【PMDA承認情報】2026/10/19 医薬品承認一覧
目次
| 製品名 | 承認区分 | 効能効果 | PMDA |
|---|---|---|---|
| エキスコプリ錠12.5 mg | 承認 | 同 錠50 mg 【承認】 同 錠100 mg【承認】 同 錠200 mg【承認】(2026年9月承認分)てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む) | 詳細 |
| ウエキクス錠5 mg | 承認 | 同 錠20 mg【承認】(2026年9月承認分)1.持続陽圧呼吸(CPAP)療法等による気道閉塞に対する治療を実施中の閉塞性睡眠時無呼吸症候群に伴う日中の過度の眠気 | 詳細 |
| モデーソカプセル125 mg | 承認 | びまん性正中膠腫 | 詳細 |
| エラヒア点滴静注100 mg | 承認 | 葉酸受容体α陽性の白金系抗悪性腫瘍剤抵抗性の再発卵巣癌 | 詳細 |
今回の承認では、てんかん、睡眠障害、小児脳腫瘍、婦人科がんの4領域で新医薬品が登場しました。エキスコプリ錠(12.5・50・100・200 mg の4規格)はてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)を対象とし、抗てんかん薬の選択肢が広がります。ウエキクス錠(5 mg・20 mg)は、CPAP療法等で気道閉塞の治療を実施中の閉塞性睡眠時無呼吸症候群に伴う日中の過度の眠気が対象で、気道閉塞そのものではなく、残存する眠気に対処する薬剤です。モデーソカプセル125 mg はびまん性正中膠腫、エラヒア点滴静注100 mg は葉酸受容体α陽性の白金系抗悪性腫瘍剤抵抗性の再発卵巣癌が対象です。いずれも、これまで治療選択肢が限られていた病態への新たなアプローチとして、処方監査や服薬指導の場面で押さえておきたい承認です。
エキスコプリ錠12.5 mg・50 mg・100 mg・200 mg(一般名:セノバメート)
承認区分: 新有効成分含有医薬品(承認/2026年9月承認分) 申請者: 小野薬品工業株式会社 効能・効果: てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む) 規制区分: 原体は毒薬、製剤は劇薬。再審査期間は8年。承認条件は医薬品リスク管理計画の策定と適切な実施。
今回の承認で何が変わったか
セノバメートは、部分発作に対する抗てんかん薬の選択肢に加わる新規化合物です。作用機序は次の2つで、既存の抗てんかん薬とは異なります。
- GABAA受容体の複数のサブタイプに対する正のアロステリック調節作用
- 電位依存性Na+チャネルの不活性化の促進と、持続性Na+電流の阻害
米国では2019年11月に承認され、2026年6月時点で米国・欧州を含む45の国・地域で承認されています。日本では国際共同第Ⅲ相試験(C035試験)の成績に基づく申請で、日本人患者にも使えるようになります。
審査報告書では、既存の抗てんかん薬と同様に「治療選択肢の一つ」という位置づけです。難治例の第一選択に変わるといった評価ではありません。
有効性
C035試験は、併用療法でのプラセボ対照二重盲検試験です。主要評価項目は、維持フェーズにおける28日あたりの部分発作回数のベースラインからの変化率でした。全用量群でプラセボ群に対する有意差が示されました。
| 群 | プラセボ群との差(最小二乗平均、%) | 50%レスポンダー割合 |
|---|---|---|
| プラセボ | - | 28.2% |
| 100 mg | -47.58(p<0.001) | 40.7% |
| 200 mg | -115.04(p<0.001) | 68.1% |
| 400 mg | -168.32(p<0.001) | 81.6% |
