効率は75.3%[63.9, 84.7]でした。
- 奏効持続期間の中央値は、グループD 9.5カ月、E 8.5カ月、F 12.2カ月(推定不能の上限あり)でした。
- 日本人集団の奏効率は、グループD 66.7%(6/9例)、グループE 50.0%(3/6例)、グループF 66.7%(4/6例)でした。例数は限られますが、全体集団と一貫した結果でした。
臨床的ポイント
1. 変異の種類による有効性の違い
- 登録された変異の大半はエクソン20挿入変異です。奏効率は、グループD 69.6%(48/69例)、グループE 40.8%(20/49例)、グループF 73.9%(51/69例)でした。
- エクソン20挿入変異以外のTKD点変異、ECD・TMD等の変異は例数が少なく、奏効が得られなかった変異もありました。
- 審査報告書では、非挿入変異の患者に対する有効性は限定的な情報にとどまるとされています。投与対象とする変異の種類や検査については、審査報告書内で引き続き検討されています。
2. エビデンスの限界
- 単群・非盲検試験で、評価は奏効率に基づいています。OSなどのtime-to-eventに基づく有効性を検証した試験成績はありません。
- 機構も、この点とエクソン20挿入変異以外を含めて評価することの適切性が不明である点を、有効性評価の限界として挙げています。
3. 安全性(2025年3月28日データカットオフより後の最新データ、グループD/E/F)
- 頻度の高い有害事象は、下痢(86〜93%)、発疹(約50〜59%)、爪囲炎(26〜29%)、貧血、低カリウム血症です。
- Grade 3以上の下痢は、グループDで23.5%、Eで10.9%、Fで5.5%でした。
- 機構が特に注意を要すると判断した有害事象は、重度の下痢、肝機能障害、腎機能障害、膵炎、ILD、心機能障害です。
- 悪心・嘔吐にも、因果関係が否定できない重篤例が複数ありました。
- 休薬に至った有害事象は約46〜58%、減量に至った有害事象は約27〜35%で、休薬・減量による用量調整が前提の薬剤です。投与中止に至った有害事象は約3〜5%でした。
- 添付文書等で、下痢や悪心・嘔吐の発現状況と対処法について注意喚起することが求められています。
- 日本人患者では、外国人患者と比べて口内炎、食欲減退、末梢性浮腫、傾眠などの発現割合が高い傾向がありました。ただしGrade 3以上や死亡に至った有害事象の発現が高い傾向はなく、日本人患者でも忍容可能と判断されています。
4. 薬物相互作用・特殊集団
- CYP3A基質:ミダゾラムの併用で、Cmaxが1.79倍、AUC0-infが1.95倍に上昇しました。治療域の狭いCYP3A基質との併用には注意が必要です。
- 肝機能障害:中等度(Child-Pugh B)では曝露量に明確な影響がなく、用量調節は不要とされました。重度では臨床試験成績がなく、本剤は主に肝代謝で消失するため、投与時の注意が必要です。
- PD-1/PD-L1阻害剤の治療歴:治療歴の有無による安全性に大きな差はなく、現時点で注意喚起は不要と判断されています。
5. 製剤の注意
- 用法は20 mg 1日2回ですが、製剤は10 mg錠です。
- 21607試験のグループD〜Fで使用された10 mg錠(市販予定製剤)と20 mg錠の間では、生物学的同等性が示されていません。一方、10 mg錠(市販予定製剤または臨床試験用製剤)と臨床試験用の10 mg錠との間では、生物学的同等性が示されています。
- 機構は、この点が有効性・安全性の評価に及ぼす影響は低いと判断しています。
6. 実務上のポイント
- 投与前に遺伝子変異の確認が必要です。
- 下痢、皮膚障害、爪囲炎などの副作用への対応を、投与開始前に患者へ説明しておくことが重要です。
まとめ
本剤は、HER2遺伝子変異陽性NSCLCに対する新しい経口TKIです。奏効率は化学療法歴のない集団で約7割、化学療法歴のある集団でも4〜6割台と、有望な成績が示されました。一方で、単群試験による奏効率評価であること、下痢を中心とした消化管障害が多いこと、減量・休薬が必要になる患者が多いことに留意が必要です。
