記事一覧に戻る

【2026年調剤報酬改定】薬局が知るべき全変更点を徹底解説

はじめに

2026年度(令和8年度)の調剤報酬改定が、2026年2月に答申されました。施行日は2026年6月1日です。

今回の改定は「門前から地域へ」という薬局ビジョンの実現を一段と推し進める内容となっており、調剤基本料の引き上げと立地依存減算の新設地域支援体制加算と後発医薬品調剤体制加算の統合再編かかりつけ薬剤師指導料の廃止と服薬管理指導料への統合など、薬局経営に直結する大きな変更が多数含まれています。

本記事では、改定内容の全体像を整理し、薬局現場にとってどのような変化があるのかをわかりやすく解説します。

薬局タイプ別の詳細記事もあわせてご覧ください:


改定の全体像:3つの柱

今回の調剤報酬改定は、大きく以下の3つの方向性で構成されています。

1. 賃上げ・物価高騰への対応

薬局スタッフの処遇改善と物価上昇への対応として、調剤基本料の底上げに加え、新たな加算が創設されました。

2. 対物業務から対人業務への評価シフト

薬の調剤(対物)よりも、患者への指導・フォローアップ(対人)を重視する方向が一層明確になりました。かかりつけ薬剤師の評価体系が大きく変わります。

3. 医療DXと医薬品安定供給の推進

電子処方箋の活用やバイオ後続品の普及促進など、デジタル化と供給安定化が報酬面でも後押しされます。


調剤基本料の変更

点数の引き上げ

すべての調剤基本料が引き上げられました。賃上げ・物価対応の原資としての位置づけです。

区分改定前改定後増減
調剤基本料145点47点+2点
調剤基本料229点30点+1点
調剤基本料3イ24点25点+1点
調剤基本料3ロ19点20点+1点
調剤基本料3ハ35点37点+2点

基本料1と3ハの引き上げ幅が大きく、面分業を行う薬局や地域密着型薬局への評価が手厚くなっています。

基本料2の適用拡大

従来は「月4,000回超かつ集中率70%超」等が基本料2の適用条件でしたが、今回の改定で「月1,800回超〜2,000回以下かつ集中率85%超〜95%以下」の薬局にも基本料2が拡大適用されるようになりました。

また、医療モール内の薬局では、複数の医療機関からの処方箋を合算して集中率を計算するルールが導入され、実質的に門前と同等の扱いを受ける可能性があります。

グループ薬局要件の変更

従来の「店舗300以上」といった店舗数による判定要件が廃止され、処方箋の総受付回数のみで判定される方式に変更されました。

立地依存減算の新設(-15点)

今回の改定で最も注目すべき新設項目のひとつが「立地依存減算」です。

  • 対象:都市部密集地域や医療機関敷地内に立地し、集中率85%超の薬局
  • 減算額-15点
  • 特別調剤基本料Aの薬局は対象外

門前薬局やいわゆる「立地依存型」の経営モデルに対して、より厳しい評価が適用されることになります。


新設加算:賃上げ・物価対応

物価上昇とスタッフの処遇改善に対応するため、2つの加算が新設されました。

調剤ベースアップ評価料

時期点数
2026年6月〜2027年5月処方箋受付1回につき 4点
2027年6月以降処方箋受付1回につき 8点

薬局スタッフの賃上げ原資を確保するための加算です。段階的に引き上げられる設計になっています。

調剤物価対応料

時期点数
2026年6月〜2027年5月3月に1回 1点
2027年6月以降3月に1回 2点

光熱費や消耗品など、薬局運営に係る物価上昇への対応です。


地域支援・医薬品供給対応体制加算(旧・地域支援体制加算+後発医薬品調剤体制加算)

今回の改定で最も大きな再編が行われた領域です。これまで別々に存在していた地域支援体制加算後発医薬品調剤体制加算が統合され、新たに「地域支援・医薬品供給対応体制加算」として5段階に再編されました。

新体系の点数と主な要件

区分点数主な要件
加算127点地域における安定供給体制+後発医薬品使用割合85%以上
加算259点地域医療への一定の貢献実績
加算367点地域医療への相当な貢献実績
加算437点医薬品供給体制の実績評価
加算559点より高い水準の供給体制