- 12週間の発作消失率は、プラセボ群0.8%、100 mg群8.5%、200 mg群19.7%、400 mg群30.6%でした。用量に応じて上昇しています。
- 日本人集団でも全集団と同様の傾向でした。ただし例数が少なく、100 mg群と200 mg群のプラセボとの差の信頼区間は0をまたいでいます。
- 性別、発作頻度、併用薬数、発作型による効果の低下は認められませんでした。OLE期でも効果の減弱は見られませんでした。
- C035試験は併用療法の試験で、単剤療法の臨床試験成績はありません。機構は、PPK解析による曝露量の見込み、併用薬数が少なくても効果が下がらない傾向、海外の市販後報告をもとに、単剤でも有効性は期待できると判断しました。
用法・用量の要点
- 12.5 mgを開始用量として1日1回経口投与します。
- 2週間以上の間隔をあけて1段階ずつ増量します(12.5→25→50→100→150→200 mg)。
- 維持用量は100〜200 mgです。
- 200 mgを超える増量は2週間以上の間隔をあけて50 mgずつとし、最高用量は400 mgです。
- 申請時は「25 mg→50 mg→以降50 mgずつ」でした。審査で、段階的な増量表を示す内容に変更されています。
- 機構は、400 mgを一律に使う用量とは位置づけていません。200 mgで十分な効果が得られない治療抵抗例に、副作用が管理可能な範囲で臨床上必要な場合に限る用量としています。
- 添付文書では、200 mgへの増量は慎重に判断し、増量期間中は浮動性めまい・傾眠に注意するよう求められています。
- 軽度〜中等度の肝機能障害(Child-Pugh分類AまたはB)では、最大用量は200 mgです。
- 腎機能障害では、最大用量は300 mgです。
臨床的ポイント(安全性)
- 重篤な肝機能障害(警告)
- 海外市販後に、肝移植に至った急性肝不全の報告があります。C035試験でもHy’s Law基準を満たす症例がありました。
- 専門協議を受け、添付文書の「警告」に記載されることになりました。投与開始前および投与中の定期的な肝機能検査が必要です。
- 肝機能関連の有害事象の多くはAST・ALT・γ-GTPの上昇でした。重篤な肝機能障害が見られた場合は投与中止などの処置を行います。
- 薬剤性過敏症症候群
- 初期の海外試験で3例に発現し、うち1例は死亡しました。開始用量が高く、増量間隔が短かったことが一因と考えられています。
- 12.5 mgからの開始と2週間間隔の漸増で、C035試験以降は発現していません。海外市販後には10例の報告があります(2025年12月31日時点、死亡例なし)。
- 増量間隔の遵守が重要です。
- 神経系障害
- 浮動性めまいと傾眠が用量依存的に増えます。二重盲検期の浮動性めまいは、プラセボ13.1%、100 mg 21.9%、200 mg 38.5%、400 mg 70.3%でした。傾眠は14.6%、22.7%、27.7%、46.9%でした。
- 日本人集団では傾眠が全集団より多く、400 mg群では57.6%でした。
- 投与中止に至った有害事象は、プラセボ群4.6%、100 mg群4.7%、200 mg群9.2%、400 mg群21.9%でした。
- 増量期にこれらが増える傾向があります。転倒(日本人400 mg群で24.2%)など二次的な事象にも注意が必要です。
- 自殺関連事象
- プラセボ群との差は見られず、他の抗てんかん薬を大きく上回る傾向もありませんでした。ただし、抗てんかん薬の class effect として添付文書で注意喚起されます。
- その他
- 製造販売後に一般使用成績調査が計画されています。対象は、薬剤性過敏症症候群、神経系障害、自殺行動・自殺念慮、肝機能障害、QT短縮です。
実務上のまとめ
- 開始用量が12.5 mgと低く、増量に時間がかかります。維持用量の100 mgに達するだけで、最短で約8週間かかります。
- 投与前の肝機能ベースライン確認と、投与中のモニタリング体制が必要です。