ビレーズトリ14.4エアロスフィア56吸入/120吸入(ブデソニド/グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物)
承認区分:承認(新医療用配合剤、2026年8月承認分。再審査期間4年) 効能・効果:気管支喘息(吸入ステロイド剤、長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合) 用法・用量:通常、成人及び12歳以上の小児には、1回2吸入(ブデソニド320 μg/グリコピロニウム28.8 μg/ホルモテロールフマル酸塩9.6 μg)を1日2回吸入投与する。
今回の承認で何が変わったか
ビレーズトリは、2019年6月にCOPDで承認済みのpMDI型ICS/LAMA/LABA配合剤です。今回の承認でその適応に喘息が加わりました。
- LAMA単剤やICS/LAMA/LABAの吸入エアゾール剤は、これまで喘息では選べませんでした。 国内の喘息向けICS/LAMA/LABA配合剤は、フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ウメクリジニウム/ビランテロール、モメタゾン/GLY/インダカテロールの吸入粉末剤のみでした。本剤は、吸入粉末剤の吸気流速に不安がある患者にも、1つの吸入器で3剤を使える選択肢になります。
- 12歳以上の小児で3剤を1剤にできる初めての選択肢です。 国内では、小児喘息に対して承認されたLAMAがありませんでした。
- 用法は1日2回、1回2吸入です。 添付文書には「できるだけ同じ時間帯に吸入する」旨の注意が入る見込みです。喘息の長期管理薬であり、急性症状には使いません。
なお、COPDで承認済みのビレーズトリエアロスフィア(グリコピロニウム7.2 μg/噴霧)とは別製剤です。本剤は、喘息用にグリコピロニウムを14.4 μg/噴霧(1回2吸入で28.8 μg)とした規格です。
臨床的ポイント
有効性(KALOS・LOGOS試験)
- 対象は、中用量または高用量のICS/LABAでコントロール不良の喘息患者です。対照はBUD/FM 320/9.6 μgでした。
- 主要評価項目は、投与12〜24週の朝投与前トラフFEV1のベースラインからの変化量です。
- KALOS試験(国際共同)では、BUD/GLY/FM 320/28.8/9.6 μg群がBUD/FM群に対し、差0.042 L(95%CI 0.010〜0.074、p=0.011)で優越性を示しました。
- LOGOS試験でも、BUD/GLY/FM 320/28.8/9.6 μg群がBUD/FM群に対し差0.107 L(同0.073〜0.142)でした。
- 両試験の併合解析では、重度の喘息増悪の年間発現率が、BUD/FM群0.604に対し本剤0.541でした。率比は0.896(0.779〜1.031)で、有意差はなく、減少傾向にとどまります。
- 患者報告アウトカムでは、BUD/FM群との一定の差は認められていません。上乗せ効果の主体は肺機能と、増悪抑制の傾向です。
安全性
- 有害事象の発現状況は、既知のBUD/FMと類似していました。COPDでの既承認製剤と比べても、新たな安全性上の懸念は認められていません。
- ICS関連、LAMA関連(心血管系への影響など)、LABA関連のいずれの有害事象でも、投与群間に明らかな差はありませんでした。
日本人データ
- KALOS試験の日本人部分集団は、有効性解析対象がBUD/GLY/FM 320/28.8/9.6 μg群18例を含む52例と限られます。
- 全体集団と概ね同様の傾向で、有効性は期待できると判断されました。
12歳以上の小児
- 併合解析の部分集団は、本剤群30例、BUD/FM群39例と少数です。主要評価項目でBUD/FM群を下回る傾向がありました。
- 一方、重度増悪の抑制傾向はあり、安全性上の明らかな懸念はありません。
