【2026年】かかりつけ薬剤師指導料が廃止|何がなくなり何が生まれるのか徹底解説

目次

かかりつけ薬剤師指導料が2026年に廃止——10年の歴史に幕

2026年度(令和8年度)の調剤報酬改定で、2016年から続いてきた「かかりつけ薬剤師指導料(76点)」「かかりつけ薬剤師包括管理料(291点)」が正式に廃止されます。施行日は2026年6月1日です。

この改定は、かかりつけ薬剤師制度そのものの廃止ではありません。評価の仕組みが根本から変わるということです。独立した指導料として存在していた「看板」が消え、代わりに実績で評価される加算群が新設されました。

本記事では、かかりつけ薬剤師指導料の廃止によって具体的に何がなくなり、何が生まれるのかを詳しく解説します。

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なぜかかりつけ薬剤師指導料は廃止されたのか

旧制度の構造的な問題

かかりつけ薬剤師指導料は、患者から同意書を得た薬剤師が服薬指導を行うたびに76点を算定できる制度でした。しかし、以下の問題が中医協(中央社会保険医療協議会)で繰り返し指摘されていました。

1. 同意取得だけで算定できる「看板偏重」

患者の同意書を取得すれば、実際のフォローアップや介入の質に関係なく76点を算定可能でした。「かかりつけ薬剤師です」と名乗るだけで報酬が発生する構造に対し、「介入の実績を伴わない評価は不適切」という批判がありました。

2. 硬直的な1対1関係

同意書に基づく1対1の関係は、薬剤師の異動・退職で同意が失われるリスクがありました。患者にとっても、担当薬剤師が不在の場合に十分な対応を受けにくい弊害がありました。

3. パートタイム薬剤師の排除

週32時間以上の勤務要件や1年以上の在籍要件は、パートタイムや異動の多い薬剤師がかかりつけ薬剤師になることを事実上阻んでいました。

4. 包括管理料の機能不全

かかりつけ薬剤師包括管理料(291点)は要件が厳しく、ほとんど算定されていませんでした。制度として形骸化していたのです。

厚生労働省が目指す方向性

厚生労働省は2026年改定の基本方針として「対物業務から対人業務へのシフト」を掲げています。かかりつけ薬剤師指導料の廃止はその象徴的な施策です。

  • 看板(かかりつけ薬剤師であること)ではなく実績(何をしたか)で評価する
  • 残薬調整、重複投薬防止、フォローアップなど具体的な介入行為を個別に報酬評価する
  • 介入実績がなければ減算する(かかりつけ機能未実施減算 -13点)

廃止で何がなくなるのか

廃止される2つの算定項目

算定項目点数廃止日
かかりつけ薬剤師指導料76点2026年5月31日
かかりつけ薬剤師包括管理料291点2026年5月31日

廃止される同意書の仕組み

旧制度では、患者と書面で同意書を交わし、1対1の関係を明確にする必要がありました。2026年6月以降は、書面による同意書は必須ではなくなります。ただし、同意を得た事実を薬歴に記録することは引き続き求められます。

旧制度の算定フローの終了

旧制度では、以下のフローで算定を行っていました。

  1. 患者の同意書を取得する
  2. かかりつけ薬剤師として届出を行う
  3. 来局のたびにかかりつけ薬剤師指導料76点を算定する

2026年6月1日以降、このフロー自体が消滅します。


廃止後に何が生まれるのか

服薬管理指導料への統合

かかりつけ薬剤師指導料は廃止され、服薬管理指導料の枠組みに統合されます。かかりつけ薬剤師が対応しても、その他の薬剤師が対応しても、基本点数は同じです。

区分点数条件
服薬管理指導料145点3月以内再来・お薬手帳提示あり
服薬管理指導料259点上記以外(初回・3月超・手帳なし)

それぞれに「イ(かかりつけ薬剤師が行った場合)」「ロ(それ以外)」の区分がありますが、基本点数に差はありません。かかりつけ薬剤師だからこそ上乗せされる報酬は、次に紹介する加算群で示します。