- 患者には、めまい・眠気による転倒や運転上のリスクを説明しておく必要があります。増量時期の症状確認も重要です。
- 他の抗てんかん薬との併用時の相互作用や、肝・腎機能障害時の用量制限は、添付文書の用法・用量に関連する注意を確認してください。
ウエキクス錠5 mg/同錠20 mg(ピトリサント塩酸塩)
承認区分:承認(新有効成分含有医薬品)/申請者:ヴィアトリス製薬合同会社 効能・効果:持続陽圧呼吸(CPAP)療法等による気道閉塞に対する治療を実施中の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に伴う日中の過度の眠気(EDS) 用法・用量:通常、成人にはピトリサント塩酸塩として5 mgを1日1回朝に経口投与から開始し、1週ごとに1回投与量を10 mg、20 mgへ段階的に増量する。なお、患者の状態に応じて適宜減量する。
今回の承認で何が変わるか
OSASに伴うEDSに対する治療薬は、これまで国内ではモダフィニルのみでした。本剤は選択肢を増やす、国内初のH₃受容体拮抗薬/逆作動薬です。ヒスタミンの合成・遊離を抑制するH₃自己受容体の作用を遮断し、ヒスタミン神経系を介して覚醒を促します。ドパミン作動性の薬剤とは異なる機序の覚醒維持薬が加わります。
OSASの治療はCPAPなどによる気道閉塞の解除が基本です。本剤はそれを置き換えるものではなく、CPAP等を実施していても残るEDSに対する対症療法の位置づけです。効能・効果にもCPAP療法等の実施中であることが明記されています。
なお、同じ申請で並行して審査されたナルコレプシー(希少疾病用医薬品指定)への適応も、審査報告書には含まれています。ただし、今回ご依頼の対象はOSASに伴うEDSの適応です。
臨床的ポイント
国内第Ⅲ相試験(Jb01試験)
- 対象はCPAP療法を3カ月以上実施中でAHI 10以下、ESSスコア12以上の患者で、12週間のプラセボ対照二重盲検試験です。
- 主要評価項目である7・12週平均ESSスコアのベースラインからの変化量は、プラセボ群−2.64、本剤群−4.63でした。群間差は−1.99[95%CI −3.44, −0.55](p=0.007)で、優越性が検証されました。
- ESSスコア10以下に達した割合は、プラセボ群26.3%、本剤群37.5%でした。
- 長期投与(パート2、48週)でもESSスコアの改善は維持されました。
客観指標(MWT)の解釈には注意
- 副次評価項目のMWTによる平均睡眠潜時は、群間差が1.9分[−1.6, 5.5]でした。改善「傾向」にとどまり、明確な差とは言えません。
- 審査では、ESS(主観評価)とMWT(客観評価)の両面から有効性を評価する方針が取られました。そのうえで、海外第Ⅲ相試験(P09-08)の成績も踏まえて有効性は示されたと判断されています。
- 夜間覚醒やAHIに明らかな悪化はなく、本剤が夜間の睡眠や睡眠中の呼吸に及ぼす明らかな影響は認められていません。
試験運用上の留意点
- Jb01試験では、COVID-19流行による組入れ難航のため、事前計画にない目標症例数の再推定が盲検下で行われました。
- 機構は、検証的試験としては適切とは言えないが、やむを得なかったと判断しました。再推定時点で結果が得られていた集団と得られていなかった集団で結果が同様だったため、解釈への影響は小さいとしています。
安全性(国内第Ⅲ相試験)
- 二重盲検パートの有害事象は、プラセボ群63.8%、本剤群66.1%でした。主な事象は上気道感染、COVID-19、頭痛、不眠症、咳嗽です。
- 長期投与(パート2)では重篤な有害事象が5例ありましたが、いずれも治験薬との因果関係は否定されました。中止例6例のうち、自殺念慮と心室性期外収縮は因果関係が否定されていません。
- 海外第Ⅲ相試験(P09-08)では、頭痛(14.8%)と不眠症(6.6%)が多く、不眠症の頻度がプラセボ群(1.6%)より高い傾向でした。
