【PMDA承認情報】2026/10/05 医薬品承認一覧
目次
| 製品名 | 承認区分 | 効能効果 | PMDA |
|---|---|---|---|
| エンハーツ点滴静注用100 mg | 承認事項一部変更 | HER2 陽性の手術不能又は再発乳癌 | 詳細 |
| エプキンリ皮下注4 mg | 承認事項一部変更 | 同 皮下注48 mg 【承認事項一部変更】(2026年9月承認分)再発又は難治性の濾胞性リンパ腫 | 詳細 |
| ブイタマークリーム0.5 % | 承認 | アトピー性皮膚炎 | 詳細 |
| ダトロウェイ点滴静注用100 mg | 承認事項一部変更 | ホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌 | 詳細 |
| 1.リブロファズ配合皮下注 | 承認事項一部変更 | 2.同 配合皮下注22 mL【承認】(2026年9月承認分)EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌 | 詳細 |
| 注射用メソトレキセート5 mg | 承認事項一部変更 | 同 50 mg【承認事項一部変更】(2026年9月承認分)造血幹細胞移植時の移植片対宿主病の抑制 | 詳細 |
今回の承認では、抗体薬物複合体(ADC)や二重特異性抗体を中心に、がん領域で適応の拡大が目立ちました。エンハーツ点滴静注用100 mgはHER2陽性の手術不能又は再発乳癌、ダトロウェイ点滴静注用100 mgはホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌について、それぞれ承認事項が一部変更されています。エプキンリ皮下注4 mg・48 mgは再発又は難治性の濾胞性リンパ腫が対象です。リブロファズ配合皮下注は、EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性を含むEGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対し、承認事項の一部変更と配合皮下注22 mLの新規承認が行われました。がん領域以外では、ブイタマークリーム0.5 %がアトピー性皮膚炎の外用薬として新たに承認されています。また、注射用メソトレキセート5 mg・50 mgには、造血幹細胞移植時の移植片対宿主病の抑制が加わりました。
エンハーツ点滴静注用100 mg(トラスツズマブ デルクステカン)
承認区分: 承認事項一部変更(新効能・新用量) 効能・効果: HER2 陽性の手術不能又は再発乳癌
今回の承認で何が変わったか
従来の効能・効果は「化学療法歴のある HER2 陽性の手術不能又は再発乳癌」で、既治療例(2次治療以降)に限られていました。今回、「化学療法歴のある」という限定が外れ、化学療法歴のない(1次治療)HER2 陽性の手術不能・再発乳癌にも使えるようになりました。
用法・用量には次の点が加わりました。
- ペルツズマブ(遺伝子組換え)との併用で、エンハーツ 5.4 mg/kg を 3 週間間隔で、90 分かけて点滴静注します。
- 化学療法歴のある患者では、これまでどおりエンハーツ単独投与もできます。
- 初回投与の忍容性が良好なら、2 回目以降の投与時間は 30 分まで短縮できます。
HER2 陽性乳癌の 1 次治療は、これまでトラスツズマブ+ペルツズマブ+タキサン系抗悪性腫瘍剤(THP 療法)が標準的でした。そこに「エンハーツ+ペルツズマブ」という ADC ベースの選択肢が加わります。
承認条件は、医薬品リスク管理計画を策定し、適切に実施することです。
根拠となった試験(国際共同第Ⅲ相 09 試験)
- 対象は、化学療法歴のない HER2 陽性(IHC 3+ または ISH 陽性)の手術不能・再発乳癌患者です。
- 比較は、エンハーツ+ペルツズマブ群(383 例)と THP 群(387 例)で行いました。
- 主要評価項目の BICR 判定による PFS 中央値は、エンハーツ+ペルツズマブ群 40.7 か月、THP 群 26.9 か月でした。ハザード比は 0.56[95%CI 0.44, 0.71]で、p<0.00001 と統計学的に有意でした。
- OS は中間解析の時点で、ハザード比 0.84[0.59, 1.19]でした。短縮する傾向は認められませんでしたが、中央値は両群とも未達です。
- 日本人集団は 39 例と少数です。PFS のハザード比は 0.72[0.27, 1.88]で、全体と異なる傾向はありませんでした。
