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【個人薬局向け】2026年調剤報酬改定で変わる経営戦略|かかりつけ・在宅・地域貢献

はじめに

2026年度調剤報酬改定は、個人薬局(1〜数店舗規模)にとって追い風と向かい風が同時に吹く改定です。

追い風となるのは、調剤基本料1の+2点引き上げ、地域貢献を重視する加算体系への再編、在宅関連加算の大幅拡充です。一方、かかりつけ薬剤師指導料(76点)や包括管理料(291点)の廃止、後発医薬品調剤体制加算の統合など、従来の収益構造が崩れるリスクもあります。

本記事では、改定の全体像を踏まえたうえで、個人薬局が特に注目すべきポイントと具体的な対応策を深掘りします。

この記事は【2026年調剤報酬改定】薬局が知るべき全変更点を徹底解説の関連記事です。改定内容の全体像はそちらをご覧ください。


個人薬局にとっての「勝ち筋」が明確になった改定

調剤基本料1の恩恵を最大化する

個人薬局の多くは調剤基本料1(面分業・低集中率)を算定しています。今回の改定で基本料1は45点→47点に引き上げられ、地域密着型の薬局が最も恩恵を受ける設計になっています。

月1,500枚の処方箋を受け付ける薬局の場合:

項目計算年間影響額
基本料+2点1,500枚 × 2点 × 10円 × 12月+36万円
ベースアップ評価料4点1,500枚 × 4点 × 10円 × 12月+72万円
合計+108万円

さらに2027年6月以降はベースアップ評価料が8点に倍増するため、基本料だけで年間180万円以上の増収が見込めます。

面分業の強みが評価される時代

立地依存減算(-15点)の新設や集中率要件の厳格化は、門前薬局を主なターゲットとしたものです。複数の医療機関から処方箋を受け付けている個人薬局はこの減算の影響を受けにくく、相対的に有利な立場になります。

ただし、個人薬局であっても近隣の1つの医療機関に集中率85%超で依存している場合は注意が必要です。今のうちから面処方箋の比率を意識しておきましょう。


かかりつけ薬剤師:「指導料」消滅後の戦い方

何が変わったのか

個人薬局にとって最大のインパクトは、かかりつけ薬剤師指導料(76点)と包括管理料(291点)の廃止です。

旧制度と新制度の収入比較(かかりつけ患者1人あたり・月1回来局):

項目旧制度新制度
基本指導料かかりつけ薬剤師指導料 76点服薬管理指導料 45〜59点
フォローアップかかりつけ薬剤師フォローアップ加算 50点(3月に1回・下記加算算定済み患者が対象)
残薬調整調剤時残薬調整加算 30〜50点
有害事象防止重複投薬防止加算 20〜40点薬学的有害事象等防止加算 30〜50点
訪問かかりつけ薬剤師訪問加算 230点(6月に1回)

個人薬局が取るべき戦略

旧制度では「かかりつけ薬剤師」の同意を得るだけで76点を安定的に算定できましたが、新制度では具体的なアクションを起こした分だけ加算される仕組みに変わりました。

これは一見不利に見えますが、個人薬局の強みである「顔の見える関係」「患者の生活背景の理解」を活かせば、むしろ大手より高い算定率を実現できる可能性があります。

具体的アクション1:フォローアップの仕組み化

かかりつけ薬剤師フォローアップ加算(50点・3月に1回)は、かかりつけ薬剤師が次回来局までの間に電話等で服薬状況や残薬確認を行い、次回処方箋受付時に算定する加算です。

算定の前提条件として、同一患者に対して以下のいずれかを既に算定していることが必要です:

  • 外来服薬支援料1
  • 服用薬剤調整支援料1または2
  • 調剤時残薬調整加算
  • 薬学的有害事象等防止加算

つまり、残薬調整や有害事象防止の介入を先に行い、その後のフォローアップで加算を取るという流れになります。「フォローアップ加算だけ」を単独で算定することはできません。

また、調剤後薬剤管理指導料在宅患者訪問薬剤管理指導料等を算定中の患者は対象外です。

算定に向けた実務のポイント:

  • 対象患者の特定:残薬調整加算・有害事象防止加算を算定した患者を自動的にフォローアップ候補リストに登録
  • フォローアップ手段の選択:電話、LINE、お薬手帳アプリなど、患者に合った手段を使う
  • 記録テンプレートの整備:薬歴への記録を効率化し、算定漏れを防ぐ
  • フォロー時期のカレンダー管理:3月に1回の算定タイミングを管理

