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【2026年 薬局 在宅 加算】在宅訪問の全加算・新設項目と収益シミュレーションを徹底解説

はじめに:2026年改定で在宅業務が薬局の収益の柱になる

2026年度(令和8年度)の調剤報酬改定が2026年2月に答申され、施行日は2026年6月1日と決まりました。今回の改定で最も手厚く拡充されたのが、薬局の在宅加算に関わる領域です。

在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定間隔制限の撤廃、在宅薬学総合体制加算の倍増、複数名薬剤管理指導訪問料(300点)や訪問薬剤管理医師同時指導料(150点)の新設など、薬局の在宅業務に対する評価が大幅に引き上げられました。

これは、高齢化の進行により在宅医療のニーズが急拡大する中で、薬局が在宅業務に本格参入することを国が強く後押しする改定メッセージといえます。しかし、在宅医療に対応している薬局は依然として全体の約43.6%にとどまっています。

本記事では、2026年の薬局在宅加算に関するすべての変更を、旧制度との比較、具体的な収益シミュレーション、在宅業務未経験の薬局が参入するためのロードマップとともに網羅的に解説します。

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2026年 薬局 在宅 加算の全体像:何が変わるのか

今回の改定における在宅関連の変更は、大きく以下の5つの柱で構成されています。

1. 訪問頻度の柔軟化

算定間隔制限の撤廃により、患者の状態に応じた柔軟な訪問スケジュールが可能になりました。

2. 在宅体制への評価引き上げ

在宅薬学総合体制加算の大幅増点により、在宅業務に取り組む薬局の体制整備が報酬面で手厚く支援されます。

3. 多職種連携の評価

医師との同時訪問や複数名での訪問が新たに点数化され、チーム医療への参画が評価対象となりました。

4. 小児在宅への対応拡大

無菌製剤処理加算の対象年齢拡大と増点により、小児在宅医療における薬局の役割が強化されました。

5. かかりつけ薬剤師機能との連動

かかりつけ薬剤師訪問加算の新設により、外来から在宅への橋渡し機能が評価される仕組みが整いました。

以下では、各項目の詳細を旧制度との比較とともに解説していきます。


在宅患者訪問薬剤管理指導料の変更:算定間隔撤廃の意味

改定前後の比較

項目改定前(2024年度)改定後(2026年6月〜)
算定間隔前回訪問から6日以上の間隔が必要制限撤廃(週1回の訪問が可能)
月間算定上限月4回月4回(据置)
末期がん等の上限月8回(週2回まで)月8回(週2回まで)(据置)
単一建物訪問上限薬剤師1人あたり週40人週40人(据置)
緊急連絡体制任意初回訪問時に緊急連絡先・時間外対応体制を書面交付(必須)

算定間隔撤廃が経営に与えるインパクト

従来の「6日以上の間隔」制限では、例えば月曜に訪問した場合、最短で翌週の日曜日にしか次の訪問ができませんでした。これが撤廃されたことで、以下のような運用が可能になります。

具体例:状態が不安定な在宅患者への対応

  • 月曜:定期訪問(処方内容の確認・残薬整理)
  • 木曜:状態変化のフォローアップ訪問
  • 翌月曜:次回の定期訪問

このように、患者の状態に応じて週1回のペースで訪問でき、きめ細かなケアが可能になります。月4回の上限は変わりませんが、間隔の制約がなくなることで訪問のタイミングを患者のニーズに合わせられます。

点数体系(据置)

区分点数
単一建物診療患者1人650点
単一建物診療患者2〜9人320点
単一建物診療患者10人以上290点

新たに義務化された書面交付

2026年改定では、初回訪問時に以下の情報を書面で患者に交付することが義務化されました。

  • 薬局の緊急連絡先(電話番号)
  • 時間外の対応体制
  • 在宅協力薬局がある場合はその情報

これは在宅患者の安全確保を目的とした要件であり、24時間対応体制の整備が実質的に必要となります。


在宅薬学総合体制加算の変更:加算1は倍増、加算2は最大100点

2026年の薬局在宅加算の中で、経営面で最も影響が大きいのが在宅薬学総合体制加算の改定です。在宅患者の処方箋を受け付けるたびに上乗せされる加算であるため、在宅患者数が多い薬局ほど大きな増収につながります。

点数の変更

区分改定前改定後増減
在宅薬学総合体制加算115点30点+15点(倍増)
在宅薬学総合体制加算2(単一建物1人)―(新設)100点新設
在宅薬学総合体制加算2(その他)50点50点据置