- 本剤のICS量(BUD 640 μg/日相当)は、12歳以上の小児では高用量ICS相当です。成長抑制のリスクがあるため、添付文書で成長観察への注意喚起が必要とされました。
- 12歳以上の小児への使用は、JPGL2023の治療ステップ4で追加の気管支拡張作用としてLAMAが必要と判断される場面が想定されています。位置付けの詳細は、今後、関係学会で議論されることが望まれるとされました。
位置付け(成人)
- JGL2024の治療ステップ3〜4で、中用量または高用量のICS/LABAでも十分にコントロールできず、LAMAの追加が必要と判断される患者が対象です。
- 中用量ICS/LABAで残存症状がある場合に、高用量ICSへの増量による副作用リスクを避けたいとき、本剤が考慮されます。
- 高用量ICS/LABAで不十分な場合は、本剤への切替えでICSが中用量になります。そのうえでLAMAの追加効果が期待できるときに、本剤が選択肢になります。
切替え時の注意
- 本剤と同一吸入器のBUD/FMは、国内で開発されていません。国内のBUD/FM配合剤は吸入粉末剤で、成人のみの承認です。
- 既存のICS/LABAから切り替える際は、吸入器の違いに伴う服薬アドヒアランス低下や、有効成分の切替えに伴う副作用に注意が必要です。専門協議でも、前治療のICSの種類と用量、喘息のコントロール状態、増悪歴を踏まえ、ICS量が過少または過剰にならないよう、医療現場へ情報提供することが適切とされました。
- 吸入手技の確認と吸入指導が、これまで以上に重要です。
承認条件・市販後
- 承認条件は、医薬品リスク管理計画の策定と適切な実施です。
- 追加の医薬品安全性監視活動として、12歳以上の小児での情報収集を継続する方針が示されています。
今後の展開
- 4歳以上12歳未満の喘息患者を対象とする海外第II相試験(D5982C00015)が進行中です。この結果を踏まえて、小児用製剤の開発と国際共同試験への参加が計画されています。
オラデオ顆粒分包72 mg/顆粒分包96 mg/顆粒分包108 mg/顆粒分包132 mg(ベロトラルスタット塩酸塩)
承認区分:新用量医薬品、剤形追加に係る医薬品(再審査期間中のもの)/希少疾病用医薬品 効能・効果:遺伝性血管性浮腫(HAE)の急性発作の発症抑制 用法・用量:通常、2歳以上12歳未満の小児には、ベロトラルスタットとして下記の体重別の用量を1日1回、食後又は食事とともに経口投与する。
- 15 kg以上24 kg未満:72 mg
- 24 kg以上32 kg未満:96 mg
- 32 kg以上40 kg未満:108 mg
- 40 kg以上:132 mg
承認条件:医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
今回の承認で何が変わったか
オラデオ(血漿カリクレイン阻害薬)は、これまで150 mgカプセルのみで、対象は成人および12歳以上の小児でした。今回、2歳以上12歳未満の小児に対する初の経口HAE発作抑制薬として、顆粒分包が加わります。
従来の12歳未満の小児の選択肢は、審査報告書によると、人C1-インアクチベーター製剤(皮下注)のみでした。ラナデルマブ製剤とガラダシマブ製剤は12歳未満に適応がありません。今回の承認で、経口投与できる選択肢が加わります。
新たに加わる点は次のとおりです。
- 対象年齢が2歳以上に広がります。
- 顆粒分包が新設されました。
- 体重別の4段階用量が設定されました。
- 顆粒は、食後又は食事とともに投与します。
臨床的ポイント
- 有効性の根拠:海外第Ⅲ相試験(304試験、非盲検・非対照、29例)が中心です。ベースラインからの発作頻度の低下が認められました。
- 全体の発作頻度(回/月)は、標準治療期の1.507から、投与1日目〜48週で0.523に低下しました。
- 対照群との比較はなく、成人・12歳以上の小児での有効性を、曝露量の類似性に基づいて外挿しています。