審査では、THP 群のタキサン系薬剤別の部分集団で、PTX 175 mg/m² Q3W を選択した集団(26 例)のハザード比が 1.16[0.59, 2.62]でした。ただし例数が少なく、PMDA は有効性が否定されるものではないと判断しています。
臨床的ポイント(安全性)
エンハーツ+ペルツズマブ群と THP 群の主な違いは次のとおりです。
| 項目 | エンハーツ+ペルツズマブ群(381 例) | THP 群(382 例) |
|---|---|---|
| Grade 3 以上の有害事象 | 63.5% | 62.3% |
| 死亡に至った有害事象 | 3.4% | 0.8% |
| 休薬に至った有害事象 | 68.8% | 49.0% |
| 本薬の減量に至った有害事象 | 45.9% | ― |
| 投与中止に至った有害事象 | 20.7% | 28.3% |
- 悪心・嘔吐: 悪心は 75.1%、嘔吐は 46.2% で、THP 群(33.8%、18.1%)より多く見られました。Grade 3 以上の悪心も 5.2% です。制吐療法を含めた支持療法が重要です。
- 血液毒性: Grade 3 以上の好中球減少症は 15.2%、貧血は 10.2% でした。なお、Grade 3 以上の好中球数減少は THP 群(18.8%)のほうが多くなっています。
- 低カリウム血症: Grade 3 以上が 14.2% で、THP 群(2.6%)より多く見られました。
- 間質性肺疾患(ILD)・肺炎: 死亡に至った有害事象は肺炎 4 例、敗血症 2 例、肺臓炎 1 例でした。ILD は休薬に至ったものが 6.6%、投与中止に至ったものが 2.9% で、肺臓炎による投与中止も 3.7% ありました。ILD の早期発見のため、呼吸器症状と画像のモニタリングが引き続き必須です。
- 日本人患者: 脱毛症、便秘、好中球数減少、口内炎、味覚不全、倦怠感などが外国人患者より高頻度でした。休薬に至った有害事象でも ILD(17.9%)や好中球数減少(15.4%)が目立ちました。死亡に至った有害事象はありませんでしたが、例数が限られます。
- PMDA は、がん化学療法に十分な知識と経験を持つ医師が、患者の観察や有害事象の管理、休薬等の適切な対応を行うことを前提に、忍容可能と判断しています。
実務上の注意
- 休薬や減量の頻度が高いため、投与スケジュール管理や副作用モニタリングの体制整備が求められます。
- ペルツズマブの減量は許容されていません。有害事象が出た場合は、エンハーツ側で休薬・減量して対応します。
- 1 次治療の第一選択をエンハーツ+ペルツズマブとするか THP 療法とするかは、PFS 延長の大きさと、ILD・消化器・血液毒性のリスクを踏まえた個別判断になります。
PMDA 情報
https://www.pmda.go.jp/drugs/2026/P20260930001/navi.html
エプキンリ皮下注4 mg・同皮下注48 mg(エポコリタマブ)
承認区分: 承認事項一部変更(新用量医薬品)|効能・効果: 再発又は難治性の濾胞性リンパ腫(効能・効果の文言は変更なし)
今回何が変わったか
エプキンリは、2023年9月に再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)などで承認されました。濾胞性リンパ腫(FL)では2025年2月に、単剤・3ステップ漸増(0.16→0.8→3→48 mg)の用法が承認されています。
今回の一変で、FL に対するリツキシマブ(遺伝子組換え)+レナリドミド(R²)併用の用法・用量が追加されました。これまで FL では単剤投与だけでしたが、R² との併用が選べるようになります。
| 単独投与(既承認) | R² 併用(今回追加) | |
|---|---|---|
| 漸増 | 3ステップ(0.16→0.8→3→48 mg) | 同左 |
| 第2・3サイクル | 1、8、15、22日目 | 同左(週1回) |
| 第4サイクル以降 | 4〜9サイクルは1、15日目、10サイクル以降は1日目 | 1日目(4週に1回) |
| 投与期間 | 継続 | 最大12サイクルまで |
併用時は第4サイクル以降を4週に1回にまとめ、12サイクルで投与を終える設計です。単独投与の「2週に1回の期間を経て、その後4週に1回」という流れとは異なるため、両者を取り違えないよう注意が必要です。
審査の根拠(国際共同第Ⅲ相試験:638試験)
対象は、抗CD20抗体と化学療法の併用を含む1つ以上の治療歴がある再発又は難治性のFL(Grade 1〜3A)です。エポコリタマブ48 mg+R² 群(243例)と R² 群(245例)を比較した非盲検無作為化試験です。
