【PMDA承認情報】2026/10/13 医薬品承認一覧
目次
| 製品名 | 承認区分 | 効能効果 | PMDA |
|---|---|---|---|
| ユプリズナ点滴静注100 mg | 承認事項一部変更 | 詳細 | |
| キイジェクト配合皮下注395 mg | 承認 | 同 配合皮下注790 mg【承認】(2026年9月承認分)悪性黒色腫切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌非小細胞肺癌における術前・術後補助療法再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫根治切除不能な尿路上皮癌がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)根治切除不能又は転移性の腎細胞癌腎細胞癌における術後補助療法再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌局所進行頭頸部癌における術前・術後補助療法根治切除不能な進行・再発の食道癌治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌ホルモン受容体陰性かつHER2陰性で再発高リスクの乳癌における術前・術後薬物療法進行・再発の子宮体癌がん化学療法後に増悪した高い腫瘍遺伝子変異量(TMB-High)を有する進行・再発の固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)進行又は再発の子宮頸癌局所進行子宮頸癌再発又は難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫治癒切除不能な進行・再発の胃癌治癒切除不能な胆道癌切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫白金系抗悪性腫瘍剤抵抗性の再発卵巣癌 | 詳細 |
| イコタイド錠200 mg | 承認 | 既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症 | 詳細 |
| ビエプチ点滴静注100 mg | 承認 | 片頭痛発作の発症抑制 | 詳細 |
| レケンビ皮下注250 mgペン | 承認 | アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制 | 詳細 |
| ガミファント点滴静注液50 mg | 承認 | 全身型若年性特発性関節炎又は成人発症スチル病に伴うマクロファージ活性化症候群 | 詳細 |
| ファビハルタカプセル200 mg | 承認事項一部変更 | IgA腎症 | 詳細 |
| 1.スキリージ皮下注150 mg シリンジ1 mL | 承認事項一部変更 | 2. 同 皮下注150 mg ペン1 mL【承認事項一部変更】 3. 同 皮下注75 mg シリンジ0.83 mL【承認事項一部変更】 4. 同 皮下注55 mg シリンジ0.37 mL【承認】(2026年9月承認分)既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、乾癬性関節炎 | 詳細 |
| テビムブラ点滴静注100 mg | 承認事項一部変更 | 再発又は遠隔転移を有する上咽頭癌 | 詳細 |
2026年9月承認分では、ガミファント点滴静注液50 mgが全身型若年性特発性関節炎又は成人発症スチル病に伴うマクロファージ活性化症候群を対象に承認され、イコタイド錠200 mgが既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の適応で、ビエプチ点滴静注100 mgが片頭痛発作の発症抑制の適応で、それぞれ新たに承認されました。アルツハイマー病では、レケンビ皮下注250 mgペンが軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制を対象に承認され、皮下投与のペン製剤という選択肢が加わります。キイジェクト配合皮下注395 mg・790 mgは、悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌、頭頸部癌、子宮体癌、胃癌、悪性胸膜中皮腫など多数のがん種・病態を適応として承認されており、投与経路の面でも注目されます。承認事項一部変更では、ファビハルタカプセル200 mgにIgA腎症、テビムブラ点滴静注100 mgに再発又は遠隔転移を有する上咽頭癌、スキリージ皮下注の各製剤に乾癬性関節炎を含む乾癬関連の適応が示されており、ユプリズナ点滴静注100 mgも一部変更の対象です。あわせてスキリージ皮下注55 mgシリンジ0.37 mLが新規に承認されています。
ユプリズナ点滴静注100 mg(イネビリズマブ〈遺伝子組換え〉)
承認区分:承認事項一部変更(効能追加)/希少疾病用医薬品/再審査期間10年 申請者:田辺ファーマ株式会社
今回の承認で何が変わったか
ユプリズナは抗CD19ヒト化IgG1モノクローナル抗体です。これまでの効能・効果は、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の再発予防と、IgG4関連疾患の再燃抑制でした。今回、全身型重症筋無力症(gMG)が加わりました。対象は「ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る」です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 追加された効能・効果 | 全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る) |
| 用法・用量 | 変更なし。成人に300 mgを初回、2週後に点滴静注し、その後は初回投与から6カ月後、以降6カ月に1回の間隔で点滴静注 |
| 承認条件 | 医薬品リスク管理計画の策定と適切な実施 |
gMGの治療には、すでに補体阻害薬とFcRn阻害薬があります。本剤は、これらとは別の作用点(CD19陽性B細胞の枯渇)を持つ選択肢です。投与は半年に1回です。CD19は形質芽細胞にも発現しています。そのため、自己抗体産生細胞そのものを減らし、病原性IgGを含むIgG産生を低下させることが期待されています。
臨床的ポイント
有効性(国際共同第Ⅲ相MINT試験)
- 対象は、ステロイド剤または非ステロイド性免疫抑制剤で治療中の、抗AChR抗体陽性または抗MuSK抗体陽性のgMG患者です。プラセボ対照の二重盲検比較試験で、238例が無作為化されました。