- 日本人データの扱い:国内試験は実施されていません。国内の該当患者が極めて少なく、実施が困難だったためです。成人・12歳以上の小児で明らかな民族差がなかったことから、機構は外国人小児データによる評価が可能と判断しました。
- 用法・用量の下限は申請時から変更:申請時は12 kg以上でしたが、15 kg以上に変更されました。
- 304試験に12〜15 kg未満の患者は組み入れられませんでした。
- 低体重域の曝露予測には相当の不確実性があり、催不整脈リスクも考慮しました。
- 15 kg未満の小児は、添付文書上の用法・用量の対象外である点に注意が必要です。
- 体重区分の用量設定:
- 15 kg以上24 kg未満では、72 mgでも曝露が成人よりやや高めになると予測されています。ただし、304試験の78 mgで明らかな安全性上の懸念がなかったため、72 mgとされました。
- 40 kg以上では、思春期・青年期にあたる患者が多いことから、発作頻度・重症度への配慮と、Ctrough維持の観点で最高用量の132 mgとされました。
- 安全性:
- 有害事象は86.2%(25/29例)に認められましたが、死亡や投与中止に至った有害事象はありませんでした。
- 主な事象は上咽頭炎(34.5%)、上気道感染(27.6%)、嘔吐(17.2%)などでした。
- 重篤な有害事象は3例に認められましたが、いずれも治験薬との関連は否定されています。
- 副作用は13.8%(4/29例)でした。
- カプセル剤の重要な特定されたリスクである肝機能障害(発生率6.9%)とQT延長を含め、成人・12歳以上と同程度の安全性プロファイルと判断されました。QT延長を示唆する事象は304試験で報告されていません。
- 製造販売後:症例数が限られることなどから、全例調査は行わない方針です。国内の対象患者数は約26人と推定されています。製造販売直後調査で早期の副作用情報を収集します。
- 剤形間の注意点:カプセル剤と顆粒剤の生物学的同等性は評価されていません。カプセル剤から顆粒剤へ切り替える場合は、この点を踏まえる必要があります。なお、384試験で40 kg以上の患者に使用されたのは150 mgカプセル剤で、顆粒剤の132 mgとは用量が異なります。
PMDA:https://www.pmda.go.jp/drugs/2026/P20260924002/navi.html
補足:13ページ以降は未読です。製造販売後の記載(7.R.6の後半)は、13ページ末尾までの内容から「製造販売直後調査で早期に副作用情報を収集」と記載しました。
なお、上の記事本文の「384試験」は誤記で、正しくは304試験です。連結前に修正してください。
モビコール配合内用剤LD/同HD(マクロゴール4000・塩化ナトリウム・炭酸水素ナトリウム・塩化カリウム)
- 承認区分: 承認事項一部変更(新用量医薬品)
- 効能・効果: 慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)(変更なし)
- 申請者: EAファーマ株式会社
- 承認条件: 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること
今回の承認で何が変わったか
効能・効果は変わらず、用法・用量に「1歳の幼児」が新設されました。従来の対象は2歳以上の小児と成人でした。1歳児の慢性便秘症に対する浸透圧性下剤で、国内で用法・用量が設定された薬剤が加わります。
| 対象 | 初回用量(1日1回) | 最大用量 |
|---|---|---|
| 1歳(新設) | LD 1包 | 1日1〜2回、1日量としてLD 2包またはHD 1包まで(1回量としてもLD 2包またはHD 1包まで) |
| 2歳以上7歳未満 | LD 1包 | 1日1〜3回、1日量としてLD 4包またはHD 2包まで |
| 7歳以上12歳未満 | LD 2包またはHD 1包 | 1日量としてLD 4包またはHD 2包まで |