- 奏効率(IRC判定、第1回中間解析): 95.7%(111/116例)に対し 81.0%(94/116例)で、群間差は14.9%でした(p<0.0001)。CR率は 81.0% と 47.4% です。
- PFS(IRC判定): 中央値は併用群で推定不能(NE)、R² 群で11.2か月でした。ハザード比は 0.21[95%CI 0.13, 0.33](p<0.0001)、イベント発現は 9.5%(23例)と 30.6%(75例)です。
- OS(副次評価項目): ハザード比は 0.41[0.18, 0.95]で、現時点では併用群で短縮する傾向は認められていません。ただしイベント数が少なく、評価には限界があります。
- 第2回中間解析(2025年5月)でも、PFS のハザード比は 0.21[0.14, 0.31]、奏効率は 95.1% と 79.2% で、結果は一貫していました。
臨床的ポイント
- CRS に注意が必要です。 併用群の全Gradeの CRS 発現割合は、2ステップ漸増で 45.5%(50/110例)、3ステップ漸増で 26.3%(35/133例)でした。638試験は途中で漸増方法が2ステップから3ステップに変更されており、承認用法は CRS リスク低減を目的とした3ステップです。承認条件にもあるとおり、CRS の管理に十分対応できる体制の施設で投与する必要があります。
- 有害事象は重い傾向があります。 併用群では Grade 3以上が約9割、重篤な有害事象が5〜6割でした。治験薬投与中から追跡期間中の死亡は 3/243例(1.2%)です。第3サイクルを毎週投与した群では肺炎が多い傾向があり、10例中8例が回復して休薬・減量で管理できたと整理されています。
- 日本人のデータは限られています。 638試験の日本人は28例(併用群11例)で、PFS は 1 イベントのみのため評価が困難です。それでも機構は、部分集団解析で有効性に明確な差がないことや、既承認の単剤投与で明確な国内外差がないことを踏まえ、日本人での有効性も期待できると判断しました。国内第Ⅰ/Ⅱ相試験(04試験)の併用 Arm は3例で、全例が CR でした。
- 承認条件は2つです。 医薬品リスク管理計画の策定と適切な実施、そして造血器悪性腫瘍に関する十分な知識・経験を持つ医師のもとで、サイトカイン放出症候群の管理などに適切に対応できる体制下で投与されるよう措置を講じることです。
現場へのインパクト
再発・難治性FLで、二重特異性抗体を含む併用療法が選べるようになりました。R² 単独と比べて奏効率・PFS の改善が大きいことが、今回の追加の根拠です。一方で、治療選択では CRS や感染症のリスクと、入院管理などを含む投与体制の確保を考える必要があります。レナリドミド併用なので、血球減少など併用薬側の有害事象にも注意が必要です。
なお、同時期に出た審査報告書の修正表は、脚注の数値の表記や調査票の回収時点の記載を直すもので、審査結果に変更はありません。
ブイタマークリーム0.5%(タピナロフ)
承認区分: 承認(新用量・剤形追加に係る医薬品) 効能・効果: アトピー性皮膚炎 用法・用量: 通常、12歳未満の小児には、1日1回、適量を患部に塗布する。 申請者: 塩野義製薬株式会社
今回の承認で何が変わったのか
タピナロフ(芳香族炭化水素受容体〈AhR〉調節薬)のクリームは、2024年6月に1%製剤が承認されました。対象は「アトピー性皮膚炎」の成人および12歳以上の小児です。今回の承認で、2歳以上12歳未満の小児が対象に加わります。
- 0.5%製剤の追加: 既承認の1%製剤と同一処方で、有効成分の配合量だけが異なります。
- 用法・用量の変更: 12歳未満の小児には1日1回、適量を患部に塗布します。
- 小児アトピー性皮膚炎の外用薬の選択肢: 国内診療ガイドラインでは、ステロイド外用薬、タクロリムス軟膏、デルゴシチニブ軟膏、ジファミラスト軟膏が基本とされています。ステロイドでもカルシニューリン阻害薬でもJAK阻害薬でもPDE4阻害薬でもない、AhR調節という別の作用機序の薬が、この年齢層の選択肢に加わります。
- 審査報告書の記載の範囲: 審査報告書(1)には、ステロイド外用薬との位置づけや、他の非ステロイド外用薬との使い分けの記載は確認できませんでした。
臨床的ポイント
有効性(国内第III相試験 ZBC4-1、2歳以上12歳未満)
