調剤ベースアップ評価料の問題点|40歳の線引き・管理薬剤師除外など8つの論点
目次
「ベア評価料ができたから、うちも給料上がるんですよね?」
2026年6月の調剤報酬改定で、薬局に初めて調剤ベースアップ評価料ができました。処方箋の受付1回につき4点、2027年6月からは8点になる予定です。
名前だけ見ると「薬局で働く人の給料が一律に上がる点数」に見えます。でも通知と疑義解釈を読み込むと、上がる人と上がらない人、上がる薬局と上がりにくい薬局がかなりはっきり分かれる作りになっていました。
ぼくは薬局で8年働き、そのうち5年は管理薬剤師兼薬局長でした。売上と勤怠のダッシュボードを自作して、処方箋枚数と人件費の表を毎月にらんでいた人間です。その目で見ると、この評価料には「若手の賃上げを確実にする」という狙いと引き換えに、現場が抱える歪みがいくつも埋め込まれています。
ちなみに、当時のぼくがこの制度の下にいたら対象外です。管理薬剤師だから。
この記事では、算定要件の解説は最小限にして、問題点と論点を8つに分けて整理します。改定全体の流れは【2026年調剤報酬改定】薬局が知るべき全変更点を、基本料とあわせた収益の試算は2026年の薬局 基本料の解説を見てください。
3秒まとめ
- 対象は40歳未満の勤務薬剤師と事務職員だけ。40歳以上の薬剤師と管理薬剤師は、どれだけ給料が低くても対象外
- 病院の薬剤師には年齢の制限も管理者の除外もない。同じ薬剤師免許でも、職場で扱いが分かれる
- 原資は処方箋枚数に比例するので、在宅中心や小規模の薬局ほど若手の賃上げ幅が小さく、大型の門前ほど大きい。試算では実効の賃上げ率に2.4倍の差が出た
- 使い道は厳しく縛られている(定期昇給は不可、繰越は原則不可、毎年8月に報告)。3.2%は目標であって保証ではない
- 2027年6月の8点は「予定」。令和9年度の予算編成で加減算を含めた調整があり得る
⚠️ 本記事は2026年10月10日時点の告示・通知・疑義解釈(その12まで)にもとづいています。算定の判断は、必ず記事末尾の原典と管轄の地方厚生(支)局で確認してください。
先に制度の骨格だけ押さえる
論点に入る前に、議論の土台になる部分だけ表にしておきます。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 点数 | 処方箋の受付1回につき4点。2027年6月以降は所定点数の100分の200(8点) | 調剤報酬点数表 |
| 対象職員 | 薬局に勤務する職員。ただし事業主・使用者・開設者・管理者・40歳以上の薬剤師・業務委託を除く。本部職員やエリアマネージャー(調剤に直接従事しない人)も除く | 施設基準通知 第109 |
| 収入の使い道 | 対象職員の基本給または毎月決まって払う手当の引き上げ(ベア等)と、それに伴う賞与・時間外手当・法定福利費の増加分 | 施設基準通知 第109 1(3) |
| 賃上げの目標 | 令和8年度 +3.2%、令和9年度 +3.2%(事務職員は各+5.7%) | 改定の概要【調剤】 |
| 届出と報告 | 様式103で届出。毎年8月に中間報告書と実績報告書。根拠資料は年度終了後3年保管 | 施設基準通知 第109 2 |
お金の流れを図にするとこうなります。
flowchart LR
A["処方箋の受付<br/>1回につき4点"] --> B["調剤ベースアップ<br/>評価料の収入"]
B --> C["対象職員のベア等<br/>(40歳未満の薬剤師・事務職員)"]
B -. 使えない .-> D["40歳以上の薬剤師<br/>管理薬剤師・開設者<br/>本部職員・OTC売場の職員"]
B -. 使えない .-> E["設備投資・医薬品購入<br/>定期昇給の原資"]
C --> F["毎年8月に<br/>中間報告・実績報告"]
入ってくるお金は処方箋の枚数で決まり、出ていく先は年齢と役職で絞られる。この2つの物差しがずれていることが、ほとんどの論点の根っこです。
論点1:40歳以上の薬剤師は、給料が低くても対象外
施設基準通知は、対象職員から「40歳以上の薬剤師」を除いています。事務職員には年齢の制限がありません。年齢は賃金の支払いの対象となった月の初日で判定します(疑義解釈その3 問5)。