加算1の施設基準(主な要件)

加算1は在宅業務に取り組む薬局の基本的な体制を評価する加算です。

  • 在宅患者訪問薬剤管理指導の届出を行っていること
  • 直近1年間の在宅関連業務の合計算定回数が48回以上(旧24回から引き上げ)
  • 単一建物1人の訪問割合が20%以上(または年間480回以上で10%以上)
  • 開局時間外の緊急在宅業務対応体制の整備
  • 地域の医療機関・行政機関等への周知
  • 在宅業務に関する研修計画の策定と実施
  • 医療材料・衛生材料の供給体制
  • 麻薬小売業者免許の取得

加算2の施設基準(加算1に加えて必要な要件)

加算2はより高度な在宅対応を行う薬局を評価するもので、加算1の要件に加えて以下を満たす必要があります。

以下のア又はイのいずれかを満たすこと:

ア) 医療用麻薬注射剤1品目以上を含む6品目以上の備蓄 + 無菌製剤処理設備(無菌室・クリーンベンチ・安全キャビネット)を自局で保有

イ) 直近1年間の高度な薬学的管理加算(乳幼児加算・小児特定加算等)の算定回数が6回以上

その他の追加要件:

  • 常勤薬剤師2名以上
  • かかりつけ薬剤師関連の算定回数が24回以上
  • 高度管理医療機器販売業の許可取得

加算2の「単一建物1人」区分の新設

2026年改定で特に注目すべきは、加算2に単一建物診療患者1人の場合100点という区分が新設されたことです。

施設在宅(グループホーム等の複数名訪問)ではなく、個人宅への1対1の訪問に対してより高い評価が与えられる構造になりました。これは、個人宅への訪問は移動効率が悪くコストがかかることを考慮した設計であり、個人宅への在宅訪問を行う薬局にとって大きなインセンティブとなります。

処方箋受付回数への算入ルール変更

2026年改定では、在宅患者訪問薬剤管理指導や居宅療養管理指導等に関わる処方箋が、受付回数に算入されるルールに変更されました。従来は受付回数から除外されていたため、在宅処方箋の多い薬局では月間受付回数が増加し、調剤基本料の区分判定に影響する可能性があります。


複数名薬剤管理指導訪問料(300点)の新設と活用場面

概要

項目内容
点数300点
新設/改定新設
算定頻度在宅患者訪問薬剤管理指導料と合わせて月4回まで
併算定不可緊急時等共同指導料・在宅移行初期管理料との同日算定不可

どのような場面で算定するのか

複数名薬剤管理指導訪問料は、薬剤師を含む複数名で在宅患者を訪問し、薬学的管理指導を行った場合に算定できる新設項目です。同行者は必ずしも薬剤師である必要はなく、薬局スタッフ(事務員等)が同行する場合も対象となります。

想定される活用場面:

  1. 認知症やBPSD(行動・心理症状)のある患者:暴力的行為のリスクがあり、安全確保のために複数名での訪問が必要
  2. 大量の残薬整理が必要な患者:薬剤師が薬学的判断を行いつつ、スタッフが物理的な整理作業を担当
  3. 複雑な医療機器を使用する患者:中心静脈栄養(TPN)ポンプの操作確認等で複数名の対応が必要
  4. 新人薬剤師の在宅OJT:経験豊富な薬剤師と新人が同行し、実地研修を行う場面

経営的な意味

従来、複数名で訪問しても報酬は単名訪問と同じでした。人件費だけが倍になる構造であったため、複数名訪問を避ける傾向がありました。300点の新設により、安全面で複数名訪問が望ましいケースでも経営的に対応可能になります。


訪問薬剤管理医師同時指導料(150点)の活用

概要

項目内容
点数150点
新設/改定新設
算定頻度6月に1回
算定要件訪問診療を実施する医師と同時に患者宅を訪問
対象患者在宅患者訪問薬剤管理指導料の「1」を算定中の患者等
併算定不可緊急時等共同指導料・在宅移行初期管理料との同日算定不可
交通費患者負担

多職種連携の「同時訪問」を点数化

この加算は、在宅医療における多職種連携を「同時訪問」という具体的な形で評価した画期的な項目です。

従来、薬剤師が医師と一緒に患者宅を訪問しても、通常の在宅患者訪問薬剤管理指導料しか算定できませんでした。2026年改定では、医師との同時訪問で得られるポリファーマシー対策や残薬調整の効果を明確に評価しています。