- 主要評価項目は、26週時点のMG-ADL総スコアのベースラインからの変化量です。本剤群は-4.2、プラセボ群は-2.2で、群間差は-1.9(95%CI:-2.9〜-1.0、p<0.0001)でした。プラセボに対する優越性が検証されています。
- 副次評価項目のうち、MG-ADLが3点以上改善した被験者の割合は、本剤群72.2%、プラセボ群57.9%でした。QMG総スコアの群間差は-2.5(95%CI:-3.8〜-1.2)でした。
- 自己抗体別の解析では、抗AChR抗体陽性群と抗MuSK抗体陽性群のどちらでも、点推定値は本剤群が上回りました。ただし抗MuSK抗体陽性群は24例ずつと少数です。
薬物動態・B細胞枯渇
- 本剤の投与後、CD20陽性B細胞数は速やかに低下し、非盲検期でも減少が概ね続きました。
- 用法・用量はNMOSDと同一です。PK(薬物動態)とB細胞枯渇の推移がNMOSD患者と明らかには異ならなかったことから、機構は妥当と判断しました。
安全性
- 二重盲検期の有害事象の発現率は、本剤群80.7%、プラセボ群73.1%でした。
- 本剤群で多かったのは頭痛(15.1%)、COVID-19(10.9%)、咳嗽・上咽頭炎・尿路感染(各6.7%)、注入に伴う反応(5.9%)です。
- 死亡は二重盲検期の本剤群で1例ありました。急性呼吸窮迫症候群・敗血症性ショック・肺臓炎で、治験薬との関連は否定されていません。
- 投与中止に至った有害事象は本剤群で3例でした。播種性帯状疱疹、甲状腺腫瘍、椎間板突出各1例です。このうち播種性帯状疱疹は治験薬との関連ありと判断されています。非盲検期にはB型肝炎再燃1例があり、これも関連ありと判断され、軽快しています。
- 非盲検期には血中免疫グロブリンM減少(本剤/本剤群6.4%)も見られました。
使用時の留意点
- 本剤はB細胞を枯渇させます。感染症、特に帯状疱疹などのウイルス感染や、B型肝炎ウイルスの再活性化に注意が必要です。
- 投与前のHBV関連の確認、ワクチン接種歴の確認、免疫グロブリン値のモニタリングが実務上のポイントです。
- 日本人のgMG患者は3例のみでした。審査では、PKに国内外差は認められないとされていますが、日本人での評価には限界があります。
- 対象はあくまで、既存治療で十分な効果が得られない患者です。
審査上の論点
MINT試験では、開始後に主要評価項目の解析方針が変更されました。抗AChR抗体陽性群の解析時点が52週から26週に短縮され、抗MuSK抗体陽性群と合わせた統合解析になりました。機構は、本来は開始前に検討すべき変更だったとしつつ、変更前後で被験者背景や結果に明らかな差がないことから、有効性評価は可能と判断しています。また、有効性はMG-ADLに加え、QMG総スコアも踏まえて総合的に評価されました。
なお、審査報告書は17ページ目までしか確認していません。残りの安全性の詳細(18ページ以降)は読んでいないため、本文は主に有効性・安全性の主要データに基づいています。
キイジェクト配合皮下注395 mg/同配合皮下注790 mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)/ベラヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え))
承認区分:承認(2026年9月承認分)。新有効成分含有医薬品(ベラヒアルロニダーゼ アルファ)、新医療用配合剤。申請者はMSD株式会社、再審査期間は8年、劇薬、生物由来製品。承認条件は医薬品リスク管理計画の策定と適切な実施。
効能・効果:既承認のキイトルーダ点滴静注(ペムブロリズマブIV)と同じ23の効能・効果。
- 悪性黒色腫
- 切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)、およびNSCLCにおける術前・術後補助療法
- 再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫
- 根治切除不能な尿路上皮癌
- MSI-High固形癌、MSI-High結腸・直腸癌
- 根治切除不能又は転移性の腎細胞癌、およびその術後補助療法
- 再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌、および局所進行頭頸部癌における術前・術後補助療法
- 食道癌
- PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の乳癌、および再発高リスクの同乳癌における術前・術後薬物療法
- 進行・再発の子宮体癌
- TMB-High固形癌
- 進行又は再発の子宮頸癌、および局所進行子宮頸癌
- 再発又は難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫
- 胃癌
- 胆道癌
- 悪性胸膜中皮腫
- 白金系抗悪性腫瘍剤抵抗性の再発卵巣癌
今回の承認で何が変わったか
① 皮下注製剤の登場
- ペムブロリズマブをヒアルロニダーゼ(ベラヒアルロニダーゼ アルファ)と配合し、皮下投与できるようにした製剤です。皮下組織のヒアルロン酸を加水分解して薬液の浸透性を高めるため、大容量でも短時間で投与できます。
- 用法・用量は、395 mg/4,800単位を3週間間隔、または790 mg/9,600単位を6週間間隔で皮下投与します。点滴静注の200 mg Q3W、400 mg Q6Wに相当します。
- 点滴静注の効能・効果はそのまま引き継がれました。併用療法(化学療法、放射線療法、化学放射線療法)の条件、投与回数・期間の上限、食道扁平上皮癌での単独投与なども点滴静注と同じです。
② 点滴静注にない適応として「白金系抗悪性腫瘍剤抵抗性の再発卵巣癌」が加わった
- 他の抗悪性腫瘍剤との併用で投与します。
- 審査報告書によると、点滴静注はこの卵巣癌について2025年10月30日に承認申請が行われ、審査中です。皮下注が先行して承認された形です。
③ 局所進行頭頸部癌の術前・術後補助療法
- 皮下注の申請時点(2025年10月)では、点滴静注は審査中でした。その後2026年2月に承認されており、皮下注は点滴静注と同じ効能・効果で承認されています。
臨床的ポイント
有効性の根拠(D77試験)
- 化学療法歴のない切除不能な進行・再発のNSCLC患者377例を対象に、化学療法併用下で皮下注790 mg Q6W(251例)と点滴静注400 mg Q6W(126例)を比較した国際共同第Ⅲ相試験です。