この40歳の線は今回いきなり出てきたものではありません。2024年度改定でも、改定率のうち「40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員等の賃上げに資する措置分(+0.28%程度)」が別枠で用意されていました。薬局ではこれが調剤基本料などの引き上げで手当てされ、使い道の報告義務はありませんでした。2026年度はそれを「ひも付きの評価料」に作り替えた、と読むのが自然だと思います。
問題は、40歳という年齢が給料の高さの代わりとして使われていることです。
第25回医療経済実態調査で保険薬局(法人)の薬剤師を見ると、平均給料は年425.1万円、賞与を足して480.3万円。前年からの伸び率は0.3%でした。個人立の薬局だと賞与込みで401.2万円です。ここには40歳以上の勤務薬剤師も含まれています。
| 職種(調査の区分) | 平均給料(年) | 賞与込み | 伸び率 |
|---|---|---|---|
| 保険薬局(法人)の薬剤師 | 4,251,250円 | 4,802,997円 | 0.3% |
| 保険薬局(個人)の薬剤師 | 3,732,826円 | 4,011,839円 | 2.8% |
| 一般病院(全体)の薬剤師 | 4,654,030円 | 5,811,246円 | 2.1% |
出典:中医協「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告の概要」(令和7年11月26日)の職種別常勤職員1人平均給料。前年(度)の値。薬局の「薬剤師」は管理薬剤師を含まない。年齢構成や役職の構成が違うので、単純な比較はできない
「薬局薬剤師は40歳を過ぎれば十分に稼いでいるから、賃上げは若手に絞る」という前提は、平均で見る限り強くありません。子育てが落ち着いてから復職した40代の薬剤師、地方の個人薬局で長く勤めている薬剤師。そういう人ほど給料は低いのに、制度の上では対象外です。
論点2:管理薬剤師は年齢に関係なく対象外
ここが現場で一番もめているところだと思います。
施設基準通知の「管理者」に管理薬剤師が入るかについて、疑義解釈その2 問8ははっきり「対象とならない」と答えています。30歳の管理薬剤師でも対象外です。
大手チェーンでは20代後半〜30代で管理薬剤師を任されることは珍しくありません。m3.comのコラムで薬局コンサルの津留隆幸さんも、経営者からすると「最も賃金を上げたい対象が制度上外れてしまう」という声が根強いと書いています。
管理する側にいた身として気になるのは、昇格の動機づけが逆向きになることです。
- 35歳の勤務薬剤師を管理薬剤師に任命すると、その月からベアの対象外になる
- 管理薬剤師手当を上げても、その原資は評価料からは出せない(自前で出すしかない)
- 薬機法で薬局には必ず管理薬剤師を置くので、どの薬局にも最低1人は対象外の薬剤師がいる
部下の若手だけ評価料でベースアップし、管理薬剤師の手当は据え置き。これを放置すると、管理薬剤師と部下の給料差が年々縮みます。「責任だけ増えて給料差がない」となれば、管理薬剤師を引き受ける人がいなくなる。小さい薬局ほど、ここは経営者の持ち出しで埋めることになります。
論点3:病院の薬剤師には年齢の線も管理者の線もない
同じ2026年度改定のベースアップ評価料でも、病院・診療所側の施設基準で除かれるのは「40歳以上の医師及び歯科医師」と業務委託の人だけです。病院の薬剤師は、年齢も役職も問わず対象職員に入ります。
| 病院・診療所の薬剤師 | 薬局の薬剤師 | |
|---|---|---|
| 年齢の制限 | なし | 40歳未満のみ |
| 管理者(薬剤部長・管理薬剤師) | 除外の定めなし | 対象外 |
| 賃上げの目標 | 令和8年度 +3.2% | 令和8年度 +3.2% |
同じ薬剤師免許で、同じ目標率なのに、職場によって誰が対象になるかがこれだけ違います。
厚生労働省は線引きの理由を資料で説明していないので、ここからはぼくの推測です。薬剤師の人手は病院側が足りておらず、病院薬剤師の確保が長く課題になってきました。病院側は全年齢、薬局側は若手だけに絞れば、結果として病院へ人が動きやすい方向に働きます。意図したものかどうかは別にして、40代の薬局薬剤師から見れば「自分は政策の対象から外れた」と受け取る人が出るのは自然です。