- 機構は、頭痛、不眠症、うつ病および自殺関連の有害事象、QT延長には注意が必要としています。投与時は朝1回投与を守り、精神症状や心電図異常に留意してください。
規制上のポイント
- 原体・製剤はそれぞれ毒薬・劇薬に該当します。
- 承認条件として医薬品リスク管理計画(RMP)の策定と適切な実施が付されています。
- 再審査期間はOSASに伴うEDSで8年です(ナルコレプシーは10年)。
- 販売名は、医療事故防止の観点から承認申請後に「ウェイキクス」から「ウエキクス」へ変更されました。調剤時の名称確認にご注意ください。
薬剤師の視点
- 服薬指導では、CPAP療法は継続する必要があることを必ず伝えてください。EDSが軽減してもCPAPの自己中断につながらないようにするためです。
- 患者に処方されるEDS治療薬が複数ある場合は、併用や切り替えの経緯を確認してください。
- 不眠、気分の落ち込み、動悸などの訴えがあれば、早めに処方医へ連絡する体制をとっておくと安心です。
モデーソカプセル125 mg(ドルダビプロン塩酸塩)
承認区分:承認(新有効成分含有医薬品、希少疾病用医薬品)/申請者:大原薬品工業 効能・効果:びまん性正中膠腫 再審査期間:10年(原体・製剤とも劇薬)
今回の承認で何が変わったか
びまん性正中膠腫(DIPG を含む)は、放射線治療以外に有効性が示された薬物療法がほとんどなく、OS 中央値が約11〜16カ月と予後不良な疾患です。本剤は、この領域に加わる初の薬物療法の選択肢です。
作用機序も従来の抗悪性腫瘍薬とは異なります。本剤はミトコンドリアのプロテアーゼ ClpP を活性化する低分子で、ミトコンドリア機能障害や統合ストレス応答(ISR)、H3 K27me3 の増加などを介してアポトーシスを誘導すると考えられています。
NCCN ガイドラインでは、放射線治療歴のある再発または増悪した H3 K27M 変異びまん性高悪性度神経膠腫が推奨対象(Category 2A)とされています。
用法・用量
- 成人は625 mg を週1回、空腹時に経口投与します。
- 体重10 kg 以上の小児は、体重別に125〜625 mg(10 kg 以上12.5 kg 未満で125 mg、12.5 kg 以上27.5 kg 未満で250 mg、27.5 kg 以上42.5 kg 未満で375 mg、42.5 kg 以上52.5 kg 未満で500 mg、52.5 kg 以上で625 mg)を週1回投与します。
- 食事で Cmax が低下するため、食事の2時間前から食後2時間までは服用を避けます。
- 強い CYP3A 阻害薬との併用時は375 mg、中程度の阻害薬との併用時は500 mg へ調整します。52.5 kg 未満の小児は用量調整が確立していないため、併用を可能な限り避けます。
- 休薬・減量・中止の基準は次のとおりです。
- QTc 間隔が500 ms 超、またはベースラインから60 ms 超延長した場合は休薬します。
- トルサード ド ポアントや多形性心室頻拍などが出た場合は中止します。
- Grade 3/4 の副作用は休薬し、Grade 1 以下に回復したら1段階減量して再開します。
- Grade 4 が再発した場合は中止します。
臨床的ポイント
- 有効性:提出された試験成績では有効性を適切に評価することに限界があるものの、有効性は期待できると判断されました。主たる有効性併合解析集団(海外試験、最初の50例)の BICR 判定による奏効率は次のとおりです。
- RANO-HGG 基準で20.0%(95%CI 10.0〜33.7)
- RANO-LGG 基準で26.0%(同14.6〜40.3)
- RANO2.0 基準で28.0%(同16.2〜42.5)