- 主要評価項目の奏効率(BICR判定)は、皮下注群45.4%、点滴静注群42.1%で、奏効率比は1.08[95%CI 0.85, 1.37]でした。synthesis methodによる非劣性検定は成立しました(片側p=0.00051)。
- PFS中央値は8.1カ月と7.8カ月(HR 1.05[0.78, 1.43])、OSのHRは0.81[0.53, 1.22]で、いずれも皮下注が劣る傾向はありませんでした。
- 血中濃度は、第1サイクルのAUC0-6wksの幾何平均比が1.14[1.06, 1.22]、第4サイクル投与前濃度の同比が1.67[1.52, 1.84]で、皮下注は点滴静注と同程度以上でした。
- PMDAは、D77試験の点滴静注群の奏効率が過去の試験(KEYNOTE-189/407)より数値上低かったことから、非劣性検定の結果は慎重に解釈する必要があるとしています。そのうえで、PFS・OSの傾向とPKの結果を合わせて、点滴静注と同様の有効性が期待できると判断しました。
- 他のがん種については、PK(曝露量)に基づいて点滴静注と同様の有効性が期待できると判断されています。
- 3週間間隔(395 mg)の投与はD77試験では検討されていません。第Ⅰ相のC18試験で曝露量が確認されており、6週間間隔の790 mgと同程度以上と評価されました。
安全性
- 新たな安全性上の懸念はなく、ペムブロリズマブ点滴静注で知られているプロファイルと一貫していました。
- Grade 3以上の有害事象は皮下注群63.6%、点滴静注群66.7%でした。
- 皮下注群で割合が高かった有害事象は好中球減少症(43.3% vs 33.3%)で、休薬・投与中断に至った好中球減少症も多く(21.5% vs 15.9%)、死亡に至った発熱性好中球減少症は3例(1.1%)でした。化学療法併用時は、好中球数のモニタリングに注意が必要です。
- 免疫関連有害事象(ILD、大腸炎、肝機能障害、内分泌障害、1型糖尿病、重度の皮膚障害、infusion reactionなど)への注意は、点滴静注と同様に必要です。
- 日本人患者は皮下注群28例と少数で、日本人で割合が高かった事象は便秘、脱毛症、発熱、関節炎、好中球減少症でした。
実務上の留意点
- 投与間隔は、3週間間隔(395 mg)と6週間間隔(790 mg)の2通りです。皮下注射のため、点滴静注のような点滴時間の確保は要りません。
- 製剤は、395 mg製剤が有効期間12カ月、790 mg製剤が36カ月です(2~8℃、遮光)。光に不安定なため、紙箱に入れたまま保管します。
- 有効成分のうちベラヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)は毒薬・劇薬のいずれにも該当しませんが、製剤は劇薬です。
- 点滴静注との切り替え時や併用療法の休薬基準は、添付文書で確認してください。
まとめ
今回の承認は新規の抗腫瘍効果を持つ薬が加わるものではありません。既存のPD-1阻害薬を皮下投与にして、投与時の患者負担を減らす変更です。点滴静注の適応をほぼそのまま引き継ぎ、これに卵巣癌が加わります。外来での化学療法の運用や患者の通院負担の軽減が期待できます。一方で、化学療法併用時の好中球減少は皮下注群で多く、モニタリングが重要です。
イコタイド錠200 mg(イコトロキンラ塩酸塩)
承認区分: 新有効成分含有医薬品(承認)/ 申請者: ヤンセンファーマ株式会社
効能・効果: 既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症
用法・用量: 通常、成人および12歳以上かつ体重40 kg以上の小児には、イコトロキンラとして1日1回200 mgを起床時に空腹の状態で経口投与する。
何が変わるのか
イコトロキンラは、IL-23受容体(IL-23R)に結合してIL-23シグナルを阻害するペプチド製剤です。乾癬に対する初めての経口IL-23R阻害薬になります。
- 従来のIL-23経路への介入は、グセルクマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブといった抗IL-23p19抗体の注射剤に限られていました。経口剤では、アプレミラストとTYK2阻害薬(デュークラバシチニブ)があるだけでした。
- 今回、IL-23経路を標的とする治療に経口という選択肢が加わります。注射に抵抗がある患者や、通院・自己注射の負担が大きい患者に適した選択肢になり得ます。
- 12歳以上の小児の尋常性乾癬、GPP、EPに対して、初めての経口投与可能な分子標的薬でもあります。
- 審査報告書は、既存の生物製剤との位置付けを次のように述べています。
- 生物製剤との直接比較試験はありません。そのため、生物製剤と同程度以上の有効性があるかどうかは判断できないとしています。
- 既承認のIL-23阻害薬と安全性プロファイルが異なるかどうかも、現時点では判断できないとしています。
- 今後は、デュークラバシチニブとの比較成績も踏まえ、患者の状態に応じた使い分けが行われると考えられるとしています。
臨床成績のポイント
| 試験 | 対象 | 投与16週時の結果(本剤 vs プラセボ) |
|---|---|---|
| PSO3001(国際共同第Ⅲ相) | 中等症〜重症の局面型皮疹を有する乾癬、12歳以上(684例) | PASI 90達成率 49.6% vs 4.4%、IGA(0/1)達成率 64.7% vs 8.3% |
| PSO3002(国際共同第Ⅲ相) | 同、成人(774例) | PASI 90達成率 55.0% vs 3.8%、IGA(0/1)達成率 68.5% vs 10.9% |
- いずれの主要評価項目でもプラセボに対する優越性が検証されました。
- PSO3002には実薬対照としてデュークラバシチニブ6 mg QD群があります。16週時のPASI 90達成率は、本剤55.0%に対してデュークラバシチニブ29.6%でした。IGA(0/1)達成率は、本剤68.5%に対してデュークラバシチニブ50.2%でした。
- 本剤群はデュークラバシチニブ群を上回る有効性を示しました。プラセボ対照期の有害事象発現割合は、本剤群が47.1%、プラセボ群が60.0%、デュークラバシチニブ群が56.4%でした。
- 治療反応は早期に現れます。PSO3001ではPASI 50達成率が投与8週時に70.2%、16週時に82.7%でした。
- 対象患者の約70%は、過去に1剤以上の外用療法が効果不十分でした。外用療法で効果不十分かつ全身療法が未治療の患者も約18%含まれていました。
- 申請者は、局所療法で効果不十分な患者も投与対象になり得ると説明しています。