個人薬局では薬剤師が少人数のため、全患者に一律のフォローをするのではなく、前提加算を算定済みの患者に集中することが現実的かつ制度上も正しい運用です。

具体的アクション2:残薬調整の提案を習慣化する

調剤時残薬調整加算(30〜50点)は、残薬を確認して処方医に日数調整等を提案した場合に算定できます。

  • 来局時に「前回のお薬は余っていませんか?」と声かけ
  • お薬手帳や薬歴で前回調剤日との間隔をチェック
  • 残薬があれば処方医に疑義照会し、日数調整を提案
  • 提案の有無にかかわらず確認した事実を薬歴に記録

個人薬局では同じ薬剤師が継続的に対応するケースが多いため、残薬の傾向を把握しやすいのが強みです。

具体的アクション3:訪問加算で差別化する

かかりつけ薬剤師訪問加算(230点・6月に1回)は、かかりつけ患者の自宅を訪問して服薬状況を確認するものです。

6月に1回で230点は非常に大きな報酬です。通常の在宅訪問薬剤管理指導とは別枠で算定できるため、すでに在宅対応している個人薬局は積極的に活用すべきです。


在宅業務:個人薬局の「次の柱」にする

なぜ今、在宅なのか

今回の改定で在宅関連の加算が大幅に拡充された背景には、地域包括ケアシステムにおける薬局の役割拡大があります。個人薬局にとって在宅業務は、かかりつけ機能と並ぶ重要な収益の柱になり得ます。

在宅未経験の個人薬局が始めるためのロードマップ

ステップ1:地域のネットワークに入る(〜2026年6月)

  • 地域の多職種連携会議に参加する(地域包括支援センターに問い合わせ)
  • ケアマネジャーに薬局の在宅対応を周知する
  • 近隣の在宅医・訪問看護ステーションと顔合わせの機会をつくる

ステップ2:最初の1件を獲得する(施行後すぐ)

  • まずは既存患者の中で通院が困難になりつつある方に声をかける
  • 簡単な残薬管理や服薬カレンダーのセットから始める
  • 訪問薬剤管理医師同時指導料(150点)を活用し、医師の訪問診療に同行する形でスタート

ステップ3:体制を整える(〜2026年末)

  • 在宅薬学総合体制加算1(30点)の算定要件を確認し、届出を行う
  • 必要に応じて無菌調製の設備を検討(無菌製剤処理加算の対象が15歳未満に拡大)
  • 複数名薬剤管理指導訪問料(300点)を見据え、薬剤師の確保も視野に

在宅業務の収益シミュレーション

在宅患者10人を担当した場合の月間収益イメージ:

項目点数算定回数月間点数
在宅患者訪問薬剤管理指導料517点10回5,170点
在宅薬学総合体制加算130点10回300点
かかりつけ薬剤師訪問加算230点2回(※)460点
調剤時残薬調整加算40点5回200点
月間合計6,130点

※6月に1回算定のため月平均2人分として計算

月間6,130点=約6.1万円の増収。年間では約73万円です。少人数体制でも十分に取り組める規模感です。


地域支援・医薬品供給対応体制加算の取得戦略

個人薬局が狙うべき区分

旧制度の「後発医薬品調剤体制加算」だけで加算を取っていた個人薬局は、新体系への移行が最大の課題です。

加算1(27点)が最も現実的なターゲットです。主な要件は:

  • 地域における安定供給体制の確保
  • 後発医薬品使用割合85%以上
  • 一定の医薬品備蓄品目数

後発品使用割合85%の壁

多くの個人薬局は80%台前半で推移しているケースが多く、85%のハードルは決して低くありません。

後発品割合を上げるための具体策:

  1. 先発品希望の患者への再アプローチ:長期収載品の自己負担が1/4→1/2に増えることを説明材料に
  2. 処方医との連携:一般名処方の促進を医療機関に働きかけ
  3. 在庫管理の見直し:後発品の品揃えを充実させ、「在庫がないから先発品」を減らす
  4. バイオ後続品の導入:バイオ後続品調剤体制加算(50点)の算定も視野に

備蓄品目数の考え方

「加算を取るための備蓄」ではなく、地域の患者ニーズに基づいた備蓄が求められます。

  • 近隣医療機関の処方傾向を分析し、需要の高い品目を優先
  • 不動在庫の整理と入れ替えを定期的に実施
  • 近隣薬局との医薬品融通ネットワークを構築し、備蓄の効率化を図る