旧体系との比較

旧制度旧点数新制度
地域支援体制加算132点加算1(27点)に統合
地域支援体制加算240点加算2(59点)に再編
後発医薬品調剤体制加算各種統合廃止

薬局への影響

  • 後発医薬品調剤体制加算が単独では存在しなくなるため、後発品の使用割合だけでは加算が取れなくなります
  • 地域への貢献実績(在宅対応、休日・夜間対応、医薬品の備蓄品目数など)がより重要になります
  • 単に「加算を取るための備蓄」ではなく、実質的な地域貢献が問われる設計です

調剤管理料の簡素化

従来の細かな日数区分が廃止され、シンプルな2区分に整理されました。

新体系

区分点数
長期処方(28日分以上)60点
その他(27日分以下)10点
注射薬等10点

廃止された項目

  • 調剤管理加算(3点):廃止

従来は処方日数に応じた複雑な区分がありましたが、長期処方とそれ以外の2区分にまとめられました。長期処方に対する評価が手厚くなっている点が特徴です。


かかりつけ薬剤師関連の大幅見直し

今回の改定で最も構造的な変化があった領域です。

廃止された項目

廃止項目旧点数
かかりつけ薬剤師指導料76点
かかりつけ薬剤師包括管理料291点

服薬管理指導料への統合

「かかりつけ薬剤師指導料」は独立した項目としては廃止され、服薬管理指導料の枠組みの中に組み込まれました。

区分点数
3月以内再来の患者(お薬手帳提示あり)45点
その他の患者59点
施設訪問(月4回限度)45点
オンライン服薬指導45〜59点

新設された加算

かかりつけ機能は「指導料」としてではなく、対人業務の質を評価する加算として再設計されました。

新設加算点数算定要件
かかりつけ薬剤師フォローアップ加算50点3月に1回。残薬調整加算・有害事象防止加算等を算定済みの患者が対象。かかりつけ薬剤師が次回来局までに電話等で服薬状況・残薬確認を実施
かかりつけ薬剤師訪問加算230点6月に1回
調剤時残薬調整加算30〜50点残薬確認・処方提案
薬学的有害事象等防止加算30〜50点副作用・相互作用の防止

フォローアップ加算の算定ポイント:この加算は単独では算定できず、同一患者に対して外来服薬支援料1、服用薬剤調整支援料1/2、調剤時残薬調整加算、薬学的有害事象等防止加算のいずれかを既に算定していることが前提です。また、調剤後薬剤管理指導料や在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定中の患者は対象外となります。

薬局への影響

  • かかりつけ薬剤師の「看板」から「実績」への転換が求められます
  • 継続的なフォローアップや残薬管理など、具体的なアウトカムに基づく評価に変わりました
  • 包括管理料(291点)の廃止は、これを算定していた薬局にとって大きな収入減となる可能性があります

重複投薬・相互作用等防止加算の廃止と再編

廃止された項目

廃止項目旧点数
重複投薬・相互作用等防止加算20〜40点
在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料20〜40点

これらは廃止され、薬学的有害事象等防止加算(30〜50点)に再編されました。重複投薬や相互作用のチェックだけでなく、より広い「薬学的有害事象の防止」という概念で評価する形になっています。


医療DX関連の変更

電子的調剤情報連携体制整備加算(旧・医療DX推進体制整備加算)

名称が変更され、点数が見直されました。

区分点数
加算18点(旧10点から引き下げ)
加算28点(据置)
加算36点(据置)

医療情報取得加算の廃止

マイナ保険証によるオンライン資格確認に関連する「医療情報取得加算」は廃止されました。マイナ保険証の利用が一般化してきたことを反映した措置と考えられます。

バイオ後続品調剤体制加算(新設)

項目点数
バイオ後続品調剤体制加算50点

バイオ医薬品の後続品(バイオシミラー)の使用促進を目的とした新設加算です。高額なバイオ医薬品のコスト削減を進める国の方針を反映しています。


在宅業務の充実

在宅医療への対応は今回の改定で大きく拡充されました。

新設された加算・指導料

新設項目点数備考
複数名薬剤管理指導訪問料300点複数名での訪問に対応
訪問薬剤管理医師同時指導料150点6月に1回、医師との同行訪問
在宅薬学総合体制加算130点旧15点から倍増
在宅薬学総合体制加算250〜100点単一建物1人の場合100点

無菌製剤処理加算の対象拡大

対象年齢が「6歳未満」から「15歳未満」に拡大されました。

区分改定前改定後
中心静脈栄養法69点237点
抗悪性腫瘍剤79点147点
麻薬69点137点

小児在宅医療における薬局の役割がより評価される形です。

在宅訪問の算定間隔

在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定間隔制限が撤廃され、患者の状態に応じた柔軟な訪問が可能になりました。