- 日本人部分集団は例数が限られています。PSO3001では7例、PSO3002では59例(本剤群23例)でした。
安全性・使用上の注意
- プラセボ対照期の主な有害事象は、上咽頭炎、上気道感染、頭痛などでした。審査報告書は、新たな安全性上の重大な懸念は示されていないとしています。デュークラバシチニブ群と比べても、特に留意すべき事象は示されていないとしています。
- 機構の判断は次のとおりです。
- IL-23阻害薬に共通の注意喚起(重篤な感染症など)で管理可能です。
- 既承認のIL-23阻害薬と比べて感染症リスクが低いと判断することは困難です。
- そのため、本剤投与前の感染症スクリーニングなど、既承認のIL-23阻害薬と同様の安全対策が必要です。
- 好中球減少、胃腸障害、肝障害、精神神経系事象(うつ病、自殺念慮)は、臨床試験では本剤群とプラセボ群・実薬群で大きな差はありませんでした。
- ただし、これらは製造販売後も情報収集を続ける項目とされています。
- 併用については次の点が注意喚起されます。
- 生物製剤・TYK2阻害薬との併用は、安全性・有効性が確立していないため避けます。
- 免疫抑制薬・光線療法との併用も、安全性・有効性が確立していません。
- 外用薬との併用は可能と考えられています。
服薬指導・処方時のポイント
- 吸収が食事の影響を受けるため、起床時の空腹状態で水とともに服用し、服用後30分は食事を避けます。
- 治療反応は通常、投与開始から16週以内に得られます。16週以内に反応が得られない場合は、治療計画の継続を慎重に再考します。
- 12歳以上の小児に使用できますが、体重40 kg以上が条件です。
- 承認条件として、医薬品リスク管理計画の策定と適切な実施が付されています。再審査期間は8年で、原体・製剤とも劇薬に該当します。
まとめ
イコタイド錠は、既存の全身療法(光線療法を含む)で効果不十分な患者に、経口のIL-23経路阻害という新しい選択肢を加えます。安全対策は既存のIL-23阻害薬に準じます。生物製剤との使い分けは、製造販売後の情報や学会での議論で整理されていく段階です。
PMDA情報: https://www.pmda.go.jp/drugs/2026/P20261005001/navi.html
ビエプチ点滴静注100 mg(エプチネズマブ(遺伝子組換え))
承認区分: 承認(新有効成分含有医薬品、生物由来製品、再審査期間8年) 効能・効果: 片頭痛発作の発症抑制 用法・用量: 通常、成人にはエプチネズマブ(遺伝子組換え)として100 mgを12週間隔で点滴静脈内注射する。 申請者: ルンドベック・ジャパン株式会社 承認条件: 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
今回の承認で何が変わるか
エプチネズマブは、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)そのものを標的とするヒト化モノクローナル抗体です。国内では、CGRPリガンドを標的とする片頭痛予防薬が点滴静注製剤として加わります。
国内の片頭痛予防の選択肢は次のとおりです。
- ロメリジンやバルプロ酸などの経口薬
- 皮下注の抗CGRP抗体(ガルカネズマブ、フレマネズマブ)
- 抗CGRP受容体抗体(エレヌマブ)
これらはいずれも患者自身による自己注射、または経口の連日服用が基本でした。本剤の特徴は、12週に1回、医療機関で点滴静注する投与形態です。
- 自己注射の手技や継続的な服薬が負担になる患者では、投与の機会が通院時に限られ、アドヒアランスを管理しやすくなる可能性があります。
- 一方で、点滴静注のため通院と投与の設備が必要です。投与間隔は12週間です。
- 用量は100 mgの1用量のみです。海外第III相試験では30 mg、100 mg、300 mgが検討されましたが、承認用法・用量は100 mgです。
臨床的ポイント
有効性(海外第III相006試験、反復性片頭痛、FAS)
- 投与1〜12週の月間片頭痛日数のベースラインからの変化量(LS平均)は、プラセボ群が−3.2日、100 mg群が−3.9日でした。
- プラセボとの群間差は−0.69日[95%CI −1.25, −0.12]、p=0.0182で、プラセボに対する優越性が示されました。
- 300 mg群は群間差−1.11日(p=0.0001)でした。
- 効果は投与後早期(1〜4週)から現れ、48週まで維持される推移が示されています。
- 効果の大きさはプラセボとの差で約0.7日です。患者への説明では、過度な期待を持たせないことが大切です。
適応の範囲
- 申請効能は「片頭痛発作の発症抑制」です。慢性片頭痛(CM)患者を対象とした第III相試験(011、19140A、国内19140B試験)や、他の予防薬で効果不十分な患者を対象とした18898A試験も、有効性・安全性の評価資料として提出されています。
- 国内からは日本人を対象とした第I相試験(18899A)と第III相試験(19140B、159例)が提出されています。
安全性
- 海外第II相試験では、有害事象全体の発現割合はプラセボ群56.2%、100 mg群57.4%でした。
- 100 mg群で多かった事象は浮動性めまい(9.8%)、悪心(7.4%)、上咽頭炎や上気道感染(各6.6%)などでした。いずれもプラセボと同程度か、症例数の少ない範囲での差でした。
- 国内第I相試験では、100 mg群で味覚障害が1/6例に認められました。
- 免疫原性については、主要なプラセボ対照試験での抗薬物抗体(ADA)発現割合は4.1〜20.1%で、中和抗体は3.8〜7.8%でした。ADAや中和抗体の有無が、有効性や安全性に明らかな影響を及ぼす結果は得られていません。
- アナフィラキシーや過敏症の発現とADAとの明らかな関係も認められていません。
- 長期安全性やCGRP阻害に関連する事象は、承認条件であるリスク管理計画のもとで継続して確認されます。
品質面の補足
- 製剤は1バイアル(4 mL)に100 mgを含む水性注射剤で、有効期間は36カ月、遮光して2〜8℃で保存します。
- 製剤は光に不安定であるため、紙箱ごと遮光して保存します。
実務上のポイント
- 既存のCGRP関連抗体薬からの切り替えや併用の位置づけは、今後の添付文書と使用成績で確認が必要です。
- 投与後の過敏症状の観察など、点滴静注製剤としての対応が求められます。
レケンビ皮下注250 mgペン(レカネマブ〈遺伝子組換え〉)
