記事一覧に戻る

特定薬剤管理指導加算1の算定要件|ハイリスク薬の薬歴記載とレセプトのポイント

特定薬剤管理指導加算1とは

特定薬剤管理指導加算1は、いわゆるハイリスク薬を調剤する際に、薬剤師が重点的な薬学的管理・指導を行ったことを評価する加算です。

「ハイリスク薬が出たら算定できるやつでしょ?」——そう思っている方、2024年度改定でだいぶルールが変わっています。

以前は「ハイリスク薬を含む処方を受けたら、十分な指導をしていればほぼ毎回10点」という感覚で運用していた薬局も多かったはず。ぼく自身、管理薬剤師をしていたときはまさにそうでした。

ところが改定後は新規処方のときだけ10点、継続の場合は一定の条件を満たしたときだけ5点。これ、算定機会が体感で半分以下になります。循環器科や精神科をメインで受けている薬局だと、月10万円以上の減収になったという話もあるくらいです。

だからこそ、取れるときに確実に取る運用が重要になりました。


算定点数

区分点数タイミング
10点ハイリスク薬が新たに処方されたとき
5点用法・用量の変更があり薬剤師が必要と認めたとき、または副作用の発現状況等に基づき薬剤師が必要と認めたとき

1回の受付につき、イまたはロのいずれか1回のみ算定可能です。処方箋に対象薬が複数あっても1回だけ。


対象となるハイリスク薬

算定対象は、厚生労働大臣が定める「特に安全管理が必要な医薬品」です。具体的には以下の12カテゴリに該当する薬剤が対象になります。

  1. 抗悪性腫瘍剤
  2. 免疫抑制剤
  3. 不整脈用剤
  4. 抗てんかん剤
  5. 血液凝固阻止剤(内服薬に限る)
  6. ジギタリス製剤
  7. テオフィリン製剤
  8. カリウム製剤(注射薬に限る)
  9. 精神神経用剤
  10. 糖尿病用剤
  11. 膵臓ホルモン剤
  12. 抗HIV薬

対象薬剤の詳細な一覧は、厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」のページから確認できます。

ここが落とし穴:適応疾患に注意

同じ薬剤でも、対象疾患の適応として処方された場合のみ算定できます。

たとえばデュロキセチン。うつ病に対する処方なら精神神経用剤として対象になりますが、変形性関節症の疼痛に対する処方では対象外です。

ビソプロロールも同様で、不整脈に対する処方は対象ですが、心不全・狭心症・高血圧に対する処方では算定できません。

ここ、レセコンが自動で判断してくれないケースもあるので、薬剤師自身が処方意図を確認する必要があります。


算定要件のまとめ

改定後の算定フローを整理するとこうなります。

flowchart TD
    A["ハイリスク薬を含む<br/>処方箋を受付"] --> B{"新たに処方?"}
    B -->|Yes| C["薬学的管理・指導を実施"]
    C --> D["薬歴に指導内容を記載"]
    D --> E["イ:10点を算定"]
    B -->|No(継続)| F{"用法用量の変更 or<br/>副作用の発現等あり?"}
    F -->|Yes| G["薬剤師が指導の<br/>必要性を判断"]
    G --> H["薬学的管理・指導を実施"]
    H --> I["薬歴に指導内容+<br/>必要と判断した理由を記載"]
    I --> J["ロ:5点を算定"]
    F -->|No| K["算定なし<br/>(通常の服薬指導のみ)"]

算定できないケース

意外と見落としがちなパターンがあります。

  • 他院からの継続処方: 患者がほかの薬局で同じハイリスク薬をもらっていて、自局で初めて受け付けた場合は「新たに処方」に該当しません。あくまで処方自体が新規かどうかが基準です
  • 同成分の銘柄違い: 先発から後発への変更など、成分が同じ場合は新規扱いにならないため算定不可
  • イとロの同時算定: 1回の受付でイとロを両方算定することはできません

薬歴記載のポイント

特定薬剤管理指導加算1は、個別指導で返還対象になりやすい加算の筆頭格です。ここを雑にすると痛い目を見ます。

イ(新規処方)の場合

確認した内容と、行った指導の要点を具体的に記載します。

記載例(メトホルミン錠250mg 新規処方)

S:食事を抜くことがある。

EP:低血糖の初期症状(冷汗、手指の震え、動悸等)について説明。生活リズムを保ち、過度な飲酒や食事を抜くことがないよう指導。乳酸アシドーシスの初期症状(筋肉痛、倦怠感、腹痛等)についても説明し、体調不良時(シックデイ)は服用を中止し医療機関に連絡するよう指導。