- 主要評価項目である8週時のEASI-75達成割合は、本薬群52.6%(54/100例)、プラセボ群12.6%(6/30例)でした。差は40.0%(95%信頼区間 26.3〜53.7)で、p<0.0001でした。
- 二重盲検期の中止例の中に、AD悪化によるものがありました。試験を完了した132例(プラセボ群30例、本薬群102例)に加え、AD悪化により二重盲検期の継続が困難と判断された19例(プラセボ群17例、本薬群2例)が延長期へ移行しています。
- 国内第II相試験(ZBC2-1)でも、8週時のEASIスコア変化率は本薬0.5%群で−81.29%、プラセボ群で−18.56%でした。プラセボ群との差は−62.73%(p<0.0001)です。
- 延長期(60週時)まで改善傾向が維持されました。EASI-75達成割合は、本薬継続群で80.2%(77/96例)でした。
安全性
- 二重盲検期(ZBC4-1)の副作用は、本薬群6.5%(7/107例)、プラセボ群3.6%(2/55例)でした。5%以上の副作用はありませんでした。
- 全期間(二重盲検期と延長期)の副作用は、本薬継続群で17.8%(19/107例)でした。主なものは適用部位毛包炎と、ざ瘡(いずれも5.6%)です。
- 死亡例はありませんでした。重篤な有害事象は、全期間で本薬継続群の1例(脛骨骨折)のみで、副作用とは判断されていません。
- 第II相試験の本薬0.5%群では、副作用として適用部位刺激感(5.0%)と頭痛(2.5%)が認められました。
薬物動態
- 反復経皮投与での血漿中濃度は低値でした。投与期間が長くなっても増加する傾向はなく、12歳以上のAD患者での1%製剤塗布時の分布の範囲内でした。
- 血漿中濃度と、年齢、病変%BSA、塗布量、ベースラインのIGAスコアおよびEASIスコアとの間に、明確な関連は認められていません。
承認条件: 医薬品リスク管理計画を策定のうえ、適切に実施すること。
実務上の留意点
- 対象は2歳以上12歳未満の試験で検討された集団です。審査報告書によると、2歳未満の乳幼児を対象とした臨床試験は実施中です。
- 小児では皮膚の塗布面積あたりの体表面積比が大きくなります。血漿中濃度が低値であったことは、全身曝露の面で安心材料になります。
- 長期使用では、毛包炎やざ瘡といった皮膚症状が副作用として現れました。投与中は皮膚の状態の確認が必要です。
- 患者・保護者への説明では、1日1回、適量を患部に塗布すること、および使用の継続で改善が維持された試験結果を伝えられます。
PMDAリンク: https://www.pmda.go.jp/drugs/2026/P20260930004/navi.html
ダトロウェイ点滴静注用100 mg(ダトポタマブ デルクステカン)
- 承認区分: 承認事項一部変更(新効能・新用量。優先審査)
- 効能・効果(追加): ホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌
- 用法・用量: 1回6 mg/kgを3週間間隔で点滴静注(初回90分、忍容性良好なら2回目以降は30分まで短縮可)。「1回量として540 mgを超えないこと」が今回追加された。
今回の承認で何が変わったか
本剤はTROP-2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)です。2024年12月に「化学療法歴のあるHR陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」で承認されていました。今回の一変で、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)への適応が加わります。
審査報告書では、今回の対象は国際共同第Ⅲ相試験(TB02試験)の組入れ条件に沿って整理されています。
- 化学療法歴がない患者
- PD-1/PD-L1阻害剤による治療の適応がない患者
TNBCの1次治療では、これまで主に次の薬剤が使われてきました。
- タキサン系
- カペシタビン
- カルボプラチン
- エリブリン
本剤はこれらの細胞傷害性抗がん剤に代わる選択肢になります。同じ薬剤が、前治療歴のあるHR陽性乳癌に加えて、化学療法未治療のHR陰性乳癌でも使えるようになった点が、臨床上の変化です。
なお、効能・効果は「HR陰性かつHER2陰性」と広く記載されています。ただし、効能・効果に関連する注意の項が新設されるとされています(報告書上は下線追加の形で示されています)。注意の項の具体的な内容は、今回確認した報告書の範囲では読み取れていないため、添付文書で確認してください。
用法・用量の変更点