選定療養(長期収載品の自己負担)

長期収載品(後発品のある先発品)を希望する患者の自己負担割合が変更されます。

項目改定前改定後
患者負担(後発品との価格差)価格差の1/4価格差の1/2

自己負担が倍増することで、後発医薬品への切り替えがさらに進むことが予想されます。薬局では患者への丁寧な説明が一層重要になります。


薬局経営への影響と対応策

薬局タイプ別の影響

門前薬局・医療モール内薬局

  • 立地依存減算(-15点)の新設で収入減のリスク
  • 集中率の計算方法変更により基本料2への移行が増加する可能性
  • 対策:面処方箋の獲得、在宅業務の拡大、地域連携の強化

地域密着型薬局

  • 調剤基本料1の+2点、地域支援・医薬品供給対応体制加算の上位区分取得で増収の可能性
  • かかりつけ機能の新加算(フォローアップ、訪問等)を活用
  • 対策:地域貢献実績の数値化、後発品使用割合の維持向上

大手チェーン薬局

  • グループ要件の変更(店舗数→処方箋数)への対応が必要
  • ベースアップ評価料でスタッフ処遇改善の原資確保
  • 対策:店舗ごとの基本料区分を再確認、加算取得状況の棚卸し

今から取り組むべき5つのアクション

1. 加算の算定シミュレーション

現在の算定状況をベースに、新報酬体系での収入シミュレーションを行いましょう。特に地域支援・医薬品供給対応体制加算の新要件に自薬局が該当するかの確認が最優先です。

2. 在宅業務の体制強化

在宅関連の加算が大幅に拡充されています。訪問薬剤管理の実績がない薬局は、地域のケアマネジャーや在宅医との連携構築を今から始めることが重要です。

3. 対人業務の「見える化」

かかりつけ薬剤師の評価が「実績ベース」に変わるため、フォローアップの実施件数、残薬調整の提案件数、有害事象防止の介入件数などを記録・数値化する仕組みを整えましょう。

4. 医療DX対応の確認

電子処方箋への対応体制、オンライン資格確認の運用状況を確認し、電子的調剤情報連携体制整備加算の算定に向けた準備を進めましょう。

5. 患者への説明準備

長期収載品の自己負担増(1/4→1/2)について、患者からの問い合わせが増えることが予想されます。後発品への切り替え提案を含めた説明資料を準備しておくことをおすすめします。


まとめ

2026年度調剤報酬改定は、「体制から実績へ」「立地から機能へ」という評価軸の転換を鮮明にした改定です。

改定の方向性具体的な変化
賃上げ・物価対応基本料引き上げ、ベースアップ評価料・物価対応料の新設
立地依存からの脱却立地依存減算の新設、集中率要件の厳格化
体制から実績へ地域支援体制加算の再編、かかりつけ機能の実績評価化
対人業務の重視残薬調整加算・有害事象防止加算の新設
医療DXの推進電子処方箋関連の加算再編、バイオ後続品加算の新設
在宅医療の拡充訪問関連の新設加算、算定間隔の撤廃

施行は2026年6月1日です。経過措置が設けられる項目もありますが、早めの準備が重要です。自薬局の強みを活かしながら、新しい報酬体系に対応していきましょう。


薬局タイプ別の詳細解説

本記事では改定の全体像を解説しましたが、薬局の規模や形態によって影響度や取るべき戦略は大きく異なります。以下の記事で、それぞれの薬局タイプに特化した深掘り解説を行っています。

【個人薬局向け】2026年調剤報酬改定で変わる経営戦略

かかりつけ薬剤師の実績評価化への対応、少人数体制での対人業務効率化、在宅業務への参入ロードマップ、地域支援体制加算の取得戦略など、個人薬局(1〜数店舗)の生き残り戦略を具体的に解説しています。

【中小グループ薬局向け】2026年調剤報酬改定の対応戦略

店舗ポートフォリオの総点検、店舗間連携による在宅ハブ&スポークモデル、ベースアップ評価料の人材戦略への活用、医療DX投資の効率化など、中小グループ(5〜50店舗)ならではのスケールメリットの活かし方を解説しています。

【大手チェーン薬局向け】2026年調剤報酬改定の経営インパクト

グループ要件変更の影響分析、立地依存減算の数億円規模の財務インパクト試算、数百店舗のポートフォリオ最適化(4カテゴリ分類)、全社DX戦略、経営指標の見直しなど、経営層向けの分析を行っています。


参考リンク