具体的な活用場面

場面1:処方内容の見直しカンファレンス

医師の訪問診療に同行し、患者の前で薬の効果・副作用について直接医師と協議。その場で処方変更が実現するため、従来の「薬剤師→訪問報告書→医師が判断→次回処方で反映」というタイムラグが解消されます。

場面2:在宅ターミナルケアの薬剤調整

終末期患者の疼痛管理において、医師と薬剤師が同時に訪問し、麻薬の用量調整やレスキュー薬の使用状況を確認。患者・家族への説明もその場で行えます。

場面3:退院後の初回訪問

入院中に処方が大幅に変更された患者の退院後、医師と薬剤師が同時に訪問して服薬状況を確認。残薬と新処方の整合性をその場で調整します。

算定のポイント

  • 医師の訪問診療の予定を事前に確認し、スケジュールを合わせる必要がある
  • 患者または家族からの書面による同意が必要
  • 6月に1回の制限があるため、最も効果的なタイミング(退院直後、処方大幅変更時など)を見極めることが重要

かかりつけ薬剤師訪問加算(230点)の位置づけ

概要

項目内容
点数230点
新設/改定新設
算定頻度6月に1回
算定要件かかりつけ薬剤師が患者宅を訪問し、残薬整理・管理指導を実施
対象外在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定中の患者は対象外

外来から在宅への「橋渡し」としての役割

かかりつけ薬剤師訪問加算は、在宅患者訪問薬剤管理指導料とは明確に異なる位置づけの加算です。

  • 在宅患者訪問薬剤管理指導料:継続的な在宅管理を前提(月4回まで)
  • かかりつけ薬剤師訪問加算:外来通院中の患者への単発的な訪問介入(6月に1回)

つまり、まだ本格的な在宅医療に移行していない患者に対して、かかりつけ薬剤師が自宅を訪問して残薬の確認・整理や服薬状況の確認を行うことを評価しています。

活用シナリオ

  1. 通院はできるが自宅での薬の管理に不安がある患者:かかりつけ薬剤師が訪問して実態を把握
  2. 通院頻度が減り、残薬が増えている患者:訪問して残薬整理と処方医への報告を実施
  3. 在宅医療への移行を検討中の患者:訪問により自宅環境を把握し、本格的な在宅移行の判断材料を収集

この加算は、かかりつけ薬剤師の機能強化という2026年改定の大きな方針とも連動しています。

関連記事: かかりつけ薬剤師に関する2026年改定の全体像は、【2026年 かかりつけ薬剤師】改定の全体像で詳しく解説しています。


無菌製剤処理加算の拡大:小児在宅への影響

対象年齢の拡大

2026年改定で、無菌製剤処理加算の対象年齢が「6歳未満」から「15歳未満」に拡大されました。これにより、小児在宅医療において薬局が果たす役割が大幅に広がります。

点数の変更(15歳未満の場合)

区分改定前改定後増減
中心静脈栄養法69点237点+168点(3.4倍)
抗悪性腫瘍剤79点147点+68点(1.9倍)
麻薬69点137点+68点(2.0倍)

小児在宅医療の現状と薬局の関わり

小児在宅医療は、医療的ケア児(人工呼吸器や経管栄養等が必要な子ども)の増加に伴い急速に需要が拡大しています。しかし、対応できる薬局は極めて限られており、特に無菌調製が可能な薬局の不足が大きな課題でした。

2026年改定の対象年齢拡大と大幅増点は、以下のメッセージを含んでいます。

  • 6歳以上15歳未満の小児も在宅での中心静脈栄養や抗がん剤治療を受けるケースが増加
  • 無菌調製に対応する薬局を増やすための経済的インセンティブの強化
  • 中心静脈栄養法の237点は成人の加算を大幅に上回る水準であり、小児対応の重要性を反映

在宅薬学総合体制加算2との関係

なお、在宅薬学総合体制加算2の施設基準においては、無菌製剤処理設備の保有が要件のひとつとなっています(「ア」の要件)。無菌調製に対応する設備を持つ薬局は、加算2の算定と合わせて小児在宅にも対応することで、さらなる加算の上乗せが可能です。


在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の変更点

点数体系

区分点数
指導料1(急変疾患に関連する場合)500点
指導料2(その他の場合)200点

加算

加算項目点数
夜間訪問加算400点
休日訪問加算600点
深夜訪問加算1,000点
麻薬管理指導加算100点
小児特定加算450点

算定回数

区分上限
一般の患者月4回
末期悪性腫瘍・麻薬注射・TPN患者週2回かつ月8回

2026年改定での変更点

  • 在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料が廃止:オンラインのみの緊急対応は廃止され、訪問による対面指導が原則に
  • 訪問薬剤管理指導料の算定間隔撤廃と連動し、緊急訪問と定期訪問の組み合わせの柔軟性が向上
  • 在宅患者訪問薬剤管理指導料との合算で月4回(末期がん等は月8回)の上限