体重に応じた投与量の上限として540 mgが設けられました。PPK解析では、体重95パーセンタイル(95.8 kg)の患者で、体重中央値(63 kg)の患者に比べて曝露量が高くなると予測されています。本剤のAUCは約1.24倍、Cmaxは約1.28倍。DXdのAUCは約1.46倍、Cmaxは約1.50倍です。
90 kg以上の患者に540 mgの上限を適用すると、90 kg未満の患者と同様の全身曝露が得られると予測されました。目安として、体重90 kg以上の患者は一律540 mgになります。
臨床的ポイント
有効性(TB02試験、BICR判定、2025年8月データカットオフ): 本剤群323例とICC群(治験担当医選択の化学療法)321例を比較しています。
| 項目 | 本剤群 | ICC群 | ハザード比 |
|---|---|---|---|
| PFS中央値 | 10.84カ月 | 5.55カ月 | 0.57(95%CI 0.47–0.69、p<0.0001) |
| OS中央値 | 23.66カ月 | 18.66カ月 | 0.79(95%CI 0.64–0.98、p=0.0291) |
- ICC群の内訳は、パクリタキセル、nab-PTX、カペシタビン、カルボプラチン、エリブリンのいずれかです。
- PFSは有意水準0.01、OSは0.0499で、いずれも有意でした。OSの有意水準はぎりぎりを満たした形です。
- 薬剤別の部分集団では、パクリタキセル選択例(PFS HR 0.45、OS HR 0.63)とnab-PTX選択例(PFS HR 0.61、OS HR 0.75)で一貫した傾向でした。カペシタビン、カルボプラチン、エリブリンは例数が限られます。OSではカルボプラチン(HR 1.23)とエリブリン(HR 1.11)で本剤群に有利な傾向が示されていません。
- TROP-2発現状況(Hスコア)別では、PFS・OSとも投与群との交互作用は認められませんでした。ただしLow群のPFS HRは0.78(95%CI 0.49–1.24)と他群より小さい効果でした。発現状況による使い分けは求められていません。
- 日本人集団は本剤群17例、ICC群21例と少数です。PFS HRは0.45(95%CI 0.19–1.01)、OS HRは0.55(95%CI 0.22–1.30)で、全体集団と異なる傾向は認められませんでした。
安全性: 本剤群319例、ICC群309例が解析対象です。
- Grade 3以上の有害事象は本剤群43.3%、ICC群37.5%でした。
- 減量に至った有害事象は本剤群28.2%、ICC群18.4%と、本剤群で多くなっています。
- 本剤群で多かった事象は口内炎(58.3%、Grade 3以上8.5%)、悪心(48.3%)、脱毛症(42.9%)、便秘(39.8%)、ドライアイ(26.3%)でした。
- 口内炎はICC群では9.7%で、Grade 3以上はありませんでした。減量に至った口内炎は本剤群11.3%で、本剤の用量調整で最も問題になりやすい事象です。
- アミラーゼ増加は本剤群15.7%(Grade 3以上9.7%)で、ICC群の1.9%を大きく上回りました。既承認のHR陽性乳癌の試験(TB01試験)の本剤群では0.6%だった事象でもあり、今回の集団で新たに目立ちます。
- 角膜炎はGrade 3以上が2.2%でした。
日本人患者の安全性: 症例数は少なく、TB02試験の日本人患者は17例です。外国人患者と比べて、脱毛症、悪心、便秘、アミラーゼ増加、上咽頭炎、体重減少、点状角膜炎の発現割合が高い傾向でした。Grade 3以上のアミラーゼ増加は日本人23.5%(4/17例)、外国人8.9%でした。死亡に至った有害事象はなく、重篤な有害事象も明らかな増加はありませんでした。
薬剤師が確認したいこと:
- 口内炎の予防とマネジメント(口腔ケアの指導、含嗽、休薬・減量の判断)
- 眼障害のモニタリング(眼科受診の体制)
- アミラーゼ増加の検査値モニタリング
- ILD(間質性肺疾患)の早期発見。承認時から継続する重要なリスクです。
- 体重90 kg以上の患者で540 mgの上限を適用した調製量
承認条件は、医薬品リスク管理計画を策定のうえ適切に実施することです。
リブロファズ配合皮下注(アミバンタマブ/ボルヒアルロニダーゼ アルファ)
承認区分:承認事項一部変更(用法・用量の追加)。あわせて 22 mL バイアルが新規に承認されました(剤形追加に係る医薬品、再審査期間中)。 効能・効果:EGFR 遺伝子エクソン 20 挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、および EGFR 遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(変更なし)。