論点4:原資は処方箋の枚数に比例し、人の数とは合っていない
ここは実際に数字を置いて試算してみました。
前提は次のとおりです。
- 1か月の評価料収入 = 処方箋の受付回数 × 4点 × 10円
- 必要額 = 対象職員の月給 × 目標率(薬剤師3.2%・事務職員5.7%)× 1.29
- 月給は医療経済実態調査の法人薬局の平均給料を12で割った値(薬剤師354,271円、事務職員193,047円)
- 1.29は、病院などの区分計算で厚労省が使う係数です。賞与や法定福利費のうち、ベースアップに連動して増える分を見込んだもの(改定の概要【調剤】の「賃金改善算定基礎額」の説明)
すると、目標どおりに上げるのに必要な額は、対象の薬剤師1人あたり月14,624円、事務職員1人あたり月14,195円になります。これを3つのタイプの薬局に当てはめます。
| 薬局のタイプ | 月の受付回数 | 対象職員 | 評価料収入(月) | 目標どおりの必要額(月) | 充足率 | 全額を配った場合の実効賃上げ率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A:在宅中心・小規模 | 700回 | 若手薬剤師2・事務1 | 28,000円 | 43,443円 | 64% | 薬剤師2.1%・事務3.7% |
| B:標準的な面分業 | 1,500回 | 若手薬剤師1・事務2 | 60,000円 | 43,014円 | 139% | 薬剤師4.5%・事務8.0% |
| C:大型の門前 | 4,000回 | 若手薬剤師3・事務4 | 160,000円 | 100,652円 | 159% | 薬剤師5.1%・事務9.1% |
管理薬剤師と40歳以上の薬剤師はどのタイプにも別にいる前提で、対象職員の数には入れていない。人数配置は説明のための仮定
試算する前は「足りない薬局がある」くらいに考えていました。実際に並べてみて意外だったのは、余る薬局のほうが多いことです。
収入は全額を対象職員のベア等に使わなければいけないので、余った分も同じ少人数に配ることになります。Cの若手薬剤師は5.1%上がり、同じ店の40代の薬剤師は0%。Aの若手は2.1%しか上がらない。若手の賃上げ率が、勤め先によって2.4倍違うことになります。
在宅中心の薬局は、1枚の処方箋にかける人手が外来より多いのが普通です。処方箋の枚数という物差しは、まさにそういう薬局を不利に扱います。
病院・診療所のベースアップ評価料(Ⅱ)や入院ベースアップ評価料には、対象職員の給与総額から必要額を計算して区分を決める仕組みがあります。調剤ベースアップ評価料にはこの計算がなく、4点の一本です。届出は簡単になりましたが、そのぶん薬局ごとの過不足を調整する手段もありません。
論点5:40歳の誕生月に起きる「付け替え」
論点1の年齢判定は、実務でもう一段ややこしい問題を生みます。
39歳の薬剤師に評価料でベースアップしたとします。翌年40歳になると、その人は翌月から対象職員ではなくなります(月の初日で判定)。
- 一度上げた基本給や固定の手当を、40歳になったからといって会社の都合で下げれば、労働条件の不利益変更の問題になる
- 一方で、実績報告で数えるのは対象職員の基本給等だけなので、その人の上げた分は評価料の実績から外れる
- 評価料の収入は残りの対象職員のベア等に使い切る必要がある
つまり、40歳になった人のベース分は、その月から経営者の自前の負担に変わります。制度の作りから読むとこうなる、という整理なので、迷ったら管轄の厚生局と社会保険労務士に確認してください。
ここで「40歳になったら手当がなくなる」設計にしてしまうと、本人から見れば誕生日に減給される形になります。ベア分を手当で払う場合こそ、40歳到達時の扱いを就業規則に最初から書いておく必要があります。
論点6:ひも付きの厳しさ(定期昇給不可・繰越原則不可・入金は後から)
評価料の収入は「自由に使える増収」ではありません。縛りを並べるとこうなります。
| 縛り | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 定期昇給には使えない | 勤続年数で上がる分はベースアップに当たらない。賃金表の水準そのものを上げる必要がある | 改定の概要【調剤】 |