| 12歳以上・成人 | LD 2包またはHD 1包 | 1日量としてLD 6包またはHD 3包まで |
- 増量は2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量としてLD 1包まで(12歳以上はLD 2包またはHD 1包まで)です。
- 2歳以上の用法・用量は変更されていません。2歳以上7歳未満の記載にあった「モビコール配合内用剤LD(以後LD)」などの表記が、略称のLD・HDに整理されただけです。
- 申請時の対象は「1歳以上2歳未満」でしたが、承認された用法・用量は「1歳の幼児」です。
臨床的ポイント
1. 有効性(国内第III相試験 CT3試験)
- 1歳の慢性便秘症患者29例を対象とした非盲検・単群試験です。LD 1包/日から開始し、12週間投与しました。
- 主要評価項目は、投与期第2週の自発排便(SBM)回数の観察期第2週からの変化量です。結果は4.62±3.23回/週(95%信頼区間 3.39〜5.85)で、下限が事前設定の閾値1.00回を上回りました。
- 副次評価項目もこれを支持していました。
- SBM回数は投与1週目から増加し、12週目まで概ね一定に推移しました。
- SBMのレスポンダー①(週1回以上の増加かつ週3回以上)は、投与第2週で93.1%でした。
- 投与開始から初回SBMまでの日数の中央値は2.0日でした。
- 救済薬を使用した患者の割合は、観察期第2週の65.5%から投与第12週の0.0%へ低下しました。
- 目安として、投与前は週1回程度だった排便が、投与後は週5〜6回程度になりました。
- 硬便(BSFS 1〜2)の割合は減少し、BSFS 3〜5の正常範囲の便が増えました。
2. 試験デザイン上の留意点
- 対照群のない試験で、有効性は成人(CT1試験)と2〜14歳の小児(CT2試験)の成績との外部比較で評価されています。
- PMDAは、患者数が限られ実施可能性の面から非盲検非対照はやむを得ないとしました。1歳児と2歳以上で病態生理・診断基準・治療目標が類似していることも踏まえ、外部比較による評価は妥当としています。
- 変化量はCT1試験で4.25回、CT2試験で5.54回でした。CT3試験の4.62回は、いずれとも大きな差がありませんでした。
- 一方でPMDAは、1歳児でのSBM回数の判断基準1.00回について、申請者の説明に一定の理解を示しています。その上で、主要評価項目に加えて副次評価項目も確認し、総合的に評価するのが適切としました。
3. 安全性
- 有害事象は82.8%(24/29例)に認められましたが、主なものは上咽頭炎37.9%、上気道感染17.2%、胃腸炎13.8%などの小児で一般的な感染症でした。
- 副作用は6.9%(2/29例)でした。死亡はなく、投与中止に至った有害事象もありませんでした。
- 重篤な有害事象は1例(RSウイルス肺炎)でしたが、副作用とは判断されていません。
- 例数が29例と少ないため、市販後のリスク管理計画(承認条件)で情報を蓄積していく位置づけです。
4. 現場での用い方
- 開始はLD 1包/日です。効果と便性状(BSFS)を見ながら、2日以上あけて1日量として1包ずつ増量します。上限は1日量でLD 2包(またはHD 1包)です。
- 1歳児では、成人・年長児のようなHDを主体とした用量設計ではなく、LDの1〜2包での調整が基本になります。
- 本剤は水で溶解して投与します。溶解後の水分量と服薬のしやすさは、年少児での服薬コンプライアンスに関わるため、保護者への指導ポイントになります。
- 従来1歳児の慢性便秘症では、刺激性下剤、糖類下剤、塩類下剤が使われてきました。慢性便秘症ガイドライン(2025)は浸透圧性下剤からの開始を原則としています。本剤が1歳児で正式に使えるようになったことで、この方針に沿った選択がしやすくなります。
※海外では、2026年6月時点で1歳以上2歳未満の慢性便秘症に対して欧州16カ国で承認されています。
出典: PMDA 承認情報(審査報告書 令和8年8月3日)