新設された実績評価型の加算

かかりつけ薬剤師指導料の廃止と引き換えに、以下の加算が新設・拡充されました。

加算名点数頻度概要
かかりつけ薬剤師フォローアップ加算50点3月に1回調剤後の電話等による継続的な服薬確認・指導
かかりつけ薬剤師訪問加算230点6月に1回患家訪問による残薬整理・管理指導・医療機関への情報提供
調剤時残薬調整加算30〜50点算定要件充足時残薬確認と7日分以上の処方日数変更提案
薬学的有害事象等防止加算30〜50点算定要件充足時副作用・相互作用・重複投薬の防止
かかりつけ機能未実施減算-13点体制を整えながら実績がない場合の減算

残薬調整加算と有害事象防止加算は、かかりつけ薬剤師が対応すれば50点、その他の薬剤師なら30点です。かかりつけ薬剤師であること自体に意味がなくなったのではなく、実績を出したときにプラスされる形に変わったのです。

各加算の算定フローや収入シミュレーションの詳細は、かかりつけ薬剤師制度の大転換を徹底解説をご覧ください。


施設基準はどう変わるのか

薬剤師個人の要件:緩和

要件旧制度2026年改定後変更
薬剤師経験3年以上3年以上変更なし
勤務時間週32時間以上週31時間以上緩和
在籍期間1年以上6か月以上緩和
研修認定CPC認証研修取得CPC認証研修取得変更なし
地域活動参画実績あり参画実績あり変更なし

在籍期間が1年から6か月に短縮されたことで、異動後半年でかかりつけ薬剤師として活動を開始できるようになりました。また、育児・介護等で短時間勤務の場合は週24時間以上かつ週4日以上でも要件を満たせます。

薬局の施設基準:新設

指導料の廃止に伴い、薬局側にも新たな施設基準が設けられました。

  • 常勤保険薬剤師の平均在籍期間が1年以上、または管理薬剤師が3年以上継続して在籍していること
  • 患者のプライバシーに配慮した独立したカウンター等を有すること
  • 地方厚生局長等にあらかじめ届出を行うこと

薬剤師個人の要件は緩和されましたが、薬局の体制要件が新たに追加されている点に注意が必要です。

施設基準の詳細は【2026年 薬局 基本料】調剤基本料の全区分を徹底解説もあわせてご確認ください。


収入への影響:減収か増収か

何もしなければ確実に減収

旧制度では、かかりつけ薬剤師の同意を得ている患者に対して毎回76点を算定していました。新制度では基本の服薬管理指導料は45〜59点です。差額の17〜31点が毎回の減収分になります。

来局パターン旧制度新制度(介入なし)差額
3月以内再来・手帳あり76点45点-31点
その他76点59点-17点

かかりつけ患者100人が月1回来局する薬局の場合、3月以内再来を前提とすると月3万1,000円の減収です。

実績を出せば増収も可能

一方、新設された加算を活用すれば旧制度を上回る報酬が得られます。

シナリオ旧制度新制度差額
介入なし76点45点-31点
残薬調整を実施76点45+50=95点+19点
残薬調整+フォローアップ76点45+50+50=145点+69点
残薬調整+フォローアップ+訪問76点45+50+50+230=375点+299点

フル活用すれば、旧制度の約5倍の報酬になります(訪問加算は6月に1回の制限あり)。

患者シナリオ別の詳細なシミュレーションは、かかりつけ薬剤師制度の大転換を徹底解説で解説しています。


廃止に対応するための5つのアクション

1. 既存のかかりつけ患者の同意を再確認する

旧制度の同意書に基づく算定は2026年5月31日で終了します。6月1日以降は新制度での同意が必要です。施行前に、既存のかかりつけ患者全員に対して同意の再確認を行いましょう。

2. 残薬確認を全患者でルーティン化する

残薬調整加算(30〜50点)は、かかりつけ機能の実績を示すキー加算です。来局時に「お薬は余っていませんか?」と確認することを全患者に対する標準業務としましょう。

3. フォローアップの仕組みを構築する

フォローアップ加算(50点)を算定するには、残薬調整加算等を算定した患者に対して次回来局までに電話・LINE等で連絡する必要があります。薬歴システムにアラートを設定し、対応漏れを防ぐ運用を確立しましょう。