| 他の賃金を下げて相殺できない | 評価料で上げる項目以外の賃金(業績で変動するものを除く)の水準を下げてはいけない | 施設基準通知 1(3) |
| 繰越は原則不可 | 6月〜翌年5月の収入は翌年5月までの賃金改善に使う。患者数の変動でやむを得ず残った分は、実績報告を出す8月までに配る | 疑義解釈その2 問6 |
| 業績悪化で賃金を下げる場合 | 対象職員の賃金水準を下げてから賃金改善をするなら「特別事情届出書」が必要 | 施設基準通知 2(3) |
経営側でいちばん効いてくるのは、お金が入る前に払い始めることです。疑義解釈その2 問5は、原則として算定開始月から賃金改善を始めるよう求めています。一方で調剤報酬が実際に振り込まれるのは、おおむね2か月後です。小さい薬局では数か月分の立て替えになります。
もう1つは、上げた賃金は下げにくいことです。2027年度以降に評価料が減ったり、基本料に吸収されたりしても、すでに上げた基本給や固定の手当は簡単には戻せません。評価料と連動した手当にしておく工夫を勧める専門家もいますが、それでも一方的な減額は不利益変更の議論を避けられません。
論点7:届出・報告の事務と、届出と請求の食い違い
事務の負担は、病院の総務部門なら吸収できても、薬剤師2〜3人の薬局には重いです。
- 届出は様式103(Excel)を厚生局の都道府県事務所の専用メールアドレスへ提出
- 毎年8月に中間報告書と実績報告書(様式104)。2026年8月が最初の中間報告だった
- 対象職員の常勤換算、基本給等総額の比較、法定福利費の増加分の計算
- OTC売場(店舗販売業)を併設する薬局は、保険調剤の職員とそれ以外を分ける。分けられなければ、全職員数に保険調剤の収入割合を掛けた人数で計算する
- 対象職員がゼロになったら届出の変更が必要で、翌月から算定できない(疑義解釈その11)
実際、運用はまだ荒れています。厚生労働省は2026年8月19日の事務連絡で、ベースアップ評価料について施設基準の届出と請求内容に疑義がある医療機関・薬局が散見されるとして、8月診療分以降は届出内容を確認したうえで請求するよう求めました。9月1日には、8月末の報告書の期限に間に合わなかった場合は「可及的速やかに」提出するよう事務連絡が出ています。
届出の広がりについては、公式の集計はまだ見当たりません。第三者のサイト「ベースアップレーダー」が全国の厚生局の名簿を数えた結果では、保険薬局61,987か所のうち47,880か所(77.2%)が届け出ていました(2026年8月1日または9月1日時点)。残り約4分の1が届け出ていない理由は分かりません。対象職員がそもそもいない薬局(開設者1人と40歳以上の薬剤師だけ、など)と、事務負担で見送った薬局が混ざっていると思いますが、これはぼくの推測です。
論点8:患者負担と、2027年6月の不確実性
窓口で払う額が薬局によって変わる
4点は40円なので、3割負担の患者さんで受付1回あたり12円、2027年6月から8点になれば24円です。金額は小さくても、届け出ている薬局と届け出ていない薬局で、同じ処方箋でも窓口の負担が違うことになります。
「ベースアップってなに?ぼくの払うお金で薬局の人の給料が上がるの?」と聞かれたとき、窓口で説明できるようにしておくほうがいいです。答えは「そのとおりです」なので、ごまかしようがありません。
3.2%は目標で、8点は予定
- 疑義解釈その2 問7は、3.2%(5.7%)のベースアップを達成できなくても算定できると答えています。要件は「収入を全額、対象職員に使う」ことで、率の保証ではありません
- 厚労省は令和8年度に薬局の経営状況を調査し、実際に払われた給与(賞与を含む)の賃上げ実績を把握するとしています
- 経済や物価の動きが改定時の見通しから大きく外れた場合は、令和9年度の予算編成で加減算を含めて調整するとされています。8点への倍増は確定ではありません
働く側は「2027年に倍になる」と期待し、経営側は「倍になる前提で賃金表を組むと、外れたときに戻せない」と身構える。この温度差は、今年度中に一度話し合っておいたほうがいいところです。