少人数体制での対人業務効率化

個人薬局最大の課題:「時間がない」

個人薬局では薬剤師1〜2名で調剤から服薬指導、在宅対応まですべてをこなす必要があります。対人業務の評価が厚くなったとはいえ、時間は有限です。

効率化の3つの柱

1. 業務の「型」をつくる

  • フォローアップの電話トークスクリプトを用意し、1件あたりの時間を短縮
  • 残薬確認の声かけを投薬時のルーティンに組み込む
  • 薬歴記載のテンプレートを加算ごとに準備し、記録時間を削減

2. テクノロジーの活用

  • 電子お薬手帳アプリでフォローアップメッセージを送信(電話より効率的)
  • レセコン・電子薬歴の算定支援機能を最大限活用し、算定漏れを防止
  • 電子処方箋の導入で入力業務を省力化

3. 対人業務の優先順位づけ

すべての患者に均一な対人業務を行うのは非現実的です。算定効果の高い患者を優先しましょう。

優先度対象患者狙う加算
ハイリスク薬服用者薬学的有害事象等防止加算(30〜50点)→ フォローアップ加算(50点)
多剤併用(ポリファーマシー)の高齢者残薬調整加算(30〜50点)→ フォローアップ加算(50点)
かかりつけ同意+通院困難な患者かかりつけ薬剤師訪問加算(230点)
新規処方・変更処方の患者有害事象防止加算(30〜50点)の算定機会
安定した慢性疾患患者基本の服薬管理指導料のみ

算定の流れ:有害事象防止加算や残薬調整加算をまず算定 → 対象患者に電話等でフォローアップ → 次回来局時にフォローアップ加算(50点)を算定、という2段階の構造です。


選定療養の変更:患者対応の最前線

個人薬局こそ丁寧な説明が求められる

長期収載品の自己負担が価格差の1/4から1/2に倍増します。患者の窓口負担が目に見えて増えるため、説明の場面が確実に増えるでしょう。

個人薬局は患者との距離が近い分、この変更への問い合わせを直接受けることになります。

説明のポイント

患者への説明例:

「2026年6月から、後発品(ジェネリック)のあるお薬で先発品を希望される場合、差額の自己負担が少し増えることになりました。お薬の効き目は後発品でも同じですので、よろしければ切り替えをご検討ください。ご心配な点があればいつでもご相談ください。」

よくある質問への回答準備:

患者からの質問回答のポイント
なぜ負担が増えるの?国の医療費適正化の方針。後発品と同等の効果があるため
後発品に変えても大丈夫?有効成分は同じ。厚生労働省の承認済み
差額はいくらになる?具体的な金額を患者ごとに計算して提示
全部の薬が対象?後発品が発売されている先発品のみ

この対応を丁寧に行うことが、後発品使用割合85%の達成にも直結します。


医療DX:最低限やるべきこと

個人薬局に求められるDX対応

大規模なシステム投資は不要ですが、以下は最低限押さえましょう。

対応項目点数への影響優先度
電子処方箋の受付体制電子的調剤情報連携体制整備加算(8点)
オンライン資格確認の安定運用算定の前提要件
電子お薬手帳への対応フォローアップの効率化
オンライン服薬指導の体制服薬管理指導料(45〜59点)

電子的調剤情報連携体制整備加算は月1回8点と小さく見えますが、月1,500枚で年間14.4万円。対応コストに見合う加算です。


6月までの準備チェックリスト

項目期限目安備考
自薬局の基本料区分の再確認3月中集中率・受付回数を再計算
地域支援・医薬品供給対応体制加算の要件確認3月中後発品割合85%の達成見込みを確認
かかりつけ患者のリスト整理4月中フォローアップ対象者を選定
フォローアップの業務フローを策定4月中トークスクリプト・記録テンプレート準備
在宅業務の準備(未対応の場合)5月中地域包括支援センターへの問い合わせ
選定療養の説明資料作成5月中患者向けのわかりやすい文書
電子処方箋の受付テスト5月中システムベンダーと連携
レセコンの点数マスタ更新確認6月直前ベンダーの更新スケジュールを確認

まとめ

2026年調剤報酬改定は、個人薬局にとって「地域に根ざした薬局」としての価値が正当に評価される改定です。

  • 基本料1の+2点ベースアップ評価料で基盤収入が底上げされる
  • かかりつけ機能の実績評価化は、患者との近さが武器になる個人薬局に有利
  • 在宅業務の加算拡充は、新たな収益の柱を築くチャンス
  • 地域支援体制加算の再編で、後発品割合85%の達成が鍵に

大手に比べて経営資源は限られますが、「少人数だからこそできる、顔の見える対人業務」が最大の武器です。6月の施行に向けて、できることから着実に準備を進めていきましょう。


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