在宅中心静脈栄養法加算

項目点数
在宅中心静脈栄養法加算150点(訪問ごと)

在宅でTPNを実施している患者に対し、投与状況の確認、保管状況のチェック、配合変化の確認等を行った場合に算定可能です。


具体的な在宅患者の算定シミュレーション

ここからは、2026年の薬局在宅加算を活用した場合の具体的な収益シミュレーションを行います。

シミュレーション1:在宅患者1人あたりの月次収入(基本パターン)

条件:

  • 個人宅(単一建物1人)への定期訪問
  • 月4回訪問
  • 在宅薬学総合体制加算1を算定
項目点数回数小計
在宅患者訪問薬剤管理指導料650点4回2,600点
在宅薬学総合体制加算130点4回120点
月間合計2,720点(27,200円)

シミュレーション2:在宅患者1人あたりの月次収入(高度対応パターン)

条件:

  • 個人宅(単一建物1人)への定期訪問
  • 月4回訪問
  • 在宅薬学総合体制加算2を算定
  • 残薬調整を実施(月1回)
  • 薬学的有害事象防止の介入(月1回)
項目点数回数小計
在宅患者訪問薬剤管理指導料650点4回2,600点
在宅薬学総合体制加算2(単一建物1人)100点4回400点
調剤時残薬調整加算(在宅)50点1回50点
薬学的有害事象等防止加算(在宅)50点1回50点
月間合計3,100点(31,000円)

シミュレーション3:医師同時訪問を含む半年間の収入

条件:

  • シミュレーション2の条件に加え
  • 訪問薬剤管理医師同時指導料を6月に1回算定
  • かかりつけ薬剤師フォローアップ加算(3月に1回)
項目半年合計
基本月間収入(3,100点 x 6月)18,600点
訪問薬剤管理医師同時指導料150点
かかりつけ薬剤師フォローアップ加算(2回)100点
半年間合計18,850点(188,500円)
年間換算約37,700点(377,000円)

シミュレーション4:末期がん患者(TPN・麻薬管理あり)

条件:

  • 個人宅(単一建物1人)
  • 月8回訪問(末期がん)
  • 在宅薬学総合体制加算2
  • 在宅中心静脈栄養法加算
  • 麻薬管理指導加算
  • 緊急訪問月2回
項目点数回数小計
在宅患者訪問薬剤管理指導料650点8回5,200点
在宅薬学総合体制加算2(単一建物1人)100点8回800点
在宅中心静脈栄養法加算150点8回1,200点
麻薬管理指導加算100点8回800点
緊急訪問指導料1500点2回1,000点
月間合計9,000点(90,000円)

在宅患者数別の年間収入試算

上記のシミュレーション結果をもとに、在宅患者数別の年間収入を試算します。

在宅患者数基本パターン(年間)高度対応パターン(年間)
5人約163万円約189万円
10人約326万円約377万円
20人約653万円約754万円
30人約979万円約1,131万円
50人約1,632万円約1,885万円

この試算は定期訪問のみの計算であり、実際には緊急訪問や複数名訪問、医師同時訪問等の加算が加わるため、さらに上振れする可能性があります。


在宅業務未経験の薬局が参入するためのロードマップ

在宅業務に取り組んだことがない薬局でも、以下のステップで段階的に参入できます。

フェーズ1:準備期間(施行前 〜 2026年6月)

ステップ1:届出の実施

  • 地方厚生局への「在宅患者訪問薬剤管理指導」の届出
  • 介護保険の居宅療養管理指導の指定申請
  • 麻薬小売業者免許の取得(在宅薬学総合体制加算1の要件)

ステップ2:人員体制の確認

  • 訪問に出る薬剤師と店舗に残る薬剤師の配置計画
  • 管理薬剤師の在宅業務研修の受講
  • 24時間対応体制(輪番制)の設計

ステップ3:設備・備品の準備

  • 移動手段(車・バイク・自転車)の確保
  • 訪問キット:血圧計、パルスオキシメーター、服薬カレンダー、お薬ケース
  • 携帯電話・タブレット(薬歴参照・報告書作成用)

フェーズ2:地域連携の構築(2026年4〜6月)