今回何が変わったか
効能・効果は変わりません。変わったのは、ラゼルチニブとの併用(B 法)で、2 週に 1 回投与に加えて 4 週に 1 回(Q4W)の皮下投与が選べるようになった点です。
| 従来(Q2W) | 今回追加(Q4W) | |
|---|---|---|
| 1 サイクル目(4 週) | 1・8・15・22 日目 | 同じ(1・8・15・22 日目) |
| 2 サイクル目以降 | 1・15 日目 | 1 日目のみ |
| 1 回量(80 kg 未満) | アミバンタマブ 1,600 mg / rHuPH20 20,000 単位 | 3,520 mg / 44,000 単位 |
| 1 回量(80 kg 以上) | 2,240 mg / 28,000 単位 | 4,640 mg / 58,000 単位 |
- 導入期(1 サイクル目)は従来と同じ週 1 回です。2 サイクル目以降の来院回数が月 2 回から 1 回になります。
- 1 回の投与量が増えるため、10 mL バイアルに加えて 22 mL バイアルが追加されました。10 mL バイアルと濃度は同一で、容量だけが異なります。
- 添加剤の酢酸ナトリウム水和物と精製白糖は、使用前例量を超える新添加剤です。機構は規格・安定性・安全性とも問題なしと判断しています。
臨床的ポイント
有効性(PALOMA-2 試験コホート 5)
- 対象は化学療法歴のない EGFR 遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の NSCLC 患者 77 例で、ラゼルチニブとの併用投与でした。非盲検・非対照の第Ⅱ相試験です。
- 主要評価項目の奏効率(治験担当医師判定)は 79.2%(95%CI 68.5〜87.6)でした。
- 独立中央判定では 83.1%でした。
- 事前に規定した解析時点(65 例)では 84.6%でした。
- 最新のデータカットオフ(2025 年 2 月)では 83.1%でした。
- 日本人 10 例の奏効率は 90.0%(9 例)でした。
- 静注 Q2W の MARIPOSA 試験(72.3%)や Q2W 皮下注コホートとの間に、明確な差は認められませんでした。
薬物動態
- Q4W 皮下注と静注 Q2W を PPK 解析で比較すると、定常状態(第 5 サイクル)の投与前濃度は同程度でした(幾何平均比 1.01)。
- Cavg は Q4W が約 1.3 倍高く、Cmax は同程度でした。
- 機構は、静注 Q2W と同様の有効性が期待できると判断しました。
- Q4W と静注の有効性を直接比較した試験はなく、承認は薬物動態の同等性と奏効率に基づく外挿が根拠です。
- 日本人と外国人で Ami の PK に明確な差は認められませんでした。
安全性
- 新規の懸念は示されていません。ただし、Q4W の一回大量投与に特化した評価は 77 例と限られます。
- Grade 3 以上の有害事象は 63.6%、重篤な有害事象は 33.8%、投与中止に至った有害事象は 14.3%でした。死亡は 2 例(COVID-19、肺炎)で、いずれも治験薬との因果関係は否定されています。
- 主な有害事象は次のとおりです。
- 爪囲炎 77.9%
- 低アルブミン血症 63.6%
- 発疹 59.7%
- ざ瘡様皮膚炎 40.3%
- 末梢性浮腫 40.3%
- 注意が必要な事象は、infusion reaction、間質性肺疾患(ILD)、皮膚障害、静脈血栓塞栓症、体液貯留、下痢、動脈血栓塞栓症です(既承認時から変更なし)。
- 日本人では、爪囲炎(100%)、ざ瘡様皮膚炎(80%)、静脈塞栓症(40%)が外国人より高頻度でした。10 例と少数のため、機構は国内外差の比較には限界があるとしつつ、特に注意するよう求めています。
薬剤師が確認したい点
- infusion reaction 対策として、1 サイクル目の第 1 日目に副腎皮質ホルモン剤・抗ヒスタミン剤・解熱鎮痛剤を前投与します。第 8 日目以降は抗ヒスタミン剤と解熱鎮痛剤を投与し、必要に応じて副腎皮質ホルモン剤、H₂ 受容体拮抗剤、制吐剤も用います。
- 静脈血栓塞栓症の予防として、併用開始後 4 カ月間はアピキサバン 1 回 2.5 mg を BID で経口投与します。
