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薬局経営に活かすデータ分析入門:処方データから見える改善ポイント

はじめに

「勘と経験」に頼った薬局経営から、データに基づいた意思決定へ。近年、薬局業界でもデータ分析の重要性が認識されるようになりました。

レセコン(レセプトコンピュータ)に蓄積された処方データ、在庫管理システムのデータ、そして患者の来局パターン——これらのデータを適切に分析することで、経営改善のヒントが見えてきます。本記事では、薬局経営者や管理薬剤師がすぐに始められるデータ分析の基本を解説します。


なぜ薬局にデータ分析が必要なのか

外部環境の変化

薬局を取り巻く環境は大きく変化しています。

  • 調剤報酬改定:2年ごとの改定で収益構造が変わる
  • 後発医薬品の使用促進:数量シェア目標の引き上げ
  • 門前からかかりつけへ:地域密着型の経営が求められる
  • 敷地内薬局の増加:競争環境の激化

こうした変化に対応するには、自薬局のデータを正確に把握し、迅速に意思決定を行う必要があります。

データ分析で得られるメリット

分析対象期待できる効果
処方傾向診療科別・疾患別の処方パターンを把握し、在庫計画に反映
在庫回転率デッドストックの削減、廃棄ロスの低減
来局時間帯シフト最適化による人件費効率の向上
後発品切替率後発医薬品調剤体制加算の要件達成状況の監視
患者リピート率かかりつけ機能の評価と改善策の立案

始めやすいデータ分析3選

1. 処方傾向分析

レセコンから抽出できる処方データを用いて、以下の分析を行います。

月別の処方箋枚数の推移を可視化することで、季節変動や近隣医療機関の動向を把握できます。例えば、花粉症シーズンの処方増加を予測して、抗アレルギー薬の在庫を事前に確保するといった対策が可能です。

診療科別の処方構成比を見ることで、自薬局がどの診療科に依存しているかが明確になります。特定の診療科への依存度が高い場合、その医療機関の移転や閉院リスクを考慮した経営計画が必要です。

2. 在庫最適化分析

在庫管理は薬局経営の生命線です。医薬品の在庫は「多すぎても少なすぎても問題」です。

ABC分析を行い、売上への貢献度で医薬品をランク分けします。

  • Aランク(上位20%で売上の80%):欠品を絶対に避ける。安全在庫を厚めに設定
  • Bランク(次の30%):適切な発注点を設定し、効率的に管理
  • Cランク(残り50%):最小限の在庫に絞り、必要に応じて取り寄せ対応

また、在庫回転率(一定期間の払出金額 ÷ 平均在庫金額)を医薬品ごとに計算し、回転率の低い品目を定期的にレビューします。

3. 患者動向分析

患者の来局パターンを分析することで、サービス改善のヒントが得られます。

  • 曜日・時間帯別の来局数:ピーク時の人員配置を最適化
  • 新規患者とリピーターの比率:かかりつけ機能の定着度を評価
  • 処方元医療機関の多様性:面分業の進捗を確認

分析ツールの選択肢

Excel / Googleスプレッドシート

最も手軽に始められる方法です。レセコンからCSVエクスポートしたデータを、ピボットテーブルやグラフ機能で可視化します。プログラミング知識は不要で、多くの薬局で即座に導入可能です。

BIツール(Tableau、Power BI等)

より高度な可視化やダッシュボード作成には、BIツールが有効です。定型レポートを自動化し、毎月の経営会議で活用できます。Power BIはMicrosoft 365に含まれている場合もあり、追加コストなく利用開始できることがあります。

Python / R

本格的なデータ分析には、プログラミング言語を活用します。統計分析や機械学習による需要予測など、高度な分析が可能です。ただし、学習コストがかかるため、まずはExcelやBIツールから始めて、必要に応じてステップアップするのがおすすめです。


データ分析を始める際の注意点

個人情報の取り扱い

処方データには患者の個人情報が含まれます。分析に使用する際は、以下の点に注意してください。

  • 個人を特定できないよう匿名化・集計化して使用する
  • データの保管場所とアクセス権限を適切に管理する
  • 個人情報保護法及び関連ガイドラインを遵守する

まず小さく始める

最初から完璧なデータ分析基盤を構築する必要はありません。「今月の処方箋枚数をグラフにしてみる」「在庫金額の推移を記録してみる」といった小さな一歩から始めることが大切です。


まとめ

データ分析は、薬局経営を「見える化」し、根拠に基づいた意思決定を可能にする強力なツールです。まずは手元のデータを整理し、簡単な集計から始めてみましょう。日々の業務で生まれるデータの中に、経営改善のヒントが隠れているはずです。