- 国内試験の結果:国内第I/II相試験(OP-10-001)では奏効例が認められていません。なお、同試験では体重区分によって申請用法より低用量で投与された患者がおり、申請用法・用量での国内有効性は検討されていません。
- 放射線治療歴:推奨される対象は放射線治療歴のある患者です。放射線治療歴のない患者での有効性・安全性は確立しておらず、効能・効果に関連する注意に記載されます。放射線治療との併用で上乗せ効果を検討した試験成績もありません。
- DIPG への投与:DIPG は生検が困難なため、臨床経過・症状・画像所見に基づく診断でも投与対象に含められます。
- 小児への投与:4歳未満の臨床試験成績はありません。1歳未満は CYP3A 代謝酵素が未成熟であり、安全性が確立していません。
- 主な有害事象:海外試験では頭痛、疲労、悪心、嘔吐、水頭症、痙攣発作、塞栓症などが報告されています。RMP の重要な特定されたリスクは QT 間隔延長、過敏症、CYP3A 阻害薬との薬物相互作用です。重要な潜在的リスクは錐体外路症候群、静脈血栓塞栓症、胚・胎児毒性です。
- 併用の制限:他の抗悪性腫瘍薬との併用の有効性・安全性は確立していません。
承認条件と今後
承認条件は次の2点です。
- 医薬品リスク管理計画を策定し、適切に実施すること。
- 実施中の国際共同第III相試験(ONC201-108、プラセボ対照、主要評価項目は OS)の成績が得られ次第、速やかに医療現場へ情報提供すること。
製造販売後調査(目標症例数100例)では、日本人患者での有効性を検討します。がん化学療法に十分な知識と経験を持つ医師の下で、患者選択と QT 延長のモニタリングを行いながら使用する薬剤です。
エラヒア点滴静注 100 mg(ミルベツキシマブ ソラブタンシン(遺伝子組換え))
承認区分:承認(医療用医薬品(1)新有効成分含有医薬品、希少疾病用医薬品、生物由来製品、劇薬)/再審査期間 10 年/承認条件:医薬品リスク管理計画の策定と適切な実施 効能・効果:葉酸受容体α陽性の白金系抗悪性腫瘍剤抵抗性の再発卵巣癌 用法・用量:1 回 6 mg/kg(調整理想体重)を 3 週間間隔で点滴静注(患者の状態により適宜減量) 申請者:武田薬品工業株式会社
今回の承認で何が変わるか
葉酸受容体α(FRα)を標的とする初の抗体薬物複合体(ADC)です。メイタンシノイド DM4 を搭載しています。白金抵抗性の再発卵巣癌では、これまで単剤化学療法(パクリタキセル、PLD、ノギテカン等)が標準的な選択肢でした。今後はFRα 発現を確認したうえで ADC を選ぶという、バイオマーカーに基づく治療選択が国内でも可能になります。
使用には体外診断薬の検査が必要です。 「ベンタナ OptiView FOLR1(FOLR1-2.1)」による IHC で、染色強度 2+以上の腫瘍細胞が 75%以上の場合を FRα 陽性と定義しています。コンパニオン診断薬は別途申請されています。
臨床成績のポイント
国際共同ではなく海外第Ⅲ相(MIRASOL 試験)が中心です。 FRα 高発現の白金抵抗性高異型度漿液性卵巣癌等で、前治療 1〜3 レジメンの患者を対象に、本薬と化学療法(ICC:PTX/PLD/ノギテカン)を比較しました。主な結果は次のとおりです。
| 評価項目 | 本薬群 | ICC 群 | ハザード比 |
|---|---|---|---|
| PFS 中央値(主要評価項目、治験担当医師判定) | 5.62 カ月 | 3.98 カ月 | 0.65[0.521, 0.808] |
| OS 中央値(副次評価項目、中間解析) | 16.46 カ月 | 12.75 カ月 | 0.67[0.504, 0.885] |
- PFS は BICR による感度分析でも同様の傾向でした(HR 0.72)。
- ICC の薬剤別でも、PFS・OS とも本薬群で良好な傾向でした。
- 前治療数別およびベバシズマブ(BV)治療歴の有無別でも、結果は概ね一貫していました。