承認区分: 承認(新投与経路医薬品) 申請者: エーザイ株式会社 効能・効果: アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制 用法・用量: 通常、レカネマブ(遺伝子組換え)として500 mgを、1週間に1回、皮下投与する。 その他: 生物由来製品、劇薬、再審査期間6年。承認条件は医薬品リスク管理計画の策定と適切な実施。
今回の承認で何が変わったか
レケンビは2023年9月にIV製剤(点滴静注200 mg・500 mg)が承認されています。今回の承認では、効能・効果は変わらず、投与経路が「2週に1回の点滴」から「週1回の皮下注射」に加わりました。抗Aβ抗体薬としては、国内初の皮下注製剤です。
- IV製剤は2〜4週ごとの通院と30分〜1時間の投与時間が必要で、患者と医療現場の負担になっていました。
- 本剤はオートインジェクター(AI)ペン製剤です。審査報告書では、患者自身が腹部または大腿部に投与できるとされています。家族等が投与する場合は上腕部にも投与できます。在宅での自己投与により通院負担を減らせる点が最大の変化です。
- 週1回の頻回投与になるため、投与手技の指導と投与スケジュールの管理が新たに必要になります。
- 薬効は変わりません。治療対象は従来どおり、アミロイドPETや脳脊髄液検査でAβ病理が確認された早期ADの患者です。
臨床的ポイント
1. 有効性は、曝露量の類似性と外部比較で説明されている
- 本剤の有効性は、プラセボとの直接比較では検証されていません。
- IV製剤の有効性は検証済みです。そのため、IV製剤とPK(曝露量)と脳内アミロイド蓄積の変化量が似ていることをもって、効果が期待できると判断されました。
- 国際共同第Ⅲ相試験(301試験)のOLE期サブスタディで、500 mg週1回皮下投与のAUCss,2weeksは、IV 10 mg/kg隔週投与に対する幾何平均値の比が1.04[90%CI 0.991〜1.09]でした。事前規定の基準(0.8〜1.25)を満たしています。
- 720 mgバイアル製剤の週1回皮下投与では、投与12カ月後のアミロイドPETセンチロイド変化量の比が1.18[1.10〜1.26]でした。この結果も、用量設定の根拠の一つです。
- 市販予定のAI製剤は、バイアル製剤と生物学的同等性が示されませんでした。AI製剤の曝露量がバイアル製剤より高かったためです。PPK解析で用量を再設定し、AI製剤は500 mgとなりました。
- 720 mg新規皮下投与集団(69例)では、12カ月後のCDR-SB変化量が0.272でした。同じ301試験のCore期でのIV群は0.819、プラセボ群は1.186です。ただし症例数が少なく、外部比較であり、解釈には限界があります。
2. 安全性は、既知のリスクを踏まえてIV製剤と同様の管理が前提
- 500 mg皮下投与集団(244例)では、ARIA-Eは0%、ARIA-Hは2.9%、脳出血(最大径1 cm超)は0%でした。ただし、この集団はIVまたは皮下の720 mgで一定期間投与を受けた後に移行した患者が中心です。ARIAが出やすい投与初期を過ぎているため、IV群と単純には比べられません。
- 720 mg新規皮下投与集団(72例)では、ARIA-Eが19.4%、ARIA-Hが25.0%でした。IV群(Core期)のARIA-E 12.6%、ARIA-H 17.3%と比べて、やや高い傾向でした。ARIA-Eの初回発現の85.7%(12/14例)は、投与開始後6カ月以内でした。多くは軽度〜中等度で、重篤な転帰の例はありませんでした。
- ARIAのリスクはApoE ε4保有状況で大きく異なります。
- 720 mg新規皮下投与集団のARIA-E発現率は、ε4ノンキャリアで7.4%、ヘテロ接合型で23.1%、ホモ接合型で50.0%(3/6例)でした。
- 抗Aβ抗体薬の既知のリスクであり、MRIによる定期的な確認と症状の観察が欠かせません。
- 製造販売後に、海外でIV製剤の投与初期に致死的な転帰に至った症例が確認されました。これを受けて、IV製剤の添付文書では3回目投与前にもMRI検査を考慮するよう改訂されています。皮下注でも、投与初期のMRIモニタリングは同様に重要です。
- 全身性の注入/注射に伴う反応は、IV製剤の26.3%に対して、皮下投与では500 mg集団で0%、720 mg新規集団で1.4%と少なくなりました。
- 注射部位反応は、IV製剤の0.2%に対して、500 mg集団で2.0%、720 mg新規集団で16.7%でした。ほとんどが軽度〜中等度で、1週間以内に消失しました。
- 抗薬物抗体(ADA)陽性は、720 mg新規皮下投与集団で3.2%(2/63例)でした。いずれも中和抗体は陰性でした。
薬剤師が押さえたい実務ポイント
- 患者・家族へのペン型注射器の投与手技指導と、投与部位のローテーションの説明が必要です。
- 週1回投与のため、飲み忘れならぬ「打ち忘れ」への対応や、保管・持ち運び(冷所保管など)についても事前に確認しておく必要があります。
- 在宅自己投与になっても、ARIAの確認のためのMRI検査と受診は引き続き必要です。患者や家族には、頭痛、錯乱、視覚障害、ふらつき、けいれんなどが出たらすぐ連絡するよう伝えます。
- 抗凝固薬や抗血栓薬を併用している患者は、脳出血のリスクがあります。IV製剤と同様に、併用薬の確認が重要です。
- 審査報告書の範囲では、IV製剤から皮下注への切り替え方法の詳細は確認できません。実際の運用は、添付文書や適正使用ガイドを必ず確認してください。
PMDAリンク: https://www.pmda.go.jp/drugs/2026/P20261002001/navi.html
ガミファント点滴静注液50 mg(エマパルマブ(遺伝子組換え))
承認区分: 新有効成分含有医薬品(希少疾病用医薬品、生物由来製品、劇薬、再審査期間10年) 効能・効果: 全身型若年性特発性関節炎又は成人発症スチル病に伴うマクロファージ活性化症候群 用法・用量: 通常、初回に 6 mg/kg、その後の 5 回は 3 日ごとに 3 mg/kg、以降は週 2 回 3 mg/kg を、1 時間以上かけて点滴静注する。臨床症状及び臨床検査所見により適宜調節できるが、3 日間の累積投与量として 10 mg/kg を上限とする。 承認条件: 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
何が変わるのか
sJIA・AOSD に伴う MAS は、これまで標準的な治療が決まっていませんでした。治療はステロイドパルスなどの高用量ステロイド静注が基本で、効果が不十分なときはシクロスポリンなどを使います。ただし、いずれもエビデンスレベルは高くありません。シクロスポリンは MAS を含む HLH に対する適応がなく、審査報告書は保険診療上の適応外使用の扱いとしています。