「アドヒアランスの確認だけ」「重大な副作用(アナフィラキシー等)の説明だけ」では不十分です。その薬剤に特有のリスクを、患者背景に沿って指導する必要があります。

ロ(継続・変更等)の場合

イの記載事項に加えて、「なぜ指導が必要と判断したのか」の理由も記載する必要があります。

記載例(ワルファリン 用量変更)

前回1日2mg→今回1日2.5mgに増量。PT-INRの変動リスクについて説明。出血傾向(歯茎からの出血、あざの増加等)に注意するよう指導。納豆・クロレラ等ビタミンK含有食品の摂取制限を再確認。用量変更に伴い指導が必要と判断。

レセプト摘要コメント

特定薬剤管理指導加算1にはレセプト摘要コメントは不要です。ここは楽なポイント。


個別指導で指摘されやすい3つのNGパターン

薬局長をしていた経験上、個別指導で最も返還リスクが高い加算のひとつがこの特管1でした。よくある指摘パターンを整理しておきます。

1. 指導内容が薄い

糖尿病用薬なのに「副作用に注意してください」だけで終わっていたり、アドヒアランスの確認しか書いていなかったりするケース。

その薬剤固有のリスク——糖尿病用薬なら低血糖、乳酸アシドーシス、シックデイ対応——を患者背景に沿って指導し、記録する必要があります。

2. 指導→確認のサイクルがない

指導しっぱなしはNG。次回来局時に「前回指導した内容を患者が理解・実践しているか」を確認し、その結果を薬歴に記載することが求められます。

指導して終わり、ではなく指導→確認→必要に応じて再指導のサイクルを回すこと。これは日本薬剤師会のハイリスク薬ガイドライン(第2版)でも示されている考え方です。

3. 対象薬剤を網羅できていない

メトトレキサートとメトホルミンが同じ処方箋に載っているのに、片方だけ指導して算定していたケース。

2024年度改定で「すべてについて指導を行うこと」という文言はなくなりましたが、これは「一部だけ説明すればOK」という意味ではありません。継続分は必ずしも対象ではないものの、算定対象とした薬剤が複数ある場合は、すべてに対して指導と薬歴記載を行うべきです。


併算定のルール

組み合わせ可否
特定薬剤管理指導加算1 イ + ロ不可(どちらか一方)
特定薬剤管理指導加算1 + 特定薬剤管理指導加算3 イ
特定薬剤管理指導加算1 + 特定薬剤管理指導加算3 ロ
特定薬剤管理指導加算1 + 特定薬剤管理指導加算2(同一月・同一薬剤)不可

特管3イ・ロとの併算定が可能な点は見落としやすいので覚えておきたいところです。RMP資材に基づく指導(特管3イ)と、ハイリスク薬の指導(特管1)はそれぞれ別の評価軸なので、両方の要件を満たしていれば両方算定できます。


店舗で取りこぼさないための運用のコツ

1件あたり5〜10点と小さく見えますが、積み重ねると大きな差になります。ぼくが管轄していた店舗では、スタッフの意識の違いだけで月あたり300件の算定差が出ていました。特管3ロと合わせると月3万円以上の差です。

事務スタッフとの連携

受付時点で「この処方にハイリスク薬が新規で入っている」「用量が前回から変わっている」ということを事務スタッフが把握し、薬剤師に伝達するフローを作りましょう。レセコンのアラート設定も活用すべきです。

算定判断の基準を明文化する

「継続のロはどういうときに算定する?」という判断基準があいまいだと、薬剤師によって算定のバラつきが出ます。店舗内で基準を統一しておくことが重要です。

ガイドラインの5項目を押さえる

日本薬剤師会のハイリスク薬ガイドライン(第2版)で示されている共通5項目は、個別指導でも説明を求められることがあります。

  1. 処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
  2. アドヒアランスの確認(飲み忘れ時の対応を含む)
  3. 副作用モニタリングおよび重篤な副作用発生時の対処方法の教育
  4. 効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
  5. 一般用医薬品やサプリメント等を含む併用薬・食事との相互作用の確認

この5項目、暗記しておいて損はないです。


まとめ

  • 2024年度改定でイ10点(新規)・ロ5点(変更・副作用等)に変更。算定機会は減ったが、取りこぼさない運用が重要
  • 対象疾患の適応かどうか、他院継続ではないかの確認を忘れずに
  • 薬歴は「その薬剤固有のリスクに対する具体的な指導内容」を記載。ロの場合は判断理由も必須

関連記事もあわせてご覧ください

参考資料