4. 訪問体制を整備する

訪問加算(230点)は在宅医療への入口です。「通院はできるが残薬が多い」「自宅での服薬管理に不安がある」といった患者を候補としてリストアップし、訪問時の手順書・報告書テンプレートを準備しましょう。

在宅業務の詳細は在宅加算の全変更点を徹底解説をご覧ください。

5. 月次で実績を集計・分析する

かかりつけ機能未実施減算(-13点)を避けるためにも、かかりつけ関連加算の算定件数を月次で集計し、基準を下回りそうな場合は早期に対策を講じましょう。


薬局の規模別の影響と対応

個人薬局

かかりつけ患者との関係が深い個人薬局は、フォローアップ加算・訪問加算を積極的に算定しやすい立場にあります。少数の患者でも丁寧に介入すれば、旧制度以上の収入を確保可能です。

詳しくは【個人薬局向け】2026年調剤報酬改定で変わる経営戦略をご覧ください。

中小グループ薬局

店舗間でかかりつけ薬剤師の配置を最適化し、各店舗に最低1人は施設基準を満たす薬剤師を確保することが重要です。

詳しくは【中小グループ薬局向け】2026年調剤報酬改定の対応戦略をご覧ください。

大手チェーン薬局

異動サイクルが短い大手チェーンにとって、在籍要件の6か月への緩和は朗報です。一方、かかりつけ機能未実施減算のインパクトは店舗数が多いほど大きくなるため、全社的な算定推進体制が不可欠です。

詳しくは【大手チェーン薬局向け】2026年調剤報酬改定の経営インパクトをご覧ください。


よくある質問

Q. かかりつけ薬剤師指導料が廃止されたら、かかりつけ薬剤師制度自体がなくなるの?

A. いいえ。かかりつけ薬剤師制度は継続しています。廃止されたのは「かかりつけ薬剤師指導料」と「かかりつけ薬剤師包括管理料」という独立した算定項目です。かかりつけ薬剤師としての機能は、服薬管理指導料の枠組みと新設加算群の中で引き続き評価されます。

Q. 同意書はもう必要ない?

A. 書面の同意書は必須ではなくなりましたが、患者の同意を得ること自体は必要です。同意の事実は薬歴に記録しなければなりません。

Q. フォローアップ加算(50点)を算定するための前提条件は?

A. 同一患者に対して、以下のいずれかを事前に算定済みであることが必要です。

  • 外来服薬支援料1(185点)
  • 服用薬剤調整支援料1または2
  • 調剤時残薬調整加算(30〜50点)
  • 薬学的有害事象等防止加算(30〜50点)

まず介入実績を作り、その後のフォローアップで加算を算定する二段階構造です。

Q. 2026年5月末までに準備すべきことは?

A. 以下の3点が最優先です。

  1. 施設基準の確認と地方厚生局への届出準備
  2. 既存のかかりつけ患者への同意再確認
  3. 残薬確認・フォローアップ電話の運用フロー策定

まとめ:指導料は消えても、かかりつけの価値は消えない

2026年のかかりつけ薬剤師指導料の廃止は、「名乗るだけで報酬が得られる時代の終わり」を意味します。

旧制度新制度
同意書を得るだけで76点服薬管理指導料45〜59点(基本)
介入の質は問われない介入実績がなければ-13点の減算
最大76点/回フォローアップ50点+訪問230点+残薬調整50点で最大375点以上/回

かかりつけ薬剤師指導料が廃止されても、かかりつけ薬剤師の価値はむしろ高まっています。 残薬調整や有害事象防止を行えばかかりつけ薬剤師は50点(その他は30点)、フォローアップや訪問はかかりつけ薬剤師にしか算定できません。

薬局がすべきことは明確です。

  1. 指導料の廃止を嘆くのではなく、新加算の算定に全力を注ぐ
  2. 残薬確認・フォローアップ・訪問を業務フローに組み込む
  3. 実績を月次で集計し、減算を回避する

かかりつけ薬剤師指導料という「看板」は消えましたが、かかりつけ薬剤師が患者に提供できる価値は何一つ変わりません。むしろ、行動で示した薬剤師だけが正当に評価される——2026年の改定は、薬局のかかりつけ機能にとって新たなスタートです。


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参考リンク