- クレアチニンクリアランスが 15 mL/min 未満の腎不全患者には投与できないため、Ami と Laz の併用以外の治療選択肢を考慮します。
- B 法は、EGFR 遺伝子変異(エクソン 20 挿入変異を除く)陽性の症例が対象です。ただし EGFR-TKI による治療歴のない患者に限られ、EGFR-TKI 治療歴のある患者での有効性・安全性は確立していません。
- A 法(カルボプラチン+ペメトレキセド併用、3 週 1 サイクル)は従来どおりです。
- 承認条件は医薬品リスク管理計画の策定と適切な実施です。
通院負担と点滴・注射の枠の占有が減るため、特に維持期の患者に実利があります。一方、1 回量が大きいため、注射部位反応や infusion reaction への観察は引き続き重要です。
PMDA リンク: https://www.pmda.go.jp/drugs/2026/P20260928001/navi.html
注射用メソトレキセート5 mg・同50 mg(メトトレキサート)
承認区分: 承認事項一部変更(新効能・新用量。2026年9月承認分) 追加された効能・効果: 造血幹細胞移植時の移植片対宿主病(GVHD)の抑制(5 mg・50 mg 両規格) 申請者: ファイザー株式会社
今回の承認で何が変わったか
メトトレキサート(MTX)注射剤は従来、急性白血病、慢性リンパ性・骨髄性白血病、絨毛性疾患、CMF 療法(乳癌)、M-VAC 療法(尿路上皮癌)などで承認されていました。50 mg 製剤にはさらに、MTX・ホリナート救援療法と MTX・フルオロウラシル交代療法の適応もあります。今回、これらに加えて造血幹細胞移植時の GVHD 抑制が両規格で追加されました。
GVHD 予防としての MTX は、国内外のガイドラインで標準的な位置づけにありながら、国内では適応外のまま使われてきました。日本造血・免疫細胞療法学会の造血細胞移植ガイドライン GVHD 第6版(2025年)は、標準的予防法をカルシニューリン阻害薬(シクロスポリンまたはタクロリムス)と MTX の2剤併用としています。海外ガイドラインも同様に CNI と MTX の併用を推奨しています。今回の承認で、この使い方が添付文書上の裏付けのある保険診療になります。
用法・用量
MTX として、15 mg/m² を移植後1日目に、10 mg/m² を移植後3日目、6日目、11日目に静脈内に投与する。患者の状態に応じて適宜減量する。
いわゆる「ショートメソトレキセート」の標準スケジュール(Day 1 / 3 / 6 / 11)です。既存の通常療法(週3〜6回、成人5〜10 mg/日)とは用量設定が大きく異なります。体表面積あたりで算出する点と、移植日を基準にした投与日にも注意が必要です。
審査のポイント
- 開発の経緯: 学会からの開発要望を受け、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で必要性が認められました。公知申請の該当性報告書がまとまり、2026年3月5日の薬事審議会医薬品第一部会での事前評価を経て承認されています。
- 新規の臨床試験は未実施: 報告書と添付文書案などを資料として、公知申請により承認されました。有効性・安全性は確認されていると判断されています。
- 専門協議は省略: 事前評価を受けた医薬品の迅速審査の扱いで、専門協議は行われていません。
- 注意事項の追加: 診療ガイドラインでは、患者の状態に応じて11日目の投与を省略する方法や、各投与日の投与量を減量する方法も示されています。そのため、用法・用量に関連する注意として、本剤の投与量や他の免疫抑制剤との併用は診療ガイドライン等の最新情報を参照する旨が記載されます。
臨床現場へのインパクト
- 適応外使用の整理が進みます。移植施設では、院内の適応外使用の申請や審査の手続きが不要になる可能性があります。
- 払い出しや調製の際は、既存の週単位の通常療法と用量体系が異なることから、処方監査で体表面積ベースの用量(15 / 10 mg/m²)と投与日(Day 1, 3, 6, 11)を確認する必要があります。
- 11日目の省略や減量は、粘膜炎、肝障害、腎機能低下、胸水・腹水貯留などの状態を見て判断されます。薬剤師は、これらの副作用モニタリング情報を移植チームと共有することが重要です。
- 併用するカルシニューリン阻害薬との相互作用や、腎機能に応じた用量調整にも注意します。審査報告書にはこれらの詳細な記載はないため、添付文書とガイドラインの確認が必要です。
PMDA: https://www.pmda.go.jp/drugs/2026/P20260928002/navi.html