ステップ4:関係者へのアプローチ

連携先アプローチ方法
在宅医(訪問診療医)直接訪問・FAXでの案内状
ケアマネジャー地域包括支援センター経由で紹介
訪問看護ステーション合同勉強会の開催
病院の退院支援部門退院時カンファレンスへの参加意思を伝達

ステップ5:最初の患者の獲得

最も始めやすいルートは以下の3つです。

  1. 既存のかかりつけ患者:通院が困難になってきた患者に訪問を提案
  2. 退院時カンファレンス:病院から退院する患者の在宅を引き受ける
  3. ケアマネジャーからの紹介:薬の管理に困っている在宅患者を紹介してもらう

フェーズ3:在宅業務の実施と拡大(2026年6月〜)

ステップ6:最初の訪問

  1. 医師からの訪問指示書の受領
  2. 薬学的管理指導計画の策定
  3. 患者・家族への説明と同意取得
  4. 緊急連絡先の書面交付(2026年改定で義務化)
  5. 初回訪問の実施
  6. 訪問報告書の作成と医師への送付

ステップ7:加算の段階的取得

時期目標必要な実績
開始〜6月在宅業務の基盤構築月数回の訪問実績
6月〜1年在宅薬学総合体制加算1の取得年間48回以上の在宅算定実績
1年〜2年在宅薬学総合体制加算2の取得常勤2名以上、かかりつけ24回以上等

在宅業務の人員・設備体制チェックリスト

在宅業務を開始・拡大するにあたり、以下のチェックリストで自薬局の体制を確認しましょう。

人員体制

  • 在宅訪問に対応できる薬剤師が1名以上確保されている
  • 訪問時に店舗に残る薬剤師が確保されている
  • 在宅薬学総合体制加算2を目指す場合、常勤薬剤師2名以上が在籍している
  • 24時間対応体制(輪番制・連絡先の整備)が構築されている
  • 在宅業務に関する研修計画が策定・実施されている

届出・許可

  • 地方厚生局へ「在宅患者訪問薬剤管理指導」の届出を完了
  • 介護保険の居宅療養管理指導の指定を取得
  • 麻薬小売業者免許を取得(加算1の要件)
  • 高度管理医療機器販売業の許可を取得(加算2の要件)

設備・備品

  • 移動手段(車・バイク・自転車)が確保されている
  • 訪問キット(血圧計・パルスオキシメーター・服薬カレンダー等)を整備
  • 携帯電話・タブレット(薬歴参照・報告書作成用)を準備
  • 医療材料・衛生材料の供給体制を整備
  • 無菌製剤処理設備の保有(加算2「ア」を目指す場合)

地域連携

  • 在宅医(訪問診療医)との連携体制を構築
  • ケアマネジャー・地域包括支援センターとの関係を構築
  • 訪問看護ステーションとの連携体制を整備
  • 在宅協力薬局の確保(自局で24時間対応が難しい場合)
  • 地域の医療機関・行政機関等への在宅対応の周知を実施

書類・運用

  • 緊急連絡先・時間外対応体制の書面を作成(初回訪問時に患者へ交付)
  • 薬学的管理指導計画のテンプレートを準備
  • 訪問報告書のテンプレートを準備
  • 薬歴への訪問記録の記載フローを整備
  • 残薬確認・整理の標準手順を策定

2026年 薬局 在宅 加算の全項目一覧

改定内容を一覧にまとめます。

項目点数改定内容算定頻度
在宅患者訪問薬剤管理指導料(単一建物1人)650点算定間隔制限撤廃月4回(がん等は月8回)
在宅薬学総合体制加算130点旧15点から倍増処方箋受付ごと
在宅薬学総合体制加算2(単一建物1人)100点新設処方箋受付ごと
在宅薬学総合体制加算2(その他)50点据置処方箋受付ごと
複数名薬剤管理指導訪問料300点新設月4回まで
訪問薬剤管理医師同時指導料150点新設6月に1回
かかりつけ薬剤師訪問加算230点新設6月に1回
在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1500点据置月4回(がん等は月8回)
在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料2200点据置同上
在宅中心静脈栄養法加算150点訪問ごと
無菌製剤処理加算・中心静脈栄養法(15歳未満)237点旧69点から3.4倍処理ごと
無菌製剤処理加算・抗悪性腫瘍剤(15歳未満)147点旧79点から1.9倍処理ごと
無菌製剤処理加算・麻薬(15歳未満)137点旧69点から2.0倍処理ごと
調剤時残薬調整加算(在宅患者)50点新設算定要件充足時
薬学的有害事象等防止加算(在宅患者)50点新設算定要件充足時
在宅移行初期管理料50〜100点新設月1回
麻薬管理指導加算100点据置訪問ごと
小児特定加算(緊急訪問時)450点緊急訪問ごと

よくある質問(Q&A)

Q1. 在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定間隔が撤廃されましたが、毎日訪問しても算定できますか?