本剤は、MAS を適応とする初めての薬剤です。ヒト IFNγ に対するモノクローナル抗体で、MAS の病態の中心にある IFNγ を直接中和します。位置付けは「高用量ステロイドで効果不十分な sJIA 又は AOSD に伴う MAS 患者に対する治療選択肢の一つ」です。ステロイドの代わりではなく、効果不十分な場合の追加の選択肢として使います。
臨床的ポイント
有効性(解釈に注意が必要)
- 国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験(NI-0501-14、25 例)の主要評価項目は、投与開始後 8 週時の完全奏効達成割合でした。結果は 44.0%(96%CI: 23.7〜65.9)で、事前に設定した閾値有効率 40% に対して下限が届かず、統計学的な有意差は示されませんでした。
- 機構は、閾値の根拠とした文献が GC 単独療法の「実施割合」にすぎず、効果判定基準に基づく推定ではなかったと指摘しています。その後の報告では GC 単独療法の成功率は 12.5〜14% ほどです。
- 完全奏効を達成しなかった 14 例のうち 7 例は、臨床的寛解(VAS ≦ 1/10)と評価されました。この 7 例は LDH のみ、または LDH に加えて 1 項目のみが基準未達でした。機構は、LDH が基礎疾患のため一定程度上昇しうる点を考慮し、有効性は期待できると判断しています。
- 海外第Ⅱ相試験(NI-0501-06、14 例)の完全奏効は 78.6%(11/14 例)でした。
- 8 週までに GC を 50% 以上減量、または MAS 発症前の用量まで減量できた患者は 60.0%(15/25 例)でした。
- AOSD を原疾患とする 4 例では完全奏効は 0 例でしたが、2 例は部分奏効でした。症例数が少なく、有効性を否定するものではないと機構は考えています。
- 日本人は 2 例で、うち 1 例が完全奏効でした。
- 完全奏効を達成した患者の 12.1%(4/33 例)で、最終投与から 3〜6 か月後に MAS が再燃しました。
安全性
- 感染症が最も重要です。IFNγ はマイコバクテリア、帯状疱疹、播種性ヒストプラズマ症などへの免疫応答に関わります。
- NI-0501-14 試験では感染症が 64.0%(16/25 例)に出ました。サイトメガロウイルス(CMV)感染再燃が 16.0%、CMV 感染が 16.0%、肺炎が 12.0% です。
- 2 試験を合わせると、CMV 関連事象は 35.9%(14/39 例)でした。
- 重篤な感染症は 12.8%(5/39 例)でした。
- 死亡は NI-0501-14 試験で 2/25 例(8.0%)でした。多臓器機能不全症候群とショックが各 1 例で、多臓器機能不全症候群の 1 例は治験薬との因果関係が否定されませんでした。機構は、この死亡率が sJIA の MAS で報告されてきた死亡率(最大 23%)、AOSD の MAS の死亡率(22%)を上回るものではないとしています。
- 注入関連反応は NI-0501-14 試験で 24.0%(6/25 例)、NI-0501-06 試験で 14.3%(2/14 例)に出ました。いずれも非重篤でした。因果関係が否定できないアナフィラキシーや重度の過敏症反応は認められていません。
- ADA は NI-0501-14 試験で 21.7%(5/23 例)に発現しました。薬物動態、有効性、安全性への明確な影響は認められていません。
使用時の留意点(機構が添付文書での注意喚起を求めた事項)
- 重篤な感染症がある患者には、適切な治療が行われるまで投与を開始しません。
- 投与前に結核のスクリーニングを行い、活動性結核の患者には投与しません。投与開始後も適切にモニタリングします。
- 治療歴・病態を問わず、B 型肝炎ウイルスの再活性化にも注意します。
- 帯状疱疹などの感染症に対する予防措置は必須としません(NI-0501-14 試験の第 2 版以降の方針)。ただし、感染症の発現・増悪に十分注意して使用します。
- 投与中は感染症の発現に十分注意し、発現した場合は適切に治療します。
- 用法・用量の上限(3 日間の累積投与量 10 mg/kg)を超えた場合の有効性・安全性は検討されていません。
- 使用は、本剤について十分な知識があり、sJIA・AOSD に伴う MAS の診断と治療に精通した医師のもとに限ります。
製造販売後
- 国内の治療症例が極めて限られるため、全例調査(一般使用成績調査)を実施する方針が示されています。感染症の発現状況とリスク因子、投与頻度・投与量の変更が与える影響についても情報を収集します。
- 感染症と infusion reaction は、医薬品リスク管理計画の重要な特定されたリスクに設定されます。
まとめ
ステロイド抵抗性の sJIA・AOSD に伴う MAS に対し、初めての適応を持つ IFNγ 中和抗体です。主要評価項目の閾値は上回れませんでした。ただし、対象が超希少疾患で比較試験が実施困難であること、GC 単独療法の想定成功率が低いことを踏まえ、有効性は期待できると判断されて承認されました。使用にあたっては、CMV 感染再燃・帯状疱疹・結核・B 型肝炎ウイルスの再活性化などの感染症管理が中心になります。
ファビハルタカプセル200 mg(イプタコパン塩酸塩水和物)
承認区分: 承認事項一部変更(適応追加)/効能・効果: 発作性夜間ヘモグロビン尿症、C3腎症、IgA腎症(今回追加)
用法・用量: 変更なし(イプタコパンとして1回200 mgを1日2回経口投与)
特記事項: 希少疾病用医薬品、優先審査、再審査期間10年
何が変わったのか
本剤は経口の補体B因子(FB)阻害薬で、これまでPNH(2024年6月)とC3腎症(2025年5月)で承認されていました。今回、IgA腎症が加わり、補体第二経路(AP)を標的とする薬剤がIgA腎症に使えるようになります。
IgA腎症で現在「効能・効果」として承認されている薬は、抗血小板薬のジラゼプ塩酸塩水和物(腎機能障害が軽度〜中等度の尿蛋白減少)だけです。RAS阻害薬、副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬なども使われていますが、これらは診療ガイドライン上の位置づけが中心です。審査報告書でも、抗血小板薬に腎機能障害の進行抑制効果は明らかでないとされ、確立した治療法はないと整理されています。そこに、腎機能低下の抑制を主要評価項目として検証された経口薬が加わる点が大きな変化です。
審査の根拠となった試験
国際共同第III相試験(A2301試験、日本人を含む)の主な結果です。
