AIエージェント時代の到来:2025年の生成AI最新動向まとめ
はじめに
2025年は、生成AI業界において**「AIエージェント元年」**と呼ばれた年でした。ChatGPTやClaudeといった対話型AIが「質問に答える」段階から、**自律的にタスクを計画・実行する「エージェント」**へと進化を遂げたのです。
本記事では、AI News で日々キュレーションしている情報をもとに、2025年の生成AI動向を振り返り、2026年以降の展望を考えます。
AIエージェントとは何か
従来のAIとの違い
従来のLLM(大規模言語モデル)は、ユーザーの質問に対して回答を生成する「一問一答型」でした。AIエージェントは、これに4つの能力を加えた進化形です。
| 能力 | 説明 |
|---|---|
| Planning(計画) | 目標達成のために必要なステップを自分で計画する |
| Tool Use(ツール使用) | Web検索、コード実行、API呼び出しなどの外部ツールを使う |
| Reflection(振り返り) | 実行結果を評価し、計画を修正する |
| Multi-agent(協調) | 複数のエージェントが役割分担して協力する |
例えば「来月の学会発表のスライドを作って」と指示すると、AIエージェントは論文を検索し、データを整理し、スライドのデザインまで一貫して実行できます。
主要なAIエージェントの例
- ChatGPT(OpenAI):2025年のアップデートでエージェント機能が大幅強化
- Claude(Anthropic):最大100万トークンのコンテキストウィンドウで長大なタスクに対応
- Gemini(Google):Gemini 3.1 Proでマルチモーダル推論が飛躍的に向上
- Claude Code:ターミナル上で自律的にコーディングを行うエージェント型開発ツール
2025年の重要トピック
1. MCPプロトコルの標準化
MCP(Model Context Protocol) は、Anthropic社が提唱したAIエージェントの「接続規格」です。
従来、AIがツールやデータソースに接続するには、ツールごとに専用のインテグレーションを開発する必要がありました。MCPは、これをUSBのような統一規格にすることで、エージェントがあらゆるツールやサービスに簡単に接続できるようにします。
2025年中に多くのSaaS企業がMCP対応を進め、事実上の業界標準となりつつあります。
2. マルチエージェントの進展と課題
複数のAIエージェントが**役割分担して協力する「マルチエージェント」**の研究が進んでいます。
しかし、Google Research/MITの研究では、マルチエージェントシステムは単一エージェントと比較して39〜70%のパフォーマンス低下が生じるケースがあることが報告されました。エージェント間の調整コストや情報の伝達ロスが原因です。
必ずしも「多い方がいい」わけではない——適材適所でエージェントを配置する「オーケストレーション」の設計が重要になっています。
3. コンテキストエンジニアリング
2025年に注目されたキーワードのひとつがコンテキストエンジニアリングです。
LLMに与えるプロンプト(指示文)やコンテキスト(文脈情報)を最適化することで、50%以上のトークンコスト削減を実現する手法が報告されています。単にプロンプトを工夫するだけでなく、以下のような体系的なアプローチが求められています。
- 情報の優先順位付け:最も関連性の高い情報を先頭に配置
- 冗長情報の圧縮:要約や構造化による情報密度の向上
- 動的なコンテキスト選択:タスクに応じて必要な情報だけを選択的に提供
- RAG(検索拡張生成)の高度化:外部データベースからの関連情報の自動取得
4. DeepSeekの衝撃
2025年1月、中国のAIスタートアップDeepSeek社がDeepSeek-R1を公開しました。クローズドモデル(GPT-4、Claude等)に匹敵する推論能力を持ちながらオープンソースであることが世界中に衝撃を与えました。
これにより、クローズドモデル中心だった企業利用に新たな選択肢が生まれ、AIの「民主化」が加速しました。
5. 日本語AIモデルの進化
日本語に特化したAIモデルの開発も進んでいます。
- NVIDIA Nemotron-Nano-9B-v2-Japanese:10Bパラメータ未満で最高性能の日本語モデル
- Sakana AI TinySwallow-1.5B:軽量ながら実用的な日本語処理が可能
- 国産LLMの開発プロジェクトが複数進行中
6. AIセキュリティの新たな脅威
AIの普及に伴い、新しい種類のセキュリティ脅威も浮上しています。
- プロンプトインジェクション:悪意ある指示をAIに注入して意図しない動作をさせる攻撃
- AIレコメンデーション汚染:メモリ操作によりAIの推薦内容を改ざんする攻撃(50件以上のケースが確認)
- ディープフェイク:動画や音声の偽造による詐欺(日本でもセキュリティ訓練が開始)
- スマートコントラクトの脆弱性悪用:AIエージェントが暗号資産の脆弱性を自動検出
医療分野へのAI応用
医療画像AIの進化
Foundation Models(基盤モデル)の医療画像への応用が進んでおり、X線・CT・MRIなどの画像診断を支援するAIモデルが多数発表されています。
希少疾患の診断支援
Chain-of-Thought推論とRAG(検索拡張生成)を組み合わせた希少疾患の診断支援システムが研究段階から実用段階へ移行しつつあります。薬剤師として注目すべきは、これらのAIが処方の妥当性評価にも応用できる可能性がある点です。
AIによる臨床判断支援
内分泌領域では、エビデンスに基づく推論を行う専門AIモデルが登場しています。処方監査や副作用モニタリングへの応用が期待されます。
2026年の展望
2025年が「AIエージェント元年」なら、2026年はエージェントが本番環境に入り、実際にROI(投資対効果)を問われる年になると予測されています。
注目すべき3つの流れ
- エージェントの業務実装:概念実証(PoC)から本番運用への移行が加速
- 規制・ガバナンスの整備:AI利用に関する法規制や業界ガイドラインの策定
- AIネイティブなワークフロー:AIを前提とした業務プロセスの再設計
薬剤師の世界でも、処方監査AIや在庫管理AIが「あると便利」から「ないと困る」ツールになっていく過程が、まさに始まっています。
まとめ
AIエージェントの進化は、薬剤師の働き方にも大きな影響を与えます。情報収集の効率化、処方監査の精度向上、患者対応の質向上など、AIを味方につけることで、薬剤師はより専門性の高い業務に集中できるようになります。
AI News では、こうしたAI技術の最新動向を日々キュレーションしています。変化の激しいAI領域の情報をキャッチアップし、自分の業務にどう活かせるかを考えるきっかけにしてください。