A. 間隔制限は撤廃されましたが、月間の算定上限(一般患者は月4回、末期がん等は月8回)は変わりません。また、訪問には医師の指示と薬学的な必要性が求められますので、患者の状態に応じた適切な頻度での訪問が前提です。

Q2. 在宅薬学総合体制加算1の実績要件が「24回」から「48回」に引き上げられましたが、新規参入の薬局は算定できませんか?

A. 直近1年間の実績が必要なため、新規参入直後は加算1を算定できません。まずは在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定実績を積み、翌年度以降の加算取得を目指してください。月4人の在宅患者に毎月訪問すれば、年間48回の要件を満たすことが可能です。

Q3. 複数名薬剤管理指導訪問料の「複数名」には、薬局事務員も含まれますか?

A. はい。同行者は必ずしも薬剤師である必要はありません。薬局のスタッフ(事務員等)が同行する場合も算定対象となります。ただし、薬学的管理指導は薬剤師が行う必要があります。

Q4. 訪問薬剤管理医師同時指導料は、オンライン訪問診療に同席する場合も算定できますか?

A. いいえ。訪問薬剤管理医師同時指導料は、対面での同時訪問が要件です。医師がオンラインで訪問診療を行う場合の同席は算定対象外となります。

Q5. かかりつけ薬剤師訪問加算と在宅患者訪問薬剤管理指導料は併算定できますか?

A. いいえ。かかりつけ薬剤師訪問加算は、在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定していない患者が対象です。両方を同時に算定することはできません。外来通院中の患者への単発訪問(かかりつけ薬剤師訪問加算)と、在宅医療に移行した患者への継続訪問(在宅患者訪問薬剤管理指導料)を使い分けてください。

Q6. 在宅業務を始めるのに最低何人の薬剤師が必要ですか?

A. 薬剤師1人の薬局でも在宅業務は始められます。ただし、訪問時に店舗を閉局する場合は、近隣の協力薬局との連携体制が必要です。在宅薬学総合体制加算2を目指す場合は常勤2名以上が必須です。

Q7. 無菌製剤処理の設備がない薬局でも在宅業務はできますか?

A. はい。無菌製剤処理は在宅業務の一部であり、必須ではありません。無菌製剤処理設備がなくても、在宅患者訪問薬剤管理指導料や在宅薬学総合体制加算1は算定可能です。加算2については、「イ」の要件(高度な薬学的管理加算の実績6回以上)を満たせば、無菌製剤処理設備がなくても算定できます。


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2026年調剤報酬改定に関する以下の記事もあわせてご覧ください。

改定の全体像

テーマ別の詳細解説

薬局タイプ別の経営戦略


まとめ:在宅業務は2026年改定で「取り組むべき」から「取り組まないと損」へ

2026年度調剤報酬改定における在宅関連の変更を振り返ると、そのメッセージは明確です。

改定の方向性具体的な変化
訪問頻度の柔軟化算定間隔制限の撤廃(6日以上→制限なし)
体制評価の引き上げ在宅薬学総合体制加算1が15点→30点に倍増
高度対応への高評価在宅薬学総合体制加算2(単一建物1人)100点の新設
多職種連携の評価複数名訪問料300点、医師同時指導料150点の新設
外来→在宅の橋渡しかかりつけ薬剤師訪問加算230点の新設
小児在宅の強化無菌製剤処理加算の対象15歳未満に拡大・大幅増点
介入実績の評価残薬調整加算・有害事象防止加算が在宅で50点

在宅患者10人に月4回訪問するだけでも、在宅薬学総合体制加算1を含めて年間約326万円の収入になります。高度対応パターンでは年間約377万円以上が見込めます。

一方で、立地依存減算(-15点)の新設や調剤管理料の中間日数帯の減点など、従来型の門前経営には逆風が吹いています。在宅業務への参入は、もはや「将来に向けた投資」ではなく、2026年からの経営を支える具体的な収益源として位置づけるべきです。

施行は2026年6月1日です。届出の準備、人員体制の整備、地域連携の構築を、今から着実に進めていきましょう。