- 対象: 生検でIgA腎症と診断された18歳以上で、最大耐容量のACE阻害薬またはARBを含む支持療法を安定して受けており、UPCRが1 g/g以上の患者
- デザイン: プラセボ対照二重盲検。Main集団はeGFR 30 mL/min/1.73m²以上の478例(本剤群238例、プラセボ群239例が投与)
- 中間解析(9カ月時点のUPCR): ベースラインに対する比の調整幾何平均は、本剤群0.562、プラセボ群0.910。プラセボに対する減少率は38.3%(95%CI 26.0〜48.6)で、優越性が検証されました(p<0.0001)。
- 最終解析(24カ月間の年換算eGFR total slope): 本剤群 −3.100、プラセボ群 −6.117 mL/min/1.73m²/年。群間差は3.017(95%CI 2.021〜4.013、p<0.0001)で、優越性が検証されました。
- 日本人集団: 群間差は5.478(95%CI 1.681〜9.275)で、全体集団と同様の傾向でした。ただし例数が少なく(本剤群17例、プラセボ群11例)、点推定値の解釈には注意が必要です。
PMDAは、尿蛋白の減少だけでなく、eGFR total slopeという腎機能の指標を中心に有効性を評価するという立場をとりました。この点が評価の軸です。
安全性と臨床上の注意点
-
Main集団の有害事象は本剤群87.0%、プラセボ群89.1%で、副作用は20.2%と20.5%でした。重篤な副作用は本剤群3.8%(9例)、プラセボ群0.8%(2例)でした。本剤群の内訳は肺炎3例、急性腎障害、虫垂炎、細菌性腎盂腎炎、喉頭蓋炎、細菌性肺炎、敗血症、蕁麻疹各1例です(重複あり)。
-
投与中止に至った副作用は本剤群のみ5例(2.1%)でした。腎機能障害、肺炎、敗血症、喉頭蓋炎、蕁麻疹、急性腎障害が各1例(重複あり)で、急性腎障害の1例を除き転帰は回復でした。
-
補体阻害薬のため、被包化細菌(髄膜炎菌、肺炎球菌など)による感染症への注意が必要です。治験でも、髄膜炎菌・肺炎球菌・インフルエンザ菌b型のワクチン接種歴が選択基準に含まれ、これらの感染歴は除外基準でした。
-
承認条件は2つです。
- 医薬品リスク管理計画を策定し、適切に実施すること。
- IgA腎症の診断・治療と本剤のリスク管理に精通した医師・医療機関のもとで、髄膜炎菌感染症の診断・治療に精通した医師と連携した上でのみ投与されるよう、必要な措置を講じること。
薬局としては、ワクチン接種状況の確認、発熱などの感染徴候への受診勧奨、患者向けカードの活用が実務上のポイントになると考えられます。
-
腎機能障害時の扱い: eGFRが低いほど本剤の曝露量は増加する傾向がありました。eGFR 30未満(重度)でも、有害事象の発現割合に明らかな増加は認められませんでした。一方、PMDAはeGFR 20未満の患者の情報が限られていると判断し、添付文書でその患者に投与する場合は慎重に観察するよう注意喚起することが適切としています。
まとめ
IgA腎症に対して、支持療法に上乗せして腎機能低下(eGFR slope)の抑制が検証された、初の経口補体第二経路阻害薬です。他方で、感染症リスク管理のため、投与できる医師・医療機関が限定される運用になります。用法・用量は既存適応と同じですが、IgA腎症の患者では感染対策とワクチン接種歴の確認が服薬指導の前提になります。
スキリージ皮下注(リサンキズマブ):6歳以上の小児乾癬に適応拡大、55 mgシリンジ0.37 mLを新規追加
承認区分:承認事項一部変更(150 mgシリンジ1 mL、150 mgペン1 mL、75 mgシリンジ0.83 mL)/新規承認(55 mgシリンジ0.37 mL、剤形追加・新用量)
効能・効果:既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、乾癬性関節炎(効能・効果の文言は変更なし)
何が変わったのか
従来、本剤の用法・用量は成人のみでした。今回の承認で、6歳以上の小児に対する用法・用量が追加されました。
| 従来(成人) | 今回追加(6歳以上の小児) | |
|---|---|---|
| 用量 | 1回150 mg(状態に応じ75 mgも可) | 体重40 kg以上:150 mg/体重40 kg未満:55 mg |
| 投与間隔 | 初回、4週後、以降12週間隔 | 同左 |
- 対象疾患は尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、乾癬性関節炎です。
- 掌蹠膿疱症は小児の対象外で、成人のみです。
- 体重40 kg未満の患者向けに、専用の55 mgシリンジ0.37 mLが加わりました。0.83 mLの75 mgシリンジは成人の減量用で、小児の用量とは別です。
- 小児乾癬で使える生物製剤の選択肢は限られていました。膿疱性乾癬と乾癬性紅皮症には、小児に承認された生物製剤が従来ありませんでした。
- 審査報告書によると、乾癬性関節炎で小児に承認されていた生物製剤はセクキヌマブのみでした。
- 膿疱性乾癬の小児は、2025年8月に希少疾病用医薬品に指定されています。
- 再審査期間は、尋常性乾癬・乾癬性関節炎・乾癬性紅皮症が4年、膿疱性乾癬が10年です。
- 承認条件は医薬品リスク管理計画の策定と適切な実施です。
臨床的ポイント
1. 根拠は小児尋常性乾癬の国際共同第Ⅲ相試験(M19-977試験)
- 対象は6歳以上18歳未満の中等症〜重症の尋常性乾癬です。日本人も参加しています。
- 用量は、成人150 mg投与時と同程度の曝露量になるよう体重で設定されました。
- 投与16週時の結果(パート2ピリオドA、本剤群54例、ウステキヌマブ群28例)は次のとおりです。
| 指標 | 本剤群 | ウステキヌマブ群 |
|---|---|---|
| PASI 75達成率 | 85.2% | 85.7% |
| sPGA 0/1達成率 | 79.6% | 75.0% |
- 本剤群とウステキヌマブ群の仮説検定は計画されていません。
- 小児のsPGA 0/1達成率79.6%は、成人試験の83.5〜92.7%よりやや低い値でした。
- 本剤を継続した群では52週まで有効性が維持されました。
- 投与を中止した群では有効性が低下しましたが、再投与した8例ではPASI 75が87.5%(7/8例)で改善傾向でした。
2. 安全性は成人と同様の評価
- 小児では、成人に比べて感染症、過敏症、精神神経系事象がやや多い傾向でした。
- 感染症は上咽頭炎などの上気道感染が中心で、重篤な感染症はありませんでした。