- 日本人は国内第Ⅰ/Ⅱ相試験(1501 試験)の第Ⅱ相パート 25 例のみです。奏効率は 44.0%[90%CI 27.0, 62.1]で、MIRASOL 試験の本薬群(42.3%)と同程度でした。ただし、例数が限られる点には留意が必要です。
安全性:薬剤師が押さえるべき点
MIRASOL 試験(本薬群 218 例)では、眼障害が 57.3%(Grade 3 以上 15.6%)に発現しました。眼障害が最も重要な管理項目です。
- 主な眼障害
- 霧視 43.1%
- 角膜症 33.0%
- ドライアイ 29.4%
- 羞明 19.3%
- 白内障 17.0%
- 視力低下 13.3%
- 休薬・減量:眼障害により 33.0%が休薬、20.2%が減量となりました。
- 失明:試験内では失明に至った例はありません。一方、海外の製造販売後に失明 24 例(一過性 3 例を含む)が報告されています。
- 添付文書の注意喚起(機構が求めた内容)
- 警告の項で、眼科医との連携の下で使用することを明記します。
- 一次予防として人工涙液を使用します。
- 二次予防として副腎皮質ステロイド点眼薬を使用します。
- 投与前および投与期間中に定期的な眼科検査を行います。
- コンタクトレンズの装用を避けるよう指導します。
- 活動性または慢性の角膜障害、角膜移植歴のある患者は、特定の背景を有する患者として注意が必要です。
- ILD:11.5%(Grade 3 以上 0.9%)で、肺臓炎が 7.8%でした。国内第Ⅱ相パートでは 6/25 例(24.0%)で、Grade 3 以上はありませんでした。重篤な ILD が複数例あるため、初期症状(咳嗽・呼吸困難・発熱)の確認が重要です。
- 末梢神経障害:39.4%(Grade 3 以上 4.1%)です。ICC 群も 23.2%と高く、主に DM4 による軸索障害と考えられています。
- infusion reaction:39.9%(Grade 3 以上 2.8%)で、ICC 群(42.0%)と同程度でした。
- 骨髄抑制:全 Grade 23.4%(Grade 3 以上 3.7%)で、ICC 群(50.2%)より低率でした。ただし血小板減少症は注意が必要です。
- 日本人での発現傾向:外国人より AST/ALT 増加、角膜炎、点状角膜炎、好中球減少、血小板減少などが多くみられました。いずれも、死亡や重篤な有害事象が高率になる傾向はありませんでした。
臨床現場へのインパクト
- 本薬は、バイオマーカー陽性の白金抵抗性再発卵巣癌における、単剤化学療法に代わる選択肢となります。
- ガイドラインでは次のように位置付けられています。
- NCCN ガイドライン:腫瘍細胞の 75%以上で FRα 発現が認められる場合に強く推奨(Category 1)
- ESMO ガイドライン:FRα 陽性の高異型度漿液性卵巣癌に強く推奨
- 骨髄抑制は化学療法より軽い一方、眼毒性という新しい管理負担が生じます。人工涙液・ステロイド点眼薬の使用状況と眼症状を、毎サイクル確認する体制が必要です。
- 高異型度漿液性癌以外の組織型は、臨床試験の対象が限られています。審査報告書では、これらにも治療選択肢の一つとして考慮され得るとされました。
- 術後補助療法としての有効性・安全性は確立していません。
薬剤師の服薬指導・薬学的管理の要点
- 投与前に FRα 検査(コンパニオン診断)の結果と、眼科受診・眼科検査の実施状況を確認する。
- 人工涙液の毎日使用と、ステロイド点眼薬の使用開始・継続のタイミングを患者に説明する。
- コンタクトレンズを避けるよう指導する。
- 視力低下・霧視・眼痛が出たら、早めに連絡・受診するよう伝える。
- 咳嗽・呼吸困難・発熱(ILD)、しびれ・感覚低下(末梢神経障害)、infusion reaction の初期症状を確認する。
- 用量は調整理想体重で算出するため、身長・体重の確認と計算が必要である(女性の理想体重=0.9×身長(cm)−92)。