立場別:いま確認しておくこと
40歳未満の勤務薬剤師・事務職員
- 勤め先が届け出ているかは、地方厚生局の「届出受理医療機関名簿」で確認できる
- 施設基準通知は、対象職員から照会を受けたら書面などで分かりやすく説明することを薬局に求めている。遠慮せずに聞いていい
- 上がる幅は勤め先の処方箋枚数と対象職員の人数で決まる。転職先を比べるなら、評価料の配り方も聞く項目に入る
40歳以上の薬剤師・管理薬剤師
- 評価料からは1円も出ない。賃上げは会社の自前の原資になる
- 同じ店の若手との差が縮んでいくので、管理薬剤師手当や役割給の見直しは、制度とは別に交渉する必要がある
経営者・薬局長
- 自店の受付回数と対象職員で、上の試算表と同じ計算を一度やっておく。足りるのか、余るのか、余ったらどう配るのか
- 40歳到達時と管理薬剤師への任命時の扱いを、就業規則か賃金規程に先に書いておく
- 報告書の根拠資料(給与台帳、計算シート)は年度終了後3年保管。2027年8月の実績報告から逆算して、今の時点で集計の形を決めておく
よくある質問
Q. 調剤ベースアップ評価料で、薬剤師の給料は必ず3.2%上がりますか?
保証はありません。3.2%(事務職員は5.7%)は政府の目標で、算定要件ではありません。疑義解釈(その2)問7で、目標に届かなくても算定できるとされています。要件は「評価料の収入を全額、対象職員のベースアップ等に使うこと」です。上がる幅は、勤務先の処方箋枚数と対象職員の人数で決まります。
Q. 管理薬剤師は調剤ベースアップ評価料の対象になりますか?
なりません。施設基準通知が「管理者」を対象職員から除いており、疑義解釈(その2)問8で管理薬剤師は「対象とならない」と明記されています。40歳未満でも同じです。
Q. 40歳になった月から対象外になりますか?
賃金の支払いの対象となった月の初日時点で40歳未満かどうかで判定します(疑義解釈(その3)問5)。月の途中で40歳になった場合、その月は対象で、翌月分から対象外です。
Q. 病院薬剤師にも年齢の制限はありますか?
ありません。病院・診療所のベースアップ評価料で除かれるのは「40歳以上の医師及び歯科医師」と業務委託の人だけで、病院の薬剤師は年齢も役職も問わず対象です。年齢と管理者の線引きがあるのは薬局の調剤ベースアップ評価料だけです。
まとめ:若手を確実に、の代わりに失ったもの
調剤ベースアップ評価料は、2024年度にはどこへ消えたか追えなかった若手の賃上げ分を、使い道を報告させる形に作り替えた制度です。その点では前進です。
ただ、その確実さは「40歳未満」「管理薬剤師以外」「処方箋の枚数に比例」という3つの単純な物差しで買われています。そのしわ寄せが、40代の薬剤師、若い管理薬剤師、在宅中心の小さな薬局に集まっている。ぼくの試算では、同じ若手でも勤め先によって賃上げ率が2倍以上違いました。
2027年度の調整では、少なくとも管理薬剤師の扱いと、枚数比例で足りない薬局への手当てが議論されてほしいと思っています。
他の改定項目の算定上の論点は調剤報酬改定の疑義解釈まとめに、門前の減算は門前薬局等立地依存減算の解説にまとめています。
現場で「うちはこう配っている」「40歳到達時をこう決めた」という例があれば、ぜひ教えてください。X(@hagakun_yakuzai)で待っています。
参考資料(一次情報)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について」(届出様式・報告書様式・事務連絡の掲載ページ)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】(抜粋)」(点数、対象職員、目標率、令和9年度の調整、1.29の係数)
- 「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(調剤ベースアップ評価料の抜粋)」(第109 対象職員・収入の使途・店舗販売業・報告)
- 「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(医科の抜粋)」(病院・診療所の対象職員)
- 疑義解釈資料:その2(ベースアップ評価料関係の抜粋)問5〜問9/その3別添2 問5
- 厚生労働省 事務連絡「ベースアップ評価料等に係る診療報酬請求について」(令和8年8月19日)
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定 全体概要版」(+0.28%程度の若手賃上げ措置)
- 中医協「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告の概要」(令和7年11月26日)
- ベースアップレーダー「調剤ベースアップ評価料の対象者は?」(届出割合の第三者集計)