- 精神神経系事象には、うつ病、小児うつ病、自殺念慮がありました。いずれも治験薬との因果関係は否定され、投与は継続されました。
- 審査では「新たな安全性シグナルはなく、既知の副作用に留意すれば管理可能」とされました。
- 抗薬物抗体は陽性例が限られ、薬物動態・有効性・安全性への明らかな影響は認められませんでした。
3. 膿疱性乾癬・乾癬性紅皮症・乾癬性関節炎の小児は外挿による承認
- これらの小児を対象とした臨床試験は実施されていません。
- 承認は次の根拠によります。
- 成人と小児で曝露-反応関係が類似していること
- 小児尋常性乾癬のデータ
- 成人の膿疱性乾癬・乾癬性紅皮症・乾癬性関節炎の試験成績
- 臨床試験で直接確認された小児の病型は尋常性乾癬のみです。この3病型の小児の実使用データは、製造販売後調査で蓄積される段階です。
- 乾癬性関節炎は、申請時は5歳以上でしたが、承認された用法・用量は6歳以上です。
4. 処方・調剤上の注意
- 体重40 kgが用量の分かれ目で、40 kg以上は150 mg、40 kg未満は55 mgです。成長に伴う体重変化に応じた用量の見直しが必要になります。
- 体重40 kg以上の小児に150 mgを投与した場合、成人より曝露量が高い傾向がありました。この差は体重分布の違いによると説明されています。
- 小児では75 mgシリンジ0.83 mLは用量選択の対象外です。体重40 kg未満には55 mgシリンジ0.37 mLを選びます。
- 55 mgシリンジは生物由来製品で、製剤は劇薬です。
- 小児の既存治療(外用薬、光線療法、内服薬)で効果不十分な場合の新たな選択肢となります。従来は適応が限られていた膿疱性乾癬や乾癬性紅皮症の小児も対象に加わります。
- 成人と同様の安全対策が引き続き必要です。感染症に注意し、治療前に結核などの確認を行います。
- 小児では精神神経系事象にも留意してください。
PMDAリンク:https://www.pmda.go.jp/drugs/2026/P20261002004/navi.html
テビムブラ点滴静注100 mg(一般名:チスレリズマブ(遺伝子組換え))
承認区分:承認事項一部変更(新効能・新用量。条件付き承認制度の適用対象、希少疾病用医薬品) 効能又は効果:再発又は遠隔転移を有する上咽頭癌(今回追加) 申請者:ビーワン・メディシンズ合同会社 PMDA審査情報:審査情報ページ
今回の承認で何が変わったか
テビムブラは抗PD-1抗体で、これまで「根治切除不能な進行・再発の食道癌」(2025年3月承認)と「治癒切除不能な進行・再発の胃癌」(2026年6月承認)に使われてきました。今回、上咽頭癌が3つ目の適応として加わりました。
- 化学療法歴のない再発・転移上咽頭癌の一次治療に、ゲムシタビン+シスプラチン(GC)併用という選択肢が増えます。
- 審査報告書では、NCCNガイドライン(頭頸部癌 v.1.2026)で本薬/GC併用が治療選択肢の1つ(Category 2B)とされています。
- 用法・用量は食道癌・胃癌とは別建てになりました。他剤と併用するのは同じですが、併用する薬剤が異なります。
用法・用量
- GCとの併用で、通常成人にはチスレリズマブとして1回200 mgを3週間間隔、60分かけて点滴静注します。
- 初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分まで短縮できます。
- 副作用発現時の休薬・中止の目安は、既承認の効能・効果と同じです。
- 食道癌で認められている単独投与は、上咽頭癌には設定されていません。
- 効能・効果に関連する注意の項は設定されていません。
臨床的ポイント
有効性(海外第Ⅲ相309試験、263例、プラセボ/GC対照の二重盲検)
| 項目 | 本薬/GC群 | プラセボ/GC群 | ハザード比 |
|---|---|---|---|
| IRC判定PFS中央値(中間解析) | 9.2カ月 | 7.4カ月 | 0.52(p<0.0001) |
| 治験担当医師判定PFS中央値 | 9.8カ月 | 7.6カ月 | 0.54 |
| OS中央値(最終解析、副次評価項目) | 45.3カ月 | 31.8カ月 | 0.73[0.51, 1.05] |
- OSは延長する傾向でしたが、信頼区間が1をまたぎます。
- プラセボ群の106例中69例が本薬単独へクロスオーバーしています。その影響を補正した解析でのOSハザード比は0.56〜0.62でした。
- PD-L1発現(1%未満/1〜10%未満/10%以上)による有効性の明確な差はなく、PD-L1発現に関係なく投与が推奨されると判断されています。
安全性
- Grade 3以上の有害事象は85.0%(プラセボ/GC群は85.4%)でした。
- プラセボ/GC群より本薬/GC群で多かった事象は、甲状腺機能低下症(30.8% vs 15.4%)、発熱、咳嗽、白血球減少症(Grade 3以上は21.8% vs 15.4%)です。いずれも本薬またはGCの既知の有害事象でした。
- 死亡に至った有害事象は6例(4.5%)で、プラセボ/GC群は2例(1.5%)でした。
- 注意を要する事象は既承認の効能・効果と同じです。具体的には、ILD、Infusion reaction、大腸炎・重度の下痢、肝機能障害、心筋炎、重度の皮膚障害、内分泌障害(甲状腺・副腎・下垂体)、1型糖尿病、膵炎、腎機能障害、神経障害、血栓塞栓症などです。
- 薬剤師は、免疫関連有害事象の早期発見(甲状腺機能のモニタリングなど)と、GC側の骨髄抑制・腎機能への対応を押さえておく必要があります。
日本人データがない点に注意
- 日本人上咽頭癌患者を対象にした臨床試験成績はなく、海外309試験のみに基づく承認です。
- 国内試験を行うと最終解析まで約8年かかる見込みでした。
- 内的・外因的民族的要因(診断・治療体系、既承認適応でのPK・有効性・安全性に日本人と外国人で明確な差がないことなど)から、日本人への外挿が可能と判断されました。
- 病理組織型は非角化型が大半(227例)で、日本人で多いとされる角化型は17例のみでした。角化型のPFSハザード比は0.70[0.19, 2.61]と、例数が少なく推定の幅が広い結果です。
承認条件
- 医薬品リスク管理計画を策定し、適切に実施すること。
- 再発又は遠隔転移を有する日本人上咽頭癌患者に対する本剤の有効性を確認することを目的とした製造販売後調査を実施し、結果を速やかに提出して医療現場に情報提供すること。
製造販売後調査は全例調査方式です。予定症例数は123例、観察期間は12カ月で、主要評価項目は奏効率です。使用開始時の患者登録や情報提供への協力が求められます